2020年12月21日

フランキー・リー・シムズ Walking With Frankie

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Frankie Lee Sims /Walking with Frankie
(JASMINE)

ブルースに限らず音楽へののめり込み方ってのは、まず誰もが知るそのジャンルの代表みたいなビッグネームな偉人やスタープレイヤーの凄い歌唱や演奏にまず衝撃を受け、そこから更に関係する周囲のミュージシャン、そのジャンルのちょっとは知れた人、いや知らんけど何かこの人凄くいいな〜って人と、順番にお気に入りになって行くという過程があると思うんですが、実は掘り進んでいくうちに見えてくる「いや知らんけど何か凄くいい人いっぱいいる!」って世界の魅力にハマるという体験がありまして、ほんで、実は「いや知らんけど何か凄いいい人いっぱいいる世界」というものが何というか自分にとってスペシャルな、本当にかけがえのないものとして迫ってくる。や、その「いや知らんけど世界」が自分だけに最高のスマイルで微笑みながら、おいでおいでをしているようだ、おお!という体験をしてしまうんですよ。

近頃ではこれを”沼”と言いますね。


はい、ここまで読んでくださった皆さん、まずは沼へようこそ。というわけで皆さんはブルースのミュージシャン達の中で「いやぁ、あんま話題にゃならんけど、オレはコイツが好きなんだよねぐっふっふ♪」と思ってついニヤニヤしながら聴いてしまう人っていますか?アタシはいます。

例えばテキサス・ブルースのフランキー・リー・シムズ(!)

う〜ん”隠れ名手”というのともちょっと違うし、”渋い味わいのアーティスト”ってのともちょっと違う、歌もギターも神懸って上手くて凄くて、圧倒的なカリスマや、ブルースの深い闇みたいなものを有無を言わさず感じさせるとか、そういう人じゃあない。豪華なホールやオシャレなクラブのステージよりも、街はずれの酒とツマミが安くて上手い呑み屋のカウンターの方が似合う、ほんでそこに来る若い客に、店の人じゃないのに「おゥ、この店ァこれが美味いんだよ」とか何とかフレンドリーに絡んでくるような、そんなおじちゃんの雰囲気が音楽性からもジャケットに写るポートレイトからも、何だかムンムン伝わってくる。はい、そんな人であります。

ペカペカとした雑な音(失礼!)でベンベケベケベンと繰り出されるシンプルなリフの上で、自由度高めにちょいと鼻をつまんだような声でべろ〜んと歌われるブルース。洗練とは真逆のベクトルを、それがどうしたとばかりの自然な速度でただ横へ横へとグダグダ流れてゆく、流れて行ってどうなるかと言えば、その辺の牛や馬がゴクゴク飲んだり、その辺の木とか草とかの栄養に勝手になって乾いた地面にダラダラと染み込み続けるような生産性何それなブルース。こぉれがいいんですよ。


フランキー・リー・シムズは1917年生まれと言われております(本人が頑なに「オレは1909年生まれだ!」と言い張っていて、最初はみんなあぁそうかと思っていたのですが、正式な出生届けの書類によって1917年生まれが発覚、おっちゃんそういうとこやで)。

丁度この1910年代生まれといえば、マディ・ウォーターズとかジョン・リー・フッカーとかライトニン・ホプキンスとか、少年時代に戦前のブルースに親しみ、戦後になってエレキギター持って独自のスタイルを築いていった人が多い。いわゆる”戦後第一世代”とでも言うべきか、とにかくブルースの歴史的には非常に重要な年代なんですね。ちなみにセロニアス・モンクとディジー・ガレスピーも1917年生まれであります。

古い時代のブルースマンといえば、大体が辛い農作業が嫌になって家出するとか、ちっちゃい頃から不良でデビュー前に何度か服役してるとか、そんなのばっかでありますが、実はフランキーの場合もやはり家出するんですが、この理由が何と「ウチぁ両親共ミュージシャンだったし、何つうかオレも稼げるミュージシャンにならなきゃって重圧があってサ、それが嫌だたんだよなぁ」と、ちょっと他の人とは違う理由。

で、何をしてたかどういう訳か、志願して海軍に入隊したり、ダラスに住んで学校の先生をやってるんです。

ところがフランキーはやはり骨身に染みた音楽稼業の血が騒いだのか(両親だけじゃなく、近い親戚にライトニン・ホプキンスやテキサス・アレクサンダーが居たという、テキサスでは有名な音楽一族でもあるのです)、教師をやりながら週末になると夜な夜な当時住んでいたテキサス州クロケットのジュークジョイントで歌っていたらしく、まぁそこでの稼ぎがそこそこ良かったからか「教師ってのはカネにならなくてよォ」という訳で定職にとっとと見切りを付け、音楽で食って行こうと決意したのでありました。


あちこちで演奏しているうちにテキサスのローカル・シーンではそこそこ名の知れる存在になり、1948年のブルー・ボネットを皮切りに、54年にスペシャリティ、57年にエイス/ヴィンと、レーベル渡り鳥の如くシングル盤を録音します。このうちメジャーなレーベルだったスペシャリティからのリリースが小さくヒットしますが、長くは続かず、60年代からは録音もピタッと止まりましたが、何とその時期にテキサスからシカゴへと移住し、ステージではマディ・ウォーターズらとも共演する事もあったようで、1970年に地元テキサスで病没するまで現場でしぶとく活動をしていたようであります。




Walking With Frankie


【収録曲】
1.Cross Country Blues
2.Home Again Blues
3.Don't Forget Me Baby
4.Single Man Blues
5.Lucy Mae Blues
6.Don't Take It Out On Me
7.I'm Long, Long Gone
8.Yeh, Baby!
9.Rhumba My Boogie
10.I'll Get Along Somehow
11.Misery Blues
12.What Will Lucy Do?
13.Hey Little Girl
14.Walking With Frankie
15.My Talk Didn't Do Any Good
16.I Warned You Baby
17.She Like To Boogie Real Low
18.Well Goodbye Baby
19.Married Woman
20.Wine And Gin Bounce
21.Boogie Cross The Country
22.Jelly Roll Baker
23.I'm So Glad
24.Ragged And Dirty
25.No Good Woman
26.Walking Boogie
27.Cryin' Won't Help You
28.Hawk Shuffle
29.How Long



活動期間はそこそこ長かったものの、録音は少なく、遂にアルバムリリースまでは漕ぎつけなかったフランキーは、ある意味不運なミュージシャンと言えるのかも知れませんが、その南部の粗削りなタフネスそのものを遠慮なく豪快に歌っては弾くスタイルは、他の誰にもない濃厚な個性でありますし、1940年代から50年代という、ブルースがモダンなものに進化してゆく過程の時代の底力であったダウンホームなスタイルの、実に美味しいダシが出続ける、正にブルースをこよなく愛する人による、ブルースをこよなく愛するための音楽そのものの魅力に溢れております。

かつては最も録音が多かったスペシャリティやエイス/ヴィンの録音を中心に、大体15曲〜20曲ぐらいをピックアップした編集盤が、国内外の色んなレーベルからちょろちょろと出ておりましたが、全時代の音源をまんべんなく29曲収めたこのアルバムは、今のところ彼の決定盤とい
えるものでありましょう。

まずは冒頭4曲、1940年代のブルー・ボネット録音ですが、コチラはバックにベース、ドラムを付けた小編成バンド演奏。冒頭の『Cross Country Blues』からちょいとガラついた声を張り上げたヴォーカルと、ホコリっぽいサウンドがくすぐります。

全編を通して変に構えた所や妙な小細工を使わない、非常に誠実な柄の悪さみたいなものがこの人のブルースの特徴でありますが、40年代の割とコンパクトにまとまった演奏からもその声とギターは定型をはみ出さんばかりの自由さがあります。

で、中盤からはよりエレキのトンガッたサウンドが強調され、いい感じのテキサス・ダウンホーム・ブルースの真骨頂。ライトニン・ホプキンスをもっと荒く大雑把に削り倒したような歌と、ガツガツしたギターが炸裂する(ソロもシンプルだけど実に味わい深い)スローブルースの『Don't take it out on me』とかもう好きのツボに入り過ぎてたまらんですねぇ。

ルンバのリズムで軽快にガチャガチャやっている『Rumba My Boogie』なんかも面白くて、この辺は多数の個性的なアーティストを多く抱えていたスペシャリティならではの多彩さが、フランキーの音楽性にも良い影響を与えたんじゃないかと思っとります。

で、野放図でワイルドな味わいが、ちょいと派手になったバンドサウンドを得て遠慮なく花開くのが、50年代後半のエイス/ヴィン音源。バタスタ言うドラムにディープサウス丸出しのハープが盛り上げる『Boogie Cross The Country』では、ギターも単にジャカジャカやるだけでなく、武骨ながら実に良いグルーヴで繋げられるギターソロもフランキーが張り切って疲労しておりますし、ほとんどロッカビリーなイケイケの『Married Woman』ミディアム・テンポでドロドロの恨み節をカラッと歌い飛ばす『No Good Woman』の深い味わいもオツなもんです。











ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 22:17| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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