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2015年12月12日

テキサス・アレクサンダー レヴィー・キャンプ・モーン・ブルース

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テキサス・アレクサンダー/レヴィー・キャンプ・モーン・ブルース
(Pヴァイン)

ブルースを聴く人には、2種類のタイプがあると思います。

ひとつは「ブルースってかっこいいなぁ〜、シビレるぜいぇい!」という「ブルースが好きな人」であります。

で、もうひとつはもう完全に「ブルースに取り憑かれてしまった人」であります。

もしもこの記事をお読みのアナタが「ブルース」という言葉に、憧れやアツい想いと同時に、どこか”闇”の気配を感じ、それに惹かれているという自覚がちょっとでもおありでしたら、それはもう完全に”憑かれたもの”と覚悟を決めて、今日の記事をお読みください。


はい、今日ご紹介するのは、闇の深い戦前ブルースの中で最も”闇”を感じさせるブルースマン、いや、「戦前ブルースの闇そのもの」と言ってもいいブルースマン、テキサス・レクサンダー(テキサス・アレグザンダー)であります。

その名が示すように、戦前テキサスを中心に活動した人で、同地ではブラインド・レモン・ジェファソンと人気を二分するカリスマ的シンガーであったとか。

若き日のライトニン・ホプキンスやローウェル・フルスンなど、実際に彼の歌声を目の前で耳にした人々は皆こう云います。

『とにかく圧倒的だった。街の中で彼が唄ってたら皆がそこに集まるんだ。そして目の前で聴いたらもう身動き出来ないぐらいだった。どうやったらあんな風に唄えるのか、いまだに分からない・・。』


と。

実際にレコードとして残されたその声は、どこまでも重く、野太く、そしてザラついた情念そのものです。

楽器を一切演奏しなかったアレクサンダーは、バックに様々なミュージシャンを付けて唄っておりまして、その顔ぶれは地元テキサスのギター名手(リトル・ハット・ジョーンズ、カール・デイヴィス&ウィリー・リード等)や、戦前を代表する凄腕のギタリスト、ロニー・ジョンソン、優れたピアニストを多く輩出していたテキサスでも群を抜いた名手として知られた(後にジャズ・ピアニストとして活躍し、ビリー・ホリディ「奇妙な果実」の伴奏も務めています)エディ・ヘイウッド、更にミシシッピ・デルタ地帯から南部一帯では知らない人はいなかった大人気のストリング・バンド”ミシシッピ・シークス”更に極めつけはルイ・アームスロトング以前に「ジャズ王」と呼ばれた伝説のコルネット奏者キング・オリヴァーと彼のジャズ・バンドなどなど、この時代(1920年代後半〜30年代半ば)では考えられる限りのとにかく豪華な面々ばかり。

ところが、彼の唄う”ブルース”は、恐ろしいほどにプリミティブ、強いていえば「核」の部分しかない。

よく、戦前のブルースマンといえば、ブルース形式の曲ばかりではなく、流行したバラッド(民謡)やラグタイムなど、聴衆ウケするノリのいい曲もしっかりとレパートリーに入れているのに対し、アレクサンダーはそういった「大衆ウケ」の曲を一切レコーディングしておりません。

バックがギタリストだろうがピアニストだろうが、ジャズバンドだろうが関係なく、ひたすら重くプリミティヴな、地を這うようなブルースを「ンンーーー!ンンンーーーー!!」と唸っております。

それは「彼がそういうスタイルのブルースを唄ってる」というよりも、何というか、南部に漂う黒人達の怨念みたいなものを自身の肉体に乗り移らせて吐き出しているかのような・・・ちょっと変な喩えかも知れませんが、そういう人間技じゃない”何か強烈な磁場”みたいなものを感じさせます。

それでもバックのミュージシャン達の素晴らしい個性と彼の唯一無二の唄との絡みは、実にバラエティ豊かであり(どの曲も大体同じようなテンポ、構造であるにも関わらず、です)、それぞれ特筆に値するものではありますが、そこらへんは今現在入手可能なCD(Pヴァイン盤「レヴィ・キャンプ・モーン・ブルース」)を聴いて、小出斉さんの詳細な各曲解説のライナーを読んでみてくださいな。





【収録曲】
1.Range In My Kitchen Blues
2.Long Lonesome Day Blues
3.Corn-Bread Blues
4.Section Gang Blues
5.Levee Camp Moan Blues
6.Mama, I Heard You Brought It Right Back Home
7.Farm Hand Blues
8.Sabine River Blues
9.West Texas Blues
10.Bantam Rooster Blues
11.Bell Cow Blues
12.Mama's Bad Luck Child
13.Penitentiary Moan Blues
14.Tell Me Woman Blues
15.Double Crossing Blues
16.Ninety-Eight Degree Blues
17.Awful Moaning Blues-Part 1
18.Johnny Behrens Blues
19.Broken Yo Yo
20.Days Is Lonesome
21.Texas Troublesome Blues
22.Justice Blues
23.Lonesome Blues
24.Easy Rider Blues


「南部の地霊」と交信し(と、あえて言い切っちゃおう)、これ以上ないほどにディープでブルース原初のスタイルを感じさせる唄で多くの人の心を捉えて離さなかったテキサス・アレクサンダー。

実は1900年生まれと、戦前ブルースマンとしてはそんなに古い世代でもないんですが(ブラインド・レモン、チャーリー・パットン、レッドベリーらはそれぞれ1800年代後半の生まれ)、その唄は、声は、そして「ンンーーーーンンンーーー・・・・!」というモーン(唸り)はどこまでも深いブルースの闇の根源です。

1934年を最後に表舞台からフッと姿を消し、伝説として語られていた彼は、1950年に突如たった2曲のレコーディングを行うためにスタジオに現れたのを最後に、それから4年後に帰らぬ人となってしまいます。死因は梅毒。

残されたプリミティヴ極まりない音源と、彼と直接関わった人たちの

「身長150cmほどだった」

「右手首がなく、たまにその手に櫛を巻きつけてギターを弾いていたが、基本的には楽器はほとんどやらなかった」

「かなりのダークスキンで表情が読めず、また、滅多に笑わない、感情を表に出さない男だった」

という、伝説めいた逸話を残し、彼は再び元いた闇の世界へ帰って行ったのだと、私は思います。

繰り返します。

もしもアナタが「ブルースの根源に迫る最もディープなものを聴きたい」と思うのであれば、迷わずテキサス・アレクサンダーを聴いてください。



ママ、お前はオレがウチに居られないかと言った

ウチには居られいかと言った、だが居られないんだ

ダメだよママ

不運にオレは捕まった

オレにはどうすることも出来ない

神よ、お慈悲を・・・

「Penitrntiary Blues」より





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 16:33| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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