2017年11月27日

ポール・ブレイ オープン・トゥ・ラヴ

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ポール・ブレイ/オープン・トゥ・ラヴ
(ECM)


ジャズを聴いてて、あーピアノっていいなーと思って、あれこれ聴きます。

最初の頃は誰のどんなのがいいのかさっぱり分からなかったので、とにかく有名な人の有名なアルバムから、手当たり次第に聴いておりました。

マル・ウォルドロンのビシバシと容赦なくダークな音塊を叩き付けるような演奏にシビれ、セロニアス・モンクの、どこか調子外れに聞こえる、フレーズもリズムむ個性的なピアノに衝撃を受け、ビル・エヴァンスのひたすら美しく、切なさで心をスーッと撫でてゆくような演奏に涙し、バド・パウエルのノリノリでいながらその重たく歪んだ音の中に言い知れぬ狂気を感じさせるスリリングなプレイに圧倒され、そしてソニー・クラーク、ウィントン・ケリー、ボビー・ティモンズ、この辺の洒落たブルース・フィーリングと豊かな味わいを持ったモダン・ジャズの王道ピアノに「イェ〜イ、いいねぇ〜」となっていた訳です。

そう、ジャズの”ピアノもの”には期待してたのと何か違う、ガッカリ。みたいなハズレ盤はなかったんです。

どんなスタイルのどんな演奏でも、ピアノ+ベース+ドラムスという、いわゆるピアノ・トリオの編成で聴くと、何か受け入れることが出来てしまう。不思議だなぁと思って、全然知らない人の知らない作品を思い切って買ってみても、これがハズレない。

これは大分後になって知った事ですが、ジャズのピアノものってそういうものらしいんですね。

だから若い頃に色んなものをガンガン聴きまくってたジャズファンが、そろそろ落ち着きたい年齢になってくると、ピアノ・トリオ専門のコレクターになったりするような話もあるんだと聴いて、ほうほうそれは納得できますなぁと思いました。

や、まだまだ落ち着くつもりは毛頭ございませんが。

で、そんなこんなでジャズ・ピアノというものの魅力にどんどんのめり込んで行っている時に出会ったのがポール・ブレイという人です。

最初に聴いたのは『ブラッド』というアルバムで、これはなかなか鋭利な前衛臭の漂う過激派な作品だったんですが、うん、ピアノ・トリオだったらこういうアルバムでも、割とすんなり聴けるんだなこれが・・・。

と、思っていたら、耳にガシガシと刺激と共に妙な”引っ掛かり”を感じて、なかなかすんなりと胸の内に収まってくれなかったんです。彼より過激なプレイをするピアニストはいっぱいいたし、彼よりアクの強いピアニストはいっぱいいたにも関わらず、何かこう”これは一体何なんだろう?”の連続みたいな、不思議なプレイをする人。それがポール・ブレイの第一印象でした。

だから、好きとか嫌いとか、良いとか悪いとかじゃなくて、純粋に”分からない!でも気になる!”と思った、恐らくこの人は唯一の人です。

1960年代にフリー・ジャズのムーヴメントのただ中にあって、その中で一躍存在感を放っていた白人ピアニスト、うんわかる。でもその前は実はコテコテのバップ・ピアノの達人で、独特の硬いトーンでバド・パウエルみたいな重たいグルーヴを鍵盤から叩き出す人であったとか。うん、それも分かる。

でも、そうやって語られる以上の”何か”がこの人のプレイにはあるように思えました。

そう「フリー」とか「リリカル」とか「モダン」とか、形容詞では形容できない、もっともっと精神の奥底で、妖しい光を放ちながらうごめいてるようなもんが、どうしてもあるような気がする。でもわからない。ううん、気になる。もっともっと知りたいぞ!

と、思いつつ、主に彼の60年代、いわゆる”フリージャズ”と呼ばれる作品を集中的に集めては聴き込んでおりましたが、ある日何かの雑誌で「ポール・ブレイが1970年代に録音したソロ・ピアノの究極の傑作」というものらしい『オープン・トゥ・ラヴ』というアルバムを聴いて、さらなる「もっともっと!」の世界にアタシは引きずり込まれてしまいました。






【パーソネル】
ポール・ブレイ(p)

【収録曲】
1.クローサー
2.アイダ・ルピノ
3.スターテッド
4.オープン、トゥ・ラヴ
5.ハーレム
6.セヴン
7.ナッシング・エヴァー・ヴォズ、エニウェイ

収録年月日 1972年9月11日



端的に言うと

「これは究極だ!」

と思いました。

それまで聴いて、感動を覚えていたフリー・ジャズなピアノではない。そして、それ以前の、いわゆるスウィングするジャズなピアノでもない。繊細で官能的で、美しい美しいピアノ音楽。これを一体何ていうジャンルで形容すればいいのでしょう。未だに分かりません。

溶けるようなメロディの間にたっぷりと挟まれた、ため息のような余白。たった一台のピアノが作り出す、無音より更なる静寂が際立つ、そう、しんとした静けさの中で、ピアノの内側の弦の微かな震える音までが聞こえてきそうな、そんな透明な空気。未だにこれを何と言えばいいのか、それを形容する言葉が見つかりません。

ただ、繊細な部分にも、官能的な部分にも、やっぱりどこか綺麗に整った狂気みたいなものが秘められていて音が鳴ってるなというのは感じますし、それ故にこの寸分の狂いもスキもない美で出来たピアノ音楽は、度を超して魅力的なのだと思います。

うん、ポール・ブレイという人について、または彼の音楽について、もっと色々と語るべきではあるかと思いますが、今日は午後からずっとこのアルバムを聴いて、やっぱり形容を越えた静謐な美しさの前に、アタシはまたしてもまんまと言葉というものを失ってしまったようです。




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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:18| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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