2015年12月21日

《アイルランド》アイリッシュ・パイプの魅力

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《アイルランド》アイリッシュ・パイプの魅力
(NONESUCH/ワーナー)

え〜、アイルランドの音楽というのは、いわゆる民族音楽やワールド・ミュージックにハマっている人以外でも、ファンの多い「聴く人の層の厚い音楽」だと思います。

その背景にはやっぱりエンヤやチーフタンズ、ケルティック・ウーマンなどの人気歌手やグループが「ケルト音楽」というものをポップにアレンジして、独自のポピュラー・ミュージックにして広く世に知らしめた、或いはパンクやロックの流れでポーグスやU2といったバンド達が、或いはハッキリと、或いはそこはかとなく「アングロサクソンとは違うのだよアングロサクソンとは!」という主張をその音楽の中に盛り込んで主張した等々・・・色々な要素がありましょうが、決定的なのはやっぱりアイルランドやブリテン島北部に根強く残るケルト音楽、はたまたケルト文化の名残りというものは、どこか私たち日本人が空想する「ヨーロッパのおとぎ話のイメージ」というものを強く想起させてくれるからなんだと思います。

んで、幼い頃に絵本なんかで親しんだ「世界むかしばなしの世界」とか「風の谷のナウシカ」をはじめとするスタジオジブリ初期の記憶が、どこか私たちの心の中の「懐かしさ」を感じさせる回路にこうピーンと反応する。

実を言いますと、今現在この地球上には純粋な「ケルト人」というのは存在しておりません。

ここらへんは人種や宗教が複雑に入り乱れるヨーロッパの歴史のお勉強になるんですが、ケルトという民族は8世紀から9世紀にかけて侵入してきたノルマン人(いわゆるバイキングですな)に一度滅ぼされ、更にブリテン島やアイルランド島をはじめ、ヨーロッパ各地を支配したノルマン人はそれぞれの地域において土着化して混血を繰り返し、ブリテン島では元々いたアングル人が更に侵入してきたゲルマン系のサクソン人と交わって独自の「アングロ・サクソン系民族」というものを作って繁栄するんですが、アイルランドに住むノルマン人とケルトの末裔達の混血民族(あーややこしい)は、アングロ・サクソンの支配を潔しとせず、度々抵抗を重ねて、実質支配を何度も受けながら、その中でさっきも言ったように「俺たちはヤツらブリテン島の連中とは違うんだ!」と、もう独自文化を意地で継承しておったんです。

はい、アイルランドの歴史は複雑過ぎてややこしいので、大分はしょっておりますが、大体こんな感じです。

だもんでアイルランドには、人種としての「ケルト」は消えても、文化としての「ケルト」は細々と残りました。

その典型がアイリッシュ・ミュージックであり、んでもってイギリスの支配下に置かれた北アイルランドの人々が後に飢饉から逃れるためにアメリカ大陸に大量に移り住んでカントリー・ミュージックの素になる音楽を作って・・・という風に、実はアイリッシュ音楽は、今のポピュラー・ミュージックとはその成立の一番最初の時点から、実は切っても切れない深い因縁で結ばれてるんですけど、そこまで書いちゃうと本当に長くややこしい文章になってしまいますので、今日は触れないでおきます(でも、頭の片隅に「カントリー・ミュージックのルーツはアイルランドのトラッドなんだぜぇ」ってことは頭の片隅にでも入れといてください)。

さて、そんなアイルランドの音楽、「タン、タン、タンタンタン」と、弾むような”5”のリズム(これは奄美の八月踊りのリズムとも似通ってます)と、ゆったりとしたテンポの上をそよ風が撫でるようにメロディーが流れてゆくタイプの2つの曲調に大きく分かれますが、どちらも「繰り返し」のメロディーが基本です。

そこで長年アイリッシュ・ミュージックを演奏する人たちに親しまれてきたのが、ご当地を代表する”吹きもの”の楽器が「アイリッシュ・パイプ」と「ホィッスル」であります。

はい、「アイリッシュ・パイプ」というのはこれはいわゆる「バグパイプ」ですね。


(こちらは日本におけるバグパイプの第一人者、加藤健二郎さんによる、スコットランド・スタイルの演奏です)

アイルランドに限らず、スコットランドやイングランド、それからフランス、イタリア、スペイン、更にはトルコ辺りまで、様々な呼び名で広く使われておりますが、とりわけアイルランドとスコットランドでこの楽器は非常に重要なのであります。

特にアイルランドでは「アイリッシュ・パイプ」という呼び方に並々ならぬこだわりがありますので、現地で、もしくはアイルランドの人がコレを吹いておるのを見て間違っても「バグパイプ!」と言わないように。「何ぉ!?スコットランド人なんかと一緒にするない!!」と、怒られます(半分はジョークですが半分はマジです)。

一方の「ホィッスル」というのは、これはあのお巡りさんやスポーツの審判が「ピピーー!」と吹くアレではなくて、いわゆる「笛」全般のことを言います。


(コチラも日本人。ホィッスル演奏家hataoさんによる見事な演奏です)

別名を”ティン・ホィッスル”と言いまして、今は樹脂製やプラスチック製など様々な素材のものが使われておるようですが、基本はブリキで作られたシンプルな構造のヤツで、キィに合わせて色んな大きさのものを複数吹き分けるのがアイルランド・スタイルです(ブルース・ハープの笛版と思って頂ければよろしい)。

で、前置きがかなり長くなりましたが、本日ご紹介するアルバムは、この「アイリッシュ・パイプ」と「ホィッスル」の名手で、今もアイルランド音楽界では伝統を継承し、シーンを牽引している名手(物凄い有名人)、ティンバー・フュレーによる「ほぼ独奏」(ギターの伴奏がCのみで軽く付くぐらい)のコアなアルバムです。







【演奏】
ティンバー・フュレー(アイリッシュ・パイプ&ホイッスル)
エディー・フュレー(ギター)

【収録曲】
1.レイキッシュ・バディ
2.金持ち鬼婆
3.キャッスル・テラス
4.マダム・ポナパルト
5.牛の乳をしぼる若い娘
6.フィンのお気に入り
7.ピーター・バーンのファンシー
8.オロークのリール
9.ロイズ・ハンズ
10.ブランクスティ・デイヴィー
11.りっぱな薔薇のしげみ
12.エディーのファンシー
13.銀の槍

内訳は全13曲中9曲がパイプ、4曲がホィッスル。

どの曲も「これぞアイリッシュ・ミュージックの核、ケルトの伝統の真髄」と言いたくなるほどの、混ぜ物(今風のアレンジとか華美な伴奏とか)一切ナシ!で「最近のアイルランド・ポップスから聴いてケルト音楽の深いやつを聴いてみたくなった」という人の期待には120%応えて余りあるでしょう。

また、サウンズパル店頭に立っていた時は、音楽を作っている人がサンプリングソースとしてこのCDを買う人が結構いました(皆さん試聴して「こういうの欲しかったんだよ」と仰ってました)。




(最近のフィンバー・フュレーさん、実際は吹きものだけじゃなくて弦楽器も唄もやるマルチなアーティストなんです♪)


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:40| Comment(0) | 世界の民族音楽など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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