2019年09月01日

マッコイ・タイナー バラードとブルースの夜

625.jpg

マッコイ・タイナー/バラードとブルースの夜
(Impulse!/ユニバーサル)


みなさんこんばんは。

9月になりましたが、まだまだ気候は夏の奄美です。

夏が終わってもちょいと動けば汗ばむぐらいの暑さ、去年は11月の半ばぐらいまで続きましたが、今年はどんだけ続くんでしょうね。。。

という訳で、夏の名物『大コルトレーン祭』は終わりましたが、余韻はまだまだ残っておりますので、今日はコルトレーン黄金の60年代前半から半ばまでを支えたピアニスト、マッコイ・タイナーをご紹介します。

タイナーに関しては、前もちょこっと書きましたが、もう大好きなピアニストにも関わらず、このブログでキチンと紹介しなかった事を痛恨として、彼のリーダー作はちょこちょこと定期的に紹介して行こうと思っております。

本日ご紹介するのは、恐らくこれはマッコイの数ある作品の中でも一番人気の作品でありましょう『バラードとブルースの夜』です。

マッコイ・タイナーが好き、或いはマッコイ・タイナーというピアニストが、自分の中の「好き」ではかなり上位に来るという人は、恐らくはコルトレーンの作品で彼の狂おしく情念が咲き散るプレイに心を打たれた人だと思います。アタシもその一人であります。

でも、このアルバムに関しては、コルトレーンのバンドでのマッコイをあんまり知らない人でも、いや、コルトレーン・バンドでのマッコイをあんまり知らない人の方が好意的に聴いていたと思います。

そう、このアルバムはマッコイ・タイナー3枚目のアルバムで、特にこの辺りまでの「初期」と呼ばれるマッコイのアルバムはどれもコルトレーン・バンドでのあの激烈なプレイから軽やかに距離を置いた、クールで耽美ですらあるピアノ・プレイがトリオ編成で聴ける。なかんづく本作『バラードとブルースの夜』は

「ジャズで何か落ち着いて聴けるやつある?う〜ん、ピアノがいいかな」

と、お店でリクエストしてくるお客さんからは、それこそ絶大な支持を集めていたアルバムでありました。

ちょこっと知ってる人になら

「これ、実はコルトレーンのバックでピアノ弾いてたマッコイ・タイナーなんですよ」

「えぇ〜!全然別人じゃん!!」

という会話が瞬時に成立しますが、「ジャズでなんかいいやつ〜」と言ってくるお客さんにはそれが通じず

「これ、実はコルトレーンのバックでピアノ弾いてたマッコイ・タイナーなんですよ」

「へーそうなんだ。コルトレーンって何か名前は聴いたことあるなぁ」

で、虚しく会話が終了したりしてたんですが、いやいや、それもまた味ってもんで、アタシはこういう会話の後に

「あぁ、コルトレーンをあんまり知らない人がマッコイ・タイナーを気に入ってくれている。じゃあそのうちコルトレーンも。いっひっひ・・」

と邪悪な笑みを心の中に浮かべておりましたねぇ、いけんやつです。これは相当ワルい・・・。

それはさておき、マッコイ・タイナーのインパルス初期のトリオ・アルバム。とりわけ3作目の『バラードとブルースの夜』は、単純に「カッコ良くて心地良いピアノが聴きたい」と思っている方に、理屈抜きでオススメ出来るアルバムです。

お前はオススメって言うけど、具体的にどうなんだと言われましたらば、アタシの敬愛するジャズサイトで『塩サバ通信』というめちゃくちゃ気合いの入ったサイトがあるんですけど、ここの管理人のサバさんが、一言で見事にこのアルバムの本質を、このような感じで評しております。


『すっげぇ怖い兄ちゃんが”ちょっと顔貸せ”と言うから恐る恐る入ったら”ちょっと恥ずかしいんだけど僕の作った詩集買ってくれませんか”と言われた』






バラードとブルースの夜


【パーソネル】
マッコイ・タイナー(p)
スティーヴ・デイヴィス(b)
レックス・ハンフリーズ(ds)

【収録曲】
1.サテン・ドール
2.ウィル・ビー・トゥゲザー・アゲイン
3.ラウンド・ミッドナイト
4.フォー・ヘヴンズ・セイク
5.スター・アイズ
6.ブルー・モンク
7.グルーヴ・ワルツ
8.酒とバラの日々

(録音:1963年3月4日)



何かもう、このアルバムを的確に表せる他の言葉をアタシは未だに知りませんが(汗)アタシもめげずに紹介します。

何度も言いますが、このアルバムは「バラードとブルース」というより全編ほとんどバラードで、マッコイの繊細な感性が奏でるミディアム以下のナンバーで綴られた、正に詩集です。


1曲目の『サテン・ドール』から、もうめちゃくちゃにメロディアス。デューク・エリントンの代表曲のひとつであるこの曲は、ちょいとウキウキした感じの弾むようなアレンジのカヴァーも多い中、マッコイは終始落ち着いた弾き方でじっくりと美しい旋律を紡いでおります。

中盤から後半に『ラウンド・ミッドナイト』や『ブルー・モンク』等の、バラードと呼ぶにはちょいとハードボイルドなセロニアス・モンク・ナンバーが入ってくるんですが、こちらもそれまでの甘美な流れを全然変えない。変えてない。これが凄いんですよね。

ちょいとハードな曲が入っても、どうしてマッコイのバラードは変わらず凛として美しいのか?ということをずっと考えておりましたが、うん、いや、これはきっと逆だという事に気付きました。

つまりマッコイのバラードは、どんなにメロディアスに鍵盤を転がしても、どんなに甘美な表現に没入しようと、核の方にあるものはきっと反骨精神に溢れた揺るぎない美学なんだと思います。

バックのスティーヴ・デイヴィス(ベース)とレックス・ハンフリーズ(ドラムス)がまた良い仕事をしております。

前2作ではエルヴィン・ジョーンズ、ロイ・ヘインズという超個性派ドラマー達と、寄り添い合いながらしっかり火花を散らしていた訳ですが、本作ではバック2人はしっかりとマッコイのフォローに専念しております。

スティーヴ・デイヴィスもレックス・ハンフリーズもアトランティック時代のコルトレーンを支えた人達です。特にレックス・ハンフリーズは派手にドコスカ叩くプレイ(ドナルド・バードとかデューク・ピアソンのブルーノートのアルバムで聴けるぜぇ♪)もカッコイイ人なんですが、ここでは終始ブラッシングでもしかしたらマッコイのピアノよりも繊細なんじゃないかと思えるぐらいの細やかで軽やかなリズムでもって好サポートを聴かせます。

全編美しいし、それがまた軟弱じゃない芯のある美しさです。美しいピアノが聴きたい方にはこのアルバムと前の2作はこらどーしても聴いて欲しい、切実に思います。




















”マッコイ・タイナー”関連記事




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:28| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。