2016年07月26日

ジョン・コルトレーン マイ・フェイヴァリット・シングス

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ジョン・コルトレーン/マイ・フェイヴァリット・シングス
(Atlantic/ワーナー)

コルトレーンの死から、来年でもう50年にもなろうとしておりますが、その間もずーーーーっと売れ続け、再発される度にベストセラーになっているアルバムがコチラ「マイ・フェイヴァリット・シングス」であります。

「ジャズの巨人」と言われ、ちょっとでもジャズが好き、或いはジャズも含む洋楽全般になじみがある方にとってはジョン・コルトレーンという名前はもうお馴染みでありますが、世の中というのはジャズ好き、洋楽好きの方が実際少数派で、ほとんどの人が「コルトレーン?何それ?」で日常を過ごしておる。

アタシはコルトレーンの素晴らしさ、そんな人達にこそ伝えたい。

や、本当に余計なお世話かも知れませんが、やはり世の中の殺伐を見ておるとそう思わざるを得ない。

あの、コルトレーンは人一倍、それこそクソ真面目に「平和」ってもんを願っておったんですね。

特に自分のバンドを持って、アルバムをガンガン吹き込むようになってからは、演奏はどんどん激しく重たいものになっていってもおりますが、それはコルトレーンなりに祈るような気持ちで懸命に音楽に向かっていたからで、アタシは単純に、そういう祈るような気持ちで演奏された音楽とか、描かれた絵画とか、詩とかそういうものは、やっぱり暗く打ちひしがれた気持ちでおる人の心に何らかの形で”届く”もんだと思って、このブログでも大コルトレーン祭、やっておるんです。

おっと、しょっぱなから話が逸れて大変すいません(汗)

んで「マイ・フェイヴァリット・シングス」なんですが、再発される度にベストセラーになるというのは、実は買う人のほとんどがコルトレーン・ファンでもなければ、強烈にジャズが好き、というわけでもない、ごくごく普通に日常を生きて、時々音楽にコミットする人達が買って行くという話をアタシは聞いて「これぞコルトレーンの理想的な聴かれ方なんじゃないか」と思っております。

売れる理由は何といっても表題曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」にあります。




あの有名ミュージカル(映画も)「サウンド・オブ・ミュージック」の、恐らくは最もキャッチーな劇中歌というのもありますが、コルトレーンのこの盤の演奏は、一時期CMやTV番組のBGMとして、それこそ頻繁に耳にしました。

一番有名なのは、JR東海の「そうだ、京都行こう」のCMですね。

京都の美しい風景と、3拍子のこのゆるやかに飛翔するような曲調がとてもマッチしていて、「あの曲は・・・?」となった方も多いと思います。

この曲、コルトレーンにとっても「運命の一曲」であり、その後も様々なアレンジでたくさんのアルバムに収録されているんですが、このアトランティック盤「マイ・フェイヴァリット・シングス」が、正真正銘の初演ヴァージョンであり、シンプルなバッキングに乗って、手に入れたばかりのソプラノサックスを、ややぎこちなく吹いているが故に、シンプルにメロディの良さとそれに続くアドリブのスッキリした味わいは、やはりこの盤でしか味わえないものであります。

アトランティックというレコード会社は、メジャー・レーベルであります。

既にジャズマンとしての人気・知名度は抜群だったコルトレーンとは、破格の金額で契約を交わした訳なんですが、コルトレーンをジャズファンはもちろんそうでない人達に知ってもらうために「他の誰もカヴァーしていないスタンダード・ナンバーをやらせてみようか」と考えていて、それならばと、当時(1960年)新しいミュージカルとして舞台ファンに人気だった「サウンド・オブ・ミュージック」の曲の譜面を恐らくはスタジオに持って行ってコルトレーンに見せたんじゃないかと思うのですが、ちょっと待ってください、映画「サウンド・オブ・ミュージック」が公開されたのはこの録音から5年後の1965年、つまりミュージカルを見ていないほとんどの人が「マイ・フェイヴァリット・シングス」を聴いて「コルトレーンの新曲かっけーなー」と思ったと言います。

んで、後で映画が公開されて「え?もしかしてコルトレーンがやってた”マイ・フェイヴァリット・シングス”ってこれのこと!?」と一度びっくりし、原曲の爽やかでかわいらしくもあるあの旋律(ジュリー・アンドリュースがまた可愛いんだ)が、ソプラノ効果も相まって、まるで中近東かどこかの民族音楽のようなエスニックな響きを醸す、ほとんど違う曲になっていることに二度びっくりした訳です。




【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
スティーヴ・デイヴィス(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.マイ・フェイヴァリット・シングス
2.エヴリィタイム・ウィー・セイ・グッドバイ
3.サマータイム
4.バット・ノット・フォー・ミー

(録音:@1960年10月21日,B10月24日,AC10月26日)


いずれにせよ「マイ・フェイヴァリット・シングス」はレコードを耳にした多くの人達に「コルトレーンの曲、いやカヴァーだけどコルトレーンの曲」と認識され、大人気の曲となりました。

とにかくコルトレーンを聴いてみたいけど、とりあえず有名なやつから・・・と思ってる人にとっても「別にジャズが好きという訳ではないけど”マイ・フェイヴァリット・シングス”はオシャレだしカッコイイし」と思っている人にとってもこのアルバムは最初の一枚としては本当にオススメです。

実はこのアルバム、全曲スタンダード・ナンバーで、2曲目のバラードも凄くいいし、これはもう有名曲をダシに、アドリブの限界に挑戦したかっただけなんじゃ?と思わせるぐらいにハードに吹きまくっている「サマータイム」は圧巻だし、小粋なナンバーをお前らよくここまでシャープで切れ味鋭い演奏に改造したなぁな「バッド・ノット・フォー・ミー」も最高という、1枚で何度でも美味しいし、聴けば聴くほど他の曲のカッコ良さも滲みてくる、深い深い一枚でもあるのです。


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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