2019年03月02日

ザ・サイケデリック・サウンズ・オブ・13th・フロア・エレベーターズ

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The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators


お店に立ってた2000年代の前半に、トランス・ミュージックが流行った事がありました。

その頃の10代とか20代前半の人達は、メロコアやスカコアなどのパンク系やヒップホップを入り口に、自分が「お、これいいな」と思った音楽は、ジャンルとかとりあえず関係なく聴いてみるという、実に良い感性を持ってて、で、不思議とロック系ラップ系どちらも共通の「いいよな」ってのがボアダムスだったり、そんでもってボアダムスからトランスに行った若い人達が自分でスピーカーとかミキサーとかを屋外に持ち込んでイベントしたり、あれ今思うとレイヴってヤツですね、とにかくアクティヴに色々と面白い事をやってて楽しかったですね。

で、そんな時東京から帰ってきたばかりだったアタシは思った訳です。

「トランスってことはサイケだから、このいい機会にこの島で本格的にサイケデリックロックとかフリージャズとかを布教しよう」

と。


目論見はそこそこ成功して、その辺のトランス聴いてる若い人達は、レッド・クレイオラとかサン・ラーとかMC5とか、後期コルトレーンとかも熱心に聴いてくれるようになって、はい、アタシは凄く嬉しかったし今も嬉しいです。

そういう音楽がそこそこ受け入れられるようになってくると「ところでお兄さん”サイケ”って何すか?」という質問もよく受けるようになりまして、うぅ〜ん、そうねぇ、サイケデリックってのは60年代からアメリカで出回るようになったLSDっていう幻覚剤があってだね、その幻覚作用を感じさせるよーな音楽を、ガレージロックっつう・・・まぁこれはパンクみたいなもんだと思ってもらっていいんだけど、そういう激しい音楽やってる連中が始めたのが最初なんだよ。

ほれ、エフェクターとか使って音をギョーンとかびろーんとかホワンホワンホワンってやったりするのって、今はロックでも何でも簡単に出来るし効果音として当たり前になってるでしょ?でもその頃は少ない機材とかで色々と無理やってそういう音を出してたんだ。で、薬物やってるヤツがそれ聴くと「うはぁ!オレが飛んでる時そういえば音楽がこんな風に聞こえるよー!!」って、ますます飛ぶんだね。

「ほぉ〜ん、そうやって出来たのがサイケってんですね。わかりました。でも、そういうのって最初にやったバンドってあるんすか?」

と、言う鋭い質問が来る時のために、コーナーには常に13thフロア・エレベーターズを置いていたりもしました。

はい、13thフロア・エレベーターズは『元祖サイケ』と呼ばれる伝説のバンド。

ガレージロックがローカルなティーンエイジャー達に人気で、アメリカでもビートルズやストーンズっぽいのとか、もうちょっとブルースや50年代型のロックンロールのテイストが入ったのとか、割とポップなやつとか色々なバンドが出て一瞬の煌めきを放っていた1960年代半ばに、大大的にドラッグからの影響というものを前面に打ち出して「壊れたロック」をやって世界に衝撃を与えたのが13thフロアー・エレベーターズであります。

大体バンド名からして不吉な数字として忌み嫌われていた「13」が入ってるし、ファースト・アルバムはよくフリーメーソンの陰謀とか何とかで取り上げられる「ピラミッドの目」だったりするし、とにかく音楽性云々以前に、純粋なリスナーには「うへぇ、何だコイツらヤバそう」と思わせるに十分なインパクトを持っておりました。

サウンドの方も名前に全然負けておらず、一言で言っちゃえばヴォーカルのロッキー・エリソンの”奇行”がそのまんまマイク持って歌ってるかのような、通常のちょいヘナい声からいきなり感極まったようなハイトーンで絶叫するスタイルとか、ギタリストのステイシー・サザーランドによる、汚く歪んだファズトーンに、常識では考えられなかった大胆なエコー使い。

そして、究極に”おかしい”のが、何とこのバンドには”ジャグ”という工業用の瓶、つまりコレは戦前のブルースの形態でジャグバンドってのがあって、詳しくは下のリンク読んでくださいなんですが





この、手作り楽器バンドがベースの代わりに吹いてボンボン言ってた楽器を、エレキギターガンガンのロックで使って、で、呼び方は「エレクトリック・ジャグ」なんだと。演奏の中でもこれがずっと不自然にポコポコ言ってて、もしかしたらドラッグ云々よりコイツらの一番ヤバいところはここなんじゃないかと思うぐらいにインパクト強烈なんです。


この13thフロアー・エレベーターズ、1966年に音楽に関しては「行き過ぎ、やり過ぎ、イカレ過ぎ」な連中が定期的に輩出されるテキサスで結成され、この地を中心に活動をしておりました。

地元が同じテキサスのジャニス・ジョプリンやZZトップのビリー・ギボンズらは彼らのファンで、その音楽的な影響力がアンダーグラウンドからメジャーなロックにまで幅広く及んでいる事もあり、ロック史全体で重要なバンドとも言われておりますが、人気絶頂の1968年に解散の憂き目を見ました。

その理由が、よくある音楽性の違いとか金銭トラブルとかじゃなくて「薬物の使用に関する法律問題」で解散に追い込まれたという話ですから、まぁ本当に”よほど酷かった”んでしょう。

実際にヴォーカルのロッキー・エリクソンはかなりの情緒不安定で、ステージの下でも度重なる奇行を繰り返し、ギターのステイシーも薬物中毒により入院、78年に夫婦喧嘩がエスカレートして奥さんに射殺され死亡。”エレクトリック・ジャグ”のトミー・ホールも深刻な薬物中毒患者となり、その後新興宗教にハマっております。




PSYCHEDELIC SOUNDS OF(DEL


【収録曲】
1.You're Gonna Miss Me
2.Roller Coaster
3.Splash 1
4.Reverberation
5.Don't Fall Down
6.Fire Engine
7.Thru the Rhythm
8.You Don't Know (How Young You Are)
9.Kingdom of Heaven
10.Monkey Island
11.Tried to Hide
12.Everybody Needs Somebody to Love (Live)
13.You Really Got Me (Live)
14.Gloria (Live)
15.You're Gonna Miss Me (Live)


結局薬物に関するゴタゴタと、元々ベースとドラムが何度も入れ替わる不安定な編成によって解散した13thフロアー・エレベーターズ。

後に地道な治療によって精神の病が少しづつ回復してきたロッキー・エリクソンは、90年代以降13thフロアー・エレベーターズとしての活動をぼちぼち再開しますが、オリジナル・メンバー(つまりギターのステイシー・サザーランドとエレクトリック・ジャグのトミー・ホールが揃った編成)でリリースしたスタジオ・アルバムはたったの3枚。

その3枚はどれも「ガレージからサイケ」橋渡し期の起爆剤と呼ばれるにふさわしい、アシッドでエキセントリックな名盤であります。

で、その中でもやっぱりロックバンドとしてのテンションと「コイツらは一体何をやらかしてくれるんだろう」という不穏なスリルと衝動に満ち溢れた作品といえば、やはりファーストでしょう。

「テキサスから出て来た凶悪なサイケモンスター」の異名とは裏腹に、楽曲は意外にも高いポップ・センスを感じさせる、例えばビートルズのファーストとか、日本のGSにも通じる、60年代ならではのレトロでキャッチーな雰囲気。

ただ・・・、そう”ただ”なんです。

楽曲は非常にポップで、むしろ聴きやすいぐらいなんですが、ザラザラした異様な輪郭のギターのトーンと、泥酔しているかのようなヨレヨレの声が突如「アイィィィーーーー!アイィィィーーーー!」と何かが乗り移ったかのようなシャウト・ヴォーカル、そして、一番怪しいのが、曲調に関係なく「ポコポコポコポコポコポコ」と終始鳴っているエレクトリック・ジャグ。

普通”ジャグ”つったら、曲のリズムに合わせて「ボフッ、ボフッ」とベースラインを刻むはずなのですが、13thのジャグはそういう吹き方なんかしておらず、高い音を、多分声を使ってぷくぷく言ってるだけ。更にその音に微妙なエフェクターをかけてるのか、何だか楽器の音っていうより、レコードの中に住んでるちっちゃいゴリラがウホウホ言ってるような、せっかく他のメンバーが真面目にイカレた音を出しているのに何だお前は、全部ブチ壊しおってからに!と、ツッコミを入れたくなるんですが、いやでも13thの何だか得体の知れない破れて壊れた感じは、このエレクトリック・ジャグがいないと成り立たないよなぁと、いつの間にか、そう、いつの間にか聴く側に思わせてしまう、本当にエグい中毒性が高い、実に厄介かつ体に悪い音なんです。


「サイケデリック」なる概念を最初に音にしたのが13thフロアー・エレベーターズかどうかは、本当のところよく分かりません。行き過ぎ、やり過ぎで常識をぶっこわそうとしていたバンドは、この時代それこそ多くおりましたから。


しかし、それでもなおこの時代のイカレたロックンロールとしても13thの個性と狂気は突き抜けたレベルですし、何よりサウンド全体の「あちこち破れてちょうどいい感じ」や、エリクソンのヴォーカルの虚飾のない不安定ぶりや、何度聴いても何の脈絡もないエレクトリック・ジャグの異様な存在感ゆえに、単なるヴィンテージロックではない生々しさを、このアルバムからは今も感じてならんのです。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 21:14| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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