2016年09月21日

ソニー・スティット スティット・プレイズ・バード

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ソニー・スティット/スティット・プレイズ・バード
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)

ジャズ史にその名を残す、アルトとテナー・サックスの職人プレイヤー、偉大なる”現場第一主義”のアドリブファイター、ソニー・スティットを、ここ数日聴きまくっております。

さて、昨日は「ソニー・スティット聴くならまずコレだよ」と、1949年〜50年にビ・バップの錚々たるメンツと共にレコーディングした「スティット、パウエル&J.J.」をご紹介しましたが、やっぱりスティットのアルトが聴きたい!もっと長時間スティットのアドリブに酔い知れない!という方に、スティットがアルトのワン・ホーンでかっとばした名作をご紹介致しましょう。





【パーソネル】
ソニー・スティット(as)
ジム・ホール(g)
ジョン・ルイス(p)
チャールス・デイヴィス(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.オーニソロジー
2.スクラップル・フロム・ジ・アップル
3.マイ・リトル・スエード・シューズ
4.パーカーズ・ムード
5.オウ・プリヴァーヴ
6.コ・コ
7.コンファーメイション
8.フーティ・ブルース
9.コンステレーション
10.ナウズ・ザ・タイム
11.ヤードバード組曲

はい、スティットが円熟の40代に突入する前の1963年に、レコーディングされた「スティット・プレイズ・バード」。

『コルトレーン・ジャズ(夜は千の眼を持つ)』とよく似たジャケットですが違います。

おっ?このタイトルはもしや・・・? と思ったそこのアナタ、はい正解です。

このアルバムこそが、スティットがかつて散々「似てる」と言われてたチャーリー・パーカー(”バード”はパーカーの愛称です)の楽曲をあえてアルバム単位で演奏し、堂々たる吹っ切れのアルトによるアドリブで「おぉ、すげぇや!やっぱスティットはスティットだぜ!」と世のジャズファンに言わしめたアルバムなんですね。

この時代というのは、既にパーカーが没して8年経っていた頃で、ジャズもビ・バップやハード・バップから、マイルスやコルトレーンらが新しく提唱したモード・ジャズや、より自由度の高いフリー・ジャズの時代に入っておりました。

サックスの分野においても、プレイヤーはチャーリー・パーカーの影響を受けて当たり前、その上でいかに自分なりの新しいスタイルを構築していけるかがとても重要なテーマになっていた時代です。

つまりはパーカー直系のビ・バップ・フレーズだけをやっても、聴衆にはヘタすれば「あ、はい」で終わってた厳しいといえば非常に厳しい時代です。

そんな時代にあえてストレート・アヘッドなモダン・ジャズ、しかもこの時点で既に色んな人に演奏し尽くされていたであろうチャーリー・パーカーの楽曲を、リアルタイムに「似てる」と言われてた当の本人が「おぅ、やってやるぜぇ」と、アルトかついでスタジオに入るって、何かすごく男気を感じませんか?アタシは素直にカッコイイと思います。

さて、肝心の演奏内容ですが、これが本当に素晴らしいのは言わずもがな。

「確かにストレートな、ひと昔前のビ・バップ全盛の勢いを感じさせるアルバムだけど、決して予定調和でも古臭くもない、鮮烈な仕上がり」

で聴く人を酔わせてくれます。

ここで何のけれん味もなく、好きなように全速でアルトをかっ飛ばすスティットのプレイは

「どうだ!俺はバードと違うだろう」

というよりは

「似てるって言いたいヤツぁ言えばいいさ、俺ァやりたいよーにやるだけだぜ」

と、実に男らしい爽やかさを感じさせます。

あのね、結論から言えばこのアルバム聴く限り、スティットとパーカー、”ビ・バップが根っこにある”というところ以外は全然似ていない。

たとえばこのアルバムに入ってる「コンファメーション」、これ、4分38秒を途中間奏ナシで一気に吹き切る、このアルバムの最高にゴキゲンなナンバーなんですが、パーカーのオリジナルは



アドリブに入ってから、いきなりトップギアが入ってます。つまりぶっ飛んでるんですね。何度聴いてもアドリブだけが何か別の楽曲のようにも思えます。「パーカーはアドリブが凄い!」てのは、この辺のテーマからいきなり遠方に「スコーン」と飛んでいくかのような独特のアプローチにあるんだろうなと思います。

一方でこのアルバムに入ってるスティットの「コンファメーション」



「ぱぱっつぱぱらららぱぱららぱぱ♪」という印象的なテーマ・メロディを、あくまで軸に置いて、そのメロディを徐々に分解しながら丁寧にギア・チェンジを繰り返してテンポ・アップ/ダウンを巧みに繰り返しながら飛距離を伸ばしている、実に”つじつま”の合ったアドリブ解釈です。

アタシはもちろんパーカーも大好きですし、ここで「どっちが優れているか」とかいうつまらない議論をするつもりはありません。パーカーにはアドリブに突入した瞬間、聴き手を狂わせる魔力があるし、スティットには「曲とアドリブ」の、その大胆で綿密な繋がりを聴き手に認識させながらグイグイと加速していく楽しさがあります。

だもんで、もし、ジャズが好き、もしくは興味があるという人は、パーカーもスティットも楽しみながらじっくりと愛聴して欲しいです。もちろん両者の違いなんて細かい事は気にしないでもジャズは楽しめますが、この”違い”が分かったら、ジャズのサックスを聴く時もっと豊かな楽しみ方が出来ると思いますよ♪

さて、スティットのアドリブは全編で冴え渡り、ジャズ激動の60年代にそのオリジナリティに溢れるストレートなプレイで「やっぱスティットはすげぇよ」と多くの人に思わせたと同時に、チャーリー・パーカーという優れたアーティストの楽曲の素晴らしさを、このアルバムはジャズの歴史にしっかりと刻み付けました。

スティットのプレイはもちろん素晴らしいんですが、アタシはジム・ホール、ジョン・ルイス、チャールス・デイヴィス、コニー・ケイという、フロントを煽るタイプでは決してないけれども、常に一歩引いた丁寧なプレイで主役を引き立て、作品全体の空気を上質で何か高級なものにしてくれるバックの好演もすごくプラスに作用していると思います。

特にジム・ホールのスイートな音色と”タメ”の効いたフレーズ運びは「パリパリパリ!」と飛ばすスティットと、気色は全く違いますが、「パリパリパリ!」の後にこの「てろ〜ん♪」と大人なギターが響くから良いのだ。






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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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