2018年07月29日

レッド・ガーランド ディグ・イット!!

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レッド・ガーランド/ディグ・イット!



大コルトレーン祭、そして”レッド・ガーランド強化月間”でありますので、本日もガーランドとコルトレーンの”マラソン・セッション4部作”の中から一枚紹介します。


アレですね、コルトレーンという人は「どの時期が好きか?」で、随分と印象が違う人でありますね。

つまり1950年代のモダン・ジャズをやっておった頃と、60年代以降のモダンの枠組みから飛躍して、独自の音楽をディープに追及していた時期とで大まかにこの人のキャリアは分かれるのですが、初期が好きな人はやはり「偉大なジャズの巨人」として聴いている。でもって後期が好きな人は「音楽の歴史を変えた偉大な芸術家」として崇めている感じがします。

アタシは何度も言うておりますが、後期も後期、亡くなる直前のフリー・ジャズぎっとんぎっとんになった時のコルトレーンを聴いて

「うは!パンク!!」

と衝撃を受けたクチでありますので、正直それより前のモダン・ジャズをやっておった頃のコルトレーンを「ジョン・コルトレーンの音楽」としてすんなり受け入れるまでにはちょいと時間がかかりました。

だから初期はつまんなく思ったとか、そういうのではなくて、とにかく1950年代後半のジャズってのは、誰がやっているのでもジャズとしてカッコ良かった。どのミュージシャンも個性的だし、どのレコードからもしっかりと、ジャズをジャズたらしめているファンキーでほろ苦い独特の空気がむせるほど漂ってくるから、そういう空気にいちいち

「おぉう、これがジャズか、渋い!カッコイイ!」

と感動するのに忙しくて、その中からアタシが最初に聴いて衝撃を受けた「コルトレーンの音楽」を感じ取るのがちょいと難しかった。

「コルトレーン者としてコレで良いのか?」

と、アタシはもう何年も何年も考えて、よせばいいのにそれなりに悩んでおりましたが、結論から言えばそれでいいのだ。

「あぁ、これはカッコイイジャズだ!」

と思えば、それをカッコイイジャズだと思って聴けばいいよと教えてくれたのが、実はコルトレーンと組んでいる時のレッド・ガーランド、彼の粋でオシャレでグルーヴィーで、そして切ない時はどこまでも切ない、最高のピアノ演奏だったという訳です。


モダン・ジャズ全盛期を代表するピアニストの一人だけあって、ピアノ・トリオのアルバムは膨大にリリースされております(そして、それらはほとんどグゥの音も出ない高水準の素敵な内容)が、「本当にセンスのいいピアニストは、ホーン奏者のバックに回った時も最高」の言葉通り、ホーン奏者のバック、或いはサックスやトランペットなどを従えての演奏も、味わいに味わいが加わった何とも言えない深みのある作品が多い(これもまた大量に出ております)。

で、アタシは最初にコルトレーンと連名でリリースされたガーランドのアルバムを聴いた時に、トリオ作品とも他のホーン奏者との共演盤ともちと違う”格別”を感じた訳です。

その”格別”とは何かと言うと、やっぱりこの1957年から58年のコルトレーンであります。

コルトレーンはこの時すでに「他の誰もやっていない自分なりのやり方」の探究の第一段階を極めておりました。

それは一言で言えば「それまでのお約束事からちょっとだけはみ出す」ような、独創的な奏法です。

その独特な「飛び方」が、モダン・ジャズの作法の中で紳士的にスウィングしたりブルースしたりバラードしたりするガーランドのプレイとは、若干の”ズレ”があり、でもそのズレが、演奏の破綻するレベルにまではいかない”程良い緊張感”辺りで、楽曲としっかり寄り添っていたからカッコイイ。

つまりはコルトレーンはこの時点でかなり他の人とは違う個性を感じさせてはいたけど、全体的にはしっかり4ビートの、しっかり「うん、渋い!カッコイイ!」のジャズな雰囲気の中で違和感なく収まったプレイをしていた。

で、コルトレーンは「収まる」ということには全然満足しない人だったから、このちょいと後にはもう飛躍的に独自の世界を拡げていて、ガーランドらモダン・ジャズの人達をはっきりと置き去りにしてしまう訳で、そういった意味ではコルトレーンとガーランドの蜜月は大変に短かった訳ではあるんですが、個性と個性がピッタリと寄り添った一瞬の輝きを、Prestigeでの「ガーランド&コルトレーン」はしっかり記録してくれている、という訳なんですね。




Dig It


【パーソネル】
レッド・ガーランド(p)
ジョン・コルトレーン(ts,@BC)
ドナルド・バード(tp,@C)
ジョージ・ジョイナー(b,@AC)
ポール・チェンバース(b,B)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.ビリーズ・バウンス
2.クレイジー・リズム
3.C.T.A.
4.レイジー・メイ

(録音:@AC1957年12月13日,B年3月22日)


くどくど御託を述べるより、これは実際に聴いて頂きましょう。という訳で本日はガーランド”マラソン・セッション4部作”より『ディグ・イット!』です。

「ディグ」って言葉は「掘る」って意味ですね、アタシらレコード稼業の人間は昔っから「今日は新宿にレコード掘りに行くんだよ」とかよく使ってました。つまり「ディグ・イット!」は「このレコードを掘れ!」という意味になるんでしょうか、なかなかにシャレたタイトルであります。

さて、中身の方はタイトルに違わず、一曲目にまずゴキゲンに走る『ビリーズ・バウンス』が入っています。

テーマは短めで、いきなりコルトレーンの吹きまくりのソロ(!)うぉぉすげぇすげぇ、コルトレーン走ってるぅ〜♪と感動しているうちに、今度はドナルド・バードがちょいと落ち着いたコクのあるラッパで聴かせ、つづくガーランドのソロが、軽快にアドリブ繰り出しながら大人の風格で魅せる。この流れを聴いていると、コルトレーンの独特っぷりが一発で分かる仕様になっております。

続く2曲目も疾走系(いぇい♪)の『クレイジー・リズム』ですが、コチラではホーン隊はお休みしてガーランド、ジョイナー、アート・テイラーのトリオ演奏。3分ちょいの短い演奏でありますが、ガーランドの「宝石を転がすような」と言われる美しい粒立ちのフレーズがリズミカルにカラコロと輝きながら転がってゆくカッコ良さと、ブラシ職人アート・テイラーのシャカシャカ切れ味最高なリズムと、ジョージ・ジョイナーのキッチリ太い音でのボリューム感溢れるウォーキングベースの至芸が素晴らしく、単なる箸休めに終わってません。

3曲目『C.T.A.』は、違う日のセッションからで、今度はバードが抜けたコルトレーンのワン・ホーンで、ベーシストはジョイナーに変わり、おなじみのポール・チェンバース、この曲もノリノリで吹きまくるコルトレーンと、ビシバシとかっこいいフレーズをキメまくるガーランド、安定のチェンバースと、これもうどこを切り取ってもこの時代のモダン・ジャズ、ハード・バップのお手本みたいな演奏ですね。あと、スティックに持ち替えたアート・テイラーの気合い、特に後半のコルトレーンとのフレーズ交換が、もう飛んで来る汗も見えそうなぐらいアツいです。

調べてみたらこの曲は、アート・テイラーのリーダー作の予定だったセッションの中からセレクトしたトラックだったとあり、なるほどテイラーの気合いの入りっぷりも頷けます。

と、ここまで3曲ノリノリできましたが、最後は待ってました!やっぱりガーランドとコルトレーンのアルバムにはコレがないとね、なブルース『レイジー・メイ』であります。

ガラッと変わってゆったりとしたシンバルとウッドベースの刻みに乗って、ややダークな低音を響かせてやるせなくスタートするピアノ、くー、たまらんねぇ、この「ジャズの人がやるブルースのカッコイイところが全部詰まってるような演奏、フレーズの重み、雰囲気」の全部がアタシは好きであります、愛しております。

ねちっこく、イヤラしくなる寸前でジェントルマンシップを忘れない、レイジーな中にエレガンスを忍ばせたガーランドのソロは、何と7分続きますが、本番はこれからです(!)そっからのコルトレーンですよ皆さん。

コルトレーンのブルースって、よく「斬新な解釈」と言われ、なるほどブルースだからと言ってダウナーなフレーズをボヘーっと吹くばかりでなく、ソロの中にしっかりと超高速フレーズをブチ込みまくりながら、聴く人の血圧をしっかりと上げてくれるアドリブは、確かにそれまでのどのテナー吹きもやってこなかった刺激的なものですが、それ以上に「これだけ吹きまくってもブルース独特の”間”を感じさせるコルトレーンって凄い」と、アタシは感動してます。

やっぱり音色ですよね、ソリッドではありますがしっかりと芯がある音色が、どんなに高速で駆けても丁寧に丁寧に込められた感情の息遣いを聴く人に伝えてくれます。

クライマックスを飾るドナルド・バードのトランペットも、コルトレーンからかなり良い影響を受けて、素晴らしく語り掛けるような演奏です。バードは後に味のあるソウル・ジャズ路線でブレイクする人ですが、このブルース聴いてると、やっぱり味わいが絶品人だなぁとしみじみ思います。

このアルバムは、ラスト以外はノリノリでとっつきやすいので、最初に聴く1枚としてもかなりいいんじゃないでしょうか、いずれにしてもガーランド、コルトレーンの好調ぶりと共に、50年代全盛期のモダン・ジャズの空気感を存分に堪能できます。







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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 09:04| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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