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2017年07月27日

ジョン・コルトレーン The Complete 1962 Birdland Broadcasts

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John Coltrane with Eric Dolphy/The Complete 1962 Birdland Broadcasts
(GAMBIT)

コルトレーンが1955年にマイルス・デイヴィス・クインテットに加入してから亡くなった1967年まで、実に12年しかありません。

アタシなんかは彼が亡くなって10年ぐらい後にようやく生まれた世代なもんですから

「ジャズの巨人、コルトレーン」

とか言われると、おぉ、今は亡くなっちゃってるけど、きっと20年とか30年とかやってきたんだー。とか、何となく無意識に思っちゃう訳です。

そうでなくてもレーベルを2回変え(Prestige→Atlantic→Impulse!と渡り歩き)、そこからリリースされたソロ名義のアルバムだけでも30枚を超え、他のミュージシャンとの共同名義や主要メンバーとしての参加作、更に死後に発売された未発表音源を合わせるととんでもない枚数になります。

どう計算しても信じられない程の量であり、更にその短いキャリアの中で大きな音楽的転換をやってのけてる訳ですから、もう超人的な人だったんだと思う他ありません。

もちろんそんな濃密な活動の原動力は、彼のアーティストとしてのインスピレーション、つまり創造力と感応力ではあるのですが、コルトレーンと出会い、彼のインスピレーションを大いに刺激した先輩や後輩との関わりというのも忘れてはいけません。

1960年代初頭のコルトレーンが、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズという理想のメンバーを得て、特にパワフルさと繊細さ、様々なリズムを同時に組み合わせて放つことで演奏のスケールをグッと拡げたエルヴィン・ジョーンズのドラミングに大きく触発されて、いわゆるモダン・ジャズから”コルトレーン・ジャズ”という独自の境地を切り開いたことは、終生彼の音楽性に深い影響を与えたであろう決定的な出来事だと思います。

ことろでコルトレーンが、このカルテット結成の前後に、実はエルヴィンと同じぐらい大きな刺激を同じバンドのメンバーとして与えたミュージシャンがおります。

それがアルト・サックス/バス・クラリネット/フルート奏者であるエリック・ドルフィーです。

エリック・ドルフィーという人は、コルトレーンよりちょい年下ですが、チャーリー・パーカーの生み出したモダン・ジャズのサックス奏法を、全く独自に進化させた特異なフレーズを持っており、また演奏テクニックもズバ抜けていて、サックスの一番低い音から超高音域を物凄い速さで激しく駆け抜けるアドリブ・スタイルはとにかく斬新を極め(今でもコピーするのは至難の技と言われてます)、同時代の鋭い感覚を持つ演奏家からは「アイツは凄い」と評価されておりましたが、いかんせん彼の個性は強すぎて、また、その斬新なコンセプトも一般の聴衆が付いていけるようなものではなかったんです。

1961年、ブッカー・リトルというまだ23歳のトランぺッターとようやく共同名義で自分のバンドを結成することが出来たドルフィーではありましたが、不幸なことにリトルが急病でこの世を去って、ドルフィーのバンドは自然消滅に近い形で崩壊。

ここでアタシら素人は、新しいメンバーを入れてバンドを結成すればいいじゃないかと思うのですが、リーダーとしてバンドを組んでメンバーを食わすには、ドルフィーの稼ぎは余りにも少な過ぎました。まずは自分が食っていけるために、どこかのバンドに入れてもらって日銭を稼がなければお話になりません。

丁度その年の5月、インパルスという新興レーベルで「アフリカ/ブラス」という最初のレコーディングをジョン・コルトレーンが行い、ブラス・セクションの一員としてドルフィーは呼ばれました。基礎的な技術はバッチリ持っていて、おまけに譜面や音楽理論に滅法強いドルフィーをコルトレーンは気に入り

「じゃあ今度はアトランティックに残ってる契約を清算するためのレコーディングをするから君、今度はソロ要員として来なよ」

と誘って、もちろんドルフィーはこれを快諾します。

そんなこんなで1ヶ月もせぬうちにドルフィーはコルトレーンとの2度目のレコーディングに呼ばれ、ここでフルート/アルトを存分に吹かせてもらったアルバムが『オレ』として、実はエリック・ドルフィー参加唯一の正式なスタジオ盤として残されております。

ドルフィーのプレイに手応えと、何よりそれまで自分が思ってもいなかったぶっ飛んだ方向からのアプローチに刺激を受けたコルトレーンは

「今後も正式なバンドメンバーとしてひとつよろしくたのむ」

と言いました。

ドルフィーもコルトレーンの事は敬愛しておりましたし、同じようにジャズの新しい方向性を模索している者同士、惹かれるものはあったんでしょう。

「チャールス・ミンガスのバンドでヨーロッパに行かなきゃならないんだけど、それが終わる9月以降なら空いてるよ、こちらこそよろしく」

と、男同士の固い約束を交わし、果たして帰国して直ぐにコルトレーンのレギュラー・バンドに馳せ参じ、精力的に行っていたツアーで凄まじい働きぶりを見せたのであります。

一言で申し上げてコルトレーンとドルフィー、両フロントのやりとりは”鬼神同士のガチバトル”でありまして

・のっけからテンション最高なコルトレーンのソロ
           ↓
・それよりもぶっ飛んだ異次元フレーズで強襲するドルフィーのソロ
           ↓
・それを受けて更に凄まじく、時にフリーキーな展開にすらなるコルトレーン


というやりとりには、毎度毎度興奮して感動して、かっさらわれて言葉も出ません。


やっぱり経済的に苦しいのと、どうしても音楽家として自分のグループで表現を極めたかったドルフィーは、1年もしないうちにコルトレーンのバンドを惜しまれつつ退団してしまうので、アルバムとしては先ほどの唯一のスタジオ盤の『オレ!』そしてImpulse!からのオフィシャルな盤として『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』のシリーズしか音源はありませんが、やっぱりこの2人の演奏に特別な何かを感じる人は当時も多かったらしく、マイナーな私家盤レーベルから、ライヴ演奏やラジオ放送用音源のエア・チェックなんかは結構出ておるんです。





【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.Mr.PC
2.Miles Mode
3.My Favorite Things
4.Announcement by Symphony Sid Torin
5.The Inceworm
6.Mr.PC
7.Announcement by Symphony Sid Torin
8.My Favorite Things


1962年2月9日から2月16日にかけて、コルトレーン・クインテットは、ニューヨークのクラブ”バードランド”に出演しておりました。

丁度その演奏をラジオ中継しようと、放送用機材を持った番組スタッフが現場に入って録音した演奏がこの『1962 Birdland Broadcasts』。

ファンの間では昔から「ドルフィー入りのブートといえばこれ」と定評のある音源でして、その昔LP時代には”OZONE”という私家盤レーベルからリリースされたもの↓

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が、どんな手続きを経たのかちゃんとしたレーベルの”VeeJay”の所有になって日本盤はRVCレコードから再発されて ↓

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『バードランドのコルトレーンとドルフィー』

というタイトルで出回ったこともありました。

私家盤ながらこんだけリイシューされて長く聴かれ続けているということは、もうその時点で内容は保障されたようなもんで、実際に凄まじくアツい内容です。

コルトレーン、ついこの前まで『ジャイアント・ステップス』なんかで、オシャレでカッコいいジャズの最先端を極めていたはずなんですが、もうここで聴かれるコルトレーンは、フリーに片足の親指を突っ込んだぐらいの型破りなプレイを聴かせてくれます。

「Mr.PC」「My Favorite Things」の2曲はいずれもアトランティック時代の代表曲なんですが、サックス/バスクラ/フルートで緩急自在な、言ってみれば次の瞬間に何をしでかしてくるか分からないドルフィーの異次元ソロに、コルトレーンは目一杯の速射&ゴリ押し&フレーズ崩しで対抗。

言っときますがコルトレーンもドルフィーも、アドリブの中での”うた”を大事にする人達です。

だからアドリブでどんなにフレーズを意図的に崩しても、それがトータルな演奏とのバランスを、ギリギリ崩さないところでちゃんと音楽として成り立っている。

特に「マイ・フェイヴァリット・シングス」でのドルフィーのフルートの幻想的な美しさはため息が出ます。後年、ファラオ・サンダースを入れて、ラシッド・アリに不定形ビートを叩かせて、ほとんどフリー・ジャズと化したコルトレーンの、あの泥沼な魅力とはまた違った、壮絶な音楽の対話がゾクゾクしたスリルと、演奏が全曲終わった後も「まだ何かあるんじゃないか」とすら思わせる、コルトレーン、ドルフィー、エルヴィン、マッコイ、そしてギャリソンの壮大な過渡期の音楽です。

音質も、このテのものにしては思ったより悪くありません。「ん?」と思わせるところは8曲目の「マイ・フェイヴァリット・シングス」のマッコイのピアノ・ソロがいきなりカットされてドルフィーのソロが始まるところぐらい。

それより何より演奏そのものが脳天をぶん殴られるぐらいの強烈なものなので、コルトレーン・ファンのみならず、ジャズに刺激を求めるすべての人には強烈にオススメであります。


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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