2018年12月07日

ウィリー・ハイタワー アウト・オブ・ザ・ブルー

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ウィリー・ハイタワー/アウト・オブ・ザ・ブルー
(Ace/Pヴァイン)


「音楽って素晴らしいな〜」

ってのは、ほれアレですよ。自分が知ってるつもりでも、ちょいと知らないところに素晴らしい音楽があって、そいつと出会った時に心の奥底から自分自身を揺さぶられるかのような感動を覚える時ってあることなんです。

サザン・ソウルの知る人ぞ知る名ヴォーカリスト、ウィリー・ハイタワーの名は、多少は知っておるつもりでありました。

黎明期のソウル巨人、サム・クックの影響を大きく受け、60年代70年代には数々のシングルを世に送り、いずれもそこそこのヒットとなるも、その後は実力に見合った活躍の場を与えられず、コアなソウルファンの間で伝説として語られてきたシンガー。

アルバムもそれまでのシングル曲を集めたものが1枚しかリリースされておらず、大抵は60年代ソウルのコンピレーションとかで数曲入っているのを「あぁ、この人いい声してんなぁ・・・」と、アタシは何となく聴いておりましたが、接する機会の少ないまま、そのまんまアタシの記憶からはすっかり消えておりました。

しかし!

しかしですよ、そんなこんなですっかり忘れていたウィリー・ハイタワーと再び巡り合って、しかも「うぉぉ!この人こんなにカッコ良かったんだ!!」と思わせるような素晴らしい出来事があったんです。

それは、毎週日曜日の夜に楽しみにしている永井ホトケ隆さんのラジオ番組『BluesPower』です(奄美エフエムで夜10:00から聞けるから、奄美の人達には本当に出来るだけチェックしてほしいっすよー!)。

いつものようにワクワクしながら聴いてたら、いつも静かにアツいホトケさんの声がやたらウキウキで「いや〜、行ってきましたよウィリー・ハイタワーのライヴ」と、力(りき)入ってたんです。

え?ウィリー・ハイタワー?あのソウルの?来日してたんだ、つうか今も現役で活動してたんだ。へぇぇ〜。

と思って聴いてたら、何とウィリー・ハイタワー、77歳にして初めての新作アルバムをリリースして、そのプロモーション・ツアーも兼ねての来日公演を行って、とにかくまぁそのステージが凄かった、往年のサザンソウル(アメリカ南部のソウルのことです)の雰囲気はもちろんそのまんま豊かに持っていたんだけど、何より今の音楽としてそれを聴かせる物凄い説得力があったんだ、と。


アメリカ南部アラバマ州で生まれ、幼い頃から地元の聖歌隊でゴスペルを歌い、サム・クックに憧れてソウルの世界へ飛び込む。60年代にデビューしたシンガーの典型的なタイプです。恐らく同じような過程を辿る(特にサム・クックに憧れるところ)シンガーはいっぱいいたでしょうが、彼の声にはやはり独特の優しさと繊細さがあって、その声がサザン・ソウルと呼ばれる独特の温かみのあるサウンドを奏でる地元バンドのバックと凄く合っていた。

シングル人気にそこそこ火が点いて、ヒットチャートの15位とか20位とか、そういうところの常連となるものの、彼はどちらかといえばインパクトよりもジワジワと染みて「あぁいいね・・・」と聴く人に思わせるシンガーです。世間を揺るがすほどの強烈なヒットがないまま、活動は下火になり、70年代以降はほとんど音楽シーンからも忘れられているような”幻のシンガー”となっておりました。

でも、彼の歌に静かに心動かされた人達というのはやはりいて、ほぼ引退状態だったウィリー・ハイタワーの復活を支えたり熱望したり、本当に真剣にこの素晴らしいシンガーの帰りを待ち望んでおりました。

その中にはリアルタイムのソウル世代ではなく、90年代以降のレアグルーヴ・ムーヴメントなどで彼の声を新たに聴いた世代のファンも居たと思います。


とにかくまぁ、欧米や日本における「ジワジワとした正しいソウル・ミュージック再評価」は、90年代から今まで息の長い静かなムーヴメントとして続いていて、それが何と50年ぐらいぶりのアルバムのリリースにも繋がって、まさかの来日公演まで実現させたってのは、本当に感慨の深いことです。



アウト・オブ・ザ・ブルー


【収録曲】
1.I Found you
2.Raining All The Time
3.Rock Me Gently
4.Somewhere Day
5.Tired Of Losing You
6.You Can't Love Me(Bettr Than You're Lovin' Me Now)
7.No Gettin' Over Me
8.Easy lovin'
9.Everybody Wants My Girl
10.Who Who Who


ラジオでかかったのは、そんなウィリー・ハイタワーの「77歳にして初のオリジナル・アルバム」から何曲かだったんです。

正直いい歳のおじいさんだし、枯れた味わいの渋い歌声に癒されるのかなと思っておりましたが、いやもうそんなアタシのぬるい期待なんか軽〜く打ち砕いてくれるベテランシンガー(それもホンモノのソウルシンガー)の、最高に魂の入ったエモーショナルな歌唱と、見事に進化して若い頃よりカッコ良くなった歌声に完全に虜にしてくれる、そんな素晴らしい体験を、ほんの数曲がさせてくれました。


端的に言うとアタシ泣いたんです。

いや、アタシも大体40代のおっさんだし、英語だってパッと聴いたぐらいでは何言ってんのか分からないのに、ウィリー・ハイタワーの歌声と感情が、理解とかを越えた部分でガチーンときまして、えぇ、気が付いたらもう涙がポロポロ出てたんですね。

この人の声は、さっきも言ったように凄くエモーショナルです。やっぱりゴスペルで鍛えただけあって、芯の方はすごくパワフルで、同時に都会モンにはないタフネスみたいなものを感じさせるんですが、それ以上にどこまでも優しくて、特にバラードでは「何でこんなに感情持ってくのー」ってぐらいに独特の緩やかなうねりがあるんです。

特に2曲目の『Raining All The Time』とかのバラードの、全く気負いのない、肩の力を抜いた歌い方なんだけど、奥底から情感がふわ〜っと浮き上がってくるような、噛み締めながらジワジワ歌いあげてゆくスタイル。こういうのはやりなさいと言われて出来るもんじゃないし、ヘタに強いシャウトをかますよりもずっと凄いことをやっているように思います。技術だけでもセンスだけでも、経験だけでも出来ない、全ての要素が心の奥の奥でピタッと重ならないとこれは出来ない。

あと、声にさり気なく寄り添うシンプルなバンド・サウンドも最高ですよね。乾いたギターに暖かなオルガン、最小の手数で最高のグルーヴを生み出すベースとドラム。60年代のサザン・ソウルは、このさり気ないサウンドに支えられて多くの根強いファンを増やしてますが、21世紀の2018年に出したアルバムで、まさかそのサウンドが懐古じゃなくて「今現在のリアルな音」として鳴り響いてるんですよ。そういうところも含めてウィリー・ハイタワーの『アウト・オブ・ザ・ブルー』ちょっと本当に凄いアルバムです。










『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:39| Comment(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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