2015年10月24日

ギター・スリム アトコ・セッションズ

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ギター・スリム/アトコ・セッションズ
(ATCO/ワーナー)

ギター・スリム、直訳すると「ギター伊達男」

うむ、ブルースマンっていう人種は「泥んこ水」とか「吠える狼」とか「稲光ホプキンス」とか、物凄い芸名の人多いけど、ギター・スリムは突き抜け過ぎていて実にカッコイイ。

「オレはカッコイイんだぜ」

「オレはワルなんだぜ(I'm A Man)」

っていうことを誇示するのは、これはもうブルースの昔からヒップホップの現在まで、アメリカ黒人音楽のミュージシャン達の間で脈々と流れ続けている伝統文化なわけなんですが、これね、名前でもってこういう見栄を切るって、やっぱりそんぐらい気合い入ってないとダメなんでしてね

もし、ソイツが芸名通りの実力がなかろうもんなら

「お前何がじゃ、ダッセェ」

と、バカにされるし、ヘタすりゃ袋叩きに合う。

そんな世界の中で堂々

「オレはギター・スリムだ!」

と名乗れるこの根性というのは相当なもんであります。

こんな名前を名乗るからには、まずギターの腕前が並じゃなければいけないし”スリム”を名乗るからにはイケメンでオシャレでトッポくないといけない。

お顔をじっくりと見てみましょう。

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うむ、ゴツいけれども優しい目をしたイイ男です、髪型もキチッとセットして、スーツやシャツにネクタイの着こなしも実にオシャレ、うん、これはモテたでしょう。うんうん。

と、感心どころじゃありません。

まぁこの人の人生と音楽は「スリムどころじゃねぇだろう!」てぐらいに壮絶なんですね。

まずこのギター・スリム、1950年代の一瞬のうちにシーンに現れて、ビルボードNo1に14週連続チャート・インするというヒットを放ったと思ったら、1959年の冬、あっという間に、32歳という若さであの世に旅立っております。

そのエピソードときたら

「全身真っ青な服を着て、髪まで青く染めてステージに立って絶叫し、爆音でギターを弾きまくっていた」

「かと思うと、ソロを弾きながらステージから客席へ下り、熱狂する客たちの間をすり抜けて会場を出て行った。でもアンプからはずーっとギターの音が鳴り響いている。一体ヤツはどこに行っちまったんだ?って思ったら、ハイウェイを走ってる車を止めて道路の真ん中で弾いてやがった」

とか

地元ルイジアナのイベントに、T・ボーン・ウォーカーゲイトマウス・ブラウンローウェル・フルスン、といった、錚々たるメンツが顔を揃えた時、居並ぶ大先輩達の前に「ズン」と立ち

「ようこそ、ここにはこの国最高のギタリスト達が今集まってる。でもオレが今夜ここを発つ頃にゃ、誰もアンタらがココに居たってことすら覚えてないと思うぜぇ♪」

と言い放ち、実際に凄まじいパフォーマンスを繰り広げて聴衆を呆然とさせたという伝説もあります。

他にも「アイツのギターの音はとにかく凄かったよ、音がデカ過ぎて何百人という観客が絶叫しようがヤツのギターの音がそれに掻き消されることはなかった。」

とか

「レコーディング・スタジオにいた時、声がガラガラなのを気にしたスタッフがオリーブオイルを飲むように勧めたら、その辺にあった香料オイルをビンごと飲んでしまった」

とか、そんな話には事欠きません。

さてさて、そんなギター・スリムの音楽、もうバケモノか何かみたいに言われている彼の”ブルース”はどんなもんだったんでしょう?

実はアタシ、ギター・スリムとは「ブルース聴きはじめ」の頃に出会っております。

「アトランティック・ブルース・ギター」というオムニバス盤が、アタシの「最初に買ったブルースのCD」という話はこのブログで散々しましたが、ブラインド・ウィリー・マクテルミシシッピ・フレッド・マクダウェルジョン・リー・フッカーときて、4曲目にギター・スリムの曲が入ってたんです。

収録されていたのは、アルバム「アトコ・セッションズ」の冒頭を飾る「Down Through Years」






【収録曲】
1.ダウン・スルー・ジ・イヤーズ
2.オー・イエー!
3.イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー
4.イット・ハーツ・トゥ・ラヴ・サムワン
5.アイ・ウォント・マインド・アット・オール
6.ハロー,ハウ・ヤ・ビーン,グッドバイ
7.ホウェン・ゼアーズ・ノーウェイ・アウト
8.イフ・アイ・ハド・マイ・ライフ・トゥ・リヴ・オヴァー
9.ギター・スリム・ブギ・2
10.ストレンジ・シングス・ハプニング
11.アロング・アバウト・ミッドナイト
12.プレンティ・グッド・ルーム
13.カックル
14.マイ・タイム・イズ・エクスペンシヴ
15.ギター・スリム・ブギ・3


これね、ぶっとびましたよ。

何が凄いかって、その歌声です。

余りにもパワフル過ぎて、どう例えて言えばいいのか未だによく分かりませんが、強いていえば

「体全身を振り絞って、喉まで出てきた内蔵を、口に腕突っ込んで引きずり出してその辺に投げ捨てるような唄いっぷり」

とでも言いましょうか。

それからオーティス・レディングだとか、サム・クックとか、ハウリン・ウルフとか、そういう「シャウトする黒人ヴォーカル」というのを知ったんですが、アタシに一番最初の最初に”それ”の凄さを感じさせ、のけぞらせてくれたのはギター・スリムなんです。

大体「アトランティック・ブルース・ギター」に入ってる人のアルバムは買いましたが、ギター・スリムもアタシはアルバムとしては「アトコ・セッションズ」から入りました。

コレが実に「破天荒そのものだったギター・スリムのやぶれかぶれの壮絶シャウト」を聴くには最高のアルバムなんですよ。

録音レベル明らかに吹っ切っている声で「なう・だん・すじえーーーーー!!(Now Down Through The Years)」と絶叫する冒頭から、テンションは最後まで下がりません。

むしろ楽曲はメジャーで、ポップなもんが多いんですよね。

典型的なルイジアナ・ロッキン・ブルース調のAIKとか、典型的なニューオーリンズ・スタイルのミディアム・スロウ・ナンバーのBDEFJとか、T-ボーン、ゲイトマウス系の小気味よいギター・ソロを聴かせるHとか、MNとか、トンガっててワルい空気ムンムンではあるけれど、決して聴く人を寄せ付けないぐらいに濃すぎるってもんでもない。

ここら辺が、ロックンロール全盛時代に、ヒットチャートにガンガン切り込んでいったギター・スリムの”スリム”たる所以でありましょう。

もちろん歌声とクセのあるギター・プレイ(Lの、たった3音しかない単音ギター・リフは明らかにイカレてる!なお、この曲のこのギター・プレイはフランク・ザッパ先生に大いなるインスピレーションを与えた模様)ゆえに、末永く飽きさせることなく、むしろ聴き込む毎に何とも良い具合の味がじわ〜っと滲むものであります。

このアルバム、まず聴いて欲しいのは、やっぱりギター・スリムの強烈なシャウトを軸にした「唄のカッコ良さ」です。あと、50年代オールディーズ好きな人、実に「これよ、これこれ、ゴッキゲンじゃんよ♪」って空気を目一杯味わえますぜ。

さて、破天荒なブルースマン、ギター伊達男ことギター・スリムの「伊達じゃないんだぜぇ」な凄さ、知っていただけたと思いますが、肝心なギターについてはまだ語っておりません。

そっちに関しては、彼がこのアルバムを録音するちょいと前にレコーディング契約を交わしたスペシャリティというレーベルの「ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」という、これはもう本当にクレイジーな名盤があります。

これはもう「おいおいマジかよ、アンプにゲインボリュームがなかった時代のヤツだろ?ありえねぇぜ」というぐらいに、クレイジーなギターが大炸裂しております。

という訳でギター・スリムの”ギター”の部分はまた次回。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 18:10| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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