2016年07月24日

ジョン・コルトレーン&エリック・ドルフィー Complete 1961 Copenhagen Concert

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John Coltrane with,Eric Dolphy/Complete 1961 Copenhagen Concert
(In Crowd Records)


コルトレーンにとっては、1960年〜61年という年は非常に重要な年です。

マッコイ、ギャリソン、エルヴィンという若手の実力派達とようやく自分自身のバンドを結成し、大手アトランティック・レコードを離れ、インパルスという新進気鋭のレーベルに移籍。

「ジャズの新たなる可能性を追求する」という同社の方針が、コルトレーンの音楽的な発展の大きな原動力となる形で、後に「コルトレーンの時代」と呼ばれる60年代を築き上げることになるのです。

ちょいと流れを説明しますと、マイルス・バンドをクビになったコルトレーンは、セロニアス・モンクに、半ば師事するような形で接近した1957年から58年の間に急速な「進歩」を遂げ、それまで溜め込んできたエネルギーを一気に噴出するかのように彼の個性は確立されました。

その余勢をかって1959年には再び古巣のマイルス・バンドに戻りますが、この時生まれたのが、マイルス一世一代の傑作であり、モダン・ジャズの歴史に燦然と、孤高の輝きを照らす名盤「カインド・オブ・ブルー」なのであります。

56年までのマイルスのバンドにいたコルトレーンは、直線的でガツガツしたトーンでマイルスの繊細でなめらかなトランペットとは好対照を成しておりましたが、この傑作でもうコルトレーンのプレイは「繊細なマイルスのトランペットと好対照」どころのレベルではありません。

マイルスの提示する、淡くおぼろな幻想世界の中でそのイメージに水を差すことなく、伸び伸びと躍動感に溢れるソロ・プレイで見事に”自分の絵”を描いているコルトレーンがいます。


サックス奏者としても、ソロ・アーティストとしても不動の個性をものにしたコルトレーンは、大手アトランティック・レコードと契約を交わし、自己の”ジャズ表現”の集大成的な作品「ジャイアント・ステップス」や、ジャズファン以外の多くの人々の心を捕えた非常にポピュラーな逸品である「マイ・フェイヴァリット・シングス」など、エポック・メイキングな作品を矢継ぎ早にリリースします。

今の私なんかが聴いても「ジャイアント〜」や「マイ・フェイヴァリット〜」等は非常に洗練された、完成度の高い作品です。

正直「モダン・ジャズの演奏家/表現者」として、コルトレーンは完全体でありましょう。

このままの芸風で落ち着いていても、ジャズの巨人の一人として全然高く評価されていたと思います。


「ここでこんぐらいまで自分のスタイルってのが出来上がった。ジャズという音楽を俺は自分の手でここまで極めたんだ」という自負は、多分謙虚なコルトレーンでも多少は持っておったと思います。

でも、彼の中でくすぶる情熱の炎がこう言った。

「ジョン、まだだ。まだまだ何もはじまっちゃいない!」

コルトレーンは、これまで尊敬する先輩達から多くを学んできました。

しかし、60年代になってからは自分より若いメンバー達のアプローチや、後輩のサックス吹きから大きな影響と共にショックを受けます。

この時期のコルトレーンに最もショックと影響を与えたのが、エリック・ドルフィーです。

彼の演奏は、ひとつの小節の中に、信じられないほどの音階、それも最低音と最高音を超高速で激しく行き来するような、自由奔放なフレーズをぶち込んだもので、それは当時理論的にも技術的にも「限界ギリギリ」を地で行くような鮮烈なものでした。

その余りにも個性的(今でも直接影響を受けたとか、似た感じの演奏をするという人がちょっと思い浮かばない)なプレイ・スタイルは、よくよく聴いて分析すると、セロニアス・モンクのように「理論的なことや技術をすべて習得した上でのピンポイントな”ハズし”」だということが何となく解るのですが、当時のファンや評論家は、一部を除いてドルフィーのスタイルを「あんなの気色悪い雑音だ!」「ジャズなめんな!」とクソミソに批判していました。

アルト・サックスだけじゃなく、フルートやバス・クラリネット(それまでジャズでは使われなかった低音クラリネット、コレでソロ吹くなんてまず考えられんかった)も自在に吹きこなす器用さも、かえって彼の実態をつかめないものにしていたらしく、ミュージシャン仲間(コルトレーンやチャールス・ミンガス等)からの高い評価とは裏腹に、ドルフィーにはマトモな仕事もなく、経済的にも非常に苦しかったと云います。

コルトレーンは、そんなドルフィーに「なぁエリック、仕事ないんなら俺んとこ来なヨ」と声を掛けました。

折りしもアトランティックで、凄まじい量のレコーディングを行っているその最中に、ドルフィーをスタジオに呼んで、「オレ!」という素晴らしいアルバムをコルトレーンは作り上げます(個人的にはアトランティック・コルトレーンの最高傑作と思うんです、はい♪)が、その後のアメリカ〜ヨーロッパ・ツアーのメンバーとして、ドルフィーは正式メンバーとして加入することとなります。

本日ご紹介する「Complete 1961 Copenhagen Concert」は、正にそのヨーロッパ・ツアーの音源です。

これね、いわゆるブートなんですが、もう内容が凄い凄い♪

まず、正直に言ってしまいますと、”ドルフィー入りコルトレーンのライヴ音源”は、ドルフィーの破天荒な演奏を聴くための作品です。

いやぁ、”コルトレーン者”のアタシが言うのも何ですが、単純に演奏家としての凄さはドルフィーの方に感じます。

こんなこと言うと誤解されそうでますますアレなんですが、二人は最初っから演奏というものに対する”着眼点”みたいなのが違うと思うんです。

例えば単純に「ぺー」と吹くだけでも、コルトレーンの場合だと「シンプルなフレーズでも、そこにどんだけの情念を込められるか」ということを考えていそうです。

晩年の作品になればなるほど、コルトレーンの演奏におけるパーセンテージの割合は、演奏そのものよりも、そんな”情念”の部分にシフトしているような気がします。

一方のドルフィーは、「その一音を強烈な足場として、どこまで異空間にブッ飛ぶことが出来るか」ということを、考えるとかじゃなく、もっと根源的な、本能的な感覚で捉えてるような気がするんです。

だからドルフィーの演奏には、他の演奏者にはないスピードを感じます。

それも「A地点からB地点まで」の線の加速ではなく「A地点からB地点すっ飛ばして、気が付いたらG地点にいるよアイツ!」みたいな点の瞬間移動のような、物理的にちょっとそれはどうなってるの?という類の不可思議な”速さ”です。

や、ここんところは彼の演奏をどれでもいい、聴いてもらって体感してください、「凄い!」とか「カッコイイ!」とか思わんでよろしい、とにかく「何じゃこりゃ!?」と思ってください。あ〜、心配せんでも誰だってそうなりますから、ドルフィー聴くと(笑)。

しかし、最初っから「ぶっ飛び」なドルフィーを起用したコルトレーンは偉いんです。

情念てんこ盛りの自分のソロから、ドルフィーがそれを完全に塗り替えて余韻まで打ち消すようなソロを吹きまくるだけ吹きまくらせて、更にそれに挑みかかるように、より強力な情念を乗っけた重た〜いソロを内側から引き出してますから。




【パーソネル】
John Coltrane(ts,ss)
Eric Dolphy(as,b-cl,fl)
McCoy Tyner(p)
Jimmy Garrison(b)
Elvin Jones(ds)
【収録曲】
1.Announcement By Norman Granz
2.Delilah
3.Every Time We Say Goodbye
4.Impressions
5.Naima
6.My Favorite Things [False Starts] Into Announcement By John Coltrane
7.My Favorite Things

(録音:1961年11月20日)



曲目は「ナイーマ」「マイ・フェイヴァリット・シングス」「インプレッションズ」など、60年代以降のコルトレーンの”おなじみ”のオリジナル・ナンバーんばかりです。

しかもライヴですから、これはもう4の5の言わずにどこまでもアツく盛り上がる”生”の空気と、さっきも言った「コルトレーンVSドルフィー、情念とぶっ飛びのアドリブ合戦」を身もだえしながら聴けばそれでよろしい。

「マイ・フェイヴァリット・シングス」を演奏するときに、出だしでミスっちゃって、わざわざコルトレーンが「すまんねぇ、失敗したからもいっかい」(訳は超てきとう)とアナウンスするのが聴けたり、1955年にリリースされた「クリフォード・ブラウン/マックス・ローチ」の名演で有名な「デライア」という、コルトレーンとしては非常に珍しい(他のどのアルバム、ライヴ盤でもやってませんで)曲をやってたりと、マニアライクな聴きどころもたくさんあります。

ほんの一瞬だけ在籍したエリック・ドルフィーが参加したコルトレーンのアルバムは、どれも刺激と感動の宝庫なんです♪



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 09:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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