ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年08月31日

ジョン・コルトレーン The Atlantic Years in MONO

早いもので今年も8月の最終日、えぇ、夏が終わろうとしておりますね。

毎年ジョン・コルトレーンの命日、7月17日から、夏が終わる8月の31日までやっております『大コルトレーン祭』今年も皆様のお陰をもちまして、素晴らしく盛り上がったのではないかと思います。

アタシにとっては、コルトレーンという人はそれこそジャズという素晴らしい音楽のカッコ良さを教えてくれた人ではあるんですが、長年聴いていると、どうもそれだけではない「音楽」というものに対する真剣な姿勢や、物事を深く思考し、自分なりの精神のあり方の見つけ方とか、そういう人間にとって最も深い部分を教えてくれている人であります。

多くの読者の皆さん、これは毎年言いますが、特に「コルトレーンって知らない」という人にアタシは常に語りかけようと思います。

あのね、たかが音楽、たかがジャズかも知れないけど、音楽の中には、人の心の奥深いところを理屈抜きで揺さぶって、とてつもない感動を与えてくれるものがあって、その感動は、アナタが生きる上で、きっと色んな局面でアナタを強く助けてくれるものと思います。

コルトレーンかっこいいなと思うのは、まだアタシも「何故カッコイイのか?」という答えも見付からぬままの手探りですが、とにかく聴いた感じやフィーリングで「これはものすごく自分のためになりそうだ!!」と一番強烈に感じているのは、今のところコルトレーンです。

まぁ、そこんところは、今後も皆さんと一緒に考えていければと思います。

さて『大コルトレーン祭』最終日の本日は、ドカンとボックス・セットなど紹介いたしましょう。





《収録内容》
ジャイアント・ステップス
バグス・アンド・トレーン
・オレ!
コルトレーン・プレイズ・ブルース
アヴァンギャルド
・コルトレーン・レガシー(アウトテイク集 *1970年発売)


本当は「カネのある人向け」のボックスセットを紹介するのは気が引けるのですが(気軽に安いアルバムからでも聴いてほしいと思っとりますんで、はいィ)、今回のこのボックスは、特にスペシャルなものなのです。

タイトルには「アトランティック・イヤーズ」とあります。

ご存知の方も多いと思いますが、この箱は、コルトレーンが長い長いサイドマン時代、そしてインディーズ・レーベルの時代を経て、ようやく念願の契約を交わしたメジャー・レーベル”アトランティック・レコード”でリリースされたアルバム(リーダー作3枚とミルト・ジャクソンとの双頭アルバム、そして死後にリリースされたアウトテイク集の計5枚)をまとめたものです。

この頃のコルトレーンといえば、マイルス・デイヴィスやセロニアス・モンクのバンドでの経験から、それまでにないまったく独自のジャズ・テナーのスタイルを築き上げ、特に”シーツ・オブ・サウンド”と呼ばれる超高速でアドリブを間断なく吹きまくるそのプレイで、モダン・ジャズ以降の新しいサックスの音をドカーンと世に放っていて、コルトレーンのプレイだけを聴いても非常に活き活きとしていて、何かこう胸のすくような独特の爽快感と高揚感が味わえてもうたまらんのですが、それに加え、エルヴィン・ジョーンズ、マッコイ・タイナー、エリック・ドルフィーなどなど、彼の斬新なプレイを真に理解して、それに見合った新感覚の演奏で盛り上げることができるバンドメンバーも出揃って、もうCDで聴いてても「すごいすごい」と声が思わず出てしまう。それが「アトランティック時代のコルトレーン」なのであります。

で、このボックスに収められている音源は、すべてモノラルのリマスタリングが丁寧にほどこされております。

何故モノラルかといえば、これはもうこの時代のジャズの「音が中心に集まって、スピーカーからドカンとくる快感」をもたらしてくれるのは、これはどう録音技術や再生技術が向上しても、当時のモノラル音源でしかなしえないからなんです。

丁度ここに収められた演奏が録音された1950年代末期から60年代初頭というのは、ステレオが出始めた頃でありました。

ステレオというのは音が左右に分かれて再生されることによって、立体感と奥行きが広がる。

これは実に画期的なシステムではあったのですが、この時代のステレオは試行錯誤の繰り返しで、音の中心がスコーンと抜けていて迫力に欠けていたり、バランスが悪く楽器によってはかなり押さえ込められた音質になっていたりと、問題も多々ありました。

コルトレーンのアルバムも、ステレオでリリースされたり再発されたりしておりましたが、その都度問題もあったので、最近はモノラルでのリイシューというものが、徹底して見直されてきているんですね。


アナログもあります↓



こっちは7枚組で少々値は張りますが、何といってもシングルで発売された「マイ・フェイヴァリット・シングス」の限定7インチ盤が付いているのがもーたまりません。

それにモノラルの音を聴くなら、アナログは質が違いますよ。

デジタルでカットされない「不可聴音域の周波数」が、音に素晴らしいツヤと丸みを感じさせてくれるんですよね。アタシは「何が何でもアナログ派」ではないんですが、や、コルトレーンに関してはやっぱりCDとアナログ盤をぜひ持って頂いて、その日その日の気分でそれぞれ聴いていて欲しいです。

ある日突然アナログの音に

「うわぉっ!!!!!」

となります、必ずなります。


さて、重ねましてみなさま、今年も『大コルトレーン祭』にお付き合いいただきましてありがとうございました。

来年もどうかお楽しみに!

A Love Supreme

皆さまが多くの素晴らしい音楽の感動と出会いますように!







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2016年08月27日

レイ・ドレイパー・クインテット・フィーチャリング・ジョン・コルトレーン

3.jpg

レイ・ドレイパー・クインテット・フィーチャリング・ジョン・コルトレーン
(Prestige/New Jazz/ユニバーサル)

世の中には「良い」「悪い」という言葉の他に「味がある」という非常に素敵な言葉があります。

もうね、アタシはこの”味”という言葉大好き♪

そうなんですよ、特に音楽の分野でいえば、歴史に残る名盤とか、天才アーティストとか、もう本当に凄い人の凄い演奏、たくさんあります。

しかし、しかしですよ皆さん、完璧な凄いものばかり聴いていたら、耳が疲れませんか?

アタシにはこんな経験があります。

ちょっとジャズに興味を持ったお客さんで

「もう本当に本当に初心者なんで、とりあえず名盤を教えてください」

という、実に真面目で熱心な方がいらっしゃいまして、で、アタシもそん時は若かったので

「これはもう一流の物凄い名盤を揃えてお応えせねば・・・」

と、やや張り切りすぎていたんでしょうね。

頑張って張り切って、そらもうジャズの”超”の付く名盤を少しづつじっくりとオススメしてたんですが、ある日

「何か・・・ジャズってもっと気軽に聴ける音楽だと思ってたのですが、私にはまだまだ敷居が高すぎるような感じがします・・・」

と、その方は悲しそうにおっしゃってました。

私も悲しかった

でもね、これはアタシが悪いんです。

自分だって本当は「名盤」と、高いところに置かれて燦然と光を放つアルバムには衝撃を受けたけれども、そこから

「ジャズっていいな・・・」

と、心から思えるようになったのは、何か軽い気持ちで

「これって何かいいんだよな〜」

と、にこやかに聴けるアルバムに、”味”の魅力をたくさん教えてもらったからではなかったか?

だってお客さんにオススメするのに、世間の評価とか、狭い世界の中だけでの評判とか(ジャズの世界なんて狭い狭い)に一切を頼って、そこに自分が耳で聴いて「これはいいもんですよ」というものを入れて、お客さんに考えて判断してもらうってことを考慮してなかった。

はい、いけませんね。

そこからの反省の意味も込めて、アタシは「評判はあまり聞かないものをなるべく聴こう」と思って、色々とマイナーなものばかり聴いていた時期があります。

その中で引っかかったのが、チューバ奏者、レイ・ドレイパーのこのアルバムです。




【パーソネル】
レイ・ドレイパー(tuba)
ジョン・コルトレーン(ts)
ギル・コギンズ(p)
スパンキー・デブレスト(b)
ラリー・リッチー(ds)

【収録曲】
1.クリフォーズ・カッパ
2.フィリデ
3.トゥー・サンズ
4.ポールズ・パル
5.パリの空の下
6.アイ・ハドント・エニワン・ティル・ユー


いや、引っかかったというか、単純に「コルトレーンが参加してる」ということで、完全なミーハーで見付けたアルバムなんです。ついでに”ミーハーってさいっこう♪”な話もしたいのですが、これやると長くなりますので・・・。

えぇと、話をレイ・ドレイパーに戻しましょう。

皆さんはチューバという楽器、知ってますか?吹奏楽部とかでよくアンサンブルの重低音部分を担当する、あのヒマワリのお化けみたいなデカい楽器です。

そんな楽器でありますので、ソロでブイブイ言うジャズの世界では、あんま使われてないんですね。

しかし、ドレイパーは気合いと根性で、この楽器で何とソロを吹くんだい!という志を持ってジャズの世界での飛躍を夢見ておりました。

「ちょいと変わった楽器をやってる若いのがおる」

ということで、彼に目を付けたレーベルが「NEW JAZZ」という子会社を立ち上げたばかりのプレステイジ・レコード。

「とりあえずー、レイ・ドレイパーのアルバム作りたいんだけどー、彼全然無名のあんちゃんだしぃ、チューバだけだと売れるかどうか物凄く不安だからー、誰かそこそこ有名なヤツと組ませるかー」

というわけでもう一人のホーン奏者として白羽の矢が立ったのが、当時プレスティジから初リーダー作を出したばかりのコルトレーン。

さてさて、そんなアルバムがどういう風に仕上がってるかと言いますと・・・。

『耕運機VSスポーツカー』

なのであります。

ドレイパーがモゴモゴした全く抜けのない音で「ブハブハブハ・・・」と、たどたどしいソロを吹けば、コルトレーンがその後で、体感速度はその10倍ぐらいの全開のソロでシャーーーー!!と駆け抜ける。漫才でいえばドレイパーは完璧なボケでコルトレーンは完璧なツッコミ。

この時レイ・ドレイパー17歳、コルトレーンは30歳。

怖いもの知らずでボフボフやっているドレイパー、相手がチューバだろうが少年であろうが容赦なく本気で吹きまくるコルトレーン、まったくどんな子供とどんな大人なんだと思います。

そして、物凄く扱い辛いであろうチューバでのソロは、さっきも言いましたが実にたどたどしく、コルトレーンとのソロの応報も、お世辞にもバランスが良いとは言えません。

が、何でしょうこのチグハグを「また聴きたいな♪」と思わせる不思議と後を引く唯一無二のオツな味わいは。

まぁ、色々と「不思議だな〜、不思議だなぁ〜」と思いながら、アタシは長年愛聴しております。

よくよく考えながら聴けば、ものすごーく抜けの悪い(失礼!ディスってないよ)ドレイパーのチューバと、とことん硬質でメリハリの効いたコルトレーンのテナーという、全く対照的なサウンドの間には、本人達が意図していないところで、実に絶妙な”緩急の差”が生じて、それが聴く人の生理的な部分に直接作用して、「何かすっげぇスリリング!」と思わせる効果が出ておるのです。

それから「ドレイパーのソロはたどたどしい」と書いて、実にその通りなのですが、どの曲でもテーマ(曲の最初のメロディーをハモる部分)で、ドレイパーはセンスのいい、もっといえば非凡なカッコイイ”ハモり”をバシッ!とキメておるのです。

うんうん、やっぱりアンサンブル要因として、多分ブラスバンドで鍛えまくったんでしょう。それからやっぱり才能あるんですわ。サックスとかトランペット奏者みたいに、先頭に立ってガンガン吹きまくるんじゃない、アンサンブル人としてメインフレーズを引き立てるズバ抜けた才能がこの人には。

あと、ドレイパーには作曲の才能もあります。

アルバム前半の3曲は彼のオリジナルなんですが、これがまた派手さはないけど、哀愁系のミドルテンポで加速する、聴けば聴くほどイイ曲なんですよ。

ドレイパー自身はこの後パッとすることなく1984年に強盗に襲われて悲劇の最後を迎えてしまいましたが、もし、彼が契約したのがPRESTIGEでなくBLUENOTEで、その作曲とアレンジの才能を開花させていたら・・・とか、ふっと夢想してしまいます。







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2016年08月21日

ジョン・コルトレーン ジャイアント・ステップス

3.jpg
ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス +8
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)


「金字塔」といえば正にこのアルバムのことでありましょう。

いや、アタシも長年コルトレーン者をやっております、個人的に大好きなアルバム、特別なアルバムはいーーーーっぱいあります。

しかし「じゃあお前、客観的にコルトレーンの”ズバリ名盤”というアルバムを紹介できるのか?」と言われたら、まず間違いなく本アルバム「ジャイアント・ステップス」のことは語ります、えぇ、このアルバムを語らずして、コルトレーンは語れない。

ちょいと専門的な言葉を使えば、コルトレーン流モード・ジャズの集大成、コード・チェンジの弾幕の中で間断なく吹きまくる”シーツ・オブ・サウンド”の快楽をひたすらに浴びられる、念願のメジャー・レーベルのアトランティックで、たっぷり時間と予算をかけてレコーディングすることができたコルトレーンの、やる気と喜びに満ち溢れた、伸び伸びとしたプレイが気持ちいい、とか、まーそれこそ色々と細々挙げることはできますが、一旦そんな細かいこたぁどーでもいい(!)

とにかく「あぁあ、ジャズってカッコイイ!!」という純粋な感動に、これほど満ち溢れたアルバムがありますか?いやない!

という意味において「ジャイアント・ステップス」は、コルトレーンの数ある名盤の中でも、やっぱり何をどう考えても頭ひとつ、スコーンと抜けている作品だと断言して、過言はないのです。

はい、ここまで読んで「そこまで言うならだまされてみよう・・・」と思った方は、こっから先の文章はすっ飛ばしてもいいんで、今すぐ画面をスクロールしてポチッてください。





【パーソネル】
(@〜DFJ〜L)
ジョン・コルトレーン(ts)
トミー・フラナガン(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・テイラー(ds)
(E)
ジョン・コルトレーン(ts)
ウィントン・ケリー(p)
ポール・チェンバース(b)
ジミー・コブ(ds)

(GHI)
ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)
シダー・ウォルトン(ピアノ)
ポール・チェンパース(ベース)
レックス・ハンフリーズ(ドラムス)

【収録曲】
1ジャイアント・ステップス
2.カズン・マリー
3.カウントダウン
4.スパイラル
5.シーダズ・ソング・フルート
6.ネイマ
7.ミスターP.C.
8.ジャイアント・ステップス
9.ネイマ
10.カズン・マリー
11.カウントダウン
12.シーダズ・ソング・フルート
13.ジャイアント・ステップス
14.ネイマ
15.ジャイアント・ステップス


はい、ここまで読んでおられる方、アタシの与太にお付き合いくださいましてありがとうございます。

皆さん、あのー、よく音楽を聴いてて「わかる」とか「ピンとこない」とかあるでしょう。

ちょいとコレの話をします。

その「わかる」「ピンとくる/こない」ってのは、多分ですけど、ノリの良さ(スピード感)だと思うんです。

今の時代だと「ジャズ」って言ったら「落ち着いた大人の音楽」と思う方が、多分ほとんどだと思うんです。

イメージで言えば、オシャレなバーで、ゆったり流れてる感じとか、あー、アタシの想像力がアレなんで、上手く伝わらないかもですが、とにかく”ジャズ”といえば、そういう図が頭に流れる方、多いと思います。

しかし、コルトレーンのこの時代、つまり1950年代というのは、ジャズといえば全然落ち着いた音楽じゃなくてむしろ逆で、若い人達が、ひたすらクレイジーになりたくて、案外何にも考えんで、ただ刺激を求めて聴いてたフシが大いにありました。

今でこそあれこれと理論的なこととか解明されたり、その後の歴史と照らし合わせて「ジャズとは・・・」とか、そういう頭良さそーな口調で語れるようにもなってきましたが、そんな風にジャズが冷静に語られるようになってきたのは、実はつい最近なんですね。

もちろんこの時代にも評論というのはあったし、色んな人がレコードを出す度にキチンと解説してくれる偉い人はおりましたが、いざクラブに行くと、ほとんどの人がそのド迫力、かつキレッキレのジャズの生演奏を目の当たりにして、純粋に興奮してキャーキャーヒューヒュー言ってクレイジーになっておったわけです。

とにかくこの時代、ジャズの「強み」といえば、理屈抜きで聴く人の心をエキサイティングなものにさせるストレートなわかりやすさ、そして体感の凄まじい速さにあったんじゃないかとアタシ思います。

で、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」このアルバムは、コルトレーンという、とてもとても創造意欲と実験精神に満ちたサックス吹きが、聴く人にその”体感”を、それこそあれこれ考えて、曲も演奏も死ぬほど工夫を凝らして、極限までリアルなものに仕上げたアルバムなんだと思います。

ホント、語り尽くそうと思えば、こっからが長くなるんですけど、まずはこの「駆け抜ける音楽」のカッコ良さ、皆さんも体感してください。



(個人的にこのアルバムの中で一番”加速”を感じる「Mr.P.C.」です、アタシはコレにとことんヤラレました)



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2016年08月18日

ミルト・ジャクソン&ジョン・コルトレーン バグス&トレーン

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ミルト・ジャクソン&ジョン・コルトレーン/バグス&トレーン
(Atlantic/ワーナー)


コルトレーン関連のアルバムの中には、強烈なインパクトこそ薄いけれども、格別な味わいの深さ故に「何かいいんだよな・・・」と、気が付けばお気に入りになってしまって、更に気が付けば、長年良い感じで付き合ってくれる良き友人のような存在になってくれるアルバムというものがあります。

ヴィブラフォン奏者ミルト・ジャクソンと組んで、上質な”大人の味わいのジャズ”を聴かせてくれる「バグス&トレーン」は、その最たるものでありましょう。

はい、コルトレーンはもちろんジャズを代表するビッグ・ネームですが、ミルト・ジャクソンは更にコルトレーンより先輩で、ジャズの世界において「ヴィブラフォン(鉄琴)」という楽器の奏法をモダンなものとして大成させた人。

いずれも超の付くほどの大物なんですが、この2人のカッコイイところは、こういう「大物同士の顔合わせ」で、これみよがしな派手な演奏に終始しないところ。

コルトレーンにしてみれば、この年(1959年)にようやく契約に漕ぎ着けたアトランティックは念願のメジャー・レーベル。

その記念すべき第一作目は、かつて自分がデビュー前に、同じバンド(ディジー・ガレスピー・グループ)で先輩としてよく可愛がってくれたミルト・ジャクソンとの共演作。

マイルス、そしてセロニアス・モンク(この人はミルトとは親友ともいえるほどの仲良しだった)のバンドで腕を上げ、自分のスタイルを立派に築き上げたオレを見てくれよ先輩、というはやる気持ちはコルトレーンにはバリバリあったでしょう。

しかしカッコイイのは

「オーケー、ジョン。皆まで言わずともお前がカッコイイってこたぁわかってるよ。それよりどうだい、久しぶりに一緒に演るんだ、気負わず楽にいこうぜ」

とばかりに、終始リラックスした雰囲気を醸して、コルトレーンをいい感じにクールダウンさせているミルト・ジャクソンの演奏の貫禄です。

個人的にその”落ち着き”がじんわり空間にしみていて「あぁ、カッコイイなぁ・・・」としみじみ思うのはブルース・ナンバーの@とかDとかで、これ、よくよくソロを聴くと、コルトレーン結構シーツ・オブ・サウンドを駆使した”吹きまくり”やってるんですが、ミルトのヴィブラフォンが「コォ〜ン」と一打鳴るだけで、演奏全体のバランスが奇跡的に整ったカッコイイジャズに仕上がるからあら不思議。




【パーソネル】
ミルト・ジャクソン(vib)
ジョン・コルトレーン(ts)
ハンク・ジョーンズ(p)
ポール・チェンバース(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.バグス&トレーン
2.スリー・リトル・ワーズ
3.ナイト・ウィ・コールド・イット・ア・デイ
4.ビ・バップ
5.ザ・レイト・レイト・ブルース


コルトレーンのアルバムとしては、ミルト・ジャクソン、ハンク・ジョーンズ、そしてコニー・ケイ(この人がドラム叩くとどんなセッションでも一段上質なものになってるように聞こえます)と3人の”ジャズ紳士”の醸す、うっとりするようなクールで渋い雰囲気にほだされて、程よく緊張感を残しながら楽しくくつろいだ演奏が出来た、ガチのリーダー作ではなかなか聴けない仕上がりになっております。

それにしても恐るべきはミルト・ジャクソン、どんなクセのある共演者とやってもダレることなく相手の個性を活かして、かつ自分自身もちゃっかり楽しんで演奏出来てしまうその実力と肝の太さであります。






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2016年08月08日

ジョン・コルトレーン セルフレスネス〜フィーチャリング・マイ・フェイヴァリット・シングス

3.jpg
ジョン・コルトレーン/セルフレスネス〜フィーチャリング・マイ・フェイヴァリット・シングス
(Impulse!/ユニバーサル)


「この人のこの1曲!」

というのは、どのジャンルの音楽でもあると思いますが、コルトレーンにとってのそれは「マイ・フェイヴァリット・シングス」だと思います。

念願の自分のバンドを組んでから、早速スタジオに入った1960年に最初のヴァージョンをレコーディングしてからというもの、コルトレーンはまるで何かに取り憑かれたように、この曲をライヴの度に演奏し、そして演奏毎にアレンジをどんどん変え、最終的には亡くなる前年の「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン」で聴かれるヴァージョンのように、もはや原曲がどんなメロディだったかすら思い出させない混沌と深淵を極めた状態になってゆくのです。

さて、そんな「マイ・フェイヴァリット・シングス」を、ヴァージョンごとにその違いとそれぞれの持ち味の良さを聴き比べ、噛み締めるのが、われらコルトレーン者の至福の喜びのひとつであるんですが、ファンの中でも

「このマイ・フェイヴァリット・シングスは格別だ!」

という絶品が、1963年7月のニューポート・ジャズ・フェスティバルで演奏されたライヴ・ヴァージョンであります。

確かにこの「マイ・フェイヴァリット・シングス」は、それ以前のものともその後のやつとも、ちょいと雰囲気が違います。

他のヴァージョンにはない、軽やかな疾走感を感じさせるこのライヴ・ヴァージョン、タネを明かせばドラムがいつものエルヴィン・ジョーンズではなく、ピンチヒッターで参加したロイ・ヘインズなんですね。

ヘインズは、1940年代から活躍するベテラン・ドラマーで、コルトレーンにとっては憧れの人、チャーリー・パーカーとも一緒に活動していた人です。

そんな大ベテランだから、ドラム・プレイもきっと堅実で渋いものだろうと思いきや、いやいやいや、何が何が、コノ人はちょっと変わった人でして、フロントに立つプレイヤーがモダン・ジャズの王道を行くスタイルの人だったら、それこそ的確に、最高にオシャレでキレの良いリズムを提供するんですが、いざクセのある若手(当時)と組んだら俄然燃えて、自分のクセも全開にして鋭く切り込むドラミングでブイブイ言わせちゃう、結構なヤンチャ男子なんですよ。

有名なところではエリック・ドルフィーの「アウト・ゼア」、これでドルフィーとロン・カーターのチェロが醸し出す摩訶不思議世界の中心にあって、シュッシュシュッシュとソリッドな4ビートを刻んでフロントを鼓舞するプレイは、これはもう最高なんですが、コルトレーンとの相性も抜群で、そん時麻薬の療養施設に入ってたエルヴィンの代わりに呼ばれて叩いてたんですが、その叩き方は、重厚な複合リズムをどんどん繰り出して、音を”外”に拡げてゆくエルヴィンとはまるで正反対

「スタタタタタ!」

「パシャン!パシュッ!」

と、主にカンカンに張ったスネアを細かく刻みつつ、あり得ない速度(体感)とタイミングで必殺の切れ味鋭いオカズで斬り込んでくるというスタイルなのです。

スネアが中心なので、リズム全体の感じはフワッと軽くなります。

それでもアドリブに合わせて大事なところではガンガン攻めるので、コルトレーンにとってもヘインズのドラミングは、良い意味でいつもと違う刺激に満ち溢れておったことでしょう。

事実、この日のニューポート・ジャズ祭での「マイ・フェイヴァリット・シングス」の演奏時間は17分強(!)コルトレーンもそんなヘインズの軽快にビュンビュン走るスネアと”唄うリズム”にいい感じに触発されて、アドリブがすこぶるメロディアスなんですよ。

エルヴィンと組んだ演奏では、加速しっ放しで演奏がトップギアに入ってからの壮絶な”吹きvs叩き”のカタルシスがもうたまらんのですけどね、ここでは「あ、気持ちよく唄ってたら何か結構な時間たっちゃったね、てへ」みたいな感じの、激しいけれど暖かいやりとりに、メンバーもついほだされている活き活きとしたライヴの空気が伝わります。






【パーソネル】
(@A)
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

(B)
ジョン・コルトレーン(ts)
ファラオ・サンダース(ts)
ドナルド・ギャレット(b-cl,b)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
フランク・バトラー(ds,perc)
ジュノ・ルイス(perc)

【収録曲】
1.マイ・フェイヴァリット・シングス
2.アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー
3.セルフレスネス


で、このアルバムの特別なのは「マイ・フェイヴァリット・シングス」だけじゃない。

2曲目「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」これもコルトレーンお得意の、何度も録音しているバラード曲なんですが、こちらでより繊細に、メロディやフレーズのひとつひとつに神経を張り巡らせているロイ・ヘインズのドラム、このテの演奏では人が変わったように優しいピアノを弾くマッコイ・タイナー、そしていつもより明確でいてメロディアスなラインを弾いているジミー・ギャリソンと、実にピシャッと決まっております。

コルトレーンは前半で目一杯哀感漂うフレーズを唄わせていて、この曲はもちろんバラードで、特徴的な”崩し”は前半ないにも関わらず、どこかに凄みを感じるなぁ・・・と思っていたら、エンディングと思わせてからのカデンツァ(無伴奏、テナーだけのパート)に突入(!)

これは完全にソロ・インプロヴィゼーションともいえる、強烈な感情の吐き出しです。

「うわ・・・無伴奏のエンディングやべぇ・・・」

と思って息を呑んで聴いていたら、エンディングと思わせておいて、実は演奏時間の半分(およそ4分間)を無伴奏で吹きまくっているという、これもコルトレーン・ファンの間では「あのカデンツァは神!」とささやかれている伝説の名演。

で、後半(つうか最後の曲)は、日付けもメンバーもガラッと変わったスタジオでの「セルフレスネス」。

「アイ・ウォント〜」の余韻にクーッと浸っていたら、パーカッションも鳴りまくっての、ファラオのテナーもキュルキュル言って(絶叫は控えめ)、何ともアフリカ的なお祭りの雰囲気が実にゴキゲンで、ついついCDをリピートにして、また1曲目から聴いて「マイ・フェイヴァリット・シングス」で燃えて「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」でしんみりしつつ壮絶な吹きっぷりにおののいて「セルフレスネス」で祭りを楽しんでしまいます。

2000年を過ぎてから63年のニューポートジャズ祭での未発表曲(「インプレッションズ」)が発掘され、「セルフレスネス」と差し替えられて、楽曲も演奏順に並べ替えられた「コルトレーン・アット・ニューポート」というアルバムがリリースされておりますが、それでもこのアルバムの作品としての価値と面白さが変わることは少しもありません。




”ジョン・コルトレーン”関連記事


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


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