2018年07月08日

トキノマキナ メカノフォリア

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トキノマキナ/MECHANOPHILIA
(時野機械工業)


今更言うまでもないことですが、このブログは皆様に音楽をご紹介するブログです。

記事を書いてツイッターやフェイスブックにリンクをえいやと貼ってつぶやけば「いいねぇ」「これカッコイイよね」と、お蔭様で多くの音楽好きの方々から反響を頂きます。

いいですねぇ、嬉しいですねぇ。

はい、ほぼ更新すると何らかの有難いリアクションがありますので、夏バテしながらも何とか続けております。

皆さんからの反響の中で一番嬉しいのが

「これは知らなかった」

「聴いてみたくなった」

という反応ですね。


そう、音楽への感動というのは、知らない素敵な音に初めて触れた時の感動、コレがデカい。

アタシももういいトシでありますので、若い頃からむさぼるように色々な音楽を聴いてきました。

人はこれを知識と言うのかも知れませんが、いやいや、アタシは欲深いので、常に「もっともっとカッコイイ音楽、素敵な音楽があるはずだ!」と、毎日格闘&葛藤です。

読者の方から「これ聴いてみたい!」という言葉を頂けば、アタシはその言葉を発した方の気持ちになって「こういう風に未知の音楽と出会いたい」となるのです。

そこへいくとインターネットというものはやはり便利です。

「あ、ちょっと気になるなぁ」

という音楽のことを誰かがつぶやいてたら、それを覚えておいてすぐ検索をかけると音源が聴けたりしてしまいます。

で「これ好きぃ!」となったやつに関してはやっぱりCDでも何でもいいから、自分だけの音源をいつでも聴けるように手元に置いておきたい。

で、今日ご紹介する音楽はトキノマキナです。

このグループは、現在大阪を拠点に活動する、エレクトロニカ・ユニットですね。

知るきっかけとなったのはツイッターで、フォロワーさんがライヴの告知をリツイートしてたからなんですけど、そもそものきっかけは「音」じゃなくて「名前」だったんです。

「東大阪にある有限会社時野機械工業が開発したアンドロイドと、それを整備する社員(係長)による音楽ユニットとして結成されたトキノマキナ。メンバーは、アンドロイドの野中比喩(ヴォーカルと電子楽器)と、技術課整備係の岡係長(トラック制作)」

ヴォーカルの方の名前が”比喩”(!!)

ちょっとここで、アタシの中の音楽の人の脳とは別の部分の、ことばの人としての脳がピピピーンと反応しましてですね、えぇ、もう何て素敵な名前なんだろうと思い、もう一気に気になってしまったんです。

調べてみたら、この野中比喩さん、元々アイドルとして活動をはじめ、特殊メイクアーティスト、ヴォーカリスト、ノイズアーティスト、コスプレイヤーなどなど、様々な活動をこなす本当の意味でのアーティストと言っていいぐらいの人。

こういう人の音楽は、きっとカッコイイに違いないと思ってトキノマキナ聴いたら、コレが「期待通り」と「予想外」2つのカッコ良さにヤラレる素晴らしい音楽だったんです。


テクノやエレクトロニカというと、どちらかというと爆音でドッコンドッコンな重低音リズムとキラキラした刺さるような上モノが飛び交うダンスミュージックを想像する人も多いかと思いますし、実際アタシもそう思いがちなんですが、トキノマキナのトラックは、総じて電子音に繊細な感情があるかのようにヒリヒリしていて、そのヒリヒリした部分が心の何かこう弱ってるところにも優しく浸透していくような優しい悲哀があり、その音と完全に融合している野中比喩さんのウィスパーヴォイスも本当に染みるんです。




MECHANOPHILIA

【収録曲】
1.A-LIFE
2.LOOP
3.MODE SLEEP
4.NEURONOGRAM
5.RE-PLAY
6.reboot
7.SLAVE-世界が軋む音-
8.TRONSCAPE
9.yuria TYPE-D


アルバム『MECHANOPHILIA』は、2018年リリース、トキノマキナ初となる全国流通CDです。


内容は確かにエレクトロニカと呼べる、全編淀みなき電子音で綿密に構成されたトラックで演奏されておりますが、曲調の多彩さ、ギュッと中身が詰まった、ストーリー性のある歌詞もろもろ含めて「作品」と呼ぶに相応しい(つまり飽きない)CDです。

すごくすごく個人的にそのまんま感じたことを書きますと、エレクトロニカ、つまり電子楽器やサンプリング等の機材を使って製作した音楽というのは1970年代のジャーマン・クラウト・ロックから始まって、そこからアメリカに行ってディスコ文化と融合して、ダンスミュージックとしてのテクノが生まれ、そこから「如何に最先端であるか」というのが、この音楽の命題のようなものだったと思うんです。

で、21世紀になってパソコンで生演奏のような音楽まで全部作れるようになり、極め付けはヴォーカロイドの登場で、ある種の高みを極めた状態になり、さてこれから「人間が作って人間が演奏するエレクトロニカってどうなるんだろう?」と思ってたことの回答みたいなサウンドが、トキノマキナの、この”電子”の質感を最大限に活かしながら、切なかったり優しかったり、そしてどこか懐かしかったりする人間らしい感情をみっしり詰め込んだ音楽だと、アタシはしみじみ感じながら聴いております。

アタシの好きな曲で『SLAVE-世界が軋む音-』という曲がありまして、ビートはドラムンベースっぽく、そしてヴォーカルはエフェクトがかかり、クールな質感がとてもイカシてるんですが、これよく聴くと非常に美しい3拍子で、たとえばアコギ一本でやったら、アイルランドとかその辺の民謡みたいになるんじゃないでしょうか。

何が言いたいのか自分でもよく分かっておりませんが、そんな感じでトキノマキナの音楽って、今の最先端だけど、本質的に”記憶”の深いところに響く、それは聴く人個人のっていうより、もっと気の遠くなるような遺伝子レベルの・・・とか、あぁまた聴きながら一人で色々と心を遠くに飛ばしてエライことになってますが、ほら皆さん、ゲーム音楽とか聴いて「あ、これは何か懐かしい感情が湧いてくる曲だ」ってのありませんか?アレのああいう感じです、ぜひとも聴いて確認してみてください。

そして、今ドキわざわざCDで入手して聴いて欲しいというのには、曲とか内容とかだけじゃない、もうひとつの電子音楽ならではの大きなオマケが付いてるからなんです。

あのですね、このCDには

『ヘッドフォンで聴くと音楽が3D化されるように聞こえる、世界初の画期的な試み』

が、成されてるんです。

これは、トラック制作の岡係長という人が実は凄い人で、アーティスト音源だけでなく、アミューズメントパークの音楽なども実は手掛けている人で、つまり音楽の”効果”のスペシャリストなんです。

で、トキノマキナのアルバムの音響で、まるで映画やアトラクションみたいに、音が「動いてる」ように聞こえる仕組みを施そうとして、施したんですね。

アタシもいい加減機械音痴なんで、こんなヘタクソな説明でアレなんですが、そんな機会音痴のアタシがこんなにしどろもどろになりながら説明してるってことは、それだけにこの音響効果が実際凄いということを言いたいからなんです。

まず、音響効果で最も基本的なものといえばモノラルとステレオですね。モノラルというには録音の最も原始的な形態で、ひとつのスピーカーから音がまとまってズンと聞こえてくるやつです。

これに対してもっと臨場感とか出そうぜって開発されたのがステレオ。

2つのスピーカーからそれぞれ別々に楽器が聞こえるような録音調整が可能になり、これで得られるようになったのが”奥行き”と”拡がり”です。

で、今回は更にそのステレオを細かくして、音が拡がったり空間に奥行きが出来たりとかだけじゃない、ひとつひとつの音が分離したり融合したり、低い音だけが中心で力強く鳴って、上を飛ぶ高音域が頭の周りをヒュンヒュン飛び回ってたりするかと思えば、ヴォーカルが更にその前にフッと出てきて、本当に隣の耳元でささやいているかと思えばふわぁ〜っと空間に拡散して、飛び回ってる音と集合したりする・・・。

最初にアルバムの宣伝でこういう効果についての説明を読んでも

@「どうせお前、高級ヘッドフォンとかじゃないと大して違わないんじゃないのぉ?」

とか

A「3Dってアレだろ?映画のDVDとかみたいな、車酔いしそうな音響効果だろ?うぅ〜んどうかなぁ」

とか思ってたんですが、まず@については、我が家の安物ミニコンポと安物イヤホンとヘッドホンという組み合わせでもフツーに音響効果バリバリです。

で、それがどんな効果だったんだということがAなんですが、いわゆる”臨場感”だけを追求したような、妙に脳にダイレクトすぎる3Dとは、まず別物だと思ってください。


音はキッチリ分離して、まるで聴いているこっちが音空間の一部になってるような、凄い感覚になりますが、それがリアル過ぎてキツいとか、三半規管が疲れるといったことは全くないです。

よくよく聴いたら分離する音は細かく分かれてるんですが、それ以外のわざわざ分けなくてもいい音はしっかりと中心に残してあって、脳が「どの音を追えばいいか分からない」というパニックを起こさないんです。つまり何でもかんでもリアリティな音作りじゃなくて、しっかりと「聴く人がどれだけ感情移入出来て快適な音か」というところまでちゃんと考えて作られている。

トキノマキナのこのアルバム、色んな意味で音楽の革命じゃないかとアタシは心底思っています。

いつか音楽も3Dが当たり前になった時に、このアルバムの価値はきっと高く評価されるとは思いますが、それ以前にこのアルバムに収録されている音楽は、簡単に消費されてなくならない、しっかりとした音楽です。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:36| Comment(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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