2020年01月14日

エリカ・ポメランス ユー・ユースド・トゥー・シンク

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エリカ・ポメランス/ユー・ユースド・トゥー・シンク

(ESP/スペーシャワー・ミュージック)


アタシは元々「ぶっ飛んだ音楽」が好きでした。

パンクやメタルが好きだったというのも、その形式ではなくて「聴いている時にどんだけ気分が高揚するか、どんだけ刺激的で予測不可能で滅茶苦茶な音が自分を撃ち抜いてくれるか」ということに主眼を置いていたのかも知れません。また、そういう音楽を自分の中で「パンクだ」と形容して、好んで聴いておりました。

だからハタチを過ぎてフリージャズを好きになれた事も、そういう高揚して刺激を得てぶっ飛べる音楽をひたすら求めた結果にあった必然だと思っております。

フリー・ジャズ。後期コルトレーンの演奏を聴いて、もう人生ひっくり返ってしまうぐらいの激しい衝撃を受けたアタシは、このあらゆるお約束事を美しくぶっ壊し、何故かヒリヒリとした切ない感傷を覚えさせてくれる”パンクな”音楽が大好きになり、とことんはまり込んでしまいました。

そんな時フリー・ジャズハマりはじめの頃に出会ったのが、アルバート・アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』というアルバムです。




このテナー・サックス、ベース、ドラムスというシンプルなトリオ編成から奇妙に歪みながら放たれる音そのもののカッコ良さにシビれ、同時にESPという1960年代のメインストリームでは絶対に受け入れられないアンダーグラウンドな表現者達の巣窟であったというレーベルの存在を知るようになります。

アメリカはニューヨークにあったレーベル「ESP」は、ニューヨークの下町ブルックリンで、1964年に弁護士であるバーナード・ストルツマンによって設立されました。

フリー・ジャズで有名ですが、特にジャンルには拘らずに、ニューヨークにたむろする前衛ミュージシャンやアート、詩、パフォーマンスなどなど、表現がぶっ飛び過ぎていてメジャーなどの会社からも敬遠されていたような人達に好んで声をかけ、レコーディングを行ったようなんですが、これが結果として、前述のアルバート・アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』のような希代の名作を生み、サイケデリックやまだまだ一般的どころかそういう概念すらなかったノイズ・ミュージックの先駆けとなる素晴らしい”パンクな音楽”を、パンク・ロックが生まれる10年以上も前に世に送り出していたのです。

ESPから出ていたそういう元祖フリークアウト・ロックやアシッドフォークなどはどれも想像の斜め上から脳に直撃を喰らわせて、その上で脳内に浸透してトロットロに溶かしてくれるようなものが多くて、こりゃもう本当に最高♪とルンルンしつつ集めたもんです。

そんなESPの「ジャズ以外」のもので特に衝撃を受けたものとして、エリカ・ポメランスのアルバム『ユースド・トゥ・シンク』がありました。





ユー・ユースド・トゥ・スィンク(紙ジャケット仕様)


【収録曲】
1.You Used To Think
2.The Slippery Morning
3.We Came Via
4.The French Revolution
5.Julius
6.Burn Baby Burn
7.Koanisphere
8.Anything Goes
9.To Leonard From The Hospital



確か何かの雑誌でゆらゆら帝国の坂本慎太郎がオススメとして紹介していたのを見たんですよ。それで「へー、女の人でアシッドフォーク、しかもESPかー、これは知らんかったな、絶対いいだろうから聴いてみようか」と。

聴いてみたらコレがもう何というか、いわゆる想像してたゆるゆるふわふわなトリップ系じゃなくて

「気合い入れて脳味噌のネジ緩めろよお前ら!」

とでも言われてるような、エリカ嬢のハスキーでパンチの効いた声、ジャカジャカと鋭く刻まれるアコギのカッティング、かなりロックな感じでビートを叩くドラムと、全体的にフォークってよりはアコースティックなロックです。マジで言いますがこの声とギターの鋭さは、あいみょん好きとかの心に刺さると思います。だってアタシ最初にあいみょん聴いた時「あ、これはエリカ・ポメランスに影響受けてるかもな、違うかもだけど」と思いましたもん。違うかもだけど。

それはさておきとして、このエリカさんの音楽、ただのぶっ飛びミュージックじゃなくて、全体にしっかりとした美学みたいなもんが貫かれております。

その美学ってのはきっと「ためらわない」って事だと思うんです。

歌う事をためらわない、ビートに乗ることをためらわない、自分自身であることをためらわない、女であることをためらわない、フリークアウトすることもためらわない、演奏が即興演奏の泥沼に入り込むこともためらわない、美しくあるために醜くなることもためらわない・・・。

もちろんコレが気合いの入ったアコースティックなロックの範疇にはとても収まり切れない”アシッド”の部分も、たとえば1曲目がいきなりヴォーカル多重録音で、妖精と亡霊がかけあわさったような高音域で歌うパートが、主旋律のメロディとズレまくっていたり、中盤からフルートとかパーカッションとかシタールとか入ってきて、かなりフリージャズみたいな掛け合いに、熱にうかされたようなヴォーカルがのめり込んでいったりと、そりゃもう価値観や固定概念がとろけるほどに”毒”としてまぶされているんですけど、聴いた後の不思議な爽快感は何といえばいいのか、未だに言葉にならないものをこのアルバムは残してくれます。

実はエリカさん、ミュージシャンじゃなくて映像作家で詩人だったという事を随分と後になって知り「だからか〜!」と妙に納得した覚えがあります。そうなんです、音や声の細部に至るまで、最高に”芸術”なんですよ。










『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/



posted by サウンズパル at 23:17| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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