2015年11月11日

アラン・トゥーサン サザン・ナイツ

1.jpg

アラン・トゥーサン/サザン・ナイツ
(ワーナー)

11月10日、ニューオリンズ・ソウル/R&B界の重鎮にして、70年代以降のアメリカン・ミュージックの”モダン化”に大きく貢献した、ジャンルの枠を超えた本当の大物、アラン・トゥーサンが亡くなりました。享年77歳。

ブラック・ミュージックの歴史を語れる生き証人がまた一人この世を去ってゆく・・・淋しいですね。

今週は「エリック・ドルフィー祭り」にしようと思ったのですが、追悼の意を込めて、アラン・トゥーサンを皆様にご紹介したいと思います。

アラン・トゥーサンは、1938年ニューオーリンズ生まれのピアニスト/シンガー・ソングライター/プロデューサーです。

7歳からピアノを弾き、1950年代には地元ニューオリンズで活躍していた盲目の凄腕ギタリスト、スヌークス・イーグリーンのバックでピアノを弾き、その時にファッツ・ドミノ、デイヴ・バーソロミューといった、地元ニューオーリンズから全国的な人気を博していたミュージシャン達に才能を見出され、セッションマンとして引っ張りだこに。

元々ピアニストではありますが、若い頃から作/編曲に非凡な才能を発揮しまくったアランは、1958年、リー・アレンのヒット曲「The Wild Sound of New Orleans」のアレンジを皮切りに「裏方デビュー」を果たします(同時にRCAからソロ・アルバムをリリースしておりますが、コレが何と全曲インストのピアノ・ブブルース・アルバム。これについてはまたいずれかの日に・・・)。

デビューした1950年代後半から60年代は、ソロ・アーティストとしてのヒットは生まずに、ひたすら作曲やアレンジ、そしてレーベル経営などで手堅くガッツリと音楽していたというところが「とにかく一発デカいの当てよう!」という考えだった同世代の他のミュージシャン達とは違うし、このことが後に70年代以降の彼の大成功に繋がるんですね。

ちなみにアランは、その間にミーターズを中心とする「ニューオーリンズ・ファンク」の精鋭達を、自らのレーベルで育成しております。

彼がようやくアーティストとして、大々的に表舞台に立つようになったのは1970年代。

既に40代の脂の乗りきった時、相変わらず彼はプロデューサーとして大忙しでした。

ドクター・ジョンやザ・バンド、アルバート・キング、ジェイムス・コットンといった、ブルースからロックまで幅広い人たちのアルバムをプロデュースしたり、ポール・マッカートニーやエルヴィス・コステロがファンを公言したりして「ニューオーリンズには凄い大物がいるらしい」という噂が音楽界全体を席捲したそのタイミングで、アランはようやく本腰を入れた自分のアルバムを世に出しました。

彼の70年代の作品は、その「ブルース・ピアニスト」としてデビューして、華やかなジューク・ボックス・ヒットを量産したニュー・オーリンズR&Bの世界に長年居た経歴からは想像も出来ないほど洗練された「時代の先を行くサウンド」だったのです。

これには世界が驚愕しました。

まずは代表作ともいえる1975年の「サザン・ナイツ」を聴きましょう。

これ、普通に「ポップスだよ」と言っても、知らない人は全然普通に「いや、カッコイイね♪」と、すんなり受け入れることが出来ると思います。

とにかく後の「AOR」の原型と言ってもいい、何とも都会的で洗練に洗練を幾重にも重ねたような、早春の心地良さの中に人生の深みが滲む、深くたおやかな名盤です。



【収録曲】
1.ラスト・トレイン
2.ワールドワイド
3.バック・イン・ベイビーズ・アームズ
4.カントリー・ジョン
5.ベイシック・レイディ
6.サザン・ナイツ
7.ユー・ウィル・ノット・ルーズ
8.あの子に何をして欲しいの
9.ホェン・ザ・パーティーズ・オーヴァー
10.クルエル・ウェイ・トゥー・ゴー・ダウン

オープニングから、彼独特のポップ感覚が爽やかにスパークしてて、とっても心地良いんですよね。

Aの軽快な、あくまでメロウに跳ねるファンク・ビートのカッコ良さ、タイトル曲Eの清涼感タップリのエコーがかかった声とピアノ、ちょっとオリエンタル風な曲調共に、この人が持つ独特の浮遊感と哀感を効果的に増幅させて、うん、とてもいいです。

「哀愁」という意味では、続くFGもクるナンバーで、個人的にはこの中盤の「切なさたたみかける流れ」このアルバムのクライマックスだと思います、はい。

バックは彼が手塩にかけて育てたミーターズのメンバーを中心にした、ニューオーリンズ・ファンク人脈が顔を揃えておりますが、ブラックなフィーリングは根っこ中心にあくまでさりげなく置いてます、コレがいいんです。

「基本的にこの音楽はポップスなんだ。誰が聴いてもどんなシチュエーションで聴いても”あぁ、この音楽は心地良いね”と言ってもらえるような、そしていつまで経っても色あせない本当の意味でのエバーグリーンな音楽さ」

と、アランの冷静にプロデューサーとして音楽シーンを20年以上見てきた自信と確信の声が、ほわほわと聞こえてくるようであります。



個人的には「あぁ〜、ポップで気持ちえぇなぁ〜♪」と思いつつも、Bのイントロで聴ける見事にグルーヴィーなピアノなどから、彼の中に流れるプロフェッサー・ロングヘア直系の、生粋のニューオリンズ・ブルースマンとしての”血”をしみじみと感じながら、ウットリと聴き入るのがアタシの「アラン・トゥーサンを聴くたのしみ」です。

2000年代に入ってからは、ニューオーリンズに甚大な被害をもたらしたハリケーン「カトリーヌ」で被災しつつも、エルヴィス・コステロと共演した上質な”大人のポップ・アルバム”で健在ぶりを発揮したり、全曲ピアノ弾き語りライヴをリリースしたり「まだまだ色気のかたまりだな〜」と思っていただけに、コンサート・ツアー中の突然の死去は残念です。

謹んで冥福を祈りながら、今宵は彼が残した上質な「ブラック・ポップ・ミュージック」に酔いしれたいと思います。



近年の”弾き語りライヴ”から「Southan Night」郷愁タップリでいいですね。。。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:13| Comment(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: