
ローリング・ストーンズ/ブルー&ロンサム
(Polydor/ユニバーサル)
「ローリング・ストーンズ、11年ぶりのアルバムをリリース!今回は何と全曲ブルースのカヴァー・アルバム!!」
という宣伝の記事をちょいと前に見て
「おぉ〜、ストーンズが遂にブルースのアルバム出すんか〜、ふぅ〜ん♪」
と、嬉しい気持ちにはなりました。
そりゃあストーンズといえば”ブルース”だし、彼らの音楽はもちろんブルースを抜きには語れませんし、ブルースといえば、彼らが受けた影響と同じぐらい、与えた影響のデカさについても、何かにつけてアタシは目にしてますし読んでますし、実際に戦後のシカゴで電気化というブルースの大革命をもたらして一時代を築きつつも、ロックンロールの台頭によって職を失い欠けていたレジェンド達へのリスペクト、そしてブルースという音楽のカッコ良さをあらゆるところで公言し、実際に人気絶頂だった自分達のコンサートに招いたりして、アメリカ本国で消えかけていたブルースの火を、イギリスからの強力な援護射撃で再び燃え上がらせた・・・。
んんにゃ、リアルタイムでブルースを聴かずに育った世界中の若者に、ブルースを広め、教えて紹介した一番の功労者は、他ならぬローリング・ストーンズであると断言出来ましょう。
そして、ストーンズが過去にカヴァーしたブルースの名曲「ユー・ガッタ・ムーヴ」「ラヴ・イン・ヴェイン」等の、背筋がゾクゾクするほどにカッコ良く、得体の知れないディープな”ヤバいフィーリング”も、アタシはもちろん知っております。皆さんも多分、この記事読んでおられる方はそんなこととっくにご存知でしょう。
「ストーンズがブルースをやる、そりゃあ悪かろうはずがない」
とは思ってはいたんですが・・・。
先に言っときます
ここまでカッコイイとは思ってもいなかった!
や、カッコイイとは思っていたんです、繰り返しますがそりゃあ悪いわけがなかろうと。
それでもどこか心の中で
「もうオレらもトシだし、そろそろ懐かしいブルースでも気楽にやろうかね」
「あぁそりゃいいね、そうだ、せっかくだからクラプトンも呼ぼうか」
てな感じの、すっかり落ち着いたじいさん達が、何かこう和気藹々でリラックスしてセッションしている音みたいなのを、心の片隅で想像してたんですね。
言ってもストーンズももう70過ぎのじいさんですよ、いくら昔ヤンチャしまくって、ライヴでは相変わらずミック・ジャガーがピョンピョン飛び跳ねてるとは言ってもですよ、さすがに少しぐらい落ち着いとらんとおかしかろうと。ほぼ同い年のウチの親父なんか見てると「あぁ、若い頃どんなに無茶な人間だったヤツでも老齢になるとそれなりの渋みが出てくるんだな〜」とかしみじみ思っとるリアルタイムのアタシには、ぶっちゃけますとそこまでの想像力しかなかったんです。
えぇと、アルバムが出ました。そんで何かプロモも出てますと・・・・。はい、わかりました。じゃあちょっくらストーンズの渋いブルースでも聴いてみましょうか・・・。
何ですかコレは!!!!!!
ギラギラエッジの効きまくった、やさぐれじゃないですか!!
全然落ち着いてなんかないし、枯れてもない。いや、渋いけど、じゅーぶんに渋いけど、なんつうんだろう、上手く言えないけどこの音は間違いなくブルースという音楽が、現在進行形でヤバいクレイジーな音楽だった頃の空気をギラギラ放っていて、聴く人の気持ちを確実に刺激して、何やらイカガワシイ衝動を呼び起こしてしまう音です。
気合いの入ったロックファンの方々には「何を今さら、それがストーンズだろ?」と言われそうですが、はい、そうですその通りです。でもこの滅茶苦茶"本気"が詰まったストーンズ渾身のブルース・アルバムの素晴らしさは、それだけじゃない。
【収録曲】*カッコ内はオリジナル曲収録アルバム
1.ジャスト・ユア・フール (リトル・ウォルター「コンフェッシン・ザ・ブルース」)
2.コミット・ア・クライム (ハウリン・ウルフ「ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ」)
3.ブルー・アンド・ロンサム (リトル・ウォルター「ヘイト・トゥー・シー・ユー・ゴー」)
4.オール・オブ・ユア・ラヴ (マジック・サム「ウエスト・サイド・ソウル」
5.アイ・ガッタ・ゴー (リトル・ウォルター「コンフェッシン・ザ・ブルース」)
6.エヴリバディ・ノウズ・アバウト・マイ・グッド・シング (リトル・ジョニー・テイラー「エヴリバディ・ノウズ・アバウト・マイ・グッド・シング」)
7.ライド・エム・オン・ダウン (エディ・テイラー「イン・セッション・ダイヤリー・オブ・ザ・シカゴ・ブルースマン1953-57)
8.ヘイト・トゥ・シー・ユー・ゴー (リトル・ウォルター「ヘイト・トゥー・シー・ユー・ゴー」)
9.フー・ドゥー・ブルース (ライトニン・スリム「ハイ・アンド・ロウダウン」
10.リトル・レイン (ジミー・リード「アイム・ジミー・リード」)
11.ジャスト・ライク・アイ・トリート・ユー (ハウリン・ウルフ「チェンジ・マイ・ウェイ」)
12.アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー (オーティス・ラッシュ「ザ・コブラ・セッションズ」)
スタジオに入り、ほぼ一発録りで、たった3日で作り上げたこのアルバムは、選曲の妙(ただブルースの有名曲を集めただけじゃない)もさることながら、鳴っている音の質感が、もうなんか50年代60年代のレコーディングを聴いているみたいな質感があります。
特に原曲アーティストの唄い方と、リトル・ウォルターのハープの音を、ゾッとするほどの再現度でブチ込んでくるミック・ジャガーと、ついこの間サニーボーイ・ウィリアムスンの記事で「チェス・レコードの録音はドラムの録り方が本当に素晴らしい」とのたまったばかりですが、"それ"のニュアンスを信じられない生々しさで聴かせてくれるチャーリー・ワッツのドラムにはもう溜息しか出ません。
ミック、歌上手いじゃん・・・。
それと、ストーンズの、特に最近のアルバムは「うわー、カッコイイ!」な曲と「オッサン、やる気はあるのか」な曲が絶妙なバランスで混在してて、それが結果的に「えへへ、やる気がないのもストーンズだよね♪」になっていて、大変に微笑ましかったんですが、このアルバムに関しては、全12曲、バカみたいに気合いが入っていて、もうギラギラしたまんま最後まで聴かせます。
凄いです、アタシはローリング・ストーンズを知ったのが1990年頃でしたが、その時点から「新作」として出たストーンズのアルバムから、これほどの本気とやる気を感じたことはありません。
色々と興奮気味で書いてます、あいすいません。もうちょいとじっくり聴いて色々と冷静になったら、ブルース目線から見た詳細なレビューも書けるかもですが、多分アタシはそれしないと思います。
願わくばこのアルバムを聴いて「ブルースっていいなオイ!」と思った人が、一人でも多くブルースの底無し沼にハマりますことを。。。
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