2016年05月17日

山下達郎 オン・ザ・ストリート・コーナー1

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山下達郎/オン・ザ・ストリート・コーナー1
(WEA Japan)

リトル・ウィリー・ジョンのことを書いて、昨晩は自宅にてプチ50's R&B(リズム・アンド・ブルース)祭りをしておりました。

特にアタシの中ではリズム・アンド・ブルースの象徴と思っているのが、リトル・ウィリー・ジョンとジョニー・エイスフランキー・ライモン、そしてリトル・ウォルターです。

全員が全員圧倒的ともいえる天賦の才を与えられながら若くして悲劇的な死を遂げてるのは、何だかたった10年そこら全米を席捲してあっという間に次の世代の音楽(ソウル、ロック)にバトンを放り投げてオールディーズになっていったR&Bそのものの姿を見るようで、やけに感慨深いものがあります。

さて、R&Bは死んだのか?

と問われれば、ついこの間までレイ・チャールズやエタ・ジェイムスといった大御所が元気でそのタフな歌唱を元気に張り上げており、彼らを慕う現代R&Bやロックの”孫やひ孫たち”とステージでニコニコと共演していたのを見て、感動を新たにした身の上としては「いいや、死んでおらんね。ただ名前が変わっただけだよん」と、クサいことのひとつでも言いたくなります。いちいちアタシみたいなチンピラが言わんでもええがなということではありますが・・・。

さて、話の下ごしらえが何だか雑に出来上がったところで、日本におけるリズム・アンド・ブルースの、これはもう”超”のつく名盤といっていいでしょう。山下達郎の「オン・ザ・ストリート・コーナー」を、今日は特に「リズム・アンド・ブルースって何?いや、タツローは知ってるけど」という方に強く推薦盤としてご紹介いたしましょう。




【収録曲】
1.ユー・ビロング・トゥー・ミー(The Dupress)
2.クローズ・ユア・アイズ(The Five Keys)
3.スパニッシュ・ハーレム(Ben E King)
4.アローン(Frankiie Bell&The 4 Seasons)
5.モースト・オブ・オール(The Moonglows)
6.ジー(The Grows)
7.クローズ・ユア・アイズ《ALL TATSURO VERSION》(The Five Keys)
8.リメンバー・ミー・ベイビー(The Chiffons)
9.ブルー・ベルベット(Clovers)
10.ザ・ウィンド(Nolan Strong&The Diabolos)
11.ドリップ・ドロップ(The Drifters)
12.ザッツ・マイ・ディザイアー (The Channels)


アタシが物心付いた時分には、山下達郎といえば奥さんの竹内まりやと組んで、色んなアイドルや歌手のヒット曲をバンバン連発していた「日本を代表する”売れる作詞作曲家”」でありました。

たまーにテレビとかで本人のゆわ〜んとした声が、何とも爽やかなサウンドに乗って流れてきて、ブラウン管にはまぶしいぐらいに綺麗なビーチだったり、外国製のオシャレな車だったり、そういうのが映っていて、ちょうどバブル前後ですよね。音楽の、というよりもこれが多分多くの日本人にとっての「80年代の原風景」であると。その風景には常に”タツロウ”の音楽がBGMとしてあったと思います。

で、例の「クリスマス・イブ」が大ヒットして、それこそもう山下達郎を知らん人はほとんどいなくなった。

何を言いたいのかというと、そんぐらい「売れる音楽を作る人」が、すなわち山下達郎という人なんですね。

んでもって、アタシはパンクロックで音楽に目覚めて、まぁ、感化されやすいんで

「売れる音楽なんか全部ゴミだ!」

と、特にアタシが10代の頃に20代後半から30代ぐらいの年代の人らが聴いてるよーな音楽を、とりあえず全否定してました。まぁ、感化されておったんです。

ところがどうしても、アタシが否定できない音楽がふたつだけあった。

それがサザンオールスターズ(というか桑田圭祐)と山下達郎でした。

サザンについては後々じっくり書くとして、”タツロー”は、サウンドは何だか紙みたいに柔らかくて、歌詞もどっちかというと印象派的な爽やかな質感で、内容もどちらかというと自分の好みとは違う世界を唄っているのに、あれぇ?何でこんなに妙に耳に残って不快じゃないんだろうか・・・。

と、中学からハタチぐらいの時まで、アタシは何となーくそう思ってました。

思ってはいたもののアタマがよろしくないので、そっから先は考えきれません。

ま、いっかー

と思って、そのうちパンクとかメタルとかオルタナ以外の音楽も聴くようになってきます。

一丁前に「ミュージック・マガジン」とか「レコード・コレクターズ」なんかも読むようになって、仕入れたばかりの知識をウンチクとして垂れるようになってもきました。まぁ、感化されやすかったんです。

その時にふと山下達郎の特集のページを目にしました。

テレビとかには一切出てこなかったし、ガキが読むよーな雑誌なんかにはもちろん載ることなんて滅多にない人なので、ちょいと気になって読んでみたんですね。

そしたらもう何が何が・・・”あの”爽やかでインテリっぽい印象とはまるで違って、もう暑苦しいぐらいに大好きなリズム・アンド・ブルースやハワイアン・ミュージックなどの話、中古レコードや音響機器についての神レベルのディープな話などを、特に音楽業界やレコ屋業界に対する手厳しい批判も含めて、凄まじい勢いで語り尽くしている「ガチのミュージシャンであり音楽職人である山下達郎」がそこにいました。

特にレコードに関しては「日本の中古屋は貴重というだけでその音楽の内容をきちんと吟味しないで法外なプレミアを付ける。そんなのはおかしいと思うから現地に行って真っ当な値段の中古レコードを買う」とか、もう凄いシビアな発言してて、それはやもすると偏屈なおっさんのたわごとに読めるかも知れないけど、ミュージシャンとかである前に「音楽ファンとしての筋」をガッチリ通しているような気がして、その気迫が文章からだけどもう怖いぐらいにビンビン伝わってきて、あぁこりゃ、このヒトはホンモノだわ・・・、と、勝手に心服しちゃったんですね。

音に関しては死ぬほど厳しく、ミュージシャンとしても音楽ファンとしても「こうでなきゃいけないんだ!」という筋は通す。で、その結果として「僕は疲れたサラリーマンがホッとするような音楽を作ってる」と。

これはパンクだと思いました。

島に帰ってきて、たまたま親父と山下達郎の話になって「いやぁ、正直タツロウなめてた」といったら親父が

「おい、あの人ナメたらいかん。筋金入りのブラック・ミュージック・フリークだぞ。ポップスやってるから大したことないとか思ったら大変な間違いじゃ」

と、その数秒後に「これを聴け!」と「オン・ザ・ストリート・コーナー1」を聴かせてくれました。

このアルバムは、その後も「2」「3」とシリーズで出てる山下達郎の完全アカペラ多重録音シリーズの第一弾です。

50年代の、有名無名関係なく「ドゥー・ワップの極上の曲」を中心に、「うはぁ、声だけでここまでやるか!!」と絶句するほどの素晴らしいヴォーカル・ワーク(そしてアレンジ)以上に、もう本当にこれが好きだからやったんだ!というドゥー・ワップに対する深過ぎる愛情が美しく美しく綴られております。

彼のよく伸びるハイ・トーンは、自作のポップス曲でも看板のようなものですが、そのルーツはドゥー・ワップにあったんですね。声自体を全く”それっぽく”演じるでもなく、あくまで自然に英語に乗せて伸ばすリードには少しも気負いがなく、また、本来ちょっと苦手なはずのベース・パートも、あえて淡々と軽くすることによって、ハーモニーの中に自然に溶けています。

もし「山下達郎は知ってるけど、ベストぐらいしか聴いたことない」という人がいらっしゃったら、ぜひこのアルバムを手にして頂きたいのはもちろんですが、ブラック・ミュージックが好きで、山下達郎聴いたことないという人にも聴いてほしいと思います。


しかしここまで徹底して作り込んで、どこからどう聴いても全く”自然”で、これをドゥー・ワップのカヴァーで、R&Bだーって思って聴いても最終的には「とても上質な心地良い音楽」として聴かせる山下達郎は本当に何というか、言い方はアレかもしれないけどバケモノだなぁと思うのです。。。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/


posted by サウンズパル at 19:32| Comment(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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