2016年02月16日

ビル・エヴァンス ワルツ・フォー・デビイ

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ビル・エヴァンス/ワルツ・フォー・デビィ
(Riverside/ユニバーサル)

「ポートレイト・イン・ジャズ」のレビューを書こうと思って初期エヴァンスを一気に聴いていたら、もうすっかり虜であります。

エヴァンスの音楽には、その激しく儚く美しいピアノの音色には、やっぱり表面的な美しさ以上に、根底の部分で聴く人の心を激しく乱して中毒にさせてしまう甘い毒のようなものがある。これはエヴァンスの演奏を「あぁいいね、気持ちいいね・・・」と聴いているうちは全く気付かずに、すっかりハマッてしまった後から完全に回っていることに気付いてドキッとする類のもんです。

さて、本日ご紹介するのは、もしかしたら「ポートレイト・イン・ジャズ」よりも知っている人が多いかも知れない「ワルツ・フォー・デビイ」です。

1961年6月25日にニューヨークの名門クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で行われたエヴァンス、ラファロ、モチアンのトリオによる生演奏が収録されたライヴ・アルバム。恐らくは世界で最も売れている(今も)であろうジャズ・ピアノのCDでありましょう。

内容はこれはもう、これこそアタシごときチンピラがどうこう言うのはおこがましいぐらいに素晴らしいものです。

エヴァンス・トリオ独特の素晴らしさといえば、繊細でかつ情感を一気に炸裂させるエヴァンスのピアノに、単なるリズム楽器の枠を超えて自在に鋭く切り込むスコット・ラファロのベース、そして一見クールだけど、刻むリズムのひとつひとつの、本当に些細な部分に至るまでしっかりと”メロディ”を意識して一緒に唄っているモチアンのドラム、この3つの音が非常に高い次元で溶け合って、何とも言えぬ至福のハーモニーへと昇華していること。これに尽きますが、本盤は更にライヴならではの心地良い臨場感が、聴く人の心を撃ちます。

とはいえ、単純に「ライヴ盤だからノリがいい」というだけでは終わりません。

例えば一曲目、最初から最後までたっぷりと憂いを放ちながら場の空気を変えてゆく「マイ・フーリッシュ・ハート」の荘厳な立ち上がりはどうでしょう。そこから演奏は2曲目3曲目と、まるで夢のように切なく切なく流れてゆくんですが、演奏とは全然関係ない、食器が「カチャ・・」と鳴る音や、客の話声(ひとりやかましーおっさんがおるのよ)までも、全部エヴァンス・トリオの音楽に包まれて、とっても華のある調べと聞こえます。






【パーソネル】
ビル・エヴァンス(p)
スコット・ラファロ(b)
ポール・モチアン(ds)

【収録曲】
1.マイ・フーリッシュ・ハート
2.ワルツ・フォー・デビイ(テイク2)
3.デトゥアー・アヘッド(テイク2)*
4.マイ・ロマンス(テイク1)
5.サム・アザー・タイム
6.マイルストーンズ
7.ワルツ・フォー・デビイ(テイク1)*
8.デトゥアー・アヘッド(テイク1)*
9.マイ・ロマンス(テイク2)*
10.ポーギー(アイ・ラヴ・ユー・ポーギー)*


はい、このアルバムには、エヴァンスならではの美的メロディ・センス、そしてトリオの美しくも緊張感にみなぎる演奏の”良いとこ”が、全編に渡って紡がれております。「ジャズ・ディスク・ガイド」の類には必ず載っていて、今まで多くの人にこよなく、そして深く愛されていた名盤には、やはりそれだけの「長く聴かれるだけの理由」がありますね。

最後にこの演奏が録音された10日後に、ベーシストのスコット・ラファロは交通事故で23歳の若い命を散らせてしまいます。やっぱりこういう誰も追いつけないような演奏をする天才肌の人というのは生き急いでしまうものなんでしょうか。それもまた切ない・・・。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

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posted by サウンズパル at 19:29| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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