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2016年09月07日

三上寛 このレコードを盗め!!

4.jpg
三上寛/このレコードを盗め!!
(東芝/ユニバーサル)

日本において”この人は間違いなくパンク”と呼べるアーティストの一人であるのが三上寛です。

や、三上寛は別にパンクロックやってる訳でも、ブラストビートに乗っかってギャーギャー叫んでる訳でもないし、ついでに言うとルックスも

無題.png

なわけで、決して表面的にはアタシらのイメージする「パンク」のそれとは必ずしも合致しない。

むしろ正反対の極にある人、と言ってもいいでしょう。

ふふ。。。

賢明なる読者の皆さんは、アタシがここで言いたいことはもうお分かりだと思います。

そう、この外見、そして「日本のフォークシーンに現れた異端的情念のシンガー」という前情報なんかを全部ぶっ飛ばす、強烈なカオスが、この人の歌・声・そして歌詞の世界にあるんです。つうか最初聴いた時ぶっ飛ばされました。

天気予報は今日もまた、青すじたてて冗談を繰り返す
雪なんかふらせやがって、死にたがる奴等の心情をくすぐるだけさ
ああ、何てみっともない人類の平和なんだ

−なんてひどい唄なんだ より

考えてみりゃオートバイの失恋なんて誰も唄にはしないだろうが
それに比べて人間の失恋の唄は何んて多い事だろう

−オートバイの失恋 より

縦じまのTシャツを着せてやりたい
それがダメなら、よこしまな愛でどうだ

−三上工務店が歩く より



三上寛のアルバムを、その深遠でアナーキー極まりない世界を聴き進んで行けば、まだまだこれらは序の口の歌詞ではあるんですが、もうこの言葉の意味不明な破壊力、それに恥じないほどのカオスな声の威力。そして全ての文節と単語と音と息継ぎの隙間にも、ふんだんにまぶされている毒々しい情念のドロドロ。。。

ミもフタもないことを言うと、怖い人というのはよく

「コロすぞこのやろう!」

と言いますが、三上寛の場合は

「殺してもいいじゃないか、人間だもの!バーーーン!!!!」

という人です。や、ピンとこない人はとりあえず



こんな感じ。

うん、アタシがゴタゴタ言うよりずっとミもフタもない。

とにかくこれが三上寛

フォークギター片手に、故郷青森の地霊をどっさり引き連れて、ドロドロした唄をとことん唄って、そのうちフリー・ジャズ系の人らと演ったり、寺山修司とツルんだり、ピラニア軍団の一員として「新・仁義なき戦い」なんかに俳優として出演したり、近年ではエレキギターでの弾き語りや、灰野敬二、石塚俊明とのユニット「バサラ」で爆音轟音の中、ゆるぎなくも野太い絶叫を聴かせたり、ミュージシャンとしては本当に幅が広く、人間としてはもうその枠組みにハマらなくなっていて、ほとんど妖怪か仙人の領域に達しているであろう数少ないバケモノであります。

もうそう言うしかないじゃろう。

ドロドロで過激で「えぇ!?そこまで唄うの!?」と思えるぐらいエゲツない剥きだしっぷりの三上寛、どの時期の作品も強烈なボディブローを浴びせてくれますが、最近アタシのお気に入りはもっぱら80年代のこのアルバムです。


【収録曲】
1.オートバイの失恋
2.BANG!
3.海
4.夢は夜ひらく|あしたのジョーなんかきらいだ
5.なかなか~なんてひどい唄なんだ
6.三上工務店が歩く
7.パンティストッキングのような空
8.ひびけ電気釜
9.最後の最後の最後のサンバ


ジャケットには「このレコードを盗め!! 三上寛ベストアルバム」と書いてあります。

氏のイメージとは似ても似つかない、何だかカワイイぬいぐるみの写真を見てもうすでにヤラレた気分になるんですが、中身はそれ以上にヤラレた気分になります、風俗に裸で入ってきて、散々暴れてあちこちに○○して、カネは一銭も払わない客です、ハイ・・・。

これね、アタシは何も知らないで、クレジットを見たら全部初期の代表曲ばかりなんで、てっきり本当に「初期のアンダーグラウンドフォーク時代の音源を集めたベスト・アルバムだー」と。

そしたらアナタ、これ、どの曲も全部新録で、しかも原曲のアレンジくそ食らえの、やたらポップでファンキーでナウい、ヒャラヒャラなアレンジが施されてるんですよ。

もうね、これね、ディスコですよ。しかも、ギラッギラのミラーボールに照らされたオッサン達が全員フンドシで汗ねっとりかきながら、密着し合って踊ってるディスコ。

それまでアタシは、生楽器とか、エレキでもすごくトンガったダイレクトな歪みの音をバックにした三上寛しか聴いたことなかったから、正直氏の破天荒な歌世界とあからさまに”にゅーうぇーぶ”なサウンドとの無理矢理な融合のエゲツなさに「おぇっ!」となったんです。

しかし、毒をもっては何とやら、この違和感バリバリのエゲツなさこそが、真面目にアンダーグラウンドなサウンドぶちかますより百倍パンクだと、おっさんになった今しみじみと思いますねぇ。。。

このアルバムのミもフタもないポップでエゲツない質感、何かとすごく似てると思ったら、アルバート・アイラーの「ニュー・グラス」と似てる。と、最後にトドメのミもフタもないことを言っておきます。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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