2018年10月29日

ズート・シムズ アンド・ザ・ガーシュウィン・ブラザーズ

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Zoot Sims/And The Gerswin Brothers
(Fantasy)

ジャズという音楽は、即興演奏、つまりアドリブというものが演奏の大部分を占める音楽です。

だもんで、その時のアーティストの体調や精神状態なんかに、いわゆる”当たり/ハズレ”が左右することの多い音楽でもあります。

まぁその”当たり/ハズレ”ってのもいい加減なもんで、多くは聴く人の好みとか「この人にはこうあって欲しい!」という基準みたいなものに沿うか沿わないかってのも大きかったりするんですね。

「アレはいい、アレはよくない」

みたいなものは・・・う〜ん、アタシはあんまり演奏を良し悪しで評価したくないクチなんで、そこんところは公言するのは好みませんが、それでも

「お、このアルバムの〇〇はカッコイイぞ!」

とか

「あれ、今回のセッションは何か大人しいなぁ、緊張してるのかな?」

というのはあります。

中にはアルバム毎に音楽性がガラッと変わっていて

「おぉぉ、どうした!?」

て人もいます。

が、それもふくめてジャズという、人間の人間らしさが最高に楽しい形で現れる表現芸術の楽しさとか奥深さだと思って楽しめる。

あのね、だからジャズって本当にいいもんですよ。

と、アタシが淀川長治さん化してきたところで、今日オススメのアーティストは、テナー・サックス奏者のズート・シムズであります。

ズート・シムズって誰じゃろ?

はい、ズート・シムズって人はですねぇ、さっきアタシが言った「当たり/ハズレ」ってのがほとんどない、ジャズの超人みたいな人なんですよ。

1950年代のはじめ、モダン・ジャズ全盛時代にデビューしてから亡くなる80年代まで、30年以上のキャリアの中でたくさんのリーダー作や参加作を世に出してるんですが、どのアルバムでもジャズ・テナーの王道・正統を堂々たる豊かな音色と、ブルージーな歌心溢れるアドリブで聴かせる、聴いてる時と聴いた後は、必ず「俺は今日良いジャズを聴いたぞ」って気分の、そりゃもう最高のものにさせてくれるのがズート・シムズって人なんですよ。


そのテナー・スタイルは、戦前のスウィング・ジャズに大きく影響を受けております。

彼がデビューした50年代というのは、実にビ・バップというサックス奏法の大きな革命が起きた後、アルトもテナーもみーんなトンガった”速いスタイル”でしのぎを削っていた時代。

でも、ズートはそんな流行に脇目もふらずに、オールド・スタイルと言われようが、太く柔らかい、テナー本来の持ち味を活かした音で、速く突っ走る時はそりゃもう猛烈だけど、そんな疾走の中にすら、古き良き時代のエスプリというか、テクニックだけじゃどうしようもできない深みや味わいに溢れた、もう本当に「あぁ・・・」とため息が漏れてしまうような、カッコイイ、そう、カッコイイ演奏をするんです。しかも、どの年代のどのアルバムでも。


で、そんなジェントルなワイルドさ(日本語あってるかー)に溢れたジャズ紳士なズートはどういう人だったかというと、朝からウィスキーかっくらって「ちょっと喉が渇いた」と言ってはビールを飲む。それだけならいいけど、呑んで陽気に暴れ、豪快にその辺にあるものを破壊して、それでいて演奏には全然何の支障もないという、変人なのか超人なのかよくわからないけど面白い人です(エピソードを読んでいるだけでは)。


人格はそんだけメチャクチャだけど、ズートが奏でるテナー・サックスの音色やフレーズは、どこをどう聴いてもジャズの良心なんです。まずは聴いてみてくださいな。


Zoot Sims & the Gershwin Broth

【パーソネル】
ズート・シムズ(ts)
ジョー・パス(g)
オスカー・ピーターソン(p)
ジョージ・ムラーツ(b)
グラディ・テイト(ds)

【収録曲】
1.The Man I Love
2.How Long Has This Been Going On
3.Lady Be Good
4.I’ve Got A Crush On You
5.I Got Rhythm
6.Embraceable You
7.‘S Wonderful
8.Someone To Watch Over Me
9.Isn’t It A Pity
10.Summertime
11.They Can’t Take That Away From Me

【録音:1975年6月6日】


「ズート・シムズのオススメのアルバム?全部です!」

と、言いたい気持ちをグッと堪えて、今日はコチラ。

えぇと、ガーシュウィンという作曲家がアメリカにおりまして、この人はクラシック音楽家でありながら、ジャズという新しいアメリカの音楽を世界に発信して行こうと、ジャズのスケールやコード展開なんかを(セブンスとかナインスとかを使ったアレ)自作の曲にどんどん取り入れて、多くのスタンダード、つまり多くの人にカヴァーされ、長年かけて愛されるようなポピュラー曲を生み出した人であります。

特にガーシュウィンが作った曲は、ジャズのミュージシャン達に次々とカヴァーされ今もどこかで演奏されております。

ジャズをよく知らない人でも

「あ、これ聴いたことあるぞ」「これも知ってる」

という曲の中には、ほとんどの確立でガーシュウィン・メロディが入ってると思って良いです、はい。

そんな天下無敵の(日本語合ってるかー)ガーシュウィン・メロディを「どんな曲でもオレがやれば極上のジャズ男」ズートが演奏する『アンド・ザ・ガーシュウィン・ブラザーズ』であります。

前に立つホーン奏者はズート一人でありますので、ズートのテナーを存分に楽しみたいのなら、これ以上の編成はないところでありますが、このアルバムの素晴らしいところはそれだけじゃない。そう、バックを固める腕利きのサイドマン達のプレイにも大注目なんです。

まずはピアノのオスカー・ピーターソン

「10本の指をフルに使って、アップテンポもバラードも完璧にスイングさせる」

と言われるほどの圧倒的なテクニックの持ち主で、この人もまた物凄い量のアルバムを出していて、そのほとんどハズレなしというバケモノですが、実はこの人の凄味はバックで、しかも個性的なホーン奏者やヴォーカリストの伴奏で実に心憎いプレイをする時に発揮されます。

続いてはギターのジョー・パス。

別名「世界一素敵なギターを弾くハゲ」失礼、この人のギターは本当にバカテクなんです。でも、テクニック以上に”聴かせる”ということにかけては本当に惚れ惚れするほどの名人芸で、あぁ、こんなにカッコ良くギターが弾けたら最高だろうなと思わせてくれる生粋のプレイヤーであります。ソロもカッコイイけど、この人もバックでの伴奏が凄い。

で、ベースのジョージ・ムラーツ。

チェコ生まれのクラシック畑出身という異色のベーシストです。その音感の鋭さと、どんなスタイルの共演者でも絶対にブレない強靭な低音と正確無比なリズムで鼓舞できるスーパー職人ベーシストであります。ちなみに今も現役で「世界最高の技巧派」とも呼ばれていて、この人の参加作もほんとハズレがありません。

最後はドラムのグラディ・テイト。

俳優を目指してニューヨークに出て来たけど、ドラムの才能が開花して、気が付けばカウント・ベイシーやデューク・エリントン、クインシー・ジョーンズ、オスカー・ピータソン、ウエス・モンゴメリーらに気に入られ、特に70年代以降は無敵のセッションマンとして、名盤にはなくてはならない存在であります。ちなみにヴォーカリストとしても成功し、グラミー賞を2回取ってます。


このメンバー、こういう凄腕の最強メンツでありますが、何より素晴らしいのは、ズートを含めた全員が「歌」に重きを置いたプレイが出来るということ。

バンドの演奏も、ズートを引き立てつつ、互角のアドリブで存分に”やりあってる感”があるんですよ。

曲のテンポはガンガン走る曲は意外と少なくて、どちらかといえば良い曲を良い演奏でじっくり聴かせるバラードやミディアム・テンポのものが多いのですが、それでも聴きながらメロディアスなアドリブから自然と湧き出るグルーヴに、どういう訳かノリノリにされてしまうんですよ。

いやほんと、びっくりしました。同時に「これがスイングかあぁぁあ!!」と思いました。早かったり激しかったりがスイングじゃない、ちょっと揺れてもその振動が心地良く、体と心に伝わるんだぜぇと、ここでまたズートの色気と暖かさに溢れたブロウ。

くーーーーー!









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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 20:34| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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