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2017年03月03日

ブッカ・ホワイト パーチマン・ファーム

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ブッカ・ホワイト/パーチマン・ファーム
(ソニー・ミュージック)

皆さんこんばんは、本日もソニー・ミュージックによります気の狂った¥1080で古今の素晴らしいギター・ミュージックを聴こう!という最高の再発企画「ギター・レジェンド・シリーズ」からのセレクトでお送りいたします。

昨日はサン・ハウスの戦後録音ながらこれはもう弾き語りブルースの作品としては恐らく歴史上5指に入るであろう名盤であります「ファーザー・オブ・ザ・フォーク・ブルース」を紹介しました。

本日もブルース、しかもサン・ハウスに負けず劣らずに濃厚でインパクトのある名盤をということで、これもLP時代から「コレは聴いとかんといかんでしょ」と、多くのブルースファンをして言わしめたブッカ・ホワイトの「パーチマン・ファーム」でございます。

これもまずジャケットに惹かれますよね。ドカーンと超アップで貼られたイカツいおっさんの顔、吸い込まれるような深い眼差しと、よく見ると折れ曲がってる鼻など、何も書かれてはおりませんが、この人の恐らくは相当にハードなものであっただろう人生が刻まれたジャケットです。

ちなみにアタシ"おっさん"などと言ってますが、このデカデカと写っている男こそがブッカ・ホワイト。

大好きなブルースマンであり、サン・ハウス、チャーリー・パットン、ロバート・ジョンソンらと共にわが国では「デルタ・ブルース四天王」と特別に称えられておりますが、実際にブルースの大源流であるミシシッピ・デルタ・ブルースを代表する一人であり、独自のパーカッシブなデルタ・スタイルを情感豊かなボトルネック・スライドで発展させた凄い人です。

その後のモダン・ブルースへの影響という意味でも、イトコのB.B.キングが

「幼い頃にブッカ・ホワイトのスライドをよく聴いてたね、本当に素晴らしいニュアンスのギターだったよ。でも私にはどうしてもボトルネックを上手く使いこなすことが出来なくて、チョーキングであのニュアンを再現しようと思ったんだ」

と、証言しているように、戦後主流になったチョーキング/スクィーズ・ギター奏法に与えた影響もかなりデカいということも特筆に価することでしょう。

さてこのブッカ・ホワイト、1911年にミシシッピに生まれ、十代の頃にチャーリー・パットンの演奏を生で観て「オレもこの人のようになりたい」と憧れ、そうこうしているうちに早いうちからパットンからブルース・ギターの手ほどきを受けるようになっていたといいます。。

ブッカがブルースに目覚めた1920年代後半のアメリカは大不況のまっただ中、食うために音楽を選んだブッカもその例外ではなく、より多くの場所で稼ごうと、貨物列車を乗り継いでの旅を続け、その行動範囲は北部シカゴにまで及ぶ広いものでした。

行く先々の街でブルースを歌いながら、ブッカはその強い腕っぷしを買われてボクサーとしても活躍。その日暮らしの典型的な放浪のブルースマンなライフスタイルを生きていたブッカですが、そういう生活に付き物の酒や女に関わるトラブルにやはり彼も巻き込まれてしまい、1937年ミシシッピのとある道で、恨みを持って待ち伏せし、襲ってきた男の膝をとっさに銃で撃ち抜いて逮捕され、刑務所に服役することになります。

この時彼が収監されていたのが、南部で悪名の高かったパーチマン農場刑務所であります。

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そう、本日ご紹介する「パーチマン・ファーム」は、実際にチェインギャングとして服役していた経験を基に作られた、刑務所暮らしと酒や女、旅にまつわるハードライフのブルースを渾身の魂を込めたブルースで綴った作品なのです。



(ギター・レジェンド・シリーズ)



【収録曲】
1.パインブラフ・アーカンソー
2.シェイク・エム・オン・ダウン
3.ブラック・トレイン・ブルース
4.ストレンジ・プレイス・ブルース
5.ホェン・キャン・アイ・チェンジ・マイ・クローズ?
6.スリーピー・マン・ブルース
7.パーチマン・ファーム・ブルース
8.グッド・ジン・ブルース
9.ハイ・フィーバー・ブルース
10.ディストリクト・アターニー・ブルース
11.フィクシン・トゥ・ダイ
12.アバディーン、ミシシッピー
13.ブッカズ・ジターバグ・スイング
14.スペシャル・ストリームライン


録音は収監前の1937年の2曲と釈放後の1940年の12曲。

言い伝えによると、ブッカはこの発砲障害事件で無期懲役の判決を言い渡されておりましたが、刑務所内で演奏を披露して恩赦を貰えて釈放されたとも、レコーディングのために脱獄したとも言われております。

また、戦後の”ブルースの生き字引”とも言われている放浪の9弦ギター弾き、ビッグ・ジョー・ウィリアムス

「ブッカが逮捕されたのは1937年だ。確かヴォカリオン・レコードがヤツの曲を2曲録音している時にミシシッピの保安官がスタジオに乗り込んで、ヤツぁそのまんま持って行かれたのよ」

と、インタビューで答えております。

その真偽はともかく、ここで聴かれるブッカのブルースは、言われなくても間違いなくハードライフの苦悩や葛藤が、身もすくむような緊張感で刻まれた、特別なリアリティの溢れるものです。

1曲目の「パインブラフ・アーカンソー」では「フゥゥエーゲラップザモーニン・・・」と、裏声から入ってくるんですが、激しく高音をかきむしるスライドと相俟って、コレが何度聴いても鳥肌が立ちます。

また、伝統的なミシシッピのダンス・ソング(ミシシッピ・フレッド・マクダッウェルやR.L.バーンサイドも唄ってる)「シェイク・エム・オン・ダウン」も、軽快なアフタービートながら、どこか重くやるせない情感があります。

ブッカの”ミシシッピ・デルタ・スタイル”は、彼が多大な影響を受けたチャーリー・パットンやサン・ハウスから、ラフで荒々しいボトルネック奏法と、強靭なビートのキレは受け継いでおりますが、よくよく聴くとそのギターはとても繊細で、感情変化の微妙な”揺れ”をも、ボトルネックのちょっとしたフレーズの小技や余韻が捉えて表現しているようであります。

60年代に再発見されて以降、音源も映像もたくさん残っておりますが、戦後は豪快な味わいが増した感がありますので、本作での荒々しさと繊細さが独特の緊張感の中で混ざり合った演奏というのは、他で味わえない独自のものだと思います。

いずれにせよミシシッピ云々はこの際関係なく、戦前に残されたブルースすべての音源の中でも特異なリアリティに溢れたブッカ・ホワイトの「パーチマン・ファーム」。これは全てのブルース好きにサラッとでも耳を傾けて頂きたい珠玉の傑作です。

うん、全然”サラッと”は聴けないとは思いますが。。。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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