2019年06月23日

ジェスロ・タル 日曜日の印象

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ジェスロ・タル/日曜日の印象
(ワーナー)

引き続きジェスロ・タルを聴いてるんですが、いやぁ〜いいですよ、ジェスロ・タルかっこいいですよ。

ビートルズやストーンズやツェッペリンのようなモンスターバンドではないのですが、同じ時代のどのバンドとも違うサウンドで、群を抜いて独創的であるにも関わらず、結局この人達からモロに影響を受けてサウンドやスタイルを似せたバンドがその後現れなかったって凄くないですか?

そりゃ確かにロックサウンドにフルート入れたら、どんなバンドでもジェスロ・タルになっちゃうかも知れない。でも、単純に「ロックバンドなのにフルートがいる!しかも、そいつ、フロント!うひゃ!!」っていうのだけじゃないんですよね。ジャズやブルースやトラッドフォークをドカッと全部ブチ込みつつも、それらがちょいとこの世とは違う世界の中で溶け合って響き合っているこの絶妙さ。これですね。この「俺達フツーにやってるだけだよ、やりたいことをね」とサラッと言いそうなこの感じ、これが「ジェスロ・タルってクセになる」ということなのかも知れません。


まーとにかく、ジェスロ・タルを聴いてると、ロックという音楽が生まれたてのまだよくわからない音楽だった時代に「これもロックか?よしオッケー、じゃあコレは?オッケー何でも来い」と、色んな音楽を取り入れながらというよりも、いろんな「良いもの」を手作りでこね回しながら独自の「良いもの」を新しく生み出していったその空気を、音を聴きながら目一杯吸い込んでる気持ちになれるんですよね。あぁほんと素晴らしい。

という訳で、先日彼らの音楽的な完成度が最高に完成された形で作品になった5枚目のアルバム『ジェラルドの汚れなき世界』をご紹介しました。ほんで、久々に「あ〜、ファーストもいいよな〜、聴いてみよう♪」と思ってファーストアルバム『日曜日の印象』を聴いてたんですが、いやもう良い!これは『ジェラルドの汚れない世界』と全然違って良い!でも、しっかりと何か見えない大切な部分でしっかりと繋がっていて良い!

さて、ジェスト・タルの音楽は美しい混沌でありますが、バンドそのもののデビューはリアルな混沌からスタートしておりました。

中心人物のイアン・アンダーソン(ヴォーカル&フルート)と、ベースのグレン・コーニックは、元々ジョン・エヴァン・バンドというブルースロックのバンドを組んでいたのですが、このバンドはメンバーが安定せず、誰か加入したと思ったらすぐ抜けて、常に空中分解中という酷い状態であったそうです。

そんなだったから”ジョン・エヴァン・バンド”でライヴハウスに出演しても、大体1回だけの仕事しかもらえずに後が続かない。だから「どうせ1回で断られるしメンバーも入れ替わってんだからテキトーな名前付けてオファーされに行こうよ」と、たまたま知った18世紀の植物学者”ジェスロ・タル”という名前を付けてライヴやったら、これが次にオファーももらえたからということで、たまたまテキトーに付けたバンド名が、音楽史に残る偉大なバンド名になってしまったという訳なんです。

という説もありますが、実際はマクレガーズ・エンジンという、これまたブルースロックのバンドから、実力派のギタリスト、ミック・エイブラムスと、ドラムのクライヴ・バンカーが、ジョン・エヴァン・バンドに合流する形で参加し、演奏が安定し、バンド名も変更。

このメンバーで出演した『ナショナル・ブルース・アンド・ジャズ・フェスティバル』というイギリス最大規模のジャズとブルースのフェスで他の出演者が霞むぐらいの素晴らしい演奏をした事で評判となって、メジャー・デビューがあっという間に決まったそうであります。




日曜日の印象

【収録曲】
1.日曜日の印象
2.いつか太陽は沈む
3.ベガーズ・ファーム
4.ムーヴ・オン・アローン
5.カッコー・セレナーデ
6.ダーマ・フォー・ワン
7.イッツ・ブレイキング・ミー・アップ
8.キャッツ・スクワレル
9.ジェフリーへ捧げし歌
10.ラウンド


さて、アルバムを聴いていると、冒頭から泥臭いカッティングのギターが炸裂する、実にヘヴィなロックでございます。

そして2曲目、3曲目はブルースロックというよりはド直球のブルースで、イアンの味わい最高なブルースハープと、短いながらフィーリングに溢れたミックのソロが実に素晴らしい。

ミック・エイブラムスという人は、単なるブルースファンという程度ではなく「ブルースじゃない音楽なんて全部クソ!」と言い切ってしまうぐらいの強烈なブルース・フリークで、まぁそれがジャズもトラッドも何でも取り入れてロックすりゃいいじゃないかというイアン・アンダーソンとは合わず、このアルバムリリース後にすぐ脱退してしまうんですが(だからデビュー直後の『ロックンロール・サーカス』では、代役として急遽トニー・アイオミがギターを弾いていた)、いや、この時代に、しかもイギリス人とは思えないぐらいにブルースが骨の髄まで染み込んだギターを弾けてしまうというのは、もう気持ちからそれぐらいにならないとダメだったんだろうなと思ってしまいます。

中盤以降はみんなが大好きイアン・アンダーソンのフルートが大々的にフィーチャーされております。


最高なのが5曲目の『カッコー・セレナーデ』。あのですね、イアン・アンダーソンはジャズマンのローランド・カークという人の大ファンで、この人は3本サックスくわえて同時に吹くとかいう凄い奏法が話題になる人なんですが、実はフルートも「ぶふっ、ブふっ」とか「ぶぎゃらぎゃらぎゃっひゃっひゃ!」という、呼吸音なのかそれとも歌ってるのかよく分からん声を混ぜながら、カッコ良くブルースにまみれたフレーズを吹きまくる人なんですが、ここでのイアンのプレイはまんまカークです。

そのフルート聴いてるだけでこっちも「あひゃひゃ!」となってしまうぐらい気持ちいいんですが、バックでオシャレなジャズ・コードをサラッと弾けてしまうミックと、静かに煽る見事なジャズビート叩けてしまうクライヴ・バンカー、やっぱりただの偏屈なブルース狂なだけじゃなく、確かな実力派だと思い知らされます。


「ファースト・アルバムには粗削りなカッコ良さがある」というグレイトなロックバンドの定説に漏れず、ジェスロ・タルのこのファーストも、グレイトなロックバンドならではの粗い魅力があります。

流石に後の英国トラッドフォークな幻想的な美しさはまだないのですが、それでもデビュー作でロックにブルースにジャズにと、ギリギリのクロスオーバーな要素を、トータルな枠組みの中で洗練された完成度でもって、しっかりと聴かせる仕上げを、何とファースト・アルバムでちゃんとこなしてるんですよ。ファンは歓喜し、ミュージシャンや音楽関係者は「末恐ろしい・・・」と戦慄を覚えた事でありましょうね。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 23:26| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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