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2016年03月25日

ケイシー・ビル・ウォルデン&ココモ・アーノルド ボトルネック・ギター・トレンドセッターズ・オブ・ザ・1930's

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ケイシー・ビル・ウォルデン&ココモ・アーノルド/ボトルネック・ギター・トレンドセッターズ・オブ・ザ・1930's
(Yazoo/エアー・メイル・レコーディングス)


ブルースの醍醐味のひとつに、スライドギターを聴く楽しみというのがありますね。

スライドというのは文字通り”滑らせる奏法”です。

弦を押さえる左手の指に「ボトルネック」と呼ばれるガラス瓶や金属製のパイプのようなものをはめて行うのが一般的ですが、ハワイアンスティールギターのようにギターを仰向けに寝かせてナイフを滑らせる「ナイフスライド」というのも戦前は盛んに行われておりました。

どちらも「きゅいんきゅいん♪」と、まるでギターが鳴いているかのようなあのニュアンスがたまらんのです。

アタシがこのスライドなる魔法の奏法を知ったのは、中学校の時です。

ブルースじゃなくて、カントリーのウエスタン・スウィングだったんですが、ギターをヒザに置いて、何かものすごい勢いで「ちゅいーん、ちゅいーん」と音が疾走していくのがカッコ良かった。

その後にマディ・ウォーターズ親分のビデオを見て、この人は左手の指に金属棒をはめてエレキギターを弾いておりました。

親父に「こういうギターの弾き方って何て言うんだ?」

と訊いたら

「そりゃお前スライドだ」

と。

ほうほう、これがスライドというやつか・・・。


親父が言うには

「カントリーでもハワイアンでも、スチールギター使ってスライドするんだけど、アレも元々はブルースから影響受けて広まったんだ」

と。

なるほど了解。

という訳で「ここはひとつブルースのスライドギターのいい感じのヤツを聴いてみたい!」

と思って出会ってしまったのがミシシッピ・フレッド・マクダウェルです。

これはもう強烈でしたね。

ザックンザクザクと刻まれる鬼のアフタービートと、泣き叫んでいるようなボトルネックの”鳴り”は、これは今聴いてもある種の究極だと思います。

そしてやっぱりロバート・ジョンソン

この人の「クロスロード・ブルース」と「カム・オン・イン・マイ・キッチン」は、生まれて初めて知った「メロディアスなスライドギター」の、はい、これもある種の究極です。

アタシが90年代アタマに買ったロバート・ジョンソンの2枚組CDには、ブ厚いブックレット(解説書)が付いてまして、そこにはありがたいことに彼が影響を受けたブルースマンなんかの説明が、写真入りで載っておりまして、これはもう教科書ですわね。むさぼるように読みふけりながら、未知のブルースの世界への想像を逞しくしておったんです。

えぇ、はい。いい加減話が飛びそうなので、本筋に戻りますが、この中で「ココモ・アーノルド」という人の解説があったんです。

ロバート・ジョンソンがスライドで歌う「ミルクカウ・ブルース」って曲があるんだけど、これのオリジナルをやっておる人で、彼のスライドギターはもちろんロバートに多大な影響を与えたんだ、と。

ほうほう

と、大いに納得したんですがね

このココモ・アーノルドという人の写真というのを見て、アタシはずっコケましたね。

はいコレ↓

Kokomo%20Arnold.jpg

これはうん、その辺の呑んだくれてるオッサンの写真じゃないか!ギターどうしたよ!?

と、激しくツッコミを入れたんですが、調べてみますとココモ・アーノルドの写真というのは、ほんの数枚しか残ってないそうなんです。

大体戦前のブルースマンなんてのは「写真が一枚あればいい」ぐらいに少ないのは当たり前なんですが、その写真というのは大体宣伝用に撮影されたヤツで、まぁ綺麗な身なりをして、ギタリストならギターをちゃんと構えて写ってるのが基本なんですが、ココモ・アーノルドに関しては、これしかないんだと(その後別の写真も見付かったようでありますが、それもギター持ってない・・・)。

何でまた、たったの一枚しかない写真が”これ”なんだと。しかも、こんな顔のハッキリせん写真を、一体誰が「うむ、これはココモ・アーノルドである」と認定したんか、とか、ツッコミどころは満載なんですが、どうでしょう?アタシは逆にこの”ずっこけ写真”を見て、ココモ・アーノルドという人にものすごく興味を抱いて、CDで聴きたくなりました。

ところがココモ・アーノルド、戦前に人気を博した人ではあったんですが、どうにも売ってない。

中古屋を巡ってようやくスライド・ギターを集めたコンピレーションとかにちょろっと入ってるのを見つけては嬉しくて舞い上がったもんでした。

そのスタイルは正にブルースの原初的スタイルというか、実にタフで豪快で荒々しいものです。

周囲の空気をこそぎ落とすように「じゃあああーー!」となる金属ボディのリゾネイター・ギターのでっかい鳴り、そして吐き棄てるようなべらんめぇな唄もすごくイイんです。

例の”のんだくれ写真”見て「こんなもん本人かどーかわからんだろぉが!」とツッコミを入れたアタシでしたが、はい、この野放図な唄とギターの暴れっぷりとこの写真、間違いなく本人です。本当にありがとうございました。

で、そんなココモ・アーノルドの素晴らしさをー!ひとりでも多くの人にィィィーーーー!!!

と、思っております。

つい数年前までは、我らがPヴァインから、戦前に録音された全音源からえりすぐりの楽曲を一枚にまとめた素晴らしいアルバムが出ておりましたが、現在は廃盤のよう。

ですが、その昔信頼と実績のYazoo(ブルースに限らずアメリカの戦前の音楽聴くんだったら絶対に押さえとかなきゃダメよダメダメなレーベルっす)から出ていた、ケイシー・ビル・ウォルデンとの「戦前スライド名手2人のカップリング盤」が、おぉっと、国内盤解説書付きで再発されてるではないですか(!)





【収録曲】
@〜F:ケイシー・ビル・ウォルデン
1.ユー・ジャスト・アズ・ウェル・レット・ハー・ゴー
2.ゴ・アヘッド・バディ
3.レディ・ドクター・ブルース
4.ビッグ・ボート
5.ヒッチ・ミー・トゥ・ユア・バギー・アンド・ドライヴ・ミー・ライク・ア・ミュール
6.ユー・シュドゥント・ドゥ・ザット
7.バック・ドア・ブルース
G〜M
8.1ダース
9.アイル・ビー・アップ・サムディ
10.ビジー・ブーツィン
11.セイジフィールド・ウーマン・ブルース
12.バック・トゥ・ジ・ウッズ
13.ソルティ・ドッグ
14.フィールズ・ソー・グッド

これね、ジャケットもカワイイけど、中身も最高なんです。

さっきから興奮してココモ・アーノルドのことばっか書いてますけど、前半7曲収録のケイシー・ビル・ウォルデン、コチラはココモとは全く正反対の、ズバリテクニシャンです。

この人の弾いてるのは、音を聴く限りでは普通のギターじゃなくて、ハワイアンなんかで使われている「置き型」のスティール・ギターだと思うんですが、ブルースというより、陽気なジャズ系の演奏です。

結構細かいコード・チェンジとか、軽快に小走りするスウィンギンなナンバーが多いのですが、この人何と!どの曲でもキッチリとスライドで細かいソロ弾いてるんですよね。

声も甘い感じ、一言で言えば「軽妙でお洒落」であり、もしかしたら一般ウケはこっちの方かも知れんです(ココモよすまん)。何というか、1930年代同じ時代のジャンゴ・ラインハルトや同じブルースでも単弦ピッキングの名手(神)ロニー・ジョンソンらに通じるシティ派ならではのノリの小気味よさと洗練された演奏技術に裏付けされた、期待を裏切らない演奏です。

元々はジャズの人だろうと思って調べてみたら、何とメンフィス・ミニーの最初の旦那で、初期の頃は南部一帯を回っていたこともあったんだとか。

「どこでそんな凄い演奏テク身に付けたんだよ!?」

とも思いましたが、南部の旅芸人一座といえば、ロニー・ジョンソンもそうでしたが、一流の連中は客のリクエストには何でも、それも高いレベルで応えていたと言いますから、このスライドの超絶技巧もむべなるかなでありますな。

続いて8曲目以降は豪放磊落、細けぇこたぁいいんだよ!の、ココモさんで、空気はガラッと変わります。

細やかなウォルデンとは間逆の、全部を力で押し切る、ミストーンもこうなったらもう欠かせない”味”の、これこそブルースマン!な開き直りっぷりはもう最高です。パワーとインパクトだけで十分に聴かせるというのも、これは立派なテクニックですよね。

どちらも膝にギターを置いてナイフ(ウォルデンは多分専用の金属棒)を滑らせるスタイルなのですが、このアルバムでは両極端とも言える2人のスタイルの違いを楽しみながら、ブルース、特に戦前の「ひとり1ジャンル」とでも言いたくなる個性の世界を楽しみましょう。

しかし、ココモとウォルデン、活躍した時代は一緒だけど、スタイル的には全然脈絡のないこの2人を素晴らしい選曲でカップリングして出したYazooはつくづくいいレーベルだなぁ。。。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 21:06| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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