2018年08月09日

レッド・ガーランド ソウル・ジャンクション

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レッド・ガーランド/ソウル・ジャンクション
(Prestige)

年々暑くなってゆく夏であります。

もうほんと、うだるような暑さの中、唯一の救いは夏の『大コルトレーン祭』で集中的に聴き狂うコルトレーンだけのような状況になってきておりますが、皆さんどうでしょう?

や、コルトレーンって苦手な人が「ちょっと重いんだよねー」「夏に?とんでもない」とおっしゃる気持ちは、実はアタシもわかります。

確かに夏の暑気を忘れされてくれるようなジャズだったら、西海岸系のカラッとしたオッシャレ〜なジャズの方がいい、もっといえばわざわざジャズなんか聴かんでも、ボサ・ノヴァとかそういうのもある。

でも、なんつうか、なんつうかこう、アタシはこの、忘れようとしたってどうしようもなくジリジリと身に迫ってくる不快な夏の暑さを真っ向からやっつけてやりたい。そんな気持ちが勝ってしまうので、夏はどうしても「夏以上に重く暑苦しい音楽で戦いたくなる」のです。

えぇ、戦ったところで勝てっこない、相手は大自然ですから、んなこたぁわかっています。そんなことを言ってたんじゃあ音楽なんか聴けやしない、どうせ人間なんてちっぽけな存在なんだから感動したり楽しんだりしながらダラダラと生きていきましょうではありませんか。

そんなこんなで本日もコルトレーン参加のレッド・ガーランド4部作、おぉ、今日は最後の一枚『ソウル・ジャンクション』ですね。

録音は全て1957年11月15日、つまり2日間あったマラソン・セッションの初日の録音でまとめられております。

ガーランドのマラソン・セッションは、1957年の11月15日と12月13日の2日間で全15曲(『ディグ・イット』に入ってる『C.T.A.』だけが曲数調整のために他のセッションから持ってきた曲)あり、そのうち初日のセッションだけで何と10曲がレコーディングされておりますが、ポップスのように1曲2,3分ではなく、4,5分から長くて15分越えのジャズでこれをやっちゃってるところが本当に凄いことなんです。

ガーランドとコルトレーンは、当時「最高のバンド」と高く評価されたマイルス・デイヴィスのバンド出身であり、前年の1956年にはマイルス名義の元祖”マラソン・セッション4部作”にも参加しております。

その頃のマイルスは「レコードに収録されているぐらいのクオリティの演奏なら、毎晩のライヴでフツーにやってたよ」といいますね。そんな事を意識しながら『クッキン』『リラクシン』とかの名盤聴くと「こ...このレベルの演奏が日常って...」と、感動を通り越して眩暈を覚えてクラクラするんですが、はい、ガーランドの4部作も、演奏内容と空気感ではマイルスのそれに少しも劣っていませんぞ。






Soul Junction

【パーソネル】
レッド・ガーランド(p)
ドナルド・バード(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
ジョージ・ジョイナー(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1.ソウル・ジャンクション
2.ウッディン・ユー
3.バークス・ワークス
4.アイヴ・ガット・イット・バッド
5.ハレルヤ



演奏は「ガーランドとコルトレーンのセッションといえば」のブルースから始まります、タイトルはアルバム名にもなった『ソウル・ジャンクション』。

まず、ガーランドの長い長い、8分を超えるソロなんですが、これもう最高!訥々とした単音から、徐々に音数を増やしていって、穏やかなテンポの奥底が気持ちよく揺れたり震えたりするグルーヴを、ガーランドこれでもかと醸し出します。

ガーランドの”ブルース”は、何度も言うように、いわゆるコテコテ、アーシーで泥臭いそれではなく”引き”を十分にわきまえた、ジャズの人ならではの、とことん洗練されたブルース。しかも、それでいて全然薄くなくて、形式の”ブルース”に終わらないところがミソなんです。

どんなにサラッと弾いても「ポン」とひとつの音をピアノで鳴らした瞬間に、空間にじわ〜っと滲み出る、何ともやるせないフィーリング、うんうん、これがブルースですよねぇ。

この曲、もうピアノとベースとドラムだけで聴いてもいいぐらいの完成度なのですが、ここで出て来るんですよコルトレーンが。ガーランドがピアノを弾いている、大都会の華やかなラウンジに「あの〜・・・和田さんゆう人おってですか・・・」ぐらいの、仁義なき戦い広島死闘編の山中(北大路欣也)みたいな感じでぬぼーっと出て来るんですが、徐々にしっとり、そして盛り上がるといつの間にか場の空気を完全にソリッドな”コルトレーン色”に変えていつの間にか主役になっておる。


これも何度も言いますが、この「ガーランドが作り上げたエレガンスをコルトレーンが塗り替えたそのコントラスト」が、このアルバムのみならず、セッション全部を通してたまんないんです。「ジャズが好き」という聴く側の心を、どの瞬間も刺激してくれるこのコントラスト、はぁ、いいなぁと思ってたら、今度はドナルド・バードのトランペットが、より土臭いフィーリングでブルースを高らかに歌い上げる。

コルトレーンのセッションでは、その土臭さゆえに時々「いらん」と言われてしまうバードですが、いやいや要るでしょう。少なくともガーランドとコルトレーンの組み合わせでは、味わいに欠かせないダシ汁のようなバードの味わいが演奏全体の濃度を高めているんです。

『ウッディン・ユー』『バークス・ワークス』は、ディジー・ガレスピー作曲のバップ・ナンバーで、どちらもミドル・テンポで軽快に走るテンポが、スローな曲をやるよりもリラクゼーション効果を生み、ガーランド、コルトレーン、バードと今度は絶妙に”合った”感じの音色とフレージングで、上質なモダン・ジャズのお手本ですな。

『アイヴ・ガット・イット・バッド』は、イントロの美しいピアノのフレーズが香気を漂わせながら揺れるバラード・ナンバー。

ガーランドが和音でメロディを弾く合間に「ポロロロン」と零す単音のフレーズが、宝石のように美しい。この曲は珍しくコルトレーンじゃなくてバードのトランペットからソロが始まりますが、ブルース吹く時のやるせなさとはまた違った、繊細なハスキートーン、なんてカッコイイんだろう。そしてコルトレーンも吐息を混ぜながらメロディをひたすら丁寧に吹いております。

ラスト『ハレルヤ』は、ハイ・テンポでガーランドもコルトレーンもバードも、ジョイナーもテイラーも走る、走る、ひたすら走る(!)途中コルトレーンがソロ吹いてる時にバックがジョイナーのベースだけになる場面があるんですが、この緊張感凄いです。

「あー、こりゃもう最初のブルースだけでも幸せだな〜♪」とか思ってたら、最後の最後に「この瞬間だけを聴くためにCDの再生ボタンを押してもいい」って場面がありましたよ。うん、実にスリリング。

そう、ベースのジョージ・ジョイナー、最初は「なんだよ、ガーランドとコルトレーンつったらベースはポール・チェンバースがいいのに」とか思いましたが、ジョイナーのベース、セッション全体を通して大健闘どころか、ブルース曲ではもしかしたらチェンバース以上にしっくりきてるのでは?とすら思います。

そしたらアナタ、この人実はこのレコーディングの直前までB.B.キングのバンドメンバーで、ブルースはもうバリバリ弾いてた人だったんですね。いやはや恐れ入りました。






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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 22:06| Comment(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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