
先月の話なんですが、遂に我が家のミニコンポが壊れてしまいました。
10年以上使ってきて、不具合のあるところはその都度修理修理で何とか作動させてはきましたが、ここへきて
「メーカーに部品がもうない」
というガーンな状況になってしまったので、やむなく買い替え。
とはいうものの、アタシは基本的にカネがありません。
これまで使っていたやつは、安物ながらCDの他にカセットとMDが聴ける、そして外部接続でアナログレコードが聴けるという、なかなかに使えるやつだったんですね。
馴染みの電気屋さんにこれを伝えると
「うぅ〜ん、今はもうほとんどメモリースティックとかブルートゥースとか、そういうヤツで聴く時代だからなぁ。カセットとかMDはさっすがにミニコンポクラスで聴けるのはもうないねぇ・・・」
あぁ・・・時代って残酷ね・・・。
とはいえ、流石に家でCDとレコードが聴けないとなると、これはもうアタシは死ねと言われてるのと同じことであります。
いろいろと話し合いの結果
「じゃあもうMDとカセットは諦めて、CDとアナログが聴ければそれでいい」
ということになり(実際カセットは少ししかなく、MDは昔からあんま使うことなかったので)、予算¥50000以内という条件で探してもらうことにしました。
数日後「入ったよー」と連絡があり、取りに行くと
「いやいや、条件をクリアしてるブツは結構あったんだけど、やっぱりどういう音が出るかってのを考えに考えたんだけど・・・」
と。
おぉう!何と限られた予算で音質のことまで考えてくれてたんです(!)
こういうところがやっぱり「馴染みのお店の有難さ」です。
で、御馴染み電気屋さんが選んでくれたのが、ビクター(JVC)の EX-S5 というミニコンポです。
JVC コンポ EX-S5-T [ブラウン]
「まず、コイツに付いてるスピーカーがいい」
「ほうほう、どんな風に?」
「ビクターが気合い入れて作ったウッドコーンスピーカーといって、コンパクトだけどすっげぇナチュラルな鳴りなんだよ」
「木で出来てんの?」
「そう。だからこのクラスのちっちゃいスピーカーでもちゃんとした鳴りっつうか、ミドルが豊かなあったかい音で鳴る」
「うぉぉすげぇ」
「ただ、重低音をガンガン響かせたいとか、最新のサウンドをすっごいクリアに鳴らしたいとか、そういう聴き方には向かんかも」
「そりゃまぁねー、あくまでもミニコンポであってシステムオーディオじゃないからねー」
「そう思うっしょ?でも出て来る音はこのクラスではありえんぐらいクオリティ高いのよ」
「へー、マジかー楽しみ」
と、信頼出来る電気屋さん氏の言うことだからとは思ってましたが、まさかそんなやっすいミニコンポで高級感な音質がとか思わんですよ。
半信半疑で持ち帰ってセッティングして・・・。
おぅ、これがJVC自慢のスピーカーかー、ちっちゃいけど奥行きすっげぇあるのね、確かによく響きそうだわい。
とか、割とナメてたんですが
「そんなにいい音だったら戦前ブルースも綺麗に鳴るのぉ?」
と、試しにベッシー・スミスのCDを再生してみたら
・・・何!?何!?何ですかこれは!!
音が、戦前に録音されたSP盤がマスターのプチプチザーザーの音が、ギュッと真ん中に集まって力強く鳴っている(!!)
アタシはオーディオに関してはシロウトで「良い音」の定義もよくわかりません。でも、分からないなりにこの「音」の豊かな奥行きと無理のない鳴りっぷりが耳に心地よいということだけはハッキリ分かりました。
こりゃいいやと思ってお次はジャズ、マイルス・デイヴィスの『スティーミン』おぉぉ、マイルスのミュート・トランペットはCDの音を安物のオーディオで聴くと耳にキンキンしてちょっとキツいところも若干感じてたのですが、これは優しい。優しいけどヤワくなくて、ポール・チェンバースの弾力のあるベースの音がしっかりと鳴っていて、演奏そのものは今まで聴いてきたやつよりもパワフルに感じる。
調子に乗ってそれから戦後のモダン・ブルース、ロック、90年代以降のロック、カリプソ、クラシックなどなど、色々聴きました。
やはりこのスピーカーで聴くには、1960年代以前のモノラルの音楽がよろしいようです。とにかく音が真ん中にギュッと集まって豊かな中域を響かせて鳴る、そのアナログっぽい質感がアタシのような人間にはたまらんのです。
で、やっぱり電気屋さん氏が言うように、重低音バッキバキのたとえばハードコアとかメタルとかは、意外とパワフルではありましたがドンシャリの刺激を求める向きにはちと物足りないサウンドのように思います。
それでもジャスト¥40000でこの豊かな響きの音は凄いですよ。只今オーティス・ラッシュの大好きなアルバム『コールド・デイ・イン・ヘル』を聴いて酔いしれております。
『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』
サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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