2020年02月29日

ザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズ

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ザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズ
(TCF HALL/オールディーズ)


10代の頃にそのライヴ映像をビデオで観てぶったまげた、というよりもやってる音楽はまぁコレが渋いブルースって言うんだろうなーとかぼんやりと思いながらではあったんですが、10フレットだか12フレットだかとにかくありえない位置にカポタストはめたギターで、カッティングは一切せずに引くにはソロと歌の途中の単音弾きだけ。

で、演奏のクライマックスの時に長ーい長ーいシールド(ギター用語で接続コードのことです)を引きずって客席に行き、そのまんま結構後ろの方までおうおうと歩いて行って客席に座ってそこでギターソロを弾くというアルバート・コリンズなるブルースマンのプレイ、や、プレイスタイルに「何じゃこのオッサンは!?」となりました。

それから多分5年ぐらい経って、それまで戦前ブルースとか弾き語りのダウンホームなやつしかグッとこなかったのに、一丁前に戦後のエレキキュイーンのブルースの良さがようやく分かりかけてきたその時、パラパラっと眺めてた音楽雑誌で「テキサスブルースのヤバい人」と、アルバート・コリンズの写真付き記事が載っておりました。

「おぉ、この人は昔ビデオで見たことあるぞ!」

と、思い出したのと「テキサスブルース」の文字に惹かれ、その足でフラッとCDショップに立ち寄って、コリンズのアルバム『フロストバイト』を勢いで購入したんですね。




このアルバムがもう凄かった。テレキャスターのジャリジャリしたぶっとい音が、ぎゃいんぎゃいんがこんがこん耳に突き刺さってはヘヴィな余韻を残して、また突き刺さってはヘヴィな余韻を残して・・・で、もう本当に「何で俺は10代の時このカッコ良さに気付かなかったんだろう」と激しく後悔する程のインパクトでありました。

この『フロストバイト』というアルバムは、1970年代末に契約したアリゲーター・レーベルからの1枚で、このアリゲーターからのアルバムっていうのはコリンズの名前がブルース好きのロックファンも含め、広く世に知られるきっかけとなった作品として、とにかくもう「コリンズといえばこれ!」なやつだったそうです。

アルバート・コリンズは1932年の生まれで、デビューしたのが1950年代。

最初はオルガン奏者になるべく一生懸命オルガンを弾いていたのですが、ある日愛機のオルガンが盗まれてしまった「頭きた!オレはギタリストになってやる!!」と、ギターに転向したというから、まーどこかぶっ飛んでる思考の人でありますな。

ギターに関してはTボーン・ウォーカーやゲイトマウス・ブラウンという同郷の2大スター、特にそのありえん位置にカポ付けて、テンションをギンギンにした状態の弦を人差し指で根こそぎ引っ張り上げるという力技はゲイトマウス・ブラウンからの影響を強く感じさせます。

さてさて、オルガン盗難というショッキングな出来事をギターの猛練習で克服し、早くも50年代が始まろうとしていた頃にはセッション・ギタリストとしてちょいとは名前が知られるようになり、1958年にはソロ・シングルも出し、60年代も地元テキサスを中心になかなかの人気でもって爆走しますが、1970年代に入ると仕事も少なくなってギター抱えてドサ周りの日々に明け暮れておりました。

そんなこんなの何とか食うための日銭を演奏で稼いでいた1978年、ブルース好きによるブルース好きのためのレーベル”アリゲーター”から声がかかり、ほとんどここの看板ブルースマンとして、また、彼を尊敬するスティーヴィー・レイ・ヴォーンやロバート・クレイといった後輩人気ギタリスト達からのリスペクトも後押しする形で、コリンズは再び快進撃を続け、90年代にはレーベルを移籍するも、そこでB.B.キングやジョン・リー・フッカー、ゲイリー・ムーアーなど、新旧の大物達と楽しくコラボするアルバムも多数出しておりましたが、93年にまだまだこれからの61歳という惜しい年齢であの世へ旅立ってしまいます。






ザ・クール・サウンド・オブ・アルバート・コリンズ

【収録曲】
1.Frosty
2.Hot N' Cold
3.Frost Bite
4.Tremble
5.Thaw-Out
6.Dyin' Flu
7.Don't Lose Your Cool
8.Backstroke
9.Kool Aide
10.Shiver N' Shake
11.Icy Blue
12.Sno-Cone II

さて、中堅として脂の乗った1980年代のプレイに激しく感動したら、やっぱり若手として暴れていた初期の音源を聴きたいというのが、人間の摂理でございます。

本日はそんなコリンズの、まだソロアーティストとしてはテキサスのローカル。ギタリストだった時代のTCF/HALLといったレーベルから思に1960年代にリリースしていた初期音源を集めたアルバム『ザ・クール・サウンズ・オブ・アルバート・コリンズ』をオススメに挙げておきましょう。

アリゲーター以降はやはりロックやファンクにも対応できそうなモダンなビートに、全体的にトンガッたサウンドですが、やっぱりこの時代のオルガンとかラテン風味のビートとか、ちょいとレトロでサイケデリックともいえるサウンドの質感がとても60年代のオシャレな音楽って感じでとてもポップなバックに突き刺さるコリンズのギターの音は、やはり鋭くズ太く強烈なんですね〜。

コリンズは初期の頃は歌を歌わず、専門のギタリストとしてシングルももっぱらインストゥルメンタルが中心でありました。

このアルバムでもブルースというよりもまるでサーフロックみたいなバリバリにモンドなインストナンバー(オルガン、サックスがシビレるぐらいカッコイイ!)でその後年よりも引き出しの多いギタープレイを堪能出来ます。代表曲でライヴでもド定番の「フロスティ」「フロストバイト」なんかももうこの時期にしっかりと完成してます。









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2020年01月11日

オーティス・ラッシュ コールド・デイ・イン・ヘル

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オーティス・ラッシュ/コールド・デイ・イン・ヘル
(Delmark/Pヴァイン)

1月の奄美は、重くどんよりした雲がかかる、終始不穏な空模様です。

春から秋にかけての強烈な日差しが降り注ぐ中、汗をかきながら聴くブルースも最高なんですが、寒い日の不穏な空の下で聴くブルース。これもまた、心に響くものがあります。

オーティス・ラッシュの感情のドロドロを溜めて溜めて溜めて吐き出すヴォーカルと、鋭く胸を突き刺すギターがたまらなく聴きたくなりました。

元々弾き語りのカントリー・ブルースが好きで、チョーキングキュイーンのモダン・ブルースにはそんなに食指が動かなかったハタチそこらの頃のアタシは、オーティス・ラッシュの初期コブラ音源に「こ、こ、こんなヘヴィでえげつないブルースやってる人がおったんだ・・・」と衝撃を受け、以来すっかりこの人のファンになってしまいました。





で、すっかりファンになってしまったからには、この人の他のアルバムも聴きたい、いや聴かねば、買わねば。あぁうっ!!となって、さて、コブラッシュの次は何を買えばいいのかと情報を集めていたのですが、色んな書籍などで見る”コブラ以外のオーティス・ラッシュ”の評価というものが、あんまり芳しくない。

「ラッシュは50年代にコブラから強烈な作品を出したが、その後コンスタントなリリースに恵まれず、好不調のムラがそのまま演奏に出るようなものも多かった」と。

つまり、コレはラッシュへのネガティヴな評価です。ところがアタシ、こういう評価を読んで、ますますオーティス・ラッシュという人に、他にはないとことん人間的な魅力を感じ「いや、ますます聴いてみたいです」となってしまった。

そもそも、ラッシュの魅力は、歌やギターが上手いとかどうこうよりも、そのエモーショナルな感情表現です。コブラ録音は、本当にこれ以上感情が張り裂けたら演奏全体が崩壊してしまうんじゃないかと思わせる異様な緊張感に満ち溢れていて、アタシは全然知らないながら、そこに惚れてしまった訳です。

で、考えた。そんな際どい感情表現なら、きっと走り過ぎて壊れてしまうこともあるだろうし、エモーションが空振りして不発に終わることもあるだろう。いや、むしろそれこそがこの人の通常運転な訳で、むしろリアルで生々しいオーティス・ラッシュを聴きたいのなら、その好不調のムラが出てると言われている”その後”の音源にこそ神髄があるのではないかと。


都内の大きなCDショップに行くと、流石に長いキャリアを持つ人だけあって、色々なアルバムが置いてありました。その中でアルバムジャケットと帯の、ほぼ茶色で統一された魅力的な色合いのアルバムを「これ良さそうだな、買お♪」と手にいたしました。『コールド・デイ・イン・ヘル』がそれでございます。




コールド・デイ・イン・ヘル

【収録曲】
1.Cut You A Loose
2.You're Breaking My Heart
3.Midnight Special
4.Society Woman
5.Mean Old World
6.All Your Love
7.Cold Day In Hell
8.Part Time Love
9.You're Breaking My Heart (alt. take)
10.Motoring Along


”ラッシュの2枚目がこれ”だったことは、アタシにとっては本当にラッキーでした。

というのもですね、このアルバムはラッシュの実質的なセカンド・アルバム。録音は1975年で、何とファースト(というかレコードデビュー作)のコブラ録音からは20年経っております。

調べたらラッシュが所属していたコブラ・レコードは、オーナーがギャンブル好きで、その借金に絡むトラブルでギャングに殺され、レーベルは自然消滅。その後渡り鳥の如くあちこち点々としていたラッシュは本格的なアルバムのレコーディングを2度行いますが、いずれもオクラ入りに。

「ラッシュはあらゆるハードラックを背負っていた」とよく言われますが、これは本当にやりきれません。50年代シカゴでマジック・サム、バディ・ガイらと共に三羽烏と呼ばれ、期待を一身に背負っていたのに、名を挙げるチャンスであり、せっかく精魂込めてレコーディングに臨んだアルバムのリリースは、本人の知らぬ所で棚上げにされてしまう。

これはラッシュでなくとも精神的にかなりキツい出来事であります。

60年代から70年代、失意のラッシュはとにかく生演奏で稼ぐ以外になく、アメリカ国内ばかりでなく、ヨーロッパにもツアーに出かけ、ライヴを重ねます。

その時に実は、ほぼプライベート録音に近い形でレコーディングもやってるのですね。ところがその時の音源が、エモーションが空振りしてかなり苦しい内容のものが多かった。

ほいでもって、アメリカに帰国してやっとこさ掴んだこのブルース愛に溢れたレーベル、デルマークでの録音も、一般的には「かなり苦しい内容」と言われる事があるアルバムです。

実際に聴いてみると、確かに歌詞が飛んでしまったのか、うめき声ともわめき声とも言えぬ奇声を張り上げる後半の歌には、痛々しいものを感じますが、50年代の録音に比べて鋭さに加えて豊かな”箱鳴り”も感じさせるギターの音色、太さを増した声、程よい”間”を活かした暖かみのあるバンド・サウンドなど、全体的にはあの感想すら寄せ付けないほどの緊張感がみなぎっていたコブラ録音に比べ、かなり聴きやすく、楽曲もノリノリとスローとのバランスがとても良く、70年代のモダン・ブルースのアルバムとしては、これはかなり良い作品ではないだろうかとアタシは思いました。

先ほど痛々しいと言ってしまった後半の歌の部分も、これはラッシュの有り余る感情が行き場を失って暴発した結果です。むしろコブラ録音よりも、いかにも人間らしいラッシュの感情表現の生々しさがダイレクトに胸をかきむしって、このアルバムの見事なハイライトとなっております。

ラッシュのアルバムはこれ以後のアルバムに、安定したカッコイイものが多くリリースされておりますが、アタシはやっぱりラッシュといえば、この鬱屈としたエモーションを装飾ナシでありのまま叩き付けたこのアルバムにトドメを刺すんじゃないかと思っております。









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2019年10月08日

ブラウニー・マギー&サニー・テリー Sing

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Brownie McGhee & Sonny Terry/Sing
(Smithsonian Folkways)

前回までのお話は、戦前のアメリカ東海岸にはブラインド・ボーイ・フラーという素晴らしいブルースマンがいて、その人が南部やシカゴとはまた違う洒落た感じの味わいのイカしたブルースのスタイルを作り上げたよというお話でした。


そんな東海岸のアコースティック・ブルースは、戦後になってあるコンビの登場によって一気に世界でも有名なスタイルとなるのです。

はい、1950年代から70年代にかけて大活躍して、それぞれのソロも含めると、実に何十枚という数のアルバムを色んなレーベルから出しているという、正にオリジナル・ブルース・ブラザーズな人気者、ブラウニー・マギーとサニー・テリーのコンビを今日はご紹介します。

とにかくこの人達を語る時はずせないのは、1950年代から60年代にかけてのアメリカの一大ムーヴメント「フォーク・ブルース・リヴァイバル」です。


多くの伝説のブルースマン達が、アメリカ南部の奥深くから次々発見され、その深淵なるブルースの世界を白人の若者達に知らしめていたその時、ぽーんと出て来て丁々発止のゴキゲンなブルースで若者達を大いに沸かせ、あっという間に絶大なる人気を獲得したのがこのコンビであります。

「ブルース」それも戦前からのアコースティック・スタイルといえば、どうしても渋いご老人が、人生の辛酸をなめまくった、辛口のものというイメージがあり、確かに多くのレジェンド達は、そんなイメージに違わない見事なブルースの苦味を様々なスタイルで噛み締めるように歌っておりましたが、この2人の場合は、そんなイメージも何のその。両人共にカラッとした朗らかな歌いっぷりと、ズクズクと小気味よく刻まれるギター、まろやかかつ力強い、ポジティヴな味わいに溢れた生ハープの音、何よりもその”覚えやすくノリやすい”楽曲とアレンジで、強烈に異彩を放っておりました。


さてさて、そんな2人ですが、ブラウニー・マギーは1914年生まれ、サニー・テリーは1911年生まれ。

サニー・テリーは8歳の頃からハープを吹き、10代の頃に農作業中にうっかり木片が目に当たって失明。更に数年後に友人の投げた鉄
破片が見えている方の目当たり、ほとんど盲目に近い弱視になってしまいました。

彼の実家は小作農でしたが、目に重い障害があると農作業が出来ないので、本格的に音楽で食っていく事を決意。ある日路上で聴いた「とびきりイカしたギター」に惹かれ、思い切ってそのギターの主に

「なぁアンタ、オレはハープ吹くんだが、どうだい?一緒に演らないかい?」

と、声をかけ、そのギタリストの相方として、1930年代半ば以降、共に演奏をしたり、レコーディングに付き合うようになります。

そのギタリストこそが、当時ノース・カロライナを中心に人気を博していたブラインド・ボーイ・フラーであります。

残されたフラーの音源で、テリーのハーモニカは、フラーの独特の疾走感あるビートを繰り出すギターと、ピッタリ息の合った見事な合奏ぶりを見せてくれます。また、味わい溢れるスロー・テンポのブルースでも、まるで肉声のコーラスのように感情豊かなプレイで応えております。


一方のブラウニー・マギーは、父がギタリスト、叔父がフィドル(バイオリン)奏者で、南部一帯を旅する巡業一座の家に生まれ、やはり幼い頃からギターに親しんでおりました。

4歳の頃小児麻痺にかかり、右足が左足より短くなってしまうというハンデを背負ってしまいましたが、生活にはさほど影響せず、1930年代には独立して独自の活動を始めるようになり、ソロで弾き語りをしたり、ジャグバンドのメンバーとなったりしながら、故郷テネシー州の周辺を廻りながら、やがてノース・カロライナに移り住んだ頃、憧れだったブラインド・ボーイ・フラーの死を知って、何と”ブラインド・ボーイ・フラーNo.2”を名乗って活動しておりました。

(多分)その芸名が功を奏したのか、ノース・カロライナで自身のギターとハーモニカ、そしてウォッシュボード(これはフラーが得意としていたバンド・スタイル)のトリオバンドを結成。そのバンドのメンバーの紹介で「かつてフラーと共に演奏していたハープ吹き」サニー・テリーと知り合い、コンビとなって活動するようになりました。

性格的な相性は最悪で、ステージ降りたらほとんど口もきかなかったという2人でしたが、そんな不仲も関係ないとばかりに2人は地元で人気者となり、戦後のアコーステリック・ブルース不況の時期も、これだけで食っていくことが出来ていたそうです。

そして程なく白人若者達の間で巻き起こったフォーク・ブルース・リヴァイバル。

彼らの音楽性は、ディープ・ブルースに馴染みのない白人の若者もすんなりと理解できるぐらいにポップで洗練されたものでありましたし、また、ニューヨークからそんなに遠くないノース・カロライナという場所に居たお蔭で、まずは東海岸の大都市ニューヨークの、学生やミュージシャン、詩人や画家などが集まるコーヒーハウスで歌えば多くの賞賛を集め、あれよあれよという間に彼らは都会から湧き起こったムーヴメントの中心におりました。







Brownie McGhee & Sonny Terry Sing

【収録曲】
1.Better Day
2.Confusion
3.Dark Road
4.John Henry
5.Make a Little Money
6.Old Jabo
7.If You Lose Your Money
8.Guitar Highway
9.Heart in Sorrow
10.Preachin' the Blues
11.Can't Help Myself
12.Best of Friends
13.Boogie Baby



とにかくこの2人の演奏は、起承転結がハッキリしていて、歌もギターやハープのフレーズも、聴く人のノリと心に易しく引っかかるようにキチンと作り込まれていたものであり、それゆえにワンパターンとか、ブルース・フィーリングに欠けるというそしりを受けることもありましたが、いやいや、これだけ洗練された完成度の高い演奏を、しっかりと味わいを感じさせながら聴かせることが出来るというのは、一流の芸の奥底に流れる豊かなフィーリングあればこそだと思わざるを得ません。

得意とするのは、やはり共通のルーツであるブラインド・ボーイ・フラーが得意とした、ミディアム・テンポの軽快なナンバーですが、その中でマギーはド派手に弾き倒すことなく、しっかりとしたリズムで伴奏を刻みながら、時折「おっ!」と耳を惹き付けるメロディアスなソロやオブリガードで、一流のギター・ピッカーぶりを見せつけます。程良く濁りのある、絞るようなヴォーカルもまた深い味であります。

サニー・テリーのプレイは、しっかり者のマギーに対し、豪快でコミカルでややべらんめぇな感じが実に魅力ですね。強さだけでなく「ぷわぁ〜ん」と南部の空気を目一杯吐き出すかのような、戦前を生きたハープ吹きにしか出せない牧歌的な味わいと、あだ名の「ウーフィン」の元となった、歌ってる途中にいきなりいれる「ホォォ〜ォウ!」という掛け声も、演奏の中で見事な”盛り上げポイント”になっております。


今日ご紹介するアルバムは、入手しやすい『Sing』で、コチラは耳に心地良いオリジナルのブルースから南部古謡であるバラッドまでサクサクと小気味よく聴き進められて、かつピードモント・スタイルと呼ばれる、戦後最も洗練されたアコースティック・ブルースの醍醐味も楽しみながら味わえます。つうかこのコンビのアルバムはどれも楽しみながら深く味わえる、本当の意味で”ちょうどいいアルバム”ばかりなので、サクッと入手してサクッと聴きましょう。良いよ。

















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2019年10月05日

ブラインド・ボーイ・フラー Truckin My Blues Away

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Blind Boy Fuller/ Truckin My Blues Away
(Yazoo)


何だか久々に聴いてみたら、ブラインド・ボーイ・フラーにすっかり再ハマりしてしまいました♪

前回もちょとっと書きましたが、この人のブルースは、もちろんディープなフィーリングを持っておりますが、聴く人に対しては必要以上に深刻にならず、戦前ブルースに馴染みがないというよりも、そもそもブルースそんな知らんよって人に対しても「あら、なかなかゴキゲンな音楽ね」と言わしめるキャッチーな腕の良さみたいなものを持っておる人であります。

ほいでもって、彼の作り上げたキャッチーでウキウキなブルースのスタイルは「ピードモント・スタイル」と呼ばれ、戦後のアコースティックなブルースの、何となく主流なスタイルになって行くんですね。

例えばエリック・クラプトンがアコギを持って「ちょいと古い曲を・・・」とかいう感じで割と爽やかに弾き語るあの感じのを見ると「おぉ〜、ピードモントスタイルだわい」と、アタシなんかは思ってしまいます。はい、クラプトンは一流のミュージシャン/ギタリストである以前に、超の付く程のブルースマニアであり、あらゆるスタイルのブルースの熱心な研究家でもありますんで、もちろんフラーやぴーどもんす・スタイルの事は知っておるでしょう。でも、それを意識せずとも、戦後になってアコースティックでちょいとオシャレな感じのブルースをやると、自然とフラーやその影響を受けたブラウニー・マギーみたいなスタイルに近くなってくる。こりゃあ本当に凄い事だと思います。

さて、話をブラインド・ボーイ・フラーに戻しましょう。

1907年に生まれたフラーは、戦前に活躍したブルースマンとしては、比較的若い世代です(ロバート・ジョンソンより4つ年上ぐらい)。

で、盲目のブルースマンといえば、先天的に目が見えなくて、家業の農作業とかが出来ずに音楽の道へ行った人もおりますが、フラーの場合は元々目の病気とかはなくて、20歳ぐらいの時に同棲相手と喧嘩をしてしまい、その結果洗面器の水にアルカリ溶液を混ぜられて、そいつで顔を洗ってしまったから目が見えなくなってしまったという、強烈なエピソードがあります。


1940年に、不摂生が祟って33歳という若さであっけなくこの世を去っております事も考えますに、フラーという人はどうもその和やかでウキウキな音楽性とは裏腹に、かなり激しい気性のやさぐれた性格だったような気がしますね。

あ、いや、ちょいと待て。そんなフラーのやぶれかぶれなキャラクターに想いを馳せながら彼のブルース聴いてたら、やっぱりタダのポップでゴキゲンなだけじゃない、やさぐれ人間特有の凄味みたいなものがビリビリと使わってくるよーな気がしますぞ。これだからブルースはやめられない♪




Truckin My Blues Away

【収録曲】
1.Truckin' My Blues Away
2.Untrue Blues
3.Homesick And Lonesome Blues
4.You Never Can Tell
5.Mamie
6.Jivin' Woman Blues
7.Funny Feeling Blues
8.I Crave My Pigmeat
9.Meat Shakin' Woman
10.Walking My Troubles Away
11.Painful Hearted Man
12.Corrine What Makes You Treat Me So?
13.Sweet Honey Hole
14.Weeping Willow



さてさて、先日はフラーの「最初に聴くならこれ♪」なベスト盤をご紹介しました。つうか戦前のブルース音源は、どれもA面B面それぞれ1曲づつのSP盤用シングルだったので、戦後に編集されたアルバムは、全部ベストのようなもんだと思ってください。後はレーベルによって選曲の良さとかジャケットの味わいとか、そういうものがそれぞれだったりしますんで、聴く人それぞれのお気に入りを選べばそれでOKという世界です(遠まわしに「戦前ブルース全然怖くないし難しくないんで、どんどん聴いてー!」って事をアタシは言っておりますよ、ハイ)。


で、アタシにとって一番最初にフラーの魅力を教えてくれたアルバムといえば、やっぱり戦前ブルースの貴重な音源を、イカした手作り感満載のジャケットの良さと共に世界に広く紹介した、Yazooレコードの編集盤ということになります。

選曲は、言わずもがなの素晴らしさ。特にミディアム・テンポの心地良いナンバーから、グッと落とした声のトーンでジワジワと聴かせるスロー・ブルース中心のセレクトは、落ち着いてじっくりとフラーを、つうか戦前ブルースを聴いてみたい人にはピッタリの内容とボリュームです。

こんだけ収録されていて、前回紹介した『Blind boy Fuller 1935-40』(↓)と、曲のダブりがほとんどないのが最高です。




そして、Yazooのジャケットといえば欠かせない名匠、ロバート・クラムの手掛けるイラストがまたいいですね。

戦前モノといえば大体ブルースマンの写真デカ貼りに背景+文字というのが王道な中、実に大胆でポップなイラストで、実はフラーのイラストが右上にちょこっと描かれてます。あ、ロバート・クラムのイラストは皆さん、良いですよ。って言ってもピンと来ない人多いと思いますんで、ほら、アレですよ。ジャニス・ジョプリンの『チープ・スリル』を手掛けた人であります。












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2019年10月03日

ブラインド・ボーイ・フラー 1935-1940

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Blind Boy Fuller/1935-1940

いやもう、こっちはまだ30度越えのムシムシお天気なんですけどね、調子をゆるゆると回復させるために、本日も戦前ブルースを聴いております。

さて皆様こんばんは。先日はジェイバード・コールマンその他、戦前は20年代に活躍したブルース・ハープ黎明期の名手達による、とことんディープで闇が深い(使い方合ってるかね?)一枚を紹介しましたが、今日は深い味わいをたっぷりと含みながらも、粋でイナセでダンサブルなブルースを紹介しましょうね。





本日もちょいと個人的な小話からで大変恐縮なんですが、お話をさせていただきます。

あの〜、アタシが戦前ブルースを本格的に好んで聴くようになったのは、10代最後の時期の頃でありまして、そん時いわゆる戦前のブルースマンで知ってる、つうかCDを持っていたのはロバート・ジョンソンとレッドベリーぐらいだったんです。どっちかというとロバート・ジョンソンはまだそんなにピンときてなくて、曲がキャッチーでわかりやすい、加えてボブ・ディランとかウディ・ガスリーとか、そういう元々好きだったミュージシャンの繋がりで聴くようになったレッドベリーの方に夢中になっていたと思います。

埼玉の上福岡の駅前にあるフラリと入った本屋さんに割とブ厚いブルースの本があって、買おうと思ったら¥5000近い値段だったので買えなくて、結局パラパラと立ち読みしただけだったんですが、文章はともかく、そこに載っていたブルースマン達の写真で特に強烈な存在感を放っていて、目を釘付けにしたのが、ブラインド・レモン・ジェファソンやブラインド・ブレイク、ブラインド・ウィリー・マクテルといった、名前の頭に「ブラインド」の付いている人達でした。

共通して、写真では閉じられている彼らの目を見て「あぁ、この人達は盲目のブルースマンなんだな」という事が何となく察せられました。

盲目のブルースマン、これはブルースに憧れている人間にとって、何とも興味を惹かれるワードではあります。

イメージとして、渋いじいちゃんが枯れた声で人生の悲哀をしみじみ歌うような姿を想像しておったんですが、実際に聴いてみた戦前のブラインド・マン達のブルースは、もうそんな貧困な想像力で勝手に作り上げたイメージなんか軽くぶっ飛ばすぐらいに凄かった(!)

どのブルースマン達も、声は渋いを通り越して底の底からパワフルな個性を持ち、加えて驚異的なギター・テクニックが圧倒的な存在感を放っておりました。

正確無比なピッキングとリズム感で、どう聴いても2本のギターが同時に鳴ってるようにしか聞こえないブラインド・ブレイクのラグタイム。歌ってる最中にまるでギターソロを弾いてるような、ブラインド・レモン・ジェファソンのコール・アンド・レスポンスを遥かに超えた歌とギターのひとりヴォーカルっぷりにまずド肝を抜かれ「あぁ、ブラインド・〇〇って名前のブルースマンの音源は、こらもうハズレはないと思うから買い集めないと」と思っていた矢先に出会ったのが、ブラインド・ボーイ・フラー。


1907年生まれのフラーは、アメリカ東海岸の南部側にあるノース・カロライナで生まれました(サウス・カロライナ説もあり)。

このノース・カロライナという土地は、南部からニューヨークへ向かう途中にあり、古くから自動車産業も盛んだった事から1920年代は職を求めて南部からの労働者も集まって来る土地でありました。

そのため、この地のブルースもまた、適度な田舎っぽさを根底に持ちつつも、他の南部のブルースとは違った独自の洗練を持っております。これが後に”ピードモント・スタイル”と呼ばれるひとつの東海岸ブルースのスタイルへとなって行く訳であります。有名どころでは1950年代からのフォーク&ブルース・リヴァイバルで大人気を博したブラウニー・マギーとサニー・テリーのコンビが奏でる、キャッチーなメロディに心地良いリズムのギターが絡む基本スタイルが典型的なピードモント・スタイルであります。


で、解説によるとこのピードモント・スタイルを築き上げた戦前の東海岸ブルースの最重要人物こそが、ブラインド・ボーイ・フラーなんだよと。

はい、ブラインド・ボーイ・フラーは少年時代から音楽で生計を立てるために、ギターを片手にノース・カロライナの工業地帯にある盛り場を根城に音楽活動をやっておりました。

荒くれの多い工業地帯では、ノリが良く踊れる曲が求められたんでしょう。彼の得意なレパートリーは、やはりノリノリのラグタイムや、ブルースも軽快にステップを踏むような明るめのものが多いです。

主にナショナル製の金属ボディに共鳴板が埋め込まれたスティール製ギターを使い、その大きな音量と力強いアタック音を活かした豪快なフィンガー・ピッキングはやはり強烈無比で、リズムの正確さはさることながら、弦をズ太くザラッと鳴らすワイルドな質感がたまらんです。

代表曲に『ラグ・ママ・ラグ』っていう、最高にゴキゲンなラグタイム曲があるんですが、低音をズンズクズンズクベーシストみたいに刻む親指と、ひゃらひゃらシャカシャカと高音域を自在に跳ねまくる人差し指が放つグルーヴ感、加えて伴奏にウォッシュボードがすちゃらか言ってて、こんなカッコイイダンスミュージックありますかって言いたくなります。はい、正直最初聴いた時にギターで弾けるようになろうと思って2分で「うひゃあ、やっぱり何をどーやって弾いてっかさっぱりわかんねー!」と挫折した記憶も未だにアタシの中では鮮明であります。





Blind Boy Fuller 1935-1940

【収録曲】
1.I'm Climbin' On Top Of The Hill
2.Ain't It A Crying Shame?
3.Rag, Mama, Rag
4.Log Cabin Blues
5.(I Got A Woman Crazy For Me) She's Funny That Way
6.Stingy Mama
7.Some Day You're Gonna Be Sorry
8.Walking And Looking Blues
9.Working Man Blues
10.Steel Hearted Woman
11.Ain't No Gettin' Along
12.New Louise Louise Blues
13.Mistreater, You're Going To Be Sorry
14.Shaggy Like A Bear
15.Looking For My Woman No.2
16.I'm Going To Move (To The Edge Of Town)
17.Long Time Trucker
18.Blacksnakin' Jiver
19.I'm A Stranger Here
20.I Want Some Of Your Pie
21.Passenger Train Woman
22.Somebody's Been Talkin'
23.Crooked Woman Blues


コチラのアルバムは、東海岸から南部一帯までその名を轟かせていたフラーの1935年から亡くなる直前の1940年までの演奏から、ラグタイムとブルースとをバランス良く選曲されたベスト・アルバム。

実はフラーはスロー・ブルースにも、哀願するような心打つナンバーが多くて、ただの賑やか師じゃない「聴かせる」人でもあるんですが、最初はやっぱりさっきも言った『ラグ・ママ・ラグ』等の、超絶技巧&味わい最高なウキウキダンスビートに撃ち抜かれて笑顔になるってのが、実に正しい反応だと思います。


そういやその昔、ブルースとか全然知らないどころか、洋楽すらあんまり聴かないような人が、この人の演奏には「何かいいね、よく分からんけどカッコイイ」と、さり気なく深い反応を示してくれたことがありました。はい、ブルースと聴いてイメージするディープな味わいとフィーリングを絶えず内に秘めながらも、ほっといたらそのまんま通り過ぎて行ってしまいそうな人の耳にもしっかりと印象を残してくれるポっプでキャッチーな魅力を持ったブラインド・ボーイ・フラー、月並みな言い方で恐縮ですが、やっぱりカッコイイんですよねぇ。。。













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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 16:26| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする