2020年04月11日

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ モーニン

51SFgNVViFL._A.jpg
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/モーニン
(BLUENOTE/EMIミュージック)


4月も半ばに差し掛かろうという時期でございます。

「CD屋」と言ってはおりますが現在はお店を閉じて街角のあちこちで個人的にCDを売買する、かなーり怪しい地下CD屋でありますので、当然食うための正業を持っております。

この正業ってのが毎年年度末年度始めの頃がもー悲鳴が出る程忙しいお仕事ですので、毎日ヘトヘトにくたびれてブログの更新もままならずといった状況ですが、4月も半ば目前にして、ようやく沈静化の目処が付いてきました。

体調がまだ万全ではありませんが、コロナの世界的流行を受けて、自宅で退屈をしている方もいらっしゃると聞き及んでおりますので、そういった方々のせめてもの暇つぶしにでもなればと、ちょっとブログの更新を頑張りたいと思います。

そう思って昨晩は過去記事をてれ〜っと眺めておりました。

このブログの読者の皆さんはジャズ好きな人も多く、アタシもジャズ好きで記事を書くと良い反応も頂けますので喜んで書いておるのですが、過去記事を改めて読み返してみるとアレですね、いわゆる初心者にオススメの名盤や定番アルバムのレビューが少ない。自分ではそんなことないと思っておりましたが、記事にはその時個人的に聴いて「これは良い!」とオススメしたい作品を主に書いておりますので、ついうっかり後回しになってしまったんでしょう。うぅ...これではいけません。せっかく「この機会にジャズ聴きたい!」って方もいらっしゃると思うのに。

という訳で、今日からしばらく「ジャズまだ聴いたことない人も安心して聴ける、楽しめる定番作品強化月間」として、人気の有名アルバムの紹介に励みましょう。

第一弾は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』であります。

そうそう、ある程度上の年齢の方にとっては「ジャズを聴くきっかけになった1枚」であり、モダン・ジャズとかハードバップとかいう音楽について語る時は、もうコイツがないと始まらない、ぐらいの超人気のド定番でありますね。

1961年に日本ツアーを行い、その行く先々で拍手喝采の大人気となったアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。

それまで日本人にとって「ジャズ」といえば、戦後すぐに進駐軍と共に入ってきた戦前のスウィング・ジャズ。つまりグレン・ミラーやジーン・クルーパー、デューク・エリントンなどでありまして、ジャズはどちらかというと上質な社交の音楽みたいな感覚があったんですね。

でも50年代にアメリカでは既に「もっと若者も熱狂するような刺激に溢れたジャズを!」という意識の元に、少ない人数でミュージシャン達がアドリブの火花を激しく散らすビ・バップが生まれ、それが「それまでのジャズとは違う今の時代のジャズ」という意味で『モダン・ジャズ』と呼ばれるようになり、更にそのビ・バップをもっと形を整えて「熱狂も出来るし鑑賞しても聴き応えのある音楽」に進化させたのがハード・バップであり、アート・ブレイキーはそのハード・バップの生みの親の一人でもあったんですね。

特にブレイキーのハードバップは、リズムや楽曲にゴスペルやR&Bなどのキャッチーな要素を大幅に取り入れた”ファンキー”と呼ばれるやつでした。

簡単に言うと

「すっげぇ分かりやすいしノレるし、何かよーわからんけど凄く黒人の音楽って感じがする!!」

てやつだったんです。

そんなブレイキー、ジャズ・メッセンジャーズの来日は、刺激に飢えていた日本の若者にとっても「まぁジャズってこんなだよね」と、ひと昔前のムーディーなやつを想像していたご年配にとっても、価値観を激しく揺さぶるようなセンセーショナルな出来事でありました。

結果公演は大成功、多くの日本人がモダン・ジャズという最高にカッコイイ音楽に目覚め、街にはジャズ喫茶という、当時高級品で庶民の手にはなかなか届かなかったレコードを良いオーディオシステムで聴かせるお店があちこちに出来、そこではやっぱりアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが日本でのコンサートで拍手喝采を浴びたあの人気曲『モーニン』が流れ、またはリクエストされ、巷で都市伝説として云われているように「その辺のそば屋の出前のあんちゃんまでが鼻歌で歌ってた」という大ブームになりました(そば屋の出前のあんちゃんが実は元から筋金入りのジャズ好きだったという可能性は一旦置いときますね)。


個人的な事を申し上げれば、アタシの家も実は親父がこのアルバムでジャズに目覚めたクチでありまして(1944年生まれ)ドラムまでおっぱじめ、家でもよくこのレコードはかけていたし、鼻歌でもよく歌ってたし、自宅にあるピアノでもって右手だけでメインテーマのフレーズをよく弾いておりました。

そんなアルバムだったので、ジャズとかよーわからん時から既に”耳タコ”だったし、反抗期なアタシに「ジャズ=おっさんが聴く退屈な音楽」というイメージをある意味で植え付けた曲こそが『モーニン』だったので、コルトレーンでジャズに目覚めた後も実はしばらく避けていたアルバムではあったんです。

ところがまぁアタシもコルトレーンを皮切りに、いわゆるモダン・ジャズ、ハードバップなものの良さも一丁前に何となく分かるようになって「アート・ブレイキーも良さそうだな、でも何か今更な感じがしてちょっと恥ずかしいな」とか、そういう小生意気な事も思ったりして、何となーくレコード屋さんとかでこのジャケットを見ても戸惑って結局別のアーティストを買ってしまうという、そういうことを何度も繰り返しておりましたねぇ。




モーニン+2

【パーソネル】
アート・ブレイキー(ds)
リー・モーガン(tp)
ベニー・ゴルソン(ts)
ボビー・ティモンズ(p)
ジミー・メリット(ds)

【収録曲】
1.モーニン
2.アー・ユー・リアル
3.アロング・ケイム・ベティ
4.ドラム・サンダー組曲
5.ブルース・マーチ

(録音:1958年10月30日)


結局『モーニン』は、長い間気になるけど持ってないアルバムのままでした。ある日ブルーノート・キャンペーンのサンプラーCDで初めてちゃんと聴いてみたら、いやアナタ、これが、凄い!「こんなにカッコ良かったか!?」ってぐらいにねぇ、カッコ良かったんですよ。

まず、最近は「美の壺」と呼ばれてる(?)あの有名なテーマを、ボビー・ティモンズがピアノで奏でます。

「たったたららららった〜♪」

と、単音のこれ以上ないぐらいにシンプルなリフなんですが、ここにギッシリとブルース・フィーリングというかそういうブラック・ミュージックならではの”粋”みたいなもんが詰まってますね。えぇ、他の人が弾いてもこうは行くまいと思えるぐらい何かがムンムンか香ります。

で、

「たったたららららった〜♪」

の直後、サックスとトランペットが

「ちゃ〜、ら♪」

と、応答のようなフレーズを吹く。

コレが「コール・アンド・レスポンス」というやつでして、古くは奴隷時代のワークソングの昔からある伝統的な黒人音楽の手法で、教会で歌われるゴスペルでよく使われてきました。

『モーニン』作曲したのもボビー・ティモンズで、彼は教会の牧師さんの息子として、幼い頃からこのコール・アンド・レスポンスがもう身に沁みついていたんですね。だからこの曲はジャズなんだけれども、そのゴスペルの雰囲気をジャズでひとつやってみようと思って作ったらしいんです。

ゴスペルをちょっとでも知ってる人なら、このコール・アンド・レスポンスってのが生み出す盛り上がりは体験してると思います。そのグワ〜っとくる盛り上がりをジャズで、しかも全然違和感なくやってのけてしまうんだから本当に凄い訳なんです。

で、このツカミに溢れた後のリー・モーガン→ベニー・ゴルソン→ボビー・ティモンズのソロが輪をかけて凄い。テーマはあくまでキャッチーなんですが、アドリブに入ったらもう真剣勝負のこの上なくジャズな感じの雰囲気が自然と別の盛り上がりを作り上げるんですね。しかも3人共に全く違う個性で。

『モーニン』以後の曲も、くつろいだ感じのハードバップという枠組みの中、メンバー達が全く違うそれぞれの個性で大いに見せ場を作って盛り上げます。1958年、ジャズが最も新しい音楽として充実していた時代の良さがどの瞬間にも詰まっていて、この時代を代表するモダン・ジャズの名盤として、やっぱりイチ押しせねばならぬ聴き応えに満ち溢れた作品なのです。







”アート・ブレイキー”関連記事

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:31| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。