2019年06月23日

ジェスロ・タル ジェラルドの汚れなき世界

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ジェスロ・タル/ジェラルドの汚れなき世界
(ワーナー)


アタシがローリング・ストーンズという真にグレイトなロックバンドのカッコ良さに目覚めたアルバムが、1969年に製作され、1996年突如として世に出た『ロックンロール・サーカス』でありましたが、実は後になって、このアルバムで「コイツらヤベぇな!」と興奮したバンドがありました。






それが、コンサートのオープニングを飾ったジェスロ・タルでありました。

あのですね、ロックバンドのくせにフルートですよ、フルート吹いてる奴がメインなんです。

で、最初「ジャズかな〜?」と思わせて、曲が展開する毎にそこにブルースや骨太なロックのノリもガツガツ入ってきて、一言で言えば「色々入り過ぎて何ていうジャンルかよくわからない混沌とした感じの音楽」を、物凄い勢いで展開するんですよ。

アタシの世代だったら、激しいロックにファンクとかヒップホップを足したよーな音楽をミクスチャーって言ってて、直感で思ったのは「あ、これはミクスチャーの元祖みたいなもんだね、えらく自由でカッコイイぜ!」というような事でした。

「これはジャンルで言えばどんな感じになるんですかね」

と、先輩に訊いたら

「おぅ、コイツぁプログレだな」

と言うので、なるほどこういうのがプログレかーと思って、キング・クリムゾンとかピンク・フロイドとか、マグマとか、いわゆる”プログレ”の大物なるバンドを聴いてジェスロ・タルと比べたりしてみましたが、それらとはちょいとまた毛色の違う、ハードで知的な演奏ながら、どこかとっつきやすいポップな感じと、ジャンルごちゃまぜ以前に、どこかこう英国のトラッドとか、伝承とかそういう部分と深くコミットしているような、ヨーロッパの土着性みたいのを強く感じて、これを一言で何何だっていうのは、やっぱりちょっと違うなと、今でもずっと思っております。

で、ロックンロール・サーカスってのは、実はCDの方がサントラで、本編はビデオの方なんですね。

リリースしてほどなくしてから、見せてもらう機会があって、それのジェスロ・タルを観たのですが。。。

か・・・カッコイイ!!


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フロンロマンでフルート&ヴォーカルのやつ(イアン・アンダーソン)が、長髪のヒゲ面で、しかも19世紀の辻芸人みたいな恰好で、フラミンゴみたいに片足上げてフルート吹いている。その姿と楽曲の雰囲気とが、サーカスのテント小屋っていう異空間の演出に本当に、ある意味他のどの出演者よりもピッタリ合っててですね「もうコレ!絶対コレ!!」と、何がコレなのだか、何が絶対なのだかわからんのですが、とにかく興奮して狂喜乱舞致しました。

単純な「ジャンルの融合」というのよりも、もっと何か深い部分で共鳴する音楽の集合体のような、そういう本質的なヤバさみたいなものを感じたんですね。

色々と興味持って調べてみたら、デビュー前から音楽と演劇やパントマイムなどを融合させた、独特なステージをやっていたり、フルート&ヴォーカルのイアン・アンダーソンは、元々ギターを弾いてたんだけど、他の連中がみんな自分より上手いから、これは何か別の楽器をやらねばと思って楽器店に行った時、ヴァイオリンとフルートで迷って「どの楽器が簡単かな?」と店員に訊いたら「フルートの方が簡単だよ」と言われて「じゃあフルートで」と決めたとか、もう何かそういう所からして面白いんです。

で、その雑多な音楽性も、大道芸人のような独特のパフォーマンスも「道化になってやろう」という本気の覚悟でもって生み出されたものと聞いて、アタシはますます好きになりました。



ジェラルドの汚れなき世界

【収録曲】
1. ジェラルドの汚れなき世界 (パートI)
2. ジェラルドの汚れなき世界 (パートII)
3. ジェラルドの汚れなき世界 (1978年マディソン・スクエア・ガーデンのライヴ)*
4. インタヴュー:ジェスロ・タルのイアン・アンダーソン、マーティン・バレ、ジェフリー・ハモンド=ハモンド*

*ボーナストラック



で、恐らくは「道化」に徹した事が功を奏したか、60年代後半からロックシーンの中で常に何かがはみ出る程の異彩を放ち、70年代になるとあっという間に世界でも人気のバンドになったジェスト・タル。

「成功の秘訣は?」と本人達に訊いたら

「秘訣?う〜ん何だろ?好きな事を好きにやったからなんじゃないのぉ〜?」

とでも答えそうなぐらい、その雑多な音楽性と、ルーツへの深い探究は、キャリアのどの時期でも徹底しております。


初期のジャズとブルースとロックが混沌として入り混じったアルバムもすごく好きですが、アタシ個人的には完成度の高さに衝撃を受けたのが5枚のアルバム『ジェラルドの汚れなき世界』であります。

「8歳の天才詩人、ジェラルド・ボックスが、詩のコンテストで受賞した長編詩に、ジェスロ・タルが楽曲を付けた衝撃の問題作!」

という触れ込みで、しかもオリジナルのレコード盤は、あたかも新聞記事であるようなデザインでありますよ。

もちろん「8歳の天才詩人、ジェラルド・ボックス」は架空の人物で、作詞/作曲のクレジットには、しっかりとイアン・アンダーソンの名前が記されております。何でこんな事をしたのかというと、この前にリリースされたアルバムが、評論家から「何かコンセプト・アルバムみたいだね」と、皮肉交じりに言われた事に腹を立てて「じゃったらホンモノのコンセプト・アルバム作っちゃるけぇ耳かっぽじいてよく聴きないや!」と、本気で作ったコンセプト・アルバムになったんだとか。

で、中身の方も「コンセプトぶり」徹底しております。

何つっても収録されている曲は「A面B面で1曲」になるような、恐ろしく長い組曲です。

加えて「ジェラルド・ボックスの詩(設定)」というのが、まーこれはいかにも18世紀とか19世紀の詩人が書きそうな、非常に高度なレトリックを駆使した、皮肉と嘲笑とスマートなユーモアに溢れたもの。

えぇ、長いので詩は省略しますが、これをですね、あたかも英国伝統の吟遊詩人が残した音楽であるかのように、ヨーロッパの土着性たっぷりのトラッド・フォークのアレンジを基調に、妖しくも美しいフルートや、情感豊かでかつ異次元のグルーヴ感に溢れた、展開しまくりなリズムとで、スケールの大きな組曲に仕上げ一気に聴かせてくれるのです。


英国ロックといえば、レッド・ツェッペリンの名曲で『天国の階段』という曲があり、アレも組曲風の壮大なアレンジとめくるめく展開で聴かせる名曲ですが、このアルバムは、丸々1枚それに近い空気です。ただ、英国トラッドフォークとハードロックの純粋なクロスオーバーっぽいツェッペリンよりも幾分ひねくれた構造と、更に劇薬っぽくまぶされたロックの毒が効きまくってて、実にシビレる、ジワジワ感動しながら興奮してしまう、不思議な不思議な中毒性があって、やっぱり一概にロックとかプログレとか、そういう風には括れない奥深さがあります。

今でもジェスロ・タルってアレですよね、ジャンルや時代の云々じゃなくて、音楽で異世界を見たい人のために、その深淵な間口を開けて獲物を待ち構えているようなバンドに思えますね。

















『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:09| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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