2016年06月19日

オーガスタス・パブロ イースト・オブ・ザ・リヴァー・ナイル

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オーガスタス・パブロ/イースト・オブ・ザ・リヴァー・ナイル

メロディカ、つまり鍵盤ハーモニカ。

要はアタシらも小学校の頃に吹いてたあのピアニカとかいう楽器ですね。

18だか19の頃に、ふと雑誌をパラパラとめくっておると、この楽器を吹いているレゲエのミュージシャンの写真が目に留まりました。

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レゲエといえばボブ・マーリィーとジミー・クリフとリントン・クウェシ・ジョンソンぐらいしか知らなかったアタシにとってこれは衝撃でした。

何と言っても、あの小学生が吹くよーな鍵盤ハーモニカをレゲエの人がかなり真剣なまなざしで構えている。

まったくもってどんな音を出すのか?この人が奏でる音楽がどのようなものか?当時のアタシには想像すら出来ませんでした。

それからしばらくして、このオーガスタス・パブロなる人が「ダブ」と呼ばれるレゲエの中のジャンルの、インスト部門(?)の凄い人であることとか、彼が作る楽曲は、レゲエ・ミュージックの根幹にある”ラスタファリズム思想”というものを表現しているということを知りました。

おぉ、ラスタファリズム。

ボブ・マーリィーの伝記やインタビューの中でもちょくちょく出てきた、このジャマイカならではの宗教的社会思想に興味がものすごくあったアタシは、パブロに関しての資料をかき集め、手当たり次第読んでみました。

簡単に言えば「ラスタファリズム」というのは、旧約聖書に基づいた独自の世界観や生き方を追求する思想です。

例えばレゲエの人らはドレッドヘアでありますが、アレなんかは正に聖書にある「彼の髪に刃物を当ててはならない」とか、そういう契約(神様との約束事)を実践している髪型であり、単なるファッションではないんですね。

あと「俺たち黒人は今は虐げられているけれど、ジャー(神=主のこと)が黒人としてアフリカに現れてみんなを救済してくださる」とか「物質文明の悪しき影響を遠ざけるために山奥で隠遁生活を送り、ガンジャを吸って瞑想に明け暮れる」とか「人の手によって人工的に調理されたものを食さず、また肉も食わず、自然の食物を素材そのままで食べる」とか、色々と戒律があって、「ラスタファ」と呼ばれる人達は、この戒律を今も厳しく守っているようです。

ジャマイカでこのような宗教的思想運動が始まったのには、色々と理由がありました。

その中で最も大きな理由が、1962年のイギリスからの独立です。

支配階級である白人からの解放は、かつて奴隷としてこの島に強制的に連れてこられた黒人達にとっては悲願でもあったことでした。

が、植民地支配から解放された後のジャマイカは、政治的にも経済的にも混乱を極め、また、昔から相次いだ自然災害によって民衆の生活や心は荒みきっており、特に都市部では貧困、犯罪、暴力、そして麻薬などによって多くの人々が塗炭の苦しみを味わっておりました。

「こんなんじゃいかん!」という民衆の鬱屈とした思いと、植民地時代から信仰されていたキリスト教の経典の中の救済思想、とりわけ旧約聖書の中の「エチオピアより王は現れ、神に向かって手を差し伸べる」という言葉を信じ、丁度良いタイミングで1930年に初めてエチオピアで即位した”黒人の皇帝”、ハイレ・セラシエを”ジャーの化身、或いは救世主”として信仰の対象とすることで、ラスタファリズムは徐々に社会的な思想運動になっていった訳であります。

さて、オーガスタス・パブロであります。






【収録曲】
1.Chant To King Selassie I
2.Natural Way
3.Nature Dub
4.Upfull Living
5.Unfinished Melody
6.Jah Light
7.Memories Of The Ghetto
8.Africa (1983)
9.East Of The River Nile
10.Sounds From Levi
11.Chapter 2
12.Addis-A-Baba
13.East Africa
14.East Of The River Nile (Original)
15.Memories Of The Ghetto (Dub)
16.Jah Light (Version)
17.Islington Rock
18.Meditation Dub

パブロ自身、来日時に八百屋に並べてある大根をじーっと眺めて「ラスタファーライ」と言うやそのまんま生でボリボリ食べだしたぐらいの、バリバリのラスタファです。

なので、彼の穏やかな、まるで悠久の大河の流れのような極上のインスト・レゲエ・ミュージックを聴くには、特にラスタファリズムの思想、なかんづくジャマイカの人達が「約束の地」として胸に描いていた希望の大地「ザイオン」のことなんかを思い浮かべながら聴くのがよいでしょう。

この「イースト・オブ・ザ・リヴァー・ナイル」は、パブロの初期傑作で、今でも「レゲエ聴くならコレはハズせない」と評価の高いアルバム。

ダブの特徴であるエコーやディレイは極力抑え目で、シンプルな編成の中でゆるやかに”うた”を紡ぐメロディカの純粋な音色の美しさに癒されます。

深く優しい瞑想の音楽であります。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | レゲエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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