2018年12月30日

エリック・ドルフィー ミュージカル・プロフェット〜ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ

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エリック・ドルフィー/ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ
(Resonance)


むふふ

むふふふふ・・・

あ、すいません。皆さんお久しぶりです。


いやはや年末ですなぁ、あれこれ無駄に忙しくてもうアレですね、やんなっちゃいますよね。

というわけでむふふ

むふふふふ・・・・


あー、ついに入手しましたよ、入手しちゃいましたよ噂の話題作。

そう、エリック・ドルフィーの未発表音源入り3枚組『ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ』。


まず最初にねー、このブログを見てる全国の子供達に言っとくねー

あのね

サンタさんはいます

はい、ツチノコも雪男も天狗もいます!

うん、アタシがジャズにハマるきっかけとなった素晴らしいアーティスト、エリック・ドルフィーの未発表音源、これは「ドルフィーは見たら買う」をハタチの頃からモットーにしてきたアタシにとってはもう絶対に買わなきゃいけないブツだったんです。

でも値段が¥5000近くする(!!)

うっそぉ〜、そんなの毎月¥2000ぐらいのCDを1枚買えるか買えないかの超極貧生活を送っているアタシには無理無理!って思ってサンタさんに

「エリック・ドルフィーのミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズが欲しいです。いい子にしますんでよろしくお願いします」

とお願いしたら、何と12月25日のクリスマスの日に、アタシの机の上に置いてあったんですよ。


という訳で子供達、サンタさんはいるしツチノコもいるし雪男も天狗もいます。


じゃあエリック・ドルフィーの話をしましょうね。

エリック・ドルフィーという人は、1960年代前夜、ちょうどジャズという音楽が成熟を極め「さて、これから進化して行くにはよほどのことをせにゃあならんぞ」って時にシーンに登場してきました。

ジャズっていう音楽は、皆さんもご存じの通り、戦前から戦後50年代までは数ある大衆音楽の中でもっともメジャーなものでありました。

「ジャズはオシャレ」っていうイメージが何となくあるかと思いますが、実際その通りで、この時代までジャズっていう音楽は最高に贅沢なエンターテイメントであり、流行の先端であり、老いも若きもジャズっていう音楽には娯楽も流行も、そして高い芸術性や文学性すら求めていた。

ええ、そしてその「求められている全部」に応えきれるだけのサムシングがジャズにはありました。

そんなこんなでジャズの中で”モダン”というひとつのスタイルが定着し、ここがジャズという音楽の人気の頂点であったんですね。

しかしまぁジャズって音楽は、戦前のディキシーランドからビッグバンドスウィング、そして戦後のビ・バップ、ハードバップと目まぐるしくスタイルを進化させてきた音楽です。

「ジャズが人気だぜーうわ〜い」

となっても、これはもう音楽の性質的に「じゃあこれでいい」という風にはならないし、聴く側も特に若いファン達は「もっと刺激的なのが聴きたいぜ!」となっておりましたので、意識の高いミュージシャン達は常に「もっと新しいやり方」を模索してたんです。

この辺りから「それまでのジャズの常識や、音楽理論のお約束事からいかに演奏を解放するか?或いは理論の中で表現手法というものの解釈をどこまで拡大できるのか?」という、文字にすればちょっと難しいようなことが、セッションやレコーディングの場ではこれまでより盛んに試みられるようになりました。


理論的には”フリー”とか”モード”とか言われる、音楽に付き物のいわゆるコード進行とかスケール展開とか、或いはリズムそのものを大胆に逸脱したり(フリー)、本来のコード進行というものの枠を取っ払ったり、逆にものっすご細かく詰め込んだりして(モード)、聴いた感じ「お、新しい」と思えるようなものを新たに作り出す試みなんですが、もっとシンプルに「楽器をやってるとどうしても演奏出来る速さとか運指とか限界あるよな、ほら、同じ小節の中で1オクターブは弾けてもいきなり2オクターブとか飛ぶのとかすっげぇ難しいじゃん、できねーじゃん」っていうようなもどかしさを、猛練習の末に克服して”ぶっ飛び”をスラスラ出来るカッコ良さみたいなもの、あぁややこしいから一言で言っちゃえば

「誰もやってねー凄いこと」

を、ミュージシャンのほとんどが求めてた。


で、みんながそれこそ悩んで苦しんで懸命になって「オリジナルな演奏」を生み出してる時に、サックスもバス・クラリネットもフルートも完璧にこなす上にオクターブなんか軽々飛び越えながら、それまで世に出て来たどんな演奏家のフレーズとも似ていない、オリジナリティ溢れる「なんじゃこりゃ!」なフレーズを当たり前のように吹けるスーパーなプレイヤーとしてエリック・ドルフィーがひょいと出て来た。

ものっすごい難しいフレーズを軽々と吹ける上に他の誰とも似ていない、その上楽譜はスラスラ読めるし難しい音楽理論なんかも完璧に理解している。更にジャズミュージシャンとしては珍しく物腰が柔らかくて物静かでぶっちゃけ性格がいい(!)

ミュージシャン達はこぞって彼の先進性を讃え、人間性を絶賛しました。

特にこの時代に「新しいことをやっている」と注目されていたジョン・コルトレーンとチャールス・ミンガスは、彼の才能と人柄に惚れ込んで自分のバンドのメンバーに抜擢しました。

えぇ、エリック・ドルフィーって人は凄いんです、本当に凄いんです。

ところが、そんな凄い才能があって楽器演奏のテクニックは完璧で、人間的にもよく出来たドルフィーがあっという間にシーンで頭角を現して、引く手あまたの大人気ミュージシャンになったかといえば・・・そうではなかったんですね。

音楽のことを「よくわかってる」ミュージシャン達は彼に注目し、評価しておったんですが、彼の斬新過ぎる音楽性とぶっ飛んだ領域にまで達している演奏は、一般のリスナーや評論家といった人達にはなかなか理解されず、あろうことか「あんなのは音楽じゃない」「酷い雑音」とかそういう風にクソミソ言われたりして、せっかくソロで出したレコードもほとんど売れず、バンドを組んでも「待ってました!」と出演させてくれるクラブも多くは見付らず、生活が困窮するぐらいの酷い境遇に置かれておりました。


で、結局遅かったソロデビューからたった4年ぐらいのうちに、彼はアメリカでの活動を諦めて、偏見の少ないヨーロッパで生きて行く事を選ぶ訳なんですが、そこで持病の糖尿病が急激に悪化して倒れ、36歳という若さであっけなくこの世を去ってしまいます。

エリック・ドルフィーのアルバムへの世間の正当な評価がようやく追いついたのが彼の死後、そしてアルバムも亡くなってから多く発売されております。




エリック・ドルフィー / ミュージカル・プロフェット : ジ・エクスパンデッド・1963 ニューヨーク・スタジオ・セッションズ [CD] [Import] [日本語帯・解説付]


【パーソネル】
エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)
ウディ・ショウ(tp,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3@DEF)
プリンス・ラシャ(fl,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3,@DEF)
ヒューイ・シモンズ(as,Disc-1@A,Disc-2@AC,Disc-3,@DEF)
クリフォード・ジョーダン(ss)
ガーヴィン・ブシェル(Basoon,Disc-2,AC,Disc-3,@EF)
ボビー・ハッチャーソン(vib,Disc-1@,Disc-2@AC,Disc-3DE)
リチャード・デイヴィス(b,Disc-1@B〜E,Disc-2A〜D)
エディ・カーン(b,Disc-1@,Disc-2@C,Disc-3DF)
J.C.モーゼス(ds,Disc-1,@,Disc-2@AC,Disc-3D〜F)
チャールズ・モフェット(ds,Disc-1A,Disc-3@)
*デヴィッド・シュワルツ(vo,Disc-2,E)
*ボブ・ジェームス(p,Disc-2,E)
*ロン・ブルックス(b,Disc-2,E)
*ボブ・ポーザー(ds,Disc-2,E)

*データ不明のため一部資料に記載されていた表記に従っておりますが、正確な詳細は不明のパーソネルです



(Disc-1)
1.JITTERBUG WALTZ
2.MUSIC MATADOR
3.LOVE ME
4.ALONE TOGETHER
5.MUSES FOR RICHARD DAVIS (Previpusly Unissued 1)
6.MUSES FOR RICHARD DAVIS (Previpusly Unissued 2)

(Disc-2)
1.IRON MAN
2.MANDRAKE
3.COME SUNDAY
4.BURNING SPEAR
5.ODE TO CHARLIE PARKER
6.A PERSONAL STATEMENT (Bonus Truck)

(Disc-3)
1.MUSIC MATADOR (Altanate Take)
2.LOVE ME (Altanate Take 1)
3.LOVE ME (Altanate Take 2)
4.ALONE TOGETHER (Altanate Take)
5.JITTERBUG WALTZ (Altanate Take)
6.MANDRAKE (Altanate Take)
7.BURNING SPEAR (Altanate Take)

(録音:1963年)



さて、このアルバムについて触れます。

エリック・ドルフィーは終焉の地であるヨーロッパに渡る直前の1963年にスタジオでセッションをしております。

そのセッションの中から、彼が亡くなった後にプロデューサー・アラン・ダグラスの個人レーベルより『アイアン・マン』(オリジナル曲中心)『カンヴァセイションズ』(スタンダード中心。後にVeeJayが権利を買い取って『メモリアル・アルバム』としてリリース)がリリースされ、更に亡くなって20年以上経った1988年に、突如「1963年の別のセッションの未発表音源」として『アザー・アスペクツ』という謎に満ちたアルバムが出され、ファンを驚かせました。

ところがこの未発表音源には、実はまだ”つづき”があったんです。

『ミュージカル・プロフェット ジ・エクスパンデッド1963ニューヨーク・スタジオ・セッションズ』は、アルバム『カンヴァセイションズ』『アイアンマン』丸々2枚に加え、そのセッションの未発表テイク、そして『アザー・アスペクツ』から「Jim Crow」のタイトルで出されていた曲の別テイクが「A Personal Statement」と表記を変えて収録されております。

1963年といえば、アメリカ国内におけるドルフィーが、その果敢な実験精神を作曲にぶつけ、そして個性的な若手メンバーを集めて作った名盤『アウト・トゥ・ランチ』(BlueNote)なんです。

その実験精神溢れるアレンジと極限まで研ぎ澄まされたアドリブのカッコ良さは、アルバム『アイアンマン』『カンヴァセイションズ』でも存分に発揮されていて、これらのアルバムを聴く度に、この年のドルフィーって境遇としては不遇だったかも知れないけれど、音楽的にはこの時代に頭ひとつもふたつも抜けて充実した内容のものを作っていたんだなぁと感動しきり・・・。


おっと、音源の話でした。エリック・ドルフィーがヨーロッパに渡る直前に「ちょいと旅に出て来るから、その間コイツを預かって欲しいんだ」と、友人であるヘイル・スミス、ファニー・スミス夫妻にひとつのスーツケースを預けました。

中には大量のテープと楽譜、音楽の研究に関するノートや書籍が詰まっていて、これらの遺品の中に入っていたテープこそが、紆余曲折を経てドルフィーの死後50年以上経った2018年にようやく音盤化されたという次第であります。

内容は未発表の部分がDisc-1,Disc-2後半と、Disc-3に集められていて、3枚組なのにしっかりと作品としてのクオリティが保たれていて、しかも発売時ステレオだった録音を、オリジナルのモノラルに直した上でのリマスターによって、音がドカッとまとまって前面に出ているという、とても丁寧な仕事がなされております。

アルバムとしての『カンヴァセイションズ』と『アイアンマン』の素晴らしさは言うに及ばず、肝心の未発表の部分なんですが、Disc-1後半のドルフィーとリチャード・デイヴィスのデュオ、これがもうこれがもう素晴らしく深淵で、コレを聴くためだけに大枚はたいてもいいぐらいの内容。

あのですね、リチャード・デイヴィスのベースって、他の音盤だとどうも裏に引っ込んでペンペコペンペコ言ってる感じで、ベース単体として評価するのはどうなんだろうと、すごく悩むスタイルの人なんです。だけどこの”他の楽器が一切いない状況”でのデイヴィス、まずアルコ(弓弾き)の音の隅々にまで異常な”気”が満ちていて、ヘヴィで荘厳な磁場を生んでます。そこにドルフィーのバスクラが情念の極みみたいな凄まじい吠え方をするもんだから、あぁもうたまんないんです。そうそう、ジャズってゴキゲンでノリノリな音楽かも知れないけど、こういう聴く人をとことん深いところに引き込むような、ある種の”恐ろしさ”みたいなものがあってもいい、それもまた想像力に対する素晴らしい刺激なんです。


あと、国内盤には詳細な音源の解説とともに、ビル・ラズウェル、ソニー・シモンズ、ハン・ベニンク、リチャード・デイヴィス、オリヴァー・レイク、ヘンリー・スレッギルら、ドルフィーと深く関わった/強く影響を受けたアーティスト達による貴重なロングインタビューが付いておりますので、買うんなら国内盤が断然お得です。

最後にしつこく言いますが、このモノラル・マスタリングはこれまで世に出たどの音源よりもドルフィーのアルトサックス、バス・クラリネット、フルートの音を生々しく伝えてくれますんで、演奏家としてのドルフィーの凄さを、散々聴いてきた人にも改めて「やっべぇ!」と思わせるぐらい凄い音ですよ。












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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 15:46| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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