2016年02月12日

ビル・エヴァンス ポートレイト・イン・ジャズ



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ビル・エヴァンス/ポートレイト・イン・ジャズ
(Riverside/ユニバーサル)

ビル・エヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」といえば、エヴァンス初期を代表する名作中の名作であるだけでなく「ジャズ ピアノ トリオ」という3つの単語を連ねるあらゆるアルバムの中で群を抜く美しさを放つ、ピアノ・トリオの決定盤であります。

アタシ自身もピアノが聴きたいなぁ・・・と思う時は、美しいものからファンキーなもの、シリアスなものなど、とりあえずダーっと聴いておりますが、その中で心の琴線が”狂おしいもの”に触れた時に、何だかんだ言ってこのアルバムをよぉ聴いております。

とにかくエヴァンスの非の打ち所のない美しいピアノと、指版の上を自在に走り回る天才ベーシスト、スコット・ラファロのプレイ、そしてこの2人が散らせる激しくも儚い火花を静かに煽るポール・モチアンの思考するドラムの高度で詩的な音のやりとりは、それまで「リズム・セクション」と呼ばれ、単なる管楽器奏者の引き立て役でしかなかったピアノ・トリオに、これでなきゃ出来ない芸術性と文学性を与えたアルバムであろうと思います。あらゆる「美しいものが好き」な人は、必ずや一生のうちに一度は「ビル・エヴァンスのポートレイト・イン・ジャズを通るもん」であると、アタシは断固思うのです。


さて、さて、さてさてさて、さっきから何だかアタシは「このアルバムは凄いんだよ」ということと「美しい」ということしか言っていないような気がして少しアレなのですが、今日のことです。まだ冬の冷たさが残るざらざらした雨の中、ちょっと遠くまで車を走らせておりました。

雨で良い感じに、全体的に灰色になっている市街地を見ておりますと、何とも言えず、何がという訳ではありませんが、切ない気持ちになってまいります。

車を走らせて最初のうちは、ゴキゲンなサム&デイヴを流しておりましたが、「あぁ・・・」とアタシは詩情に負けました。

たまたまカバンに入れておいた「ポートレイト・イン・ジャズ」をCDプレイヤーにセットしまして、ほんの数秒の後、音が流れてきますでしょう。

曲は「降っても晴れても」です。

あぁ、アホなアタシはタイトルとかよく覚えとらんでそのまんまプレイヤーにCDを放り込んだんですが、まぁこの情景の中でこの曲名、もう何て出来過ぎなぐらいセンチメンタルなんだろうな、と思いつつ、出だしの一音からその音が届く範囲のあらゆる空気を変えてしまう、何とも美しい美しい美しい(何度でも言いますよ)このトリオが奏でる音楽に心がツーンとさやいでおりました。

2曲目は、おそらくジャズのスタンダードの中では最も有名な曲のひとつであろう「枯葉」です。

元はシャンソンの曲なんですが、マイナー調のこの曲を、ただやみくもに情緒で流すだけではなく、狂ったようにテンポアップさせて乱れるエヴァンス・トリオのカッコ良さって何でしょう?

この曲はね「テイク1」と「テイク2」がCDには入ってるんですが、スコット・ラファロの自由自在にエヴァンスのアドリブに、アドリブで鋭く切り込んでゆくベースがたまらんのですよね。

ジャズの良さって、アドリブでの”崩し””ハズし”のカッコ良さなんですが、ラファロのベースはガンガンにアウトして行っても、エヴァンスが奏でる”うた”からはちっともアウトしないんですよ。何という唄心、何という唄心・・・。

と、聴いているうちに、あっという間にアルバムが終わるんです。

あぁ「終わる」ってのは、あまりにも端正で聴き易い演奏だからスーッと終わるんじゃなくて、心の感動が「うわー、うわー」て、エヴァンス・トリオの演奏に全然ついていけないうちに、音楽が甘美でヒリッと痛い余韻を残して儚く終わってしまうんです。




【パーソネル】
ビル・エヴァンス(p)
スコット・ラファロ(b)
ポール・モチアン(ds)

【収録曲】

1.降っても晴れても
2.枯葉 (テイク1)
3.枯葉 (テイク2) (MONO)
4.ウィッチクラフト
5.ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ
6.ペリズ・スコープ
7.恋とは何でしょう?
8.スプリング・イズ・ヒア
9.いつか王子様が
10.ブルー・イン・グリーン (テイク3)
11.ブルー・イン・グリーン (テイク2) (MONO)


エヴァンス・トリオの演奏は、よく「美しい」と言われておりまして、アタシもその通りだと思うんですが、これ、決してただ綺麗で美メロなだけの演奏じゃなくてむしろその逆で、エヴァンスとラファロに関して言えば、この時代(1960年代初め頃)のピアニスト、ベーシストの演奏と比較してみると、実はかなり暴れています。

際限なく次から次へと詩的なメロディーをアドリブで紡ぐエヴァンスの右手に対して「ガガッ!ガガガガガッ!!」と、激しいシンコペーションで鳴らされる左手の凄さこそがこの人独特の「根底にどこかあやうさのある美しさ」のキモだと思います。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 19:21| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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