ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年05月24日

ギター・スリム シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ

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ギター・スリム/シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ユー
(Speciality/オールディーズ・レコード)


毎回ステージでは全身をド派手な原色の衣装で身を包むのみならず、何と服の色に合わせて髪まで原色に染めた(例えば服が赤なら髪も真っ赤、青なら髪も真っ青、といった具合)まだエフェクターはおろかゲインすらついていない単なるスピーカー”だったギターアンプで歪んだバカでかい音を出しまくる、根っからのクレイジー・ガイ。

それだけじゃなくそんな凶暴なギターに負けないバカでかい声でシャウトして、ギターソロになると特注品の100m以上あるコードを引きずって会場内を動き回り、そのまんま外に出て行って道路をビュンビュン走ってる車を止める真性の常識クラッシャー。

その素顔はというと、共演する有名なブルースマン相手に「ハハ、てめーらなんか俺に比べたら雑魚だ」クラスの大言壮語は当たり前。

ミュージシャンだとか常に複数はべらせていたおねーちゃん達の間でちょっとイケメンの話でも聞けば、本人のところへズカズカと行き、即殺されてもおかしくないクラスの派手な挑発(器物損壊アリ)をしてディスりまくるのは当たり前。ステージ衣装そのまんまのギンギンな出で立ちに、泥酔をして完全にイッちゃってる彼の目を見れば、ディスられた方もたまったもんじゃない。

しばらくの絶句の後に

「あぁ、コイツには関わらない方がいい」

と思ったヤツなんて、50年代のニューオーリンズには履いて捨てるほどおっただろう。

ともかく型破り&破天荒の破滅型に服を着せてブルースの魂を注入したような男がギター・スリム。

よく「アイツはクレイジーだった」と言われるミュージシャンは多いけど、これほどまでにキャラクターと創り出す音楽がピッタリ一致している人は他にいないんじゃないかと思われる。

今どきハイゲインの音なんて珍しくもなんともなくて、ギター・スリムのギターより物理的に歪んだ音はいくらでもある。

でも、アンプのボリュームツマミを限界超えでいじり倒しただけの音割れに毛が生えたようなサウンドの「ギョイーーーン!バキバキバキ!」と、空気を割って出てくるその一瞬、その一瞬の破壊力の何と鋭く凄まじいことか。また、喉からはらわたをひっつかんでそこらにブン投げているかのようなヘヴィなシャウトの、何と真っ直ぐで野太く力強いことか。

若き日のバディ・ガイが聴きまくって”キレ芸”の参考にしたとか、ジミ・ヘンドリックスが彼のトーンのニュアンスを何とか再現したくてアンプやエフェクターをいじりまくったとか、もちろんそういう話題にも事欠かないのだが、いやいやいや、彼のキョーレツなトーンと唯一無二の濃厚極まりないブルースフィーリングは宇宙から独立した何かヤバい星雲の中でドロドロと煮えたぎりながら赤黒く光っているような気がする。

はい、というわけでここんところルイジアナ/ニューオーリンズ・ブルースやR&Bばかり聴いておりまして、50年代ニューオーリンズを中心にほんの数年大活躍してあっという間にあの世に行ってしまったギター・スリムの決定的名演が聴けるスペシャリティ・セッション「シングス・ザット・アイ・ユースド・トゥ・ドゥ」うをフルボリュームで聴いております。



【収録曲】
1.The Things That I Used To Do
2.Well, I Done Got Over It
3.The Story Of My Life
4.A Letter To My Girl Friend
5.Trouble Don’t Last
6.Later For You Baby
7.Bad Luck Blues
8.Twenty Five Lies
9.Sufferin’ Mind
10.Stand By Me
11.Our Only Child
12.Guitar Slim
13.Reap What You Sow
14.You’re Gonna Miss Me
15.I Got Sumpin’ For You
16.Think It Over
17.Quicksand
18.Something To Remember You By
19.You Give Me Nothing But The Blues


聴いておるんですが、いやはや、ギター・スリムは他のニューオーリンズのブルース系の人たちとは、何というか住んでる次元が違いますね。

大体においてこの地のミュージシャンは”ユルくてオシャレ”な人が多くて、その独特のおおらかさが「あぁ、ニューオーリンズの音楽だべなー」と安心する上質な仕上がりなんですが、ギター・スリムだけはもうなんかニューオーリンズとか50年代のどうのこうのとか、そういう形容詞的なものから全部ブッ飛んで存在しております。

あ、いや、オシャレだし力強いし、ブルース・フィーリングもあるしギター・プレイも流石に”ギター・スリム”を名乗るだけあって、実にモダンでカッコイイんですよ、でもその全てにおいて語尾に”過ぎる”が付いてしまうんですよ、オシャレ過ぎて力強過ぎてブルース・フィーリンズがあり過ぎてモダン過ぎてカッコ良過ぎる・・・。

特にアルバム・タイトルになっている@なんて、バラードですよ、バラードなのに冒頭の歌い出しからもうザザザザーと全身の血液が沸騰しそうな熱気に襲われるんです。後はもうクラクラですよ。アルバムに曲はタップリ19曲入ってるんですが、コレ聴いてる間はずーっとノーガードでパンチくらい続けているボクサーのような気持ちになります。

「さぁ、今日こそコレを聴いて何か上手いことレビューしてやろう」

と思うのですが、1曲目が始まって2秒ほどでそんな気持ちはどっかに消し飛んで、ただただ聴きながらアツくなったり「うひゃーーー!」と奇声を上げたり、どうしてか切なくなって泣けてくる自分がおります。

ギター・スリムといえば、コレとアトコ・セッションズ(こっちは声がよりガラガラになっててとにかく唄が凄い)しかアルバムが出てませんが、どっちも同じ気持ちになりますよね。

誰かが「ブルースってスタイルとかそういう問題じゃなくて、唄ってるソイツの人間の部分がどこまでリアルに湧き出ているかどうかだ」って言ってたけど、ギター・スリムってそんなです。破天荒極まりない人間の全部が唄にもギターにもバリバリ出てる、ただそれだけなんだけどその”それだけ”が常に聴く人の想像力の上限を軽く突き抜けるのです。

ふー、書いてて汗ドバドバ出てきた。もっかい聴こう♪





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:40| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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