2016年01月20日

セロニアス・モンク ソロ・オン・ヴォーグ+1

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セロニアス・モンク/ソロ・オン・ヴォーグ+1
(Vogue/ソニー・ミュージック)

ジャズを聴く上で大切なのは「スタイルや理論的なことなどの難しいことはさておきで、直感で”イイネ”と思ったらその作品を”雰囲気聴き”」することであります。

最初のうちはyoutubeでも何でもいいんで聴いてみていいなと思ったものから関連検索とかで色々と聴いてみてください。

そうやって色んなジャズを聴いていくうちに、何となく好みというものが分かってくるでしょう。そして「ジャズ」という音楽そのものに対して色んな想像が膨らんだり「このミュージシャンはどんな人だったんだろう?」とか色々と知りたくなってくると思います。

そうなってきたら、すかさずセロニアス・モンクを聴きましょう。

はい、多くの人が「何で?」となるだろうと思います。

「いきなりセロニアス・モンクとか言われてもわかんねぇし」

はい、ごもっともです。

けれどもジャズという音楽を好きになって、もっともっと楽しむために、好きだろうが嫌いだろうが”セロニアス・モンクを知る”ということは、これは絶対だと思います。


ちょいと理由を説明しますね。

セロニアス・モンクというピアニストは、ジャズの歴史の中でも「唯一無二」と言われる個性を持っております。

その個性というのは、音をわざと違うタイミングで繰り出したり、コードを崩した不協和音を「ここぞ!」という時にぶっこんだり、本来そこは勢いよくフレーズを「ガーッ!」と弾き切るべきところであえて音を出さなかったりと、色々と「何じゃこりゃ?」に満ちております。

不思議に思う人もいるかも知れません、怪訝に思われる方もいるかも知れません。

しかし、モンクという人の演奏・・・つまり「ズラし」「ハズし」「間」の究極ともいえる演奏は、元々がシンコペーションやセブンスやナインスといった「ハズレた音」で盛り上がることをよしとしていたジャズという音楽が元々目指していたところの究極でもあるんです。

しかし、誕生(多分1900年頃)から戦前のスウィング時代に至るまでに「アメリカの新しいポピュラー音楽」として認められたジャズは、技術的な面や理論的なものもどんどん体系化されて、戦後になってからはますます「理論」や「おやくそくごと」にがんじがらめになっておったんです。

そんな「おやくそく」に反発して「オレたちゃもっともっとアドリブを全面に出して好きにやろうぜ!」と、立ち上がったのがモンクやチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーといった人たちでした。

彼らは音楽的にジャズの自由度を高め、それに速度を加えた音楽を生み出して、それは「ビ・バップ」と呼ばれ、いつしかパーカーらが作った”新しいジャズのスタイル”そのものが「モダン・ジャズ」といわれるようになりました。


1940年代後半から50年代前半にかけて、モンクの仲間のチャーリー・パーカー(アルト・サックス)、ディジー・ガレスピー(トランペット)、ミルト・ジャクソン(ヴィブラフォン)、マックス・ローチ(ドラムス)といった人達が、ビ・バップ・ムーヴメントの中心におりました。

ややあってモンクの弟子というか弟分みたいな感じでバド・パウエルという天才が出てきて、後につづく”モダン・ジャズ”のピアニストたちみんなに軒並み大きな影響を与えます。

おぉ凄い!モンクの弟子のバド・パウエルがそんなに大活躍してるんだったら、モンクはもうそん時ゃシーンの最重要人物として、あちこちのセッションにひっぱりだこだったり、鬼のようにレコード出して、そいつがガンガンに売れておったのか・・・と思うところですが、実はそうじゃなく、モンクはその独特の”ノリよりも間を重視”なプレイスタイルが、ただ刺激が欲しいだけの一般大衆には全くウケずに、一人ビ・バップからもモダン・ジャズからも離れて不遇をかこっておりました。

この時にモンクの音楽性を「いや、アンタの音楽はわかりやすいし純粋に楽しいから絶対成功するよ」と一人だけ支持しておったのが、かのブルーノート・レコードのオーナー、アルフレッド・ライオンであり、モンクのレコードを早いうちから2枚もリリースしたのですが、このレコードの売り上げはさっぱりで、モンクもこれにはガッカリきて、早々にアメリカに見切りを付けて単身ヨーロッパに渡ったのでした。

はい、ここで「ジャズという音楽を好きになり始めた皆さん」が聴くべきモンクのソロ・ピアノ・アルバム「ソロ・オン・ヴォーグ」が、アメリカから遠く離れたフランスはパリで製作されたのでした。






【パーソネル】
セロニアス・モンク(P)

【収録曲】
1.ラウンド・アバウト・ミッドナイト
2.エヴィデンス
3.煙が目にしみる
4.ウェル・ユー・ニードント
5.リフレクションズ
6.ウィ・シー
7.エロネル
8.オフ・マイナー
9.ハッケンサック(ボーナストラック)


マイルス・デイヴィスの演奏で有名だった「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」で幕を開け、最後まで訥々と、ピアノの音と「音が鳴ってない瞬間の無音の美しさ」が、掴めそうで掴めない、実に不思議な空間と、そのシルエットは不確かだけれども何ともいえない、そして確かにモンクが繰り出すフレーズのそこここに存在する”美”の影が、聴く人の全感覚と想像力を、どこまでも刺激してくれる「ジャズがもっともっと好きになる一枚」です。

最初に「ジャズという音楽を何となくいいなと思った時にセロニアス・モンクを聴きましょう」といった理由は、ジャズという音楽を聴くために、絶対に鍛えておいた方がいい「想像力」というのが、好き嫌い関わらず鍛えられるからなんです。


で、まず聴くならば無駄の一切ないソロ・ピアノ作です。

もちろんバンドでのモンクも「楽しい」という意味においては格別なんですけれど「モンクのソロ・ピアノ」というのは、他のどの音楽の作品(ジャズというジャンルを取っ払っても)と比べても、どこにもすんなりとは収まらない、特別にして孤高の趣があるんですよね。

アタシはモンクを聴く大分前から

「セロニアス・モンクってすごい変わり者なんだぜ、いきなり不協和音ガーンて鳴らしたと思ったら、ソロの途中でいきなり弾くのやめて躍りだしたり、インタビューでは”ノウ”としか答えなかったり、とにかく変な人」

という情報だけは知っていて、いざモンクを聴くまでが結構長かったんです。

「どうせ奇人変人が奇抜なことやってるだけの、笑いのネタぐらいのもんだろう」

と、ちょこっと思っていたんですけど、生まれて初めて買った「ソロ・オン・ヴォーグ」を聴いた時、その余りにもしっかりとした個性と、思いも寄らぬ芸術的な完成度の高さに

「モンクがタダの奇人変人とかいう情報オレに吹き込んだやつちょっとこーい!!(怒)」

てなりましたもん。

でも、そっから色々とモンクを聴いて、いわゆる「楽しくぶっ飛んだ作品」も聴いて「いや、この人はホントは楽しいなぁ」とウキウキしましたが、やっぱりソロ・ピアノを聴いて他のアルバムを聴くと「うぅん、やっぱすげぇ・・・」で、他のピアニストの作品聴いた後にモンク、もっともっと幅を拡げてグールドを聴いた後にモンク、ハードコアの後にモンク、アフリカの民俗楽器なんかを聴いた後にモンク(すんげぇしっくりくる!)といった具合に、モンクはアタシの音楽に対する「あ、これは面白いぞ」とか「おや、これは何だろう?」という気持ちをどんな状況でも一番良い状態にしてくれるんです。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

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