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2016年11月07日

ジュニア・ウェルズ フードゥーマン・ブルース

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ジュニア・ウェルズ/フードゥーマン・ブルース
(Delmark/Pヴァイン)

ブルースという音楽を「お、これは何か特別な音楽かも知れない」と、思って聴き始めたのは中学生の時です。

しかしその頃はまだ「激しい音楽=ロック(パンク)・深くて渋い音楽=ブルース」という先入観があって、ブルースは主に弾き語りものばかり聴いていました。

そん時のお気に入りは名コンピ『アトランティック・ブルース・ギター』で知ったミシシッピ・フレッド・マクダウェル、ブラインド・ウィリー・マクテル、ジョン・リー・フッカー、そしてボブ・ディラン経由で知ったレッドベリー、それぐらいのもんでしょう。

いわゆる”バンドもの”のブルースとなると、親父に教えられて聴いてたB.B.キングにアルバート・キング、マディ・ウォーターズと、これも『アトランティック・ブルース・ギター』で感動したスティーヴィー・レイ・ヴォーン、T・ボーン・ウォーカーぐらい。

正直モダン・ブルースは最初の頃「何かどの曲もおんなじだなぁ・・・」と思い込んでたので、そんなにハマらんかったんです。上京して都会に出て、それなりに大きなレコードショップとかでブルースのコーナーを物色するようになっても、興味は戦前ブルースにばかり行って、モダン・ブルースやシカゴ・ブルースは「うぅん、ちょっと渋過ぎるかなぁ、後でいいや・・・」と、ついつい後回ししてました。

んで、短大を卒業して都内某レコードショップで丁稚するようになります。そしたらAさんというブルースやブルースロックが大好きで、ジミヘンを神と崇める上司と出会い、まぁ職場が職場なので、好きな音楽の話で盛り上がった時に「君、戦前ブルースには凄く詳しいのに、ブルースの名盤のことは全然知らないんだなぁ・・・」と。

あ、これはAさん嫌味で言ったんじゃないですよ。「ブルース」つったら、フツーはロックから入ってモダン・ブルース、シカゴブルースと経て戦前に行く若いヤツがほとんどなのに、何で君はいきなり戦前モノから入ってしかも戦後の名盤ほとんど知らないとか、面白いヤツだなぁと、何か面白がってくれたんです。

自身もギターを弾くAさんには、色々と可愛がってもらって、休日にはちょいとスタジオでセッションなんかしたりしながら、アタシの知らない戦後ブルースのことなど、色々と教えてもらいました。

その時

「いや、バンドでブルースやるんだったらコレは聴いとかないと!っつうアルバムがあるよ」

と、聴かせてもらったのがジュニア・ウェルズの「フードゥーマン・ブルース」です。

「コレはヤバイぜ、特にバディ・ガイが凄いしバンド・サウンドとしても最高だよ」

と、ピカピカのアナログレコードを、Aさんの家で聴かせてもらったんですが、コレ、衝撃でした。

”バンド・ブルース”って言うから、てっきり派手な音でノリノリのハープ吹きまくり、バディ・ガイのギター弾きまくりのドカ汗サウンドが出てくるのかと思ったら

・音数は少ない、いや、少ないというより”スッカスカ”

・活きのいいアップテンポのナンバーにも、怒涛のスロー・ブルースにも、おんなじように漂うヒリヒリした緊張感がヤバい

・ジュニア・ウェルズのねっとりした神経質極まりないヴォーカル

・それでいて妙な中毒性のあるバンドのグルーヴ感

いや!一体こりゃ何なんだ!!でしたよ。確かにヴォーカル(&ハープ)+ギター+ベース+ドラムスだけの4人編成で、物理的に音数少ないのは分かる。けれども何て言うんでしょう。ジュニア・ウェルズの、まるで今ちょっと人殺してきたかのような、ドスを押し殺したヴォーカルに合わせるかのようにセッティングされたバディ・ガイのドンシャリで、あえてバッキングをしないで声やハープに執拗にオブリガードでテロテロ絡むギターと、じわじわ”アゲない”寡黙なベースとドラム。これは怖い!怖いぐらいにカッコイイ!すいません、コレ下さい。いや、店じゃねぇんだから、あ、じゃあ明日注文します。の流れが3秒で来ましたね。





【収録曲】
1.Snatch It Back and Hold It
2.Ships on the Ocean
3.Good Morning Schoolgirl
4.Hound Dog
5.In the Wee Wee Hours
6.Hey Lawdy Mama
7.Hoodoo Man Blues
8.Early in the Morning
9.We're Ready
10.You Don't Love Me,Baby
11.Chitlin Con Carne
12.Yonder Wall


実際にこの「フードゥーマン・ブルース」は、1960年代にリリースされた、いわゆる”モダン世代のシカゴ・ブルース”のアルバムの中では突き抜けた傑作・名盤として、世界中の多くのブルースファンを夢中にさせてきたアルバムです。

ちょいと専門的な解説をすれば、当時シカゴ・サウスサイドでも”アイツらはクレイジー”と評判をかっさらってたジュニア・ウェルズ(31歳)とバディ・ガイ(29歳)が、かつての親分であるマディ・ウォーターズからの影響から脱して、マディが打ち立てた”エレクトリック・ミシシッピ・デルタ”な泥臭いブルースではなく、R&Bの要素を取り込んだゴージャスでファンキーなものでもなく、敢えてスッカスカの音と、呑んで騒いで盛り上がるためのバンド・ブルースではなく、聴く人を精神的限界に追い詰めるような、非常に陰鬱でかつ攻撃的なサウンドで「どうだ!コレがブルースの本当のヤバさだ!!」と、まるで世界中に冷たい刃物の切っ先を突き付けているかのようであります。

”バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ”のコンビはこのアルバムの成功もあって、その後も70年代、80年代、90年代とちょこちょこライヴをしたり作品を出してはブルースファンをフィーバーさせておったのですが、この時期のデルマーク盤を凌ぐヤバさ/緊迫感を持ったサウンドは、遂に最後まで再現されることはありませんでした。

間違いなくブルースの名盤中の名盤ではありますが、1965年という時代を考えると、当時全盛を極めていたロックへの、ブルースからの挑戦状とも受け取れるサウンドです。特にバディ・ガイは、クラプトンやジェフ・ベック、ジミヘンら、ロックサイドのウルトラスーパー超絶ギター先生達に物凄くリスペクトされておったけど、この時はもうギラギラした危ない対抗意識をブルースの連中はロック側に燃やしておったのだな〜・・・とか思って聴くのも楽しいですし、この正体不明の緊迫感はより身に迫ってきます。



(音スッカスカなのにキレッキレ!)


ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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