2020年02月24日

リー・モーガン キャンディ

51SFgNVViFL._AC_.jpg

リー・モーガン/キャンディ
(BLUENOTE/EMIミュージック)


最近改めて「トランペットを聴いてみよう」という気になって聴いております。

そういえば最初に自分が聴いて「いいな」とアルバム単位で思ったトランペットものって何だっただろう?とか思い出していたら、リー・モーガンの『キャンディ』が浮かんできました。

ジャズに目覚めた当初、アタシの好みといえばフリー・ジャズ。そしてImpulse!やESPを皮切りに、CANDID(チャールス・ミンガスとその一派の作品がたくさんあったから)とかPrestige(エリック・ドルフィーがアルバムを多く出してたから)を、いわゆるレーベル買いしておりました。

はい、皆さんここで「おいおい」と思ったことでしょう。

そうなんです、ジャズといえばやっぱりレーベルとして一番有名で、何となく信頼と実績のとかいう言葉がピタリとハマる、天下のBLUENOTE(ブルーノート)の名前が出て来んのはおかしいだろう、お前ふざけてんのかと、今画面の向こうからたくさんのお叱りを受けました。

えぇ、ブルーノートはやっぱりジャズ初心者だったアタシでもその名前は毎日のように何かの本を開けば目に入ってきて、ジャズが好きな人と話をすればその名前を聞く、ぐらいの超有名レーベルだったんですが、そこはほれ、天性のひねくれ者の性分から

「ケッ、どーせそんなメジャーなところは当たり障りのない良い子ちゃんなジャズしか出してないんだろぉ!?」

と、ロクに聴きもせんのにそう思ってたんですね。

だから、ロクに聴きもせんのにロクに聴かなかった。えぇ、酷いです。あの頃の自分には助走付きでキックでも見舞ってあげたい。

でも、そのうちモダン・ジャズもカッコイイと思えてきた時に

「あ、ブルーノートのなんか聴いてみようかな」

という気持ちも一丁前に出てきました。

ほんでもって最初の頃に聴いたソニー・クラークとバド・パウエルに、そして忘れちゃいけないジョン・コルトレーンの『ブルー・トレイン』



その全部にコロッと感動しちゃいまして、その日から

「いや〜、やっぱり何だかんだ言ってブルーノートのやつはどれもいいね〜」

なんて軽薄な事を言うようになりました。

それはさておきで、じゃあ次何を聴こうか?という事になって、コルトレーンの『ブルー・トレイン』でカッコ良かったリー・モーガンのトランペットと、バド・パウエルの『ザ・シーン・チェンジズ』でカッコ良かったドラムのアート・テイラーってのと、ソニー・クラークのピアノが、ノリノリなのに何か独特の哀愁あるじゃん!シブい!!と気に入ってしまったため、この3人が一緒に演奏しているアルバムなんかあれば聴いてみたいなーとか思って、東芝EMIが出していたブルーノートシリーズカタログみたいなチラシを(とにかく情報が欲しかったから、こういうフリーペーパーがCD屋さんにあれば片っ端からもらってたんです)、ボーッと眺めていたら、何とありました。リー・モーガンとソニー・クラークとアート・テイラーの共演盤、それが『キャンディ』でありました。

「おお、これは何かジャケットもオシャレだし、しかも管楽器がトランペット1本だけかー。いいんじゃない?」

ぐらいの軽い気持ちで聴いてみたら、これが素晴らしく思ってた以上に、それまで知らなかったストレートなジャズのカッコ良さ、トランペットという楽器の魅力、風格と夜の香気がじんわり滲む「あぁ、これがジャズなんだよなぁ・・・」という至福の感動を、しかも押し付けじゃなくてごくごく自然に知らしめてくれるアルバムでした。






キャンディ+1

【パーソネル】
リー・モーガン(tp)
ソニー・クラーク(p)
ダグ・ワトキンス(b)
アート・テイラー(ds)

【収録曲】
1. キャンディ
2. シンス・アイ・フェル・フォー・ユー
3. C.T.A.
4. オール・ザ・ウェイ
5. フー・ドゥー・ユー・ラブ・アイ・ホープ
6.パーソナリティ
7.オール・アット・ワンス・ユー・ラヴ・ハー*

*ボーナストラック

録音:1957年11月18日(AE)1958年2月2日(@BCD)


リー・モーガンって人は、18歳でデビューした早熟の天才で、しかもそのデビューした年というのが、同じく天才でこの人こそはこれからのジャズ・トランペットのシーンを背負って立つだろうと言われていたクリフォード・ブラウンが突然の交通事故で、若い命を散らせてしまった年だったもんだから、もうこの人はクリフォード・ブラウンの生まれ変わりだろうと言われてた。

いやいや、23歳のブラウンが亡くなった年に既に18歳だから生まれ変わりもクソもあるかい、と普通は思うはずなんでありますが、モーガンのトランペット・プレイというものが、それぐらい驚くべきテクニックと鮮烈な個性があったから、聴いてる人はもう計算も何も出来ず、ひたすら彼の素晴らしさを形容する言葉を探しているうちに、そんなぶっ飛びの底なし沼にハマッてしまう。

それぐらいモーガンって人のトランペット・プレイは、多くの人の耳を引き付けたんです。

ほんで、リー・モーガンはソロ・アーティストとしてデビューして瞬く間に、ブルーノートを中心に僅か1年で7枚とかいう驚愕の枚数のアルバムをレコーディングして、怒涛のリリースを行います。

この『キャンディ』は、モーガンが僅か19歳(!)の時にレコーディングされた、ブルーノートでの7作目のアルバムなんです。

モーガンという人は、というよりも、この時代のトランぺッターというのは、レコーディングする時はサイドにもうひとつのホーンとしてサックス(大体テナーサックス)奏者を従えて、そのアンサンブルと丁々発止のやりとりを聴かせる編成が基本でした。

が、ここでは他のホーンを入れずにモーガンのトランペットだけのワン・ホーン。ということはそれだけモーガンのトランペットの腕前というのはズバ抜けていて、しかも周囲も求めていたんです「いぇ〜い、もっとお前のトランペットだけが聴きたいぜ〜」ってのを。

アルバムでのトランペット・プレイは、そんな期待を1ミクロンも裏切らない、どころか期待以上に饒舌で、感情豊かで、しかも渋味もあって、こんな貫禄と風格あるプレイがとても19歳の少年によるものなんて信じられないぐらいのミラクルが連発します。

オープニングはミディアム・テンポ。その後切々と歌い上げるバラードとノリノリのアップテンポが大体交互に選曲されておりますが、バラードではじんわりと切ない歌心で感動的なアドリブで聴かせ、アップテンポでは一切の迷いのないブリリアントな吹きっぷりで、聴く人の耳と心を根っこからしっかりと掴みます、掴んで放しません。もう一度言いますが、こんな完璧な情緒コントロールと大人のダンディな風格に溢れた演奏が、19歳の少年によるものだと言われて誰が信じましょう。

そしてバックのソニー・クラーク、ダグ・ワトキンス、アート・テイラーも、アップテンポとバラード両方で”しっとり”と”ファンキー”を全く芸風を変えずにしっかりと使い分ける、見事なサポートに徹しております。この3人、派手な弾きまくり叩きまくりは絶対にしないんです。だからこそこういったワン・ホーンもののバックに回れば、その”目立ち過ぎない圧倒的な個性”が無敵の強さを発揮する。

クラークはファンキーな曲でのややもっさりしたピアノの跳ね方と、バラードでのどこまでも静かに沈み込む悲哀に満ちたピアノが耽美の一言では語れないぐらいに魂入っていて、ブラシを中心にサラーっと静けさを際立たせるビートをバラードで、アップテンポでも軽快なブラッシュワークから、繊細で鋭いスティックさばきも聴かせるテイラーのドラムも実に歌っていて、その真ん中にぶっとい音で”ボン!”と存在するダグ・ワトキンスのベース、このトライアングルの堅実さが、アルバム全体の雰囲気もしっかりと作っていると言っても良いでしょう。

よくよく聴くと、全員が軽〜く演奏しているようでいて、内側からにじむ深い深いフィーリングが最高のアルバム。決して派手なアルバムではないんですが、この小さな編成の中に、ジャズのカッコ良さが物凄い質量で詰まっていると思います。えぇ、とても良いです。



posted by サウンズパル at 22:14| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。