2020年03月14日

イラケレ

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イラケレ
(Colombia/SMJ)

今日はちと寒いのですが、これからの季節のためにちょいとホットで気合いの入るラテン音楽の極上なヤツをひとつご紹介していこうと思います。

はい、1970年代にキューバで結成され、その後「知る人ぞ知るスーパーバンド」として密かな人気をずーーーっと持ち続けているイラケレ。キューバといえば、例のライ・クーダー・プロデュースの『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のブレイクによって一気に世界に知られるようになり、すっかり「オシャレなちょいワルな大人の音楽」と思っている方もたくさんいらっしゃると思います。

確かにキューバの1950年代からの時代を生きてきたベテラン勢達は粋でオシャレでダンディでちょいヤクザなカッコ良さが、演奏からもその風体からもムンムン匂ってきてカッコイイことこの上ないんですが、実はキューバの音楽は「それ以後」も十分アツい進化を遂げていてカッコイイんです。

ということを、イラケレを聴くとしみじみ思います。

ちょいと小難しい事をいえば、アメリカの南に浮かぶ島国キューバの音楽は、やはり戦前からアメリカの音楽と深い関係がありました。

創世記のジャズは、ニューオーリンズで産声を上げたその時既に、すぐ対岸に点在するカリブの島々の黒人たちのリズムをもうその演奏の中に取り入れていたと言いますし、そうでなくともジャズやR&Bは、常にキューバをはじめとするカリブ海に浮かぶ島々のリズムを「コレが新しいリズムだ!」と、1920年代から40年代、50年代にかけて取り込んで進化していきます。

そんなアメリカの最先端な音楽であるジャズを、今度はキューバのミュージシャン達が聴いて「カッコイイ!オレ達もこんなオシャレな音楽やるべ!!」とジャズを学び、土着の演奏をその洗練で研ぎ澄ませていき・・・といった風に、相互に影響を与え合って進化してきた訳です。

しかし、1959年にキューバで革命が起き、社会主義政権が誕生すると、今度は資本主義陣営のリーダーであるアメリカ政府とキューバ政府との間が険悪になり、思って立った交流というものがなくなってしまうんです。

ところが今度は亡命してきたキューバの人達がニューヨークとかでコミュニティを作り、隣接する黒人地区やその他の移民の人達と草の根の交流が生まれ、ジャズやR&B、ポピュラー音楽の中に、キューバの音楽の要素がよりダイレクトに入ってくるようになって、1960年代後半にはもうラテン・ジャズとかアフロ・キューバンなんて言葉はジャズの中では当たり前になって、今度は「ラテン」という言葉すら使わなくても良いぐらいに最初からラテン音楽のリズムやメロデイが入っているフュージョンなんて音楽も生まれてくるようになります。

一方でR&Bから発展したファンクが大ブームとなり、アメリカのラジオを受信出来るキューバでは、流行の最先端であるフュージョンやファンクを聴いて

「おぉ、カッコイイ!オレ達もこんなのやりたいぜ!!」

と、思ってバンドを結成する若者達が70年代に出てくるんですね。

はい、ちょいと回りくどい前置きになってしまいましたが、イラケレというバンドは、そんなこんなで70年代に出てきた、全く新しい感性を持った、キューバオリジナルのフュージョン&ジャズファンク・バンドなんです。

1973年に、ピアノ/キーボードのチョーチョ・ヴァルデスが中心になって結成され、基本編成がピアノ(キーボード)、サックス、トランペット他ホーン・セクション、エレキギター、エレキベース、ドラムス、パーカッション複数という大所帯で、音楽的な部分の多くをジャズ・フュージョンにインスピレーションを得てファンキーでグルーヴィーな演奏を展開しておりますが、アメリカのフュージョンと明らかに違う所はやっぱりアレンジの中にラテン・パーカッションが織りなす複雑で多様性に富んだリズムを大胆にぶっ込んだところでありましょう。

フュージョンっていえば何となく軽やか爽やかバカテクみたいなイメージがありますが、イラケレはバカテクの上にむせるような熱気とリズムの強烈なアフロ・ニュアンスがもんわり匂ってこれがこれがまー凄まじい勢いで聴く人をひたすら圧倒してきます。



イラケレ +3(期間生産限定盤)

【収録曲】
1.フアナ・ミル・シエント
2.イリア
3.アダージョ
4.ミサ・ネグラ(ブラック・マス)
5.アグアニーレ
6.シオマラ*
7.ポル・ロンペール・エル・ココ*
8.バイラ・ミ・リトモ*

*ボーナストラック



さあ、もうこういう音楽にごちゃごちゃ理屈はいらんでしょう。たとえばジャンルは違えどフェラ・クティとかのアフロビートとか、サンタナとかのアツくたぎるラテン・ロックのあの感じとか、初期ウェザーリポートのめちゃくちゃにファンキーでドロッとした感じとか、踊れるジャズファンクとか70年代以降のファラオ・サンダースとかのスピリチュアルなあの雰囲気とか好きな人には、イラケレが持つグルーヴのすさまじさ、その大所帯バンドが一丸となってグイグイとフロアを沸かして聴く人を腰から引き込む魅力にメロンメロンになって頂けるんじゃあないかと思います。

オススメは1980年に何とグラミー賞を取っちゃったライヴ・アルバム『イラケレ』。これは正にグループの活動がキューバで軌道に乗って、東西冷戦の隙間を上手いことすり抜けてその人気をちゃっかり世界的にしてしまった1970年代後半のアメリカとヨーロッパでのライヴを集めたもの。

のっけからパーカッションが作るリズムの洪水から、ブ厚いホーンセクションのリフにジャコパスも真っ青のうねりまくるベースラインが心に火を点けてたまらんのですが、熱いグルーヴを維持しながら中盤から後半に向けて美しいメロディをじっくり聴かせる展開があったり、ただのノリと勢いだけでなく、音楽的に素晴らしく深いキューバン・ミュージックの真髄が味わえます。











『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

posted by サウンズパル at 22:15| Comment(0) | ラテン/ブラジル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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