2016年10月17日

ディス・イズ・クラレンス・カーター

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クラレンス・カーター/ディス・イズ・クラレンス・カーター
(Atlantic/ワーナー)

訳も分からずブルースやジャズの音盤を漁りまくっていた頃は「ジャケ買いをしてみたら違う感じで驚いた」ということが結構ありました。

60年代後半から70年代にかけて流行した”サザン・ソウル”の中核を成すソウル・シンガー、クラレンス・カーターの実質的なファースト・アルバム「ディス・イズ・クラレンス・カーター」も、そんなアルバムのひとつです。

グラサンをかけた黒人のオッサンが、アコースティック・ギターを構えている、これはどう見ても弾き語りか、限りなくシンプルな編成のカントリー・ブルースを想像するじゃありませんか。しかーし!聴いてみてびっくり、ワクワクでレコードの針を落として最初に出てきたのは、弾き語りとは程遠いバンド・アレンジのソウル・バラード。それからギットギトにタイトなリズムが炸裂するファンキー・ナンバー(!!)

ををぅ・・・クラクラする。なんてなんて、濃いオッサンさんなんだろう。

これが、クラレンス・カーターを最初に聴いた衝撃でした。

いや、完全にブルースだと思っていたものが予想外にソウルで、でも、その感情表現丸出しのゴリゴリとしたパンチの効きまくった、一周回って特濃なブルース・フィーリングが充満するヴォーカルが、予想以上にブルース(R&B)で、これは素晴らしいものを知ったと思ったものです。

クラレンス・カーターは1936年にアメリカ南部アラバマ州で生まれます。生まれつき盲目というハンデを背負いながらも、ライトニン・ホプキンスジョン・リー・フッカーといった、戦後ブルースのスター達のレコードに大きな感銘を受け、シンガー/ギタリストとして身を立てることを志し、50年代にはマッスルショールズにある”フェイム・レコード”にデモテープを持って行き、初期にシングルをこのレーベルで吹き込むことになるんですが、このフェイム・レコードがちょい後に、サザン・ソウル全盛期をメンフィスのスタックスと一緒に築き上げた”マッスルショールズ・サウンド”を生み出すレーベルになります。

最初は大学時代の友人で、同じく盲目のカルヴィン・スコットと”カルヴィン&クラレンス”というデュオで活躍しますが、カルヴィンが66年に交通事故に遭い、引退(72年に復活してはおりますが、コンビ再結成には至っておりません)。

ソロになってからはもう爆走するかのように、そのパンチの効いたヴォーカルに、ちょっとスケベェでワルなキャラクターを全開にして、60年代から70年代を駆け抜けて、その後低迷の時期もあったけれど、今現在(2016)も現役で唄いつづけている、とにかく元気なオッサンなんですが、とりあえずこのファースト・アルバムは「R&Bからソウル」の時代の独特のアツい雰囲気と、最新の流行の中に、しっかりとディープなブルースの伝統が根付く、サザン・ソウルのコアなスピリッツがタップリ聴けます。




【収録曲】
1.愛を信じて
2.ルッキング・フォー・ア・フォックス
3.スリッピン・アラウンド
4.愛する資格
5.アイ・キャント・シー・マイセルフ
6.ワインド・イット・アップ
7.パート・タイム・ラヴ
8.スレッド・ザ・ニードル
9.スリップ・アウェイ
10.ファンキー・フィーヴァー
11.シー・エイント・ゴナ・ドゥ・ライト
12.セット・ミー・フリー


バラードが得意なクラレンスですが、そのバラードも単なるお行儀の良いラブ・ソングじゃなくて、堂々と「オレと不倫しようぜ」とか、そういうものが多くて、その何ともおおらかであけすけなところ、お下劣さも味になるところが南部のシンガーらしくてとってもいいんですわ。

この次のアルバム以降は、実にクサい”語り”や、トレードマークになる”笑い声”もタップリ入ってきて「クラレンスたまらん!サザンソウルうぇ〜い!!」な人(はぁいアタシです)にとってはもうズブズブの中毒性が増幅するんですけど、全然知らない人が聴いて、そのヴォーカルのパンチに素直に感動し易い、サザン・ソウルの奥深い世界に入り易いアルバムはこれです。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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