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2017年03月07日

メンフィス・ミニー フードゥー・レディ

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メンフィス・ミニー/フードゥー・レディ
(ソニー・ミュージック)

カワイイ系の女の子がギターを持って自作の曲を唄うというのは、今やもう当たり前です。

我が国でも中島みゆき、藤圭子、椎名林檎、YUI、Miwaとか、いわゆる”シンガーソングライター”と呼ばれるジャンルでカッコ良くギターを持って唄う人は多く、このジャンル(?)の支持は40年ぐらい厚いものがありますが、こういった流れが出来たのって、もしかしたら戦後のフォーク・ブーム以降のことなんじゃないかと思います。

そのちょっと昔といえば「女性は歌を唄うかピアノを弾くものだ」という、まぁこれは古い時代の考え方なんで、そう目くじらを立てんで欲しいんですが、とにかく世界的にそういうのがあった。

戦前なんか女性アーティストのほとんどは、ヴォーカルかダンサーぐらいのもんで、例えばブルースの録音の一番古い年代になる1920年代なんかは、綺麗にドレスアップしたブルースウーマンが、楽器を演奏する野郎共を従えた”クラシック・ブルース”なるブルースがまず流行り「あぁ、ブルースってそういうもんだね」という認識が一般的で、ましてや女がギター弾くなんて考えられなかった。

あ、保守的な「女はどうこう」という考え方が色濃く残っていた戦前の話ですからね。

ところがそんな時代に、女だてらにカッコ良くギターを持って、いわゆるレコード向けのお上品な”クラシック・ブルース”ではない、パンチの効いたブルースを唄う人がおりました。

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そのカコッコイイ姐さんが、本日ご紹介するメンフィス・ミニー。

これも今回ソニーから¥1080のスペシャル・プライスでリリースされた「ギター・レジェンド・シリーズ」からの再発なんですが、メンフィス・ミニーはまずはさておき、とにかくギターが上手いんです。

今回「戦前ブルースの単なるリイシューじゃなくて、ギター特集の一環としてメンフィス・ミニーの”フードゥー・レディが出るよ」という情報をキャッチしたときにアタシは

「ははぁ、流石ソニーさんはわかってらっしゃる。確かに戦前ブルースの”ギター名手”といえばたくさんいるけど、メンフィス・ミニーは文句ナシにその中の、しかもかなり上の方に入るもんね」

と、感心してムチウチになる60歩手前ぐらいまで激しく頷きました。

最初に聴いたのが19の時ですね。

小出斉さんの名著で「ブルースの世界」という本がありまして、コレ、初心者には丁度良いボリュームのガイドブックなんですけど、コレで「フードゥ・レディ」が紹介されてて

「む、コレはギターに関しての記述に何か力が入ってるぞ、小出斉さんもギタリストだから、コノ人がここまで絶賛するからには、単なるもの珍しさだけじゃなく、このメンフィス・ミニーって人は本格的に聴かせる実力派に違いない」

と、アタシもほれ、へたっぴぃですが一応ギターも弾きますので、その”楽器やる者の勘”みたいのが働いたんでしょう。すぐにCDを探して購入して聴きましたところ、その気風のいい唄いっぷりと、芯のあるギタープレイにすっかり魅了されました。



(ギター・レジェンド・シリーズ)



【収録曲】
1.DOWN IN THE ALLEY
2.HAS ANYONE SEEN MY MAN?
3.I HATE TO SEE THE SUN GO DOWN
4.ICE MAN (COME ON UP)
5.HOODOO LADY
6.I’M A BAD LUCK WOMAN
7.CAUGHT ME WRONG AGAIN
8.BLACK CAT BLUES
9.GOOD MORNING
10.MAN YOU WON’T GIVE ME NO MONEY
11.KEEP ON EATIN’
12.I’VE BEEN TREATED WRONG
13.GOOD BISCUITS
14.AIN’T NOUSE TRYIN’ TO TELL ON ME (I KNOW SOMETHING ON YOU)
15.MY BUTCHER MAN
16.MY STRANGE MAN
17.IF YOU SEE MY ROOSTER (PLEASE RUN HIM HOME)
18.MY BABY DON’T WANT ME NO MORE
19.PLEASE DON’T STOP HIM
20.I’M GOING DON’T YOU KNOW


これも偏見だったんですが「まぁ、ジャケットでギター持ってるけど、バックにはバンドがついてて、当然リードギター弾くような名手がいて、ミニーさんのギターは言っても唄に合わせてぶんちゃかやってる程度のもんだろう」と、アタシ完全にナメてたんです。

ところがどっこい、ミニーさんのブルースは、想像していた「何となくシティ・ブルース&和み系」のそれではなく、ブルースの泥臭さ、アクの強さも十分に感じられるけど、その演奏は実にしっかりしていて素人臭くない。

強いていえば”洗練されたカントリー・ブルース”或いは”泥臭さ絶妙なシティ・ブルース”とでも言える非常に個性的かつ媚びてない硬派なもの。

サウンドは、後半ちょっとだけバンド編成の録音があるものの、基本はサポートでギターやピアノ、ベース”だけ”を付けたものか弾き語り。ミニーさんのギターはどの曲でも”ザッザッザッ”としっかりとしたビートを親指で刻みながら、人差し指と中指でオブリガードを入れていくスタイルで、全編通してダテじゃないホンモノのギター・ピッカーぶりを披露してくれております。

特にタイトル曲「フードゥ・レディ」でのギターのザクザクぶりがいいですなぁ。固めの音で低音弦をガツガツ刻んでいるんですが、その規則正しいビートは途切れないしブレないし、楽曲はシティ・ブルース風ですが、そのノリにはやはり粘りのある南部のフィーリングが秘められております。

1900年前後(詳しい生年は不明)にルイジアナで生まれ、小さい頃からギターを持って唄っていたミニーさん。そのまま人口の多いメンフィスに流れて、そこで人気を博したかた”メンフィス・ミニー”。

人気も実力も確かだった彼女は、1930年代にはすぐに大都会シカゴに移住して、並み居る人気ブルースマン達と競い合って、その中で更に人気をかっさらっていたんだとか。

この”フードゥ・レディ”は、正にそんなミニーさんが、シカゴへやってきてすぐの頃から、最も勢いがあったとされる時期の音源をベストな選曲でまとめたものです。

洗練と泥臭さ、可憐さと逞しさが、どの曲どの演奏の中でも絶妙なバランスを取りながら渋い光沢を放っている彼女のブルースは、性別抜きにしても戦前ブルースという”人と違ってなんぼ”の世界の中でも一際個性的であります。




ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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