2019年10月15日

トロピカル・スウィンギン! キューバ 楽園のギタリストたち

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V.A./トロピカル・スウィンギン! キューバ 楽園のギタリストたち
(アオラ・コーポレーション)


10月になると本土の皆さんは、もうすっかりめっきり秋を感じておられることと思います。

秋になるとすっかり気温も下がって、陽が落ちるのも早くなって、何だかこう切ないというか淋しいというか、ちょっぴりセンチな気持ちになってきて、まぁアタシもビル・エヴァンスなんか取り出して「あぁ・・・このピアノ切ない!やっぱり秋はエヴァンスだわ」とか、一丁前に分かったような口を利いている訳なんでございますけれどももね、あのねぇ、奄美ぜんっぜん秋めいてこないんですよ!!(怒)

このやろー!このやろー!今日も暑いんじゃー!と、10月になってからほぼ毎日言ってます。

しかしまぁ、あんまり「暑い、嫌だ」とばかり言ってても、しょーもない人間になって終わりっぽい気がしたので「よし、これはひとつ気候のこういう不快な夏っぽさを心地良さで上回るゴキゲンなサマー・ミュージックを聴いて、徳の高い人間になってやろう」と、ほぼやけくそに思い立ちました。アタシ偉い。

ゴキゲンなサマー・ミュージックといえば皆様、やっぱりラテンですよね。

情熱的なサルサやマンボのリズムに乗って、エモーショナルなヴォーカルにサックスにトランペット、ほいでもってトロピカルなギターとかピアノが鳴り響く。どうですこれ、良いですよえぇ。

特にアタシは個人的に、今の最新技術でのクリアな録音より、どこかこう粗くてあったかみのある、例えば屋外のラジオとかから流れてくるような音質の、つまりは古い時代のラテン音楽に、たまらない魅力を感じるんです。

なので、今日は1960年代に最も面白かったキューバ音楽のシーンで活躍したギターの名手達を集めた日本独自規格のオムニバス『トロピカル・スウィンギン!キューバ楽園のギタリストたち』を聴きつつ、これすごく良いよと皆さんにご紹介したいと思います。

はい、キューバといえば、1990年代の後半に、ライ・クーダー監修の映画とそのサントラ盤『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で、多くの人々に知られるようになり、今じゃたとえばロックやジャズやブルース聴いてる人達の間でも「キューバいいよね」という話題が当たり前に出るようになりました。

アタシも「ブエナ・ビスタ」に感激して、そこに参加しているアーティスト達の作品を聴きながら、少しづつキューバ音楽を知っておりましたが、ここへきて2018年に、そこからさらに突っ込んだこういう内容のコンピが出るのは凄く嬉しいし、聴き続けてもうかれこれ20年近くになりますが、ちっとも深まらないアタシのキューバ知識の補充にも物凄く役に立ちます。えぇ、有難いですね。




トロピカル・スウィンギン! キューバ 楽園のギタリストたち


【アーティスト/収録曲】
1.ウィルソン・ブリアン/南京豆売り
2.ウィルソン・ブリアン/第三の男
3.ウィルソン・ブリアン/ブルース
4.セネン・スアレス /私はカンペシーノ
5.セネン・スアレス/ベリンダ
6.セネン・スアレス/ソン・デ・ラ・ロマ
7.フアニート・マルケス/Llavimaso ジャビマソ
8.フアニート・マルケス/ヒタ・ノバ
9.フアニート・マルケス /トゥンバオNo.1
10.カルロス・エミリオ・モラレス /君は愛をわかっていない
11.カルロス・エミリオ・モラレス /デスカルガを楽しめ
12.カルロス・エミリオ・モラレス /ワン・ミント・ジュレップ
13.マヌエル・ガルバン/私の悲しみ
14.ホセ・アントニオ・メンデス/マンボのテーマ
15. ニーニョ・リベーラ /モンテ・アデントロ
16.アルセニオ・ロドリーゲス/ソン・パチャンガ
17.パピ・オビエド/ラ・ブローチャ
18.パピ・オビエド/トレスを弾いてくれ
19.パブロ・カノ/デスカルガ・ア・ロ・ロジェール
20.パブロ・カノ/アンダルシア
21.パブロ・カノ/イパネマの娘



さてさて、このコンプレーションなんですが、「最近ズバ抜けて攻めてる楽器専門誌」としてギター弾き以外のハートも射抜きまくっているギターマガジン監修で、我が国では屈指のカリプソ・ギタリストのワダマコトさん(カセットコンロス)解説のコンピであります。

内容は、主に50年代から60年代にかけて活躍した、キューバやカリブ諸国では伝説の巨匠としてかの地の音楽史を語る上でも、ラテンのギター演奏を語る上でも超絶有名な人達の名演を「これでもか!」というぐらいの質量で収録してあるスグレものです。

キューバという国は、地理的にはアメリカのすぐ下にあって、かつ同じ島の中にアメリカの中の自治領というかなり特殊なプエルトリコという国があり、古くからアメリカとの関わりが深いんです。キューバが社会主義国となって、アメリカとは敵対関係になってからも、移民としてニューヨークに住むキューバ人は多く、例えば大都市ニューヨークなんかでは、キューバやプエルトリコから来た人々が、独自のコミュニティを作って、大きな文化圏を作ったりしております。

だもんで、ここで聴かれる60年代キューバの音楽というのは、昔からの土着のリズムやパーカッション・アレンジの中でソロを取るギターやアレンジの中で主要な位置を占めるホーンセクションなんかは、実はかなりアメリカのジャズやR&Bの影響を受けてるんですね。それらは周波数をいじくれば流れてくるアメリカのラジオ放送からダイレクトに受けたものでもあり、またはアメリカに居る同胞達からもたらされた、新鮮な”生”の情報だったりしていた訳で、そんな中でアメリカとキューバ、互いに影響を受け合い与え合いしていたものが、くんずほぐれつでそれぞれの新しいサウンドを生み出していた、ちょうどそんな時代の、混沌とした活力が、名手達のギター・プレイにはピュアな形で反映されております。

たとえばジャケットに写ってるコンラード・ステン・ウィルソン・ブリアン。ジャマイカ出身のこの人のプレイなんかは、タイトルに偽りナシのトロピカルなムードの中、ジャンプ・ブルース系の実に鋭くアグレッシヴなソロでいきなり異彩を放っております。

それぞれに実に個性的で「誰が誰だかハッキリと違いが分かるぐらいに個性の塊」のプレイヤー達の中で、最もテクニカルなモダン・ジャズのマナーに斬り込んだプレイを聴かせてくれるファニート・マルケスのべらぼうに速く滑らかなフィンガリングなんかも「キューバ=のんびりでヨイヨイな感じ」をイメージしていたアタシには寝耳に落雷ぐらいの衝撃でした。解説によるとキューバでいち早くエレキギターを手にし、近年はプロデューサーとしても大活躍とか。

ごった煮の魅力が終始満載のアルバムのラストで、見事なボサ・ノヴァを披露してれるパブロ・カノの、クールで知的なプレイも実にジャズ的な洗練を感じますね。特にちょっとしたフレージングの歌わせ方には、単純にボサ・ノヴァとかキューバとか、地域性では括れないフィーリングの深さがあるような気がしてなりません。


しかしこの、今の綺麗な録音と違って、それぞれの楽器がガッチャガッチャ鳴ってる全体にもわんとエコーがかかってる録音がとてもよろしいですな。家で聴いててもキューバの街の露店にあるラジオから聞こえてくるようなこの空気感も演奏同様クセになります。







(↑特集記事が素晴らしいギターマガジンもぜひ)























『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 17:06| Comment(0) | ラテン/ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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