「お〜いぇ〜♪ わうわ〜♪」
「ヘイ大将、朝からゴキゲンだねぇ〜」
「おぉう、ゴッキゲンよ。ひゅぅ〜♪」
「今、流れてるのはブルースだよね。このグラサンのおっさん渋いなぁ〜」
「このオッサンはライトニン・ホプキンスだぜぇ、俺は”ブルース”つったら真っ先にこのオッサンが思い浮かぶんだよなぁ・・・」
「うん、歌もギターもどっから聴いてもブルースだぁね。でもそれ以上に見た目が!(笑)」
「そうそう、どっから見てもブルースマン以外の何者でもないという・・・(笑)」
「ところで大将、俺はね、ちょっと本格的にブルースを聴いてみようと思うんだがね」
「ほんほん♪そいつは最高だ」
「大将、あの〜・・・ブログ書いてるでしょ?そっから良さそうなのを何枚かと思ったんだがね」
「ふんふん♪そいつはゴキゲンだ」
「記事が多すぎて選べねぇよ」
「何言ってるのよ、俺まだまだオススメのブツで書いてないやつとかもいっぱいあるんだぜぇ、どれを買えばいいかとかはほんなもん適当に鉛筆に数字でも書いて転がして選べばいいんだよ」
「無茶言うなぁ(笑)そんなテキトーなこと言わずに、まぁ10枚ぐらいね、俺みたいな初心者でも分かりやすい”これが入門盤だ!”ってのを教えてよ〜。」
「えぇぇー、俺が算数が苦手なの知ってるでしょ?10枚きっちり選ぶとかそういうの苦手なんだよなぁ・・・」
「いいから教えろよ、今おいしそうに食ってるそのプッチンプリンにタバスコぶっかけるぞ」
「待て、わかったわかった。俺は算数苦手なようで実は得意なんだ。1から10までの計算?ま・・・まかしとけ。だからタバスコかけないで・・・」
「おぅ、観念したか。とっととはじめやがれ」
「じゃあとりあえずさっき動画でも流してたライトニン・ホプキンスだ」
「うんうん、アレは渋かった」
「この人のカッコイイところはね、たっくさんアルバムあるんだけど、アルバムによって出来不出来の差があんまりないところなんだ」
「そんぐらい気合い入ってたってことか」
「う〜ん、確かに気迫は凄いんだよね。特にスローブルース唄ってる時とかエレキ持ってギャンギャンにブギかましてる時なんかは怖いぐらいの凄みがあるんだけど、基本スタンスはむしろ”がんばらないこと”のような気がする」
「ほう」
「この人はレコーディングの時、スタジオの中にテーブル置いてそこにまず酒瓶と灰皿ドカッと置いて、まず呑むんだと」
「いいねぇそれ」
「基本弾き語りか、バックが付いてもせいぜいベースとドラムぐらいの編成でいつもやってた人だから、マイペース貫けたんだろうね。ガッチリバンドの人ならこうはいかない」
「オススメのアルバムは?」
「う〜ん、難しいけど最初に聴くんならやっぱり”モジョ・ハンド”かな?」
(「ライトニン・ホプキンス/モジョ・ハンド」レビューはコチラから)
「これはジャケットがカッコイイね」
「うん、でしょ? だからジャケ買いでもOK♪」
「じゃあこれはチェックしとくよ」
「ありがとう。あぁ、ライトニン・ホプキンスという人に関して詳しいことはココにも書いてるから、まぁヒマな時にも読んでちょうだいな」
「じゃあ次は、シカゴ・ブルースって知ってる?」
「あぁ、聞いたことある」
「でしょ?ブルースの中にも色々なジャンルがあって、それぞれ個性があるんだけど、シカゴブルースは多分一番有名なブルースのスタイルかも知れない」
「何で?」
「60年代にビートルズとかストーンズとか、そういったイギリスの人気バンドがシカゴブルースのレコードをお気に入りで、影響も多く受けたんだ。その頃ブルースの流行はとっくに終わってたんだけど、ロック経由で人気に再び火が点いたんだね」
「へー」
「シカゴブルースと呼ばれる音楽は、もちろん戦前からあって、それは割りと小粋で洗練されたシティ・ジャズみたいな感じだったんだけど、戦後になってミシシッピから上京してきたマディ・ウォーターズは、あえて都会風の洗練されたブルースじゃなくて、生まれ育った南部の泥臭くて荒々しいブルースをシカゴでも唄ってたんだ。」
「でも、そんな音楽って、古臭いとか田舎っぽいとか言われて相手にされなかったんじゃない?」
「最初はね。だけど南部から出てきた人達は彼のブルースにとても親しみを感じていた。そしてエレキギターという新しい武器と斬新なバンド・スタイルでの演奏が”懐かしいけど新しい、何じゃこりゃ!”というサウンドを生み出した」
「ブルースがエレキ化したんだね」
「その通り、もちろんマディ以前にもエレキギターを使ったり、バンドでブルースやる人達はいた。でも、そのスタイルを”ひとつのスタイル”としてまとめた才能と、あと圧倒的なカリスマがマディにはあったんだね。作曲家のウィリー・ディクソン、ハープのリトル・ウォルター、ピアノのオーティス・スパン、後になってバディ・ガイ、ジェイムス・コットン、ジュニア・ウェルズとか、マディの周囲にはいつも凄いメンツが自然に集まっていた。」
(「ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ」レビューはコチラ)
「マディに関してもアルバムはものすごくたくさんあるけど、最初に聴くんならこれはもう”ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ”だね。マディの・・・っていうか色んな人がカバーしてるブルースの有名曲ばかり入ってて、本当にワクワクゾクゾクする。あと、マディの弾くスライドギターは本当に味がある・・・」
「これはベスト盤?」
「と思うだろ?実はこのアルバムはベストじゃなくて、最初に出されたオリジナル・アルバムなんだよ」
「ん?何で最初のアルバムなのにベスト??わけがわからん??」
「まぁその辺は色々と書いてあるからレビュー参考にしてよ」
(「モーニン・イン・ザ・ムーンライト」レビューはコチラ)
「で、マディといえばハウリン・ウルフ。この人も南部からシカゴに出てきた人なんだけど、何かとマディとはライバル・・・っていうか張り合ってたもう一方のボスマンで、この人もブルース語る時には絶対にハズせない人なのよ」
「”吠える狼”って名前が凄いね」
「そう、芸名の通りこの人はもう声が凄い。多分この強烈なダミ声初めて聴く人のほとんどは”オーディオ壊れたんじゃないか?”って思うらしい。かく言う俺もその一人(笑)」
「この人のブルースは、どっちかというとガレージロックみたいなズバッとストレートで非常に分かりやすい。もし、マディを聴いてピンとこなかったとか退屈だと思う人がいたら、まずはウルフを聴いてごらんなさいって思う。声も凄いけどバンドの粗削りな音と暴力的なノリが声に全然負けてないからホント凄い」
「レコードデビューが40歳ってマジか!?それでいてこのパンクな音で暴れまくってたとか頭オカシイ・・・」
「いやいや、ブルースマンは基本頭オカシイよ(笑)。それでこの人は1976年に65歳で亡くなってるんだけど、死ぬまでずっとこの声は衰えなかったし、バンドのノリも一切変わらなかった。最後の方は体もだいぶ悪くなって車椅子に乗ってたにも関わらずだよ」
「いかん、そういう話聞くとハウリン・ウルフにハマりそうになってきた・・・」
「はは、じっくり検討しといてね。じゃあ次は・・・」
「ちょっと待って大将、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「おう、何だい?ブルースのことなら何でもいいよ」
「ロバート・ジョンソンは知ってるんだけど、ブルースの中でロバート・ジョンソンってどんな存在なの?」
「あー、よくぞ聞いてくれたねぇ。じゃあお次はロバート・ジョンソンいこうか」
(「ロバート・ジョンソン/キング・オブ・ザ・デルタ・ブルース・シンガーズ」レビューはコチラ)
「おっしゃー!待ってました」
「ロバート・ジョンソンはねぇ、多分たくさんの人がブルースって音楽と出会う時に、最初の方に出会うブルースマンだと思うよね」
「うんうん、俺もそうだった」
「んで、そこからブルースにハマる人、ロバジョン聴いてもあんまピンとこなかったからそのまんまブルースから遠ざかる人とがいる。それはまぁ好みの問題だからしょうがないとして・・・」
「えぇ?ロバート・ジョンソンでピンと来ねぇヤツなんているの?信じられん!」
「(笑)嘘を言いなさい、最初は誰だってピンと来ないはずよ。大体戦前の録音だし、弾き語りでパターンが似たような曲多いし。俺も最初は聴きながら心地良く寝てたよ」
「ぬぐぐ・・・」
「でも、ロバート・ジョンソンはある日突然”クる”んだよね。ある日突然急にこの声がすごくエモーショナルなものに聴こえてきて、ギターも何弾いてるかちんぷんかんぷんだったのが、何となく”分かる”よーな気持ちになってくる」
「そっからブルースにのめり込んで色んなスタイルを知って・・・例えばロバート・ジョンソンが影響を受けたブルースマンとか、同じ時代の違うスタイルのブルースとか、戦後のシカゴだったりテキサスだったりのブルースを色々と聴いて・・・」
「でも、最終的にはロバート・ジョンソンに戻ってくる!」
「あー、せっかく言おうと思ってたのにー」
「ふっふっふ、自分ばっかりオイシイところは取らせない」
「まぁとにかく、それでロバート・ジョンソンに戻って改めて聴いてみると・・・」
「全く異質なんだよ。彼は南部の、しかもブルースが一番泥臭くてワイルドなスタイルを保ってたミシシッピ・デルタのブルースマンなはずなのに、その繊細な唄とかギター・プレイとか、綿密に組み立てられた曲構成とかを聴くと、本当に一体いつの時代のどこのブルースマンなのか・・・聴けば聴くほどわからなくなる」
「すごく耳が良くて、レコードなんかで一回聴いただけの曲でも完璧に弾けたとかいうよね」
「耳が良かったってのはあるだろうね。でも、それにしても完成度が高過ぎるんだね。この時代のデルタのブルースマンとは、ちょっと違う感覚を持っていたんじゃないかなぁ・・・」
「それこそ”悪魔に魂を売った”ということにしておこう、そっちのがしっくりくる」
「んだね、ロバート・ジョンソンだけは本当に底なし沼だなぁとつくづく思うよ。ブルースが好きだったら、これはもう一生心の中に謎を抱えながら聴きつづけるしかないだろうね」
「うわぁ、そう思うと戦前ブルースってヤバいなー。何か俺の知らないことがまだまだたくさん埋まっていそう」
「戦前ブルースにちょっとでも興味持ったんなら、とりあえず本でもネットでも色々検索して、知らない名前を見付けたらまず聴いてみるといいよ。戦前はまだ”これがブルース”ってスタイルもはっきり決まってなかったし、結構みんな好き勝手やっててなかなかにアナーキー」
「そんなこと言ったら聴きたくなってくるよー!でもカネがない・・・」
「うん、ない(笑)だから最初は手軽に色んな人が聴けるオムニバス盤を聴いてみるのがいいね」
(「RCAブルースの古典」レビューはコチラ)
「戦前ブルースのコンピといえば、これはもうこのRCAブルースの古典は絶対だぁね。まだ日本で戦前ブルースとかがあんまり知られてなかった時代に、日本人が少ない資料や音源を一生懸命集めて作ったオムニバスだよ」
「ジャケットが何かいいなぁ〜、手描きのイラストは味があるね」
「いいでしょ〜♪ 今は戦前ブルースのマニアックな音源でも、Pヴァインという本当に良心的なレーベルがほとんど復刻してくれているけど、昔はそういう太っ腹なレーベルもなくて、メジャーどころのレコード会社が権利持ってる音源を何とか頼み込んでかき集めたっていう話だけど、泣けてくるよね」
「わかる。ブルースですらあんま売れないのに、戦前のブルースなんか誰が聴くんだろうって思ってた人は多かったかも」
「いやぁ、戦前ブルースは今も言われなき迫害を受けてるよ。ちょっと泣ける話なんだけど聴く?」
「うん、長そうだから今度でいいや。それよりこのアルバムはどんななの?やっぱロバート・ジョンソンとかサン・ハウスとか、戦前の超有名どころがガッツリ入ってんでしょ?」
「いや、そこらへんは入ってないんだよ。当時のBMGビクターが権利持ってたのはRCAの音源だけだったから、そこらへんは弱いんだよ。でもミシシッピ・ブルースからジャグバンド、ピアノ・ブルース、シティ・ブルースとか、収録されている曲のバリエーションは凄く広くて、そんなに有名じゃないブルースマン達の曲が意外に凄く良かったりする」
「有名人/有名曲を聴いて楽しむっていうより、”ここで初めて名前を知って次に行くためのガイド”みたいな聴き方がいいのかな?」
「その通り!これ一枚あれば知識が凄く豊かに広がるのよ。そういう意味ではこれこそ究極のブルース入門盤と言っていい」
「もっとディープな、例えばロバート・ジョンソンより昔のデルタブルースとかあるの?」
「あ、そらもうコレよ。サン・ハウスとチャーリー・パットンの伝説のデルタ・ブルース・セッション」
(「サン・ハウス&チャーリー・パットン/伝説のデルタブルース・セッション1930」レビューはコチラ)
「この二人はサン・ハウスが”デルタ・ブルースの父”でチャーリー・パットンが”デルタ・ブルースの創始者”って呼ばれてるんだけれども・・・」
「やったー、サン・ハウス!俺、ロバート・ジョンソンの次に買うのはサン・ハウスにしようと思ってたんだよね。つうかちょっと待って?このジャケットの裏にクレジットされてるウィリー・ブラウンって”クロスロード・ブルース”に出てくる”友達のウィリー・ブラウン”のこと?」
「あー、見付かったねウィリー・ブラウン。彼はサン・ハウスとチャーリー・パットンがどこかで演奏する時はほぼ横にいて、絶妙なギターでサポートしてたデルタ・ブルースのギター名人なんだよ。そういう訳でもちろんロバート・ジョンソンとも絡みはあっただろうね。ただ、彼が”友達のウィリー・ブラウン”だったかどうかは結局分からない」
「えー」
「まぁそこは謎のままにしといた方がロマンあるがな。とにかくデルタ・ブルースの・・・つうかブルース最初期の伝説的な巨人2人が唯一同じ空間で演奏したこのアルバムは、熱気が凄い、ラフで荒削りな演奏からビンビンくる圧も凄い。特にサン・ハウスは鬼だね。戦後の録音も凄いけど、このセッションでのサン・ハウスは何かヤバい世界に行ってる感すらある」
「ウィリー・ブラウンも唄ってるね」
「そうそう、ウィリー・ブラウンと、あと女流ピアニストのルイーズ・ジョンソンも唄ってて、これがまた味があっていいんだよ。細かいところがどうとかいうより、全体の空気感だけで感動させるし鳥肌も立たせる凄いセッションだよ」
「チャーリー・パットンはどうなの?」
「声はザラザラでギターはバッチンバッチン、おまけにルイーズ・ジョンソンが唄ってるバックで何かヤジってて、完全にヤカラ(笑)そらもうガラ悪くて最高よ」
「大将さっきからずーっと濃いのばっか薦めてくるけど、何かこうもっと落ち着いた感じの、まったり聴けるブルースないの?さっきから血圧が上がってきてるんだけど・・・」
「はぁ?ブルースなんざぁ濃くてなんぼだろ?そんなこと言ってたら・・・・いや、すまん。実は俺がよく夜中にまどろみながら聴くとっておきのお洒落でスマートな名盤がある」
「T・ボーン・ウォーカー/モダン・ブルース・ギターの父」レビューはコチラ
「もちろんT・ボーン・ウォーカーは知ってるよね?」
「あぁ、ブルースの世界で始めてエレキギターを弾いた人だとか何とか・・・」
「とりあえず”誰が最初か”という話になると色々とややこしいんだが、T・ボーン・ウォーカーって人は”エレキギターを使ってギターソロを弾くブルース”のスタイルを最初に完成させた人ではある」
「でも、そんな人だから派手にギャンギャン弾いてたんでしょ?オシャレとかスマートとかまず大将の口から出る言葉じゃないよねぇ?俺は簡単には騙されないぞ」
「まぁお待ちなさい(笑)T・ボーンは派手に暴れることよりも、アレンジや構成の妙で”聴かせるブルース”を大成させた人でもあるんだ。B.B.キングが誰よりも影響を受けたことは有名な話なんだけど、それはメロディアスなギター・プレイはもちろんだけど、いつもパリッと決めたスーツ姿だったりインタビューでもジェントルな受け答えとかでも常にB.B.はT・ボーンを意識してた。はず」
「ジャケでは派手な開脚弾きしてるけど、実際は・・・」
「軽快なシャッフル・ビートに乗ってすいーっと足を開いて、そりゃもう綺麗なもんだったらしいよ。こういうジャケを見るとついド派手な音を期待しちゃうんだけど、このアルバムはいいよ。ギターがどうとかいうより、バンドサウンドそのものが落ち着いてて上質な感じがするよね。コイツを聴きながらちびりちびりやるお湯割りがたまんない」
「アンタ、呑めないだろ」
「B.B.キング/シンギン・ザ・ブルース」レビューはコチラ
「T・ボーンときたらやっぱりB.B.キングを紹介せにゃあいかんね。この人も代表作が多すぎて、どれを出そうかほんっとに迷うし悩むんだけど、とりあえず60年代のアルバムは全部」
「いや、真面目にちゃんと選べよな」
「はいはい。個人的に凄い体験をしたのが”ライヴ・アット・リーガル”で、アレ聴いて本当に俺はB.B.のこと、有名人過ぎてなんだかって、まぁナメてたんだけどその偏見がブッ飛んだんだよね」
「ブルースのライヴだから、おっさんのドス黒い歓声が上がるのかと思ったら、何かほとんど若い女の子の黄色い声だったし、色んな意味で衝撃でした。ブルースってエロい」
「エロいエロい、全然渋い音楽なんかじゃない。」
「だからB.B.は、とりあえず若い頃のやつはどれ聴いてもいいのよ」
「終わらすなよ、タバスコ飲ますぞ」
「・・・特に一枚って言われれば実質的なファースト・アルバムの”シンギン・ザ・ブルース”かなぁ。いや、名盤はいっぱいあるんだけど、愛聴の度合いだけでコレは頭ひとつ抜けてる。ギター・プレイとか声とか、まだ青い部分もあるんだけど、それなりに頑張って自分のスタイルを必死で模索している途中のB.B.聴くと”あぁ、王様にもこういう時代があったんだなぁ”と和む。でもそれはあくまで後の作品と比べてであって、実はこの時代にもうゆるぎない”モダン・ブルース”がしっかり出来上がってる。完成された音を聴くと本当に凄いと思う」
「ローウェル・フルスン/アーリー・レコーディングス1946-1952」レビューはコチラ
「よし、最後は全然入門盤でも聴きやすいとっつきやすいアルバムじゃないんだけど、ブルースの一番コアなものを感じてやまない大好きなアルバムでシメよう」
「え?最後ってまだ9枚目だけど」
「だから俺は数字が苦手なんだよ、後はテキトーにちゃっちゃと続き書いてくれよ」
「えぇーー」
「ローウェル・フルスン御大についてはライトニン、T・ボーン・ウォーカーと同じようにブラインド・レモン・ジェファソンとテキサス・アレクサンダーっていう戦前テキサス・ブルースの始祖2人から直接ブルースの真髄みたいなものを学んだ人で、B.B.キングも先輩としてリスペクトしてる人なんだけど」
「この人は知らないなぁ」
「いや、知ってる人の方がもしかしたら少ないと思う。50年代にヒット曲がありながら60年代はほとんどくすぶってて”眠れる巨人”って言われてたみたい。それに戦後のブルースマンってやっぱりシカゴ・ブルースの人たちが圧倒的に有名で、テキサス系の人たちは意外に知られてなかったりするじゃない?それについて言いたいことは山ほどあるけど、ローウェル・フルスンって名前を、とにかくまぁこれで覚えてしまった人は、まずはこのアルバム以外のアルバムを購入してくださいと」
「オススメに上げといてどんな投げっ放しだよ!」
「最初に言ったぜ、この”アーリー・レコーディングス”は初心者向けじゃない。まずフルスンって人はガッツリバンドブルースの人なんだけど、このアルバムは、特に前半の曲はほとんど唄とギターだけで、しかもどの曲も同じような曲調で、派手な展開とか超絶なギターテクが聴けるとか、それとこの人は物凄く唄がうまくて本当に惚れ惚れするシャウトを繰り出す人なんだけど、ここではシャウトしない。ただ淡々とちょいと高めの地声でブルースしてるだけ」
「うう、話聴くだけでもかなり気合い入れて聴かないとダメなアルバムっぽい」
「そうだよ、でも俺はこの淡々として派手なところが一切ないフルスンの歌声と弟の伴奏に徹したギターからは純粋な、ドブロクみたいなブルース・フィーリングが無尽蔵ににじみ出てきてる感じがすごく好きでたまんないのよ。”ブルースは理屈じゃない”って俺は散々言ってきたけど、このアルバム聴くまでは分かってなかったんだなぁ。」
「ブルース聴いてると”結局ブルースって何なのよ”って思う時ある。まぁそんなに知らんけど」
「思うよなぁ、結局何なんだろう。意味なんて分からずにただ惹かれて聴いてるだけのような気がするし、これから先聴いていくうちに、もしかしたら答えみたいなのがちょっとだけ分かるような気がして聴いてるような気もするけどまぁいいか、これ以上あんまりグダグダ喋ると理屈っぽくなってしまう。とりあえずこんなくだらない与太話みたいな文章でも、誰かの心に何かが響いてその人がブルースを好きになってくれたらいいな」

