2016年07月29日

ジョン・コルトレーン Live At The Jazz Gallery 1960

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John Coltrane/Live At The Jazz Gallery 1960 (2CD)

(RLR records)

ジャズを語る上で絶対に知ってなきゃダメな人じゃないけれど、知っていればきっと楽しい、何だか得した気分になるドラマーで、ピート・ラ・ロカという人がいます。

有名どころではソニー・ロリンズの「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」や、ジャッキー・マクリーンの「ニュー・ソイル」などに参加していて、特に「ニュー・ソイル」では”異次元”と呼ばれる、それまでのイケイケの流れガン無視の、極端に音数の少ない”間”だらけの斬新なドラム・ソロで、多くのジャズ・ファンに

「むむ・・・ピート・ラ・ロカ、ヘンなのは名前だけじゃないわい」

と思わせたツワモノなんです。

一言で言えば”ヘン”なドラマーではありますが、別にフリー・ジャズな人でもないし、エルヴィン・ジョーンズみたいに猛烈なドラミングでキョーレツなインパクトを残す人でもありません。

むしろコノ人は、普段のバッキングは、リズム・マシーンのようにカチカチした4ビートをキッチリ刻んでいるんですけど、いきなりドラム・ソロで「はぁ!?」てことおっぱじめたり、カチッ、カチッ、と刻まれるそのビートをよくよく聴くと、何か非常に病的なものを感じたり・・・。

つまり、ラ・ロカは「ジャズ史に燦然と輝く個性」ではないけれど「ジャズ史にそこはかとなく漂う個性」。

ほれ、見た目からして明らかにイカツいだとかイッちゃってるヤツよりも、見た目フツーで礼儀正しいけど「あの人本当は・・・」という人の方が何かヤバイあの感じを、その演奏のそこかしこからプンプン醸し出しているのがラ・ロカと覚えておいてくださればと思います。

はいはい、何でコルトレーンのCDの紹介なのに、何故アタシがピート・ラ・ロカの説明からクドクドと始めたかというのには、ラ・ロカはアタシがジャズのドラマーの中では一番好き、という個人的事情の他に、ほんの一瞬だけしかコルトレーンのバンドにいなかったラ・ロカが参加した音源というのは、これまで「ないもの」と思われていたのに、実は奇跡的にライヴのテープが残っていて、しかもそれがCDの時代になって初めて陽の目を見た、という実に貴重なアルバムを、本日ご紹介するからでございます。





【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
スティーヴ・デイヴィス(b)
ピート・ラ・ロカ(ds)

【収録曲】
(Disc-1)
1.Liberia
2.Everytime We Say Goodbye
3.The Night Has A Thousand Eyes
(Disc-2)
1.Summertime
2.I Can't Get Started
3.Body And Soul
4.But Not For Me

(録音:1960年7月27日)





1960年7月27日、コルトレーンお気に入りだったクラブのひとつ「ジャズ・ギャラリー」というお店での演奏を収めた2枚組のアルバムで、いわゆる私家盤というヤツなんですが、音質はこのテのものにしてはなかなかに良好で、とにかく「ピート・ラ・ロカが参加した唯一の音源」という、ややマニアックな目的で聴かずとも、コルトレーンの”アドリブの鬼”と化したアツいアツいプレイのカッコ良さが、タップリのボリュームで楽しめますんで、これはマニアならずとも、まず持っていて損はないと思います。

この頃のコルトレーンはといえば、メジャーのAtlanticと契約を果たし「さぁ、俺のバンドを組むぜ!」と、かなり張り切っていた時期であり、これぞと思った若手に声をかけてガンガンプレイしていた時期です。

この数ヶ月後にはマッコイ・タイナーは既に固定メンバーとなり、更に”最強の相棒”エルヴィン・ジョーンズが加わって、その翌年にはなかなか定まらなかったベーシストの座にジミー・ギャリソンが落ち着いて、いよいよ”黄金のカルテット”と呼ばれる、強力無比なコルトレーン・ミュージック製造マシーンが出来上がるのですが、まずはその前夜祭的な熱気が、この2枚組は凄まじくたぎっております。

聴きものは何といってもDisc-1冒頭を飾る30分越えの「リベリア」でしょう。

ラ・ロカの、かなり鋭く直線的に刻まれる”4”の疾走ビートに乗って「これでもか!」と、持てる力と煌きを総動員して、一心不乱にアドリブに狂うコルトレーン。

後年、Impulse!からは、トレーンのアドリブにどこまでも過激に反応するエルヴィンのドラムと共に長時間の吹きまくりの中で何度も何度も絶頂に達する壮絶なライヴ盤も多く出している「コルトレーン・バンドのサックスとドラムの真剣勝負長時間」の原型が、既にこのライヴで演奏されていることに、ファンとしても、単純にジャズ好きとしても、これは興奮せずにはおれません。

面白いのは、コルトレーンはガンガンに吹きまくって「もっとリズム来いよ!」と煽りまくってるんですが、ラ・ロカはその煽りを受けて、更にミニマルに4ビートを執拗に刻むんですよ。

フツーのドラマーならば、アドリブがヒート・アップするに従ってオカズを増やしたり、ビートを崩して逆に煽りをブチ込むところ、このタダモノでないドラマーは、大粒の汗を散らしながら定型を一切崩しません。

ここらへんがラ・ロカの「フツーじゃないところ」なんですよね〜。

そして23分くらいからドラム・ソロが始まるのですが、キた!キた!キた!!ラ・ロカ必殺の

「流れぶった斬り、静寂からのまったく違うビート・ソロ」

これね、聴いた人しかわからん類の超体験なんで、聴いたことない人はぜひ聴いてください。5速とか6速とかに入れて最高速で走ってる途中にスコッ、ん?ニュートラル?あ、はい、すいません、ニュートラル入りましたすいません、的な・・・・あー「サマー・タイム」でも同様のドラム・ソロが入ってるんで、これはもう聴いてください。

その他の曲はほどよくコンパクトにまとまっておりますが、コルトレーンのソロは尋常じゃないほどのイマジネーションが沸き立っていて、この時期のライヴ演奏としては二重丸です。

この後エルヴィン・ジョーンズを迎えて、正規のスタジオ盤で演奏されることになる(特に「マイ・フェイヴァルット・シングス」と「コルトレーン・サウンド」は、ご一緒に聴かれることをオススメします)ナンバーが多く、併せて聴くと驚きや発見がたっぷりありますよ。

あぁ「サマータイム」は、アルバムレコーディングの時に”あえて”を狙ってあのアレンジにしたのかと思ったら、実はこの時からもう「ハードボイルド路線」で吹かれてたのね。

繰り返し言いますが、このアルバムの目玉は「ピート・ラ・ロカのミニマルなドラミング」でありますが、やはりカッコイイのは炸裂しているコルトレーンの鮮烈かつ猛烈なアドリブ・プレイです。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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