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2017年07月30日

ジョン・コルトレーン アフリカ/ブラス

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ジョン・コルトレーン/アフリカ ブラス
(Impulse!)


1961年4月、コルトレーンはこれより67年にあの世へ旅立つまで専属となるインパルス(Impulse!)レコードと契約を交わします。

Impulse!は、1960年に大手映画会社系列の、ABCパラマウントレコードのジャズ専門レーベルとして設立されたばかりの気鋭の新興レーベルで、61年に若手敏腕プロデューサーとして知られていたボブ・シールがレーベルの責任者に就任。

ボブ・シールという人は単なるやり手のプロデューサーというだけでなく、自らも楽器を演奏するミュージシャンであり、作詞作曲もする(ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」の作者が彼だということは実はあんまり知られていないっす)人で、ジャズに関してはコルトレーンのような”新しいジャズ”から、スウィング時代のトラディショナルなものまで幅広く聴くことの出来る人でありました。

当時コルトレーンが所属していたメジャー・レーベルのアトランティックは、もちろん彼に良いレコーディング環境を与え、ブラック・ミュージックに関心が深い分、彼のやりたいこともある程度は理解してくれて良心的なサポートをしていましたが、コルトレーンの「新しい音楽」、つまりこれから彼が志向してゆくであろうアヴァンギャルドな路線に関しては、ちょいと難色を示しておりました。

アトランティックとしてはその前の年に契約した”ニュー・ジャズの旗手”と呼ばれたオーネット・コールマンの第一作目「ジャズ来るべきもの」が、当時としては破格の25000枚売れたのに、既にオーソドックスなジャズのビッグネームとしてある程度名が知られていたコルトレーンを前衛化させるのは嫌だったみたいです。

「う〜ん、君の場合は何つうかフツーにやっててもそこそこ売れるんだからさ。あんまり売れそうにないものはやめてくれよ。オーネットみたいに売れるか売れないか、フタを開けてみないと分からないようなバクチはあんまり打ちたくないんだ・・・」

というのがレーベル側の恐らく本音だったことでしょう。

コルトレーンは常に「今後の方向性」を悶々と考えて、その可能性が見えた道に、一直線に突き進むタイプの人であります。う〜ん、せっかく自分のレギュラーバンドも組んでこれからモダン・ジャズよりもモードよりも、もっとこうなんつうか誰もやったことがない新しくて深い音楽をやりたいんだけどなー・・・。

と、悩んでおったところにボブ・シールがニコニコしながらやってきて、コルトレーンの話をよく訊いて理解を示し、結構な額の契約金(これ大事)を提示して、コルトレーンをImpulse!レコードの専属ジャズマンとして引き抜きました。

道が決まればまっしぐらに突き進むのがコルトレーンです。古巣のアトランティックとの契約条件とかもよく確認しないままに、ボブと新作の話ですっかり盛り上がって、契約の一ヶ月後にはもう新しいメンバーとコンセプトを携えて、Impulse!が用意したスタジオに何事もなかったようにテナーを持って入っておりました。

コルトレーンとボブ・シールが、契約の時にどんな話で盛り上がったのか、その詳細は残念ながら分かりませんが、とにかくこの時期のコルトレーンの頭にあったものは

1.精神的なルーツに回帰するような音楽、つまりアフリカをテーマにした曲を作りたい

2.できればその世界観を強固なものにするためのオーケストラ・アレンジも付けてほしい

3.アレンジャーはなるだけ自分のコンセプトを理解する、新しい感覚を持った人間に頼みたい。あぁ、やっぱり感覚だけじゃなく、当然譜面や理論には恐ろしく強いやつがいい。できれば管楽器の心得があるやつで、ついでに言えば真面目で性格のいいやつにお願いしたい。


うん「1」と「2」はまぁわかる、でもお前「3」は要求ハードすぎるんじゃね?そんなセンスもよくて理論に強くて性格もいいヤツなんかその頃のジャズマンにいるかよ・・・・!


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あ、いた・・・。


というわけで、コルトレーンの記念すべきImpulse!初レコーディングのアレンジャーとして白羽の矢が立ったのは、アルト・サックス、バス・クラリネット、フルートを吹きこなして誰も真似の出来ない超個性的なアドリブを繰り広げ、更に音楽理論にめちゃくちゃ強く、しかも”アイツはぶっちゃけいいヤツ”と一部ミュージシャン仲間の中で評判だったエリック・ドルフィー。

音楽的に「求めていたもの」の遥か先を行くアイディアを持っていたドルフィーとの迎合は、コルトレーンにとっては最高に幸福なことであり、また、最高に刺激的なことでありました。

加えてアクやクセの強いジャズマンの中にあって、演奏面ではアクやクセの塊のような人でありながら、性格は至って温厚、誰の話もよく聞き、決して諍いを起こさず、かつ酒や麻薬、女性のことでは一切問題を起こさない紳士であったドルフィーは、スタジオに集まったコルトレーンのメンバーやブラス・セクションのオーケストラメンバーを上手にまとめ、レコーディングはコルトレーンやボブ・シールの想像以上に和やかな雰囲気の中、意欲に満ち溢れた音楽を演奏することが出来ました。

5月と6月、二回に渡って行われたレコーディング・セッションで出来上がったアルバムがコチラ『アフリカ/ブラス』。



【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
レジー・ワークマン(b)
アート・デイヴィス(b,@B)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
(Orchestra)
ブッカー・リトル(tp)
フレディ・ハバード(tp,A)
ジュリアン・プリースター(euphonium)
チャールズ・グリーンリー(euphonium,A)
ジュリアス・ワトキンス(french-horn)
ドナルド・カラード(french-horn)
ボブ・ノーザン(french-horn)
ジミー・バッフィントン(french-horn,A)
ロバート・スイスヘルム(french-horn)
ビル・バーバー(tuba)
エリック・ドルフィー(as,fl,b-cl)
ガーヴィン・ブッシェル(piccolo,reeds)
パット・パトリック(bs)

【収録曲】
1.アフリカ
2.グリーン・スリーヴス
3.ブルース・マイナー

文字通りコルトレーンが、いや、この時代の知的探究心に溢れた黒人ミュージシャン達が、魂のルーツを求めて探究に燃えていたアフリカと、それを鮮やかに、そしてディープに彩る先鋭的で美しいブラス・セクションのアレンジが、いわゆるカギカッコの付いた”ジャズ”からコルトレーンの音楽を最初に解き放った一枚となって仕上がっております。

楽曲と、コルトレーン・カルテットの演奏の骨組みはあくまでそれまでのモード・ジャズの洗練された質感を大事にしつつ、リズムを野太く強調したツイン・ベースに、ワン・コードのリフから自在に変化して、まるでジャングルを駆ける動物の雄叫びのような音を効果的に散りばめながら、コルトレーンのアドリブがどんどん世界を押し広げてゆく「アフリカ」。

今度は美しいメロディに寄り添うように優雅に鳴り響きながら、アドリブの熱気に合わせるように全体をドラマチックに盛り上げるオーケストラ・アレンジに、ソプラノで哀愁のメロディーを感情の動きに連結させて吐き出す「グリーン・スリーヴス」。

そしてコルトレーンが大事にしていた”ブルース”のエッセンスが、ハジケたアドリブとアドリブで煮立つのを、今度はカッチリとした「進化系ビッグバンド」のようなブ厚い”鳴り”のオーケストラが見事に渋みでもって引き立てる「ブルース・マイナー」。

コルトレーンの演奏はコチラでもアツく完璧です。そしてこれだけ派手に鳴っているのに、そのコルトレーン・カルテットの演奏に、かなり激しく入り込んだりする瞬間もあるのに、一切邪魔せず引き立てに徹してるドルフィー指揮のオーケストラの圧力も心地良いです。

この時点でのコルトレーンの”アフリカ的”は、さほど民族チックなやつではなく、すこぶるカッコイイJAZZの一環として聴ける、ストレートな魅力に溢れたものであります。Impulse!第一作目は、コルトレーンにとっての「新しい音楽」の第一歩を、ジャズの歴史と音楽の歴史の両方に、確かに力強く刻み付けたものであります。

で、そんなコルトレーン、うっかり

「あ、アトランティックとの契約、そういえばまだあと1枚残ってた」

と、数日もしないうちにエリック・ドルフィーとフレディ・ハバードを連れてアトランティックのスタジオで

「えぇ、すいませんねぇ・・・」

と、アルバム『オレ!』をレコーディングします。

何か、かわいいぞコルトレーン。


(『アフリカ/ブラス』のアフリカンな雰囲気と『オレ!』のスパニッシュ・モードそれぞれのカッコ良さをじっくり聴き比べるのも一興です♪)



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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