2020年08月20日

ファラオ・サンダース ラヴ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ

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ファラオ・サンダース/ラヴ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ
(ARISTA/ソニー・ミュージック)

いやぁ毎日暑いですねぇ、暑い、熱い、アツいといえば、後期コルトレーン・バンドで一人「ぶぎゃああぁぁあ!!ぼごぉぉぉおおお!!」と凄まじい悲鳴のような絶叫テナーを吹いていたファラオ・サンダースを思い出しますね。

もちろんアタシもコルトレーンの横でアナーキー極まりない(場面によっちゃあコルトレーンより強烈なインパクトを残してゆく)ファラオのプレイを聴いてファンになった一人です。

で、彼のソロ・アルバムに関しては「いやもう他人のサイドマンでこんだけやっちゃってるんだから、ソロだともっと乱暴狼藉な凄まじいフリージャズをやってるに違いない」と期待して、まずはImpulse!盤、そしてその後70年代以降に色んなレーベルに残したアルバムを順次聴きまくったんですね。

そしたらそしたら、意外な事にこの人のソロアルバムというのは、どちらかといえば聴いてて穏やかな気持ちに包まれる、ナチュラルなグルーヴ感溢れる”楽園”のムードに満ちたものが多かったんですね。

ソロになった最初の頃のImpulse!盤の70年代初頭のアルバムは、民俗音楽のようなトランス感がグイグイ意識を持って行くアルバムも多いです。曲だって長いものが多い。それが徐々にソウルやファンクみたいな、メロウでファンキーで、何よりキャッチーな曲がどんどん増えていって、Impulse!を離れた後のアルバムは、ほとんど何か踊れるものが多くなっているんです。

これにはびっくりしました。

ファラオの吹くテナー自体は、相変わらず「ぶぎゃあああ!ぼぎゃぁああ!!」とフリークトーンを炸裂させているにも関わらず、曲調がファンキーだったりピースフルだったりするので、こういうフリークトーンすら、何というか歓喜の叫びに聞こえてしまう。

じゃあ期待していたフリージャズなファラオじゃなくて、キャッチーでピースで”踊れる”ファラオにがっかりしたのかといえばそれは逆で、むしろ知らずに買ったファラオのアルバムの中にキャッチーな踊れる曲が入ってると嬉しくなって、家で皿洗ってる時爆音で流して皿洗いながら踊ったりしておりました。

そこで思ったんですね。

「あ、この人の本質っていうか本音の部分は明るくて屈託のない、そして凄くナチュラルなフィーリングで、それは師匠のコルトレーンとは真逆なベクトルのやつだったんだな」

と。

コルトレーンもファラオも同じテナーサックス吹きで、同じようにインドやアフリカといった非欧米の音楽に傾倒していて、同じように「音楽で魂の救済を。。。」とか考えていたのに、ギリギリのところでそのベクトルがそれぞれ真逆に振れて、そしてコルトレーンが亡くなった後、ファラオは全く彼なりのオリジナルな”救済”を、そのキャッチーでピースフルな音楽性の中に見出したんだなぁと思うと、ファラオの事もコルトレーンの事も、ますます深く好きになりました。

そいでもってファラオ・サンダースという人の懐の深さですよね。一見無秩序に、好き勝手にセオリー無視で吹きまくっていたかのようなあのプレイスタイルが、実は己の本音を上手く制御して、コルトレーンの音楽の核にあるシリアスな部分にしっかりと寄り添って、自分なりにそのシリアスを引き立てるプレイだったのかと思うと、何だかじわぁんと来てしまいます。ファラオ、お前(失礼!)いいやつじゃんと。。。





ラヴ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ(期間生産限定盤)

【パーソネル】
ファラオ・サンダース(ss,ts)
デヴィッド・T・ウォーカー(g)
ワー・ワー・ワトソン(g)
ヒューバート・イーヴス(key)
ボビー・ライル(key)
ケネス・ナッシュ(key)
ハリド・モス(key)
ドニー・ベック(b,@CD)
アレックス・ブレイク(b,AB)
エディ・ワトソン(b.E)
ノーマン・コナーズ(perc,vo)
ジェームス・ギャドソン(ds,@CF)
ラリー・ホワイト(ds,AB)
レイモンド・パウンズ(ds,EF)
フィリス・ハイマン(vo,BDF)
ザ・ウォーター・ファミリー(cho)
〜ホーン・セクション〜
アーネスト・ワッツ(reeds)
オスカー・ブラッシャー(tp)
チャールズ・フィンドレイ(tp)
ジョージ・ボハノン(tb)
ルー・マックレヴィー(tb)
ヴィンセント・デ・ローサ(french horn)
シドニー・マルドロウ(french horn)
ウィリアム・グリーン(sax)
テリー・ハリントン(sax)

【収録曲】
1.ラヴ・ウィル・ファウンド・アウェイ
2.ファロンバ
3.ラヴ・イズ・ヒア
4.ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ
5.アズ・ユー・アー
6.アンサー・ミー・マイ・ラヴ
7.エヴリシング・アイ・ハヴ・イズ・グッド

(録音:1977年)



さて、感傷はそのぐらいに、今日はそんなファラオの、多分これは最もキャッチーな部類に入るんじゃないかというアルバムをご紹介します。

古巣のImpulse!を離れて3年後の1977年、新興のアリスタ・レコードと契約を交わしたのですが、このアリスタというレーベルは、特にジャズ専門というレーベルではなく、フュージョンやAOR、ブラック・コンテンポラリーと呼ばれていた新しいソウル・ミュージックを積極的にリリースし、新しい人材を次々と発掘していたレーベルです。

レーベルの作風は非常にライトで、70年代というより既に来るべき80年代のサウンドを予感させるような作品を世に出していた、そんなところに、ある意味ではジャズの最硬派な存在(と、未だ多くの人に認識されていた)ファラオがぽーんと入ったんですね。

そして、ファラオの新作を追いかけていた熱心なファンにとっては正に期待通り、コルトレーン時代のファラオ意外あんまり良く知らない人にとっては実に意外な、最先端のフュージョンと、流行を先取りしたキラッキラなディスコサウンドが、ファラオ独自のオーガニックな感性でもってとっても上質なムードに仕立て直された音楽が生まれたのであります。

のっけから美しいエレピとシンセサイザーが織り成す都会的なイントロに乗って、ファラオの吹く優しさに満ち溢れたサックスが軽やかに歌うメロウバラードの『ラヴ・ウィル・ファウンド・アウェイ』で、もう完全に虜です。

そこからトロピカルなアフリカン・ディスコのように急展開なノリノリ曲がいきなり始まったり、スピリチュアルな歌モノがきたり、どの曲も実に当時の流行の最先端という感じなのですが、ファラオのサックスは何らぶれることなく咆哮し、演奏そのもののグルーヴは重厚。つまり軽く聴けるしサウンドは爽やかなんだけど、土台の部分がものっすごく硬派なんですよね。


いやぁ、ポップスとかバラードとかダンス・ミュージックって、やっぱり音楽の基礎の部分がしっかりしてないと「いいよね」以上の説得力を持たせるのは凄く難しいのですね。と、このアルバムのファラオが生み出す壮大なスケールの”楽園”の心地良さに浸りながら思っております。




















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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 23:10| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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