ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2015年11月17日

ミシシッピ・ジョン・ハート Today

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Mississippi John Hurt/Today
(Vanguard)

はいこんにちは、11月は霜月と言いますが、まだまだ寒さもやって来ず、日中は車もエアコンかけないと汗ばむほどの陽気が続いておる日本のディープサウス奄美より、元気に記事を更新したいと思います。

今日はね、ちょいとアタシの正業の方で笠利(奄美北部)方面への配達だったんです。

奄美市笠利町といえば、海が綺麗でなだらかな平地には広大なサトウキビ畑が広がる、実に風光明媚な地でございます。

何かね、ここを車で走る時はブルースを聴きたくなるんです。

特に古い弾き語りスタイルのカントリー・ブルースなんかを聴きながらてれ〜っと走ってると、写真や映像でしか見たことないはずのアメリカ深南部の風景と周囲が重なり、あたかもその辺の木陰や作業小屋の下で、何事もなかったように、伝説のブルースマン達がギターを弾いている光景を見られるかも知れない・・・なんて気になってくるんです。

で、今日の”笠利旅のおとも”に選んだのがミシシッピ・ジョン・ハートのCD。

名前に”ミシシッピ”と付くから、きっとゴリゴリの泥臭いデルタ・ブルースをやってるんだろうと思ってCD買ったら、何とまぁ人の良さそうなほんわかした声と、「ボンボンブンブン♪」と小気味よくベース・ラインを刻みながら歌の主旋律を一緒に鼻歌で応えているような、何とものどかでフォーキーなギターの心地良いこと。

それにこの顔

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普通「ブルースマン」つったら、人生の辛酸を舐め尽くしたような渋い顔をしてるよーな人が多いんですが、ジョン・ハートはいつも優しい笑顔でウルウルした綺麗な瞳の「かわいいおじいちゃん」の顔してるんですよね。

昔あるお客さん(女性)にジョン・ハートの写真見せたら

「きゃー、イグアナちゃんみたいでかわいい〜♪」

と言ってましたが”ジョン・ハートじいちゃん”本当にこのまんまマスコットにしてもいいぐらいかわいいです。かわいいんです♪

「人間見た目が大事」

とはよく言いますが、ミュージシャンに関しては「見た目が音楽性をほぼ物語る」と言っていいでしょう。ジョン・ハートじいさんの”ブルース”は、さっきも言いましたが本当に素朴で人なつっこくて、誰が聴いても「これは心地良いグッド・ミュージック」と思えるもの。

1890年代生まれのジョン・ハートじいちゃんは、ミシシッピのアヴァロンという小さな集落で、ずーっと昼間は小作農として働いて、夜になったらギターを持って、ブルース以前の古いバラッド(民謡)を、仲間達に聴かせて、ささやかなお礼をもらうことを生き甲斐にしていた人で、よくある「ブルースに憑り付かれて村を飛び出した」タイプのブルースマンではありません。いや、もしかしたら”ブルースマン”という呼び名すら、彼をカテゴライズするにはとっても狭っくるしい定義でしかないのかも知れません。

電気も汽車も通らないような片田舎で、流行や一攫千金とはほとんど無縁で「ミュージシャンらしい話」といえば唯一、1928年に”アヴァロンに優れたソングスターがいる”という話を聞いたオーケー・レコードがレコーディングしたぐらい。

それも彼にとっては「何?レコードっていうの?ふーん、コイツにオイラの歌が録音されて。まぁちょっとお金がもらえるの?うん、まぁよくわからんけどいいよ」ぐらいな感覚だったんでしょう。レコード・デビューを果たした後も、地元で何事もなかったように仕事をしながら「日々のささやかな楽しみ」としてギターを弾きながら、ユルく唄っておったそうであります。

そんなジョン・ハートじいさんに大きな転機が訪れたのが、1960年代の「フォーク・ブルース・リバイバル」です。

これは当時「ルーツ・ミュージックを聴くことがオシャレ」と目覚めた白人青少年達が、全国にいる伝説的なブルースマンやカントリー・シンガーなんかを、古いSPのレコーディング・データなどの少ない資料を頼りに、何とテキサスやミシシッピの奥地まで出かけては「発見」して、片っ端からコンサートの出演をお願いしたり、レコーディングしてもらえるようにお願いしに行ったという、一種の社会現象みたいな話なんですが、その時にサン・ハウスやブッカ・ホワイト、スキップ・ジェイムス、ライトニン・ホプキンス、マンス・リプスカム、フレッド・マクダウェルといった人達が「伝説」の深いベールの向こうからいきなり世間に出て来て白人青年達はこぞってコンサート会場で

「すげぇ!オレは今ブルースの生きる伝説を観てるんだぁぁ!!」

と感動しまくったといいます。

60年代、もう70歳を過ぎても相変わらずアヴァロンで小作農や日雇いの仕事をしながら”趣味”でギターを弾いて地元の人々に唄を聴かせていたジョン・ハートじいさんも、そんな中いきなり”発見”されます。

「アナタがミシシッピ・ジョン・ハートですか!?」

「あぁ、ジョンだよ。”ミシシッピ”っていうのは・・・あぁ、何か一回レコーディングした時にレコード会社の人が”その名前にしろ”って言ったから付けられたんだよ。随分と昔の話だから忘れてたなぁ・・・」

「いや、僕達はアナタを探してたんですよ!」

「え?何で?オレは何か白人さんの気に障ることなんかしてたかい?(ドキドキ)」

「いや、そうじゃなくて・・・僕らはアナタの古いレコードを聴いたんです」

「アンタそんなもんよく見つけたなぁ、あん時はね、何か売るには売ったが全然売れなかったって言われたけど、へぇ、レコード聴いたのかい?そんなもんよくみつけたなぁ・・・アンタらもよっぽど物好きだぁ・・・」

「いや、そうじゃないんですよミスター・・・」

「”ジョン”でいいよ、ミスターなんてそんなオレは大して偉くねぇのに・・・」

「何を言いますか。アナタの1928年にレコーディングした音盤は、今僕達の間で大人気なんですよ。」

「何だって?オレがモウロクしてんのか、それともアンタ達が奇特なのか、話がよくわかんねぇんだが・・・」

「アナタがもしその気なら、レコードはきっとたくさん売れますよ。全米のあちこちの大学やコーヒーハウスで”もしもミシシッピ・ジョン・ハートが生きてたら絶対に歌いに来てほしい”って、今そういう話でみんな盛り上がってるんですよ!」

「おいおい、ますます話がわかんねぇよ。オレはずっと畑仕事しかしていないじいさんだ。レコーディングだってアンタの言うその・・・28年にやったかどうかだって今言われるまですっかり忘れてたんだぜ。それに”コーヒーハウス”って何だ?コーヒー作る畑か工場かい?」

「コーヒーハウスは・・・つまりその、ニューヨークとかサンフランシスコとか、そういう街にある、音楽を聴きながらコーヒーを飲んだり、芸術や政治問題について語ったりする場所なんですよ。そこに通う若者みんなが、アナタの唄を聴きたがってるんです!」

「おぉ神よ・・・世の中どうなっちまってんだ?オレにはよくわからねぇことが世間では勝手に起きちまってる・・・」


とまぁ多分こんな具合にミシシッピ州アヴァロンまでジョン・ハートじいさん・・・いや”ミシシッピ・ジョン・ハート”を探しに来た若者達の情熱に、ほとんど強引に引っ張られる形で、彼は白人大衆の前に姿を現しました。

そして、彼の「自然体」のフォーク・ブルースは、彼の想像を遥かに超える形で多くの若者たちの心を惹き付け、レコードも多いに売れ、コンサートではひっぱりだこ。他のブルースマン達は、性格に癖があり、周囲と度々トラブルを起こしたりしてその破天荒ぶりを発揮したりして、純朴な白人青年であるプロモーターやリスナー達を悩ませたりしておりますが、ジョン・ハートには全く「オレはプロなんだ、ブルースマンだぞ!」という気負いはなく、アヴァロンの自宅やその周辺で仲間達に唄い聞かせていた時と同じように、気さくに歌って頼まれるままにリクエストに応えたり、若いフォーク・シンガー達との共演にも快く応じ、いつしか”再発見組”の中では彼がぶっちぎりの人気を誇るようになったということです。


さて、やや想像がふくらみ過ぎたので、そんなジョン・ハートじいさんのオススメのアルバムをご紹介しましょう。



【収録曲】
1.Pay Day
2.I'm Satisfied
3.Candy Man
4.Make Me A Pallet On Your Floor
5.Talking Casey
6.Corrinna, Corrinna
7.Coffee Blues
8.Louis Collins
9.Hot Time In The Old Town Tonight
10.If You Don't Want Me Baby
11.Spike Driver's Blues
12.Beulah Land

このアルバムは、戦後再発見されて間もない時期に録音された、代表作と言ってもいいでしょうね。

とにかく全編「ゆったりまったり、やさしくまるく」で、ドライブ中に聴いてても、家の中で聴いててもよろし、なハートウォームなアルバムです。

戦前モノのブルースでは定番の「Candy Man」「Corrinna, Corrinna」なんかが特にゴキゲンでよろしいですなぁ。。。でも、アタシの一番のお気に入りは

「飛行機というものを知らないミセス・コリンズが、空を飛ぶ飛行機を見て”アレは天使さまだわ”と言うおはなし」の「Louis Collins」が、ハートの純朴な人柄と重なってとってもほっこりします♪

「ほんわか」「ほっこり」といえどもジョン・ハートの独特の「ルートとメロディ分離型」のギター・ピッキングは、若い世代の多くのフォークシンガーにものっすごい影響を与えた実は「じーさんのほほんとして実はすげーギター上手いじゃねぇか!?」という、実にあなどれないものでもあるんです。

我が国では高田渡となぎら健壱、この二人のギター・スタイルは「まんまジョン・ハート」だったりするもんですから、実際おそるべしなんですが、まぁとりあえず聴いてほっこりしましょ♪ ほっこりね♪




(ピート・シーガーら、フォークシンガー達との心温まるセッションです。ちょいと長いけどこれは素晴らしい映像♪)

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:33| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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