2016年03月01日

ギリェルミ・ジ・ブリート 幻のファースト・アルバム

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ギリェルミ・ジ・ブリート/幻のファースト・アルバム
(ライス・レコード)



ボサ・ノヴァが普通にポップスとして聴かれるようになって、そこからブラジル音楽の奥深い魅力にハマッてゆく人が、年々静かに増えているようでございます。

お店に来ていたお客さんが口々に言うには

「最初は心地良くて癒しの音楽だと思ってボサノバ聴いてたんだけど、だんだん聴いてるうちに何かこう切なくなってね〜」

なのです。

うん、わかる。すごくわかる。

ボサ・ノヴァの心地よく、軽やかな雰囲気は、あくまで表面を優しくコーティングする「外側」の部分です。

しかし、その奥底にあるどうしようもなくヒリヒリするような切ない味わいというのがあって、これは独特の深さがあり、一度好きになった人にとってはかけがえのないものになってきます。

アタシもそうだったんですが、大体ボサ・ノヴァにハマるのは順序があって、まずは小野リサさん、それからジョアン・ジルベルトとかアントニオ・カルロス・ジョビンとかの有名どころを聴いて・・・おっといけない、ジャズ好きとしてはスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトが組んだ歴史的名盤「ゲッツ/ジルベルト」を忘れちゃいけない。

90年代以降はNaomi&GoroとかBophanaとか、日本のグループで本当に上質なブラジル音楽を聴かせてくれるグループも次々出てきましたね。もちろんそれらの音盤も素晴らしい。

で、一通り聴いたところでほとんどの人が辿り着くのがサンバです。

え?何であんな柔らかく穏やかなボサ・ノヴァ聴いててあんなにぎやかなサンバに行くの?

はい、大抵の人はそう思うでしょう。

でもね、皆さんが良く知るあの”サンバ”は、ブラジルでは「カーニバルのサンバ」といって、サンバのごくごく一部分なのですよ。実はサンバというのは、ブラジルの地でポルトガルから白人が持ってきたヨーロッパ音楽にアフリカからつれて来られた黒人達の音楽が融合して、独自のリズム(シンコペーション、2ビートなど)が哀愁溢れる美しいメロディで紡がれる、ブラジルの古典ポピュラー音楽として人々に長く親しまれてきた音楽なんですね。

サンバの原型となるダンス音楽がブラジル内陸部のバイーア地方で誕生したのが17世紀、それから自由なリズム音楽だったサンバに徐々にメロディーが絡むようになって、白人音楽からの影響が強い”ショーロ”を取り込む形で洗練を増していったのが、19世紀の奴隷解放後のことと言われております。

んで、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルト、ルイス・ボンファといった、ボサ・ノヴァの生みの親達は、みんなそれぞれ若い頃に”サンビスタ”と呼ばれたサンバの歌い手に憧れて音楽の道に入ります。

戦前のサンビスタ達は、ギターを爪弾いたりしながら情感たっぷりに哀愁のある唄を酒場やホールで聴かせ、大いに人気を博しておりました。中には(というよりもほとんどの女性は)その歌の世界を通じてオシャレで憂いある声の歌手に恋をして、それがまた新たなサンバを生む・・・というような感じだったようです。

そんな戦前から活躍するサンビスタの中でも、現代のボサ・ノヴァの原型に最も近いソフトなサンバを聴かせてくれるのが、ギリェルミ・ジ・ブリートです。




【収録曲】
1.俺を忘れておくれ
2.私の平穏
3.花ととげ
4.私の孤独
5.私のディレンマ
6.詩人の涙
7.生きてるうちに優しさを
8.荒野のバラ
9.心のない女
10.架け橋
11.枯れ葉のサンバ
12.愛しいおまえ

1922年生まれ、戦前から地道な活動を続けており、一旦衰退していたサンバに戦後新たな命を吹き込んだ人であり、60年代ボサ・ノヴァ・ムーヴメントの影響をさかのぼってゆくと必ずこの人に当たるという巨人であります。

しかし、それほどの凄い人でありながら、とても繊細な性格であり、ちゃんとしたアルバムが製作されたのは、何と1980年のこと。

その音源も彼が亡くなるまで陽の目を見ていなかったので、これは文字通り「幻のファースト・アルバム」です。

もうやがて60になろうかというギリェルミの声はどこまでも深く、慈愛に溢れ、バックのシンプルな弦楽器を中心とした切ない切ない伴奏もまた胸の深いところにどこまでもしみてゆきます。

これを聴いている時は言葉もなく、ただもう「あぁ、上質な音楽だなぁ・・・」と思うのです。実際「よし、ギリェルミのレビュー書こう!」と思ってから今日まで、実に1年近く経ってしまいました。この素晴らしいアルバムの魅力を伝えるには、まだまだ言葉が足りないと思うのですが、続きは皆さんがそれぞれ聴いてみて補ってください。それだけの価値がある一枚です。

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:28| Comment(0) | ラテン/ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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