ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年05月21日

バディ・ガイ フィールズ・ライク・レイン

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バディ・ガイ/フィールズ・ライク・レイン
(ソニー・ミュージック)

今やブルース界の長老として、後輩ブルースマンやロック・ギタリスト達からの絶大なるリスペクトを集めているバディ・ガイ。

元々が直情型のフレージングと、ピックを使ったアタックの強い、つまり「小手先のテクニックよりもエモーションばこーん!」なタイプでありますので、バディの場合はロック側からの人気は非常に高かったんです。

で、年代的にもストーンズの連中とかジェフ・ベックとかクラプトンとかとは、大体10ぐらいしかトシが離れておりませんので「尊敬する大先輩」というよりは「頼れるアニキ」って感じだったんでしょう。特に最近のライヴ映像なんかを観ると、ラフな格好で「やぁやぁどうもどうも」みたいな笑顔で出てきて、凄まじい弾き倒しを疲労してくれるバディを後輩達が「どうだ、アニキは凄いだろう」と、笑顔でプレゼンツしているみたいな、そんな気さくさ、フレンドリーさ、あと、インタビューなんかでの滲み出る人柄の良さに、アタシは何だか「あぁ、ブルースってとってもいいな」と思ってしまうのです。

そんな感慨は、特にバディが長い不遇の時代を経てカムバックした90年代以降のアルバムを聴いて湧いてきます。

ファンの皆さんには、シルヴァートーンからの復帰第一作「アイ・ガット・ザ・ブルース」が、名作として人気がありますが、その翌年にリリースされた2作目の「フィールズ・ライク・レイン」もなかなかいい。というよりも、ジョン・メイオール、ポール・ロジャース、ボニー・レイット、イアン・マクレガンなど、彼をアニキとしたう豪華なゲストに囲まれて、豊かに幅の広がった曲風の中で、和気藹々をやりつつも直情に火が点いたら猛烈に暴れまくる快演が聴ける、これもまた名盤でございます。

元より、ブルースマンとしては若い世代(シカゴ・ブルース第二世代とか言われておりまする)のバディは、デビュー当時からR&Bの影響を強く受けたミクスチャーなブルースをやっておりました。

この”元からあった音楽性の広さ”が、90年代には本人の感情コントロールの見事さも相俟って、実に良い塩梅で花開いておるんですね。特にロックサイドには、デカい影響を与えた側の当人が、ニコニコしながら強烈なギター・プレイをひっさげて迫ってきている感アリで、単純に「丸くなった」「落ち着いた」では済まされない凄みもあったりするんです。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.シーズ・ア・スーパースター
2.アイ・ゴー・クレイジー
3.フィールズ・ライク・レイン
4.シーズ・ナインティーン・イヤーズ・オールド
5.サム・カインド・オブ・ワンダフル
6.サファリン・マインド
7.チェンジ・イン・ザ・ウェザー
8.アイ・クッド・クライ
9.マリー・アン
10.トラブル・マン
11.カントリー・マン


アルバム全体の空気として「伸び伸びやって、キリッと締めてる感じ」がとても心ニクいんです♪

正統派モダン・ブルースの「シーズ・ア・スーパースター」「アイ・ゴー・クレイジー」で、まずはテンション高めの弾き倒しで健在ぶりを最高にアピールして、看板曲であります3曲目「フィールズ・ライク・ア・レイン」です。

この曲はそれまでとガラッと変わってバラード、しかもかなりキャッチーなソウル・バラードみたいな感じで、バディの声も抑揚が美しく、つい聴き惚れてしまいます。更にバックでコーラスとスライドギターの何とも優しいソロを弾いているボニー・レイットのプレイが光っております。

原曲は1988年にリリースされたシンガー・ソングライター、ジョン・ハイアットのポップス曲なんですが、コレは曲も素晴らしいですが、歌詞もいいんですよね。人生の辛酸や苦難は直接表現されていないけれども、美しい情景の中でしみじみと迫るものがある男と女の純愛を、バディが切々と、語りかけるように歌う素晴らしいバラード。

中盤から後半は、掛け合いも楽しい「サム・カインド・オブ・ワンダフル」(with.ポール・ロジャース)「チェンジ・イン・ザ・ウェザー」(with.トラヴィス・トリット)、転がるマンボ・ビートの上でギターがキュインキュイン鳴り響くイントロから、B.B.キングばりの変拍子で更にチョーキングを炸裂させる「マリー・アン」バディが敬愛するギター・スリムの、原曲にほぼ忠実な渋いカヴァーがあり、ラストは「トラブル・マン」「カントリー・マン」と、往年のキレもやっぱり衰えていない必殺のスロー・ブルースでシメ。

非常に聴き易いし、楽しい展開とグッと渋い展開の分かり易さで退屈させません。

改めて90年代のバディを聴いてると「何かブルース聴きたいな〜」というブルース初心者の方のピュアな欲求に優しく応えてくれるのはこの辺じゃないかなぁと思えてきました。とにかく最近のバディすごく良いよ。


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2017年05月17日

タジ・マハール Taji Mahal

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タジ・マハール/Taji Mahal
(ソニー・ミュージック)


さて「ブルース」といえば、今やポピュラー・ミュージックの中のひとつでありますが、一方でアフリカン・アメリカンが小さな頃から周囲の演奏を見聞きして覚え、それが自然と身に付いてゆく、或いはそれが自然と身に付く環境で生まれるものであります。

のっけからちょっと専門的な物言いですいません。えぇと、何が言いたいのかと言うと、ブルースって音楽は、ポピュラー音楽でありながら、人種のるつぼである比較的若い国アメリカに住む、アフリカ系の人々の民俗音楽みたいな側面もあるんじゃないか。ということであります。

例えばマディ・ウォーターズやB.B.キングら大御所のインタビューとかではよく

「ちっちゃい頃から綿花畑で働いてたんだ、作業をしながらみんなで唄ってたアレがブルースだったんだなァ」

とかそういう話をします。

つまりアメリカ南部で生まれ育ち、物心付いた頃には周囲の生活の中でブルースが溢れ、それを聴いてくうちに覚えてブルースが歌えたり演奏したり出来るようになったんだ。と。

1950年代ぐらいまでシーンで名を馳せたブルースマン達のほとんどは、そういったコミュニティで生まれ育ち、大人になるとシカゴやデトロイト、或いは西海岸などに移住してその地でブルースの新しいスタイルを切り拓いていきました。

で、今度はブルースが上ってきた都市部で生まれ育った世代のブルースマンになると、上の世代から教わったブルースのダイレクトな影響に、リアルタイムで流れていたヒットチャートのR&Bが加わったり、60年代になるとソウルやロックなど、コミュニティの外にあるメディアからの音楽が、黒人青少年達にどんどん影響を与えるようになるのです。

本日ご紹介するのはタジ・マハールであります。

タジは、ブルースを演りながらもその出自はいわゆるブルース・コミュニィの外にありました。

お父さんがジャズ・ピアニストでお母さんは学校で先生をしながら教会でゴスペルを唄っていた音楽一家に生まれますが、家庭は比較的裕福で、タジも学校成績がよく、何と地元マサチューセッツの大学に進学して1964年に卒業するまで獣医師の勉強をしておりました。

いわゆる「ガキの頃からブルースまみれで」といったタイプではなく、ここまではいわゆるフツーの「都会の大学生」だったんですね。

大学を卒業したタジが「とりあえずプラプラするため」に目指したのは、西海岸の大都市ロサンゼルスであります。

ここは各地からインテリ達が集まって、政治や文化芸術に関する熱いディスカッションで熱気を帯びていた街。或いは単純に”面白いこと”を求めて集まってくる、一風変わった若者達もたくさんおりました。

インテリであり一風変わった若者であったタジは、ここで似たような仲間と出会うのですが、その中の一人にライ・クーダーがおり、意気投合した二人はバンドを組みます。

元々両親の影響で、ジャズやブルースやゴスペル”も”聴いてたタジと、当時の典型的な音楽好きの白人、つまりブルースやR&Bに異様な関心を持っていたライの二人は、互いにセッションや音楽についての会話をしながら、互いの腕を磨き才能をグイグイ引き出し合っていきます。

二人が目指したのは「ブルースを思いっきり土台にした、全く新しい感覚のロック」であり、その目指すところは一定の支持を集めて二人のバンドはメジャー・レーベルと契約しましたが、せっかくレコーディングしたアルバムが何故か日の目を見ることなくバンドは解散。それぞれがソロとしての活動へと足を踏み出すことになります。

それからの二人は言うまでもなく、ライ・クーダーの方はアメリカを代表するスライド・ギターの名手として、今やロックファンでは知らぬ者はいないぐらいのビッグネームになります。

一方タジの方は、ソロ・デビューしばらく後はブルースロックをやっておりましたが、徐々に自らのルーツの探求へとのめり込み、アコースティック・ギターによるカントリー・ブルースの素晴らしさを世に広めるとともに、カリプソ(タジの父親はジャマイカ出身でありました)ハワイアンなども幅広く手掛け、今は「すげぇ渋いアコースティック・ブルースとワールドおじさん」として知られ、更に90年代以降デビューした若手ブルースマンのバックアップにも精力的であります。

アタシがタジのことを知ったのも、弾き語りカントリー・ブルースのビデオでの解説者としてです。

そのビデオの中で

「ブルースというのはこういう歴史があるんだ」

「次は誰々なんだけど、彼のスタイルはこういった感じで・・・(と、おもむろに持っているアコギを爪弾く)」

といった彼の優しく丁寧な解説は、アタシにとってもブルースの素晴らしい玄関口でありました。




(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.リーヴィング・トランク
2.ステイツボロ・ブルース
3.チェッキン・アップ・オン・マイ・ベイビー
4.エヴリバディズ・ゴット・トゥ・チェンジ・サムタイム
5.E.Z.ライダー
6.ダスト・マイ・ブルーム
7.ダイヴィング・ダック・ブルース
8.セレブレイテッド・ウォーキン・ブルース

さて、アルバムの解説に移りましょう。

タジのソロ・デビュー作は1968年のリリースであり、ラッキーなことにデビューの年にローリング・ストーンズが主催するイベント「ロックンロール・サーカス」に招かれ、好評を博してタジの名と、彼がその頃やっていた”アメリカ産の新しいブルースロック”は、イギリスのブルースファン(めちゃくちゃ気合い入ってた)やミュージシャン達に喝采と共に迎え入れられ、タジの方がストーンズやエリック・クラプトン、それからサザン・ロックの雄、オールマン・ブラザーズに与えた影響が実はものすごくデカいんじゃないかと言われております。

はい、このファースト・アルバムを聴けば、彼が如何にその後のアメリカ、イギリス双方のロックに刺激を与えていたかがとてもリアルに体感できるのでありますよ。

スリーピー・ジョン・エスティスやブラインド・ウィリー・マクテル、ロバート・ジョンソンなど、戦前に大きな足跡を残したブルースマン達の楽曲を大胆にロック・アレンジのバンド・サウンドでガツーンと演奏しているんですが、コレが実にけれん味がなくて、すごく真摯な感じに演奏されております。

タジはギタリストとしても優れた腕の持ち主ですが、ここではリードギターのほとんどを、ジェシ・エド・デイヴィスに任せ、サイドギターを実はしれっと「RYLAND P.COODER」という名前(多分本名?)で参加しているライ・クーダーとビル・ボートマンに任せ、自分は実に渋いヴォーカルとブルースハープに洗練しています。

1曲目からいい味出しているタジのハープ、すごく味わい深くてコレだけでグッとディープなブルース感が出ているんですけど、演奏の中心になっているのはジェシ・エド・デイヴィスのリードギター。

チョーキング炸裂のスクィーズ・ギターもスライドも、厚みのある豊かなトーンでグイグイ攻めるように弾いております。ここでの彼のプレイは「ブルース弾くロックの人のベスト」と言っていいでしょうね。うん、言っちゃう♪

アルバム全体が活力のあるへヴィ・ボトムなブルースロックの教科書みたいな、素晴らしい作りであり、コレ聴いて夢中でコピーした同年代のロッカーはいっぱいいただろうなと思います。

例えば「スティツボロ・ブルース」は後のオールマン・ブラザーズの人気曲ですが、そのアレンジの原型をここに見ますし(ジェシのスライドもギュインギュイン唸ってますよー)、「E.Z.ライダー」「ダイヴィング・ダック・ブルース」は、ジョニー・ウィンターがそれぞれこのアルバムのアレンジをモロお手本にした演奏を残してます。



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2017年05月14日

ケブ・モ ジャスト・ライク・ユー

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ケブ・モ/ジャスト・ライク・ユー
(ソニー・ミュージック)

ギターにすっかり夢中になっていた高校時代、友達の家で観てすっかりハマッた映画がありました。

皆さん「クロスロード」という映画、ご存知ですかね?



ギター少年が、ふとしたことがきっかけで、かつてロバート・ジョンソンと一緒に演奏したこともあるブルースマン”ウィリー・ブラウン”と出会い「ロバート・ジョンソンの幻の曲を探しに行く」ほいでもってクライマックスではロバート・ジョンソンが魂を売ったという”悪魔(フツーに金持ちそうな黒人の男性)”と、その手下である超絶技巧のギタリストと勝負とかもしたり、もう夢や希望に満ち溢れている面白い映画です。

”ウィリー・ブラウン”の役が、ホンモノのブルースマンであるところのフランク・フロストだったり、悪魔の手下の超絶ギタリストが、当時ギター小僧の憧れのスティーヴ・ヴァイだったりと、そういう見所なんかもいっぱいあって、これは今でも楽しめるし、安くで売ってますんでぜひDVDを買ってください。

で「クロスロード」もう夢中で観てたんですが、アタシが一番心惹かれたシーンはクライマックスのギターバトルじゃなくて、オープニングのコレ↓



「すげーなこの役者さん、ロバート・ジョンソンそっくりだ。つうかアテレコだとは思うんだけどね、この演奏は誰がやってんだろう」

と、そこから数年、アタシにとってはそれこそ幻のロバート・ジョンソンを探すような気持ちで、このオープニング映像の”主”を探していたもんですが、長年に渡るリサーチの末に(してない)この人がケブ・モという、最近(当時1994年)デビューしたブルースマンで、何とあの映像は本人自身の唄とギターによるものなのだという衝撃の事実にブチ当たりました。

90年代初頭までは「ブルースの若手」といえば、シカゴ・ブルースとかB.B.キング系のモダン・ブルースに影響を受けた、要するに「チョーキングぎゅいーん系」の人たちがほとんどだったんですが、90年代半ばぐらいからロバート・ジョンソン・ブーム、そしてMTVアンプラグド・ブームが後押しして、戦前のカントリー・ブルースや、南部のダウンホーム・ブルースをスタイルとして取り込んだ、アコースティックなブルースマン達が”新人”として次々デビューしてきたんですね。

で、ケブ・モは、その先陣を切ってシーンに躍り出た、アコースティックな表現を基本にしているブルースマンでした。

1994年にリリースされたファースト・アルバム「ケブ・モ」は、彼が恐らく最も影響を受けたであろうロバート・ジョンソンや、その他の戦前ブルースのエッセンスを、単なる懐古趣味で終わらせない現代的なシャープさや、アコギを中心にクールなアレンジが施されたハイ・センスな演奏で見事現代に蘇らせた名盤です。

”若手”といっても1951年生まれのケブ・モは、94年の段階で既に分別盛りの40代であり、最初スティール・ギター奏者として細々と活動を続けながら、30歳を過ぎて本格的に音楽で食っていくことを考えて、ブルースの世界へ飛び込んだ人です。

その才能を見出したのは、西海岸を拠点にするアメリカを代表するサイケ・バンド”ジェファーソン・エアプレイン”のヴァイオリン奏者、パパ・ジョン・クリーチであったと言われており、そのジェファーソン・エアプレインというバンドの人達は、バンド名を戦前テキサスブルースの巨人ブラインド・レモン・ジェファソンから取っている事から分かるように、全員が気合いの入ったブルースマニアであります。

「だから何?」と言われるとちと困りますが、つまりケブ・モはそういう気合いの入ったブルースフマニアの耳をして

「おみゃーはホンモノだで、人のバックでやるより自分でギター弾いて唄った方がええがや」

と、言わしめるぐらいの実力とフィーリングの持ち主であったんですね。

果たして43歳で遅咲きのデビューを果たしたケブ・モには、単なる戦前ブルースのコピー野郎で終わらない、幅広くそして深い音楽の蓄積があり、デビュー・アルバム「ケブ・モ」は、アコースティックなサウンドを基調に、カントリー・ブルース、モダン・ブルース、ブルース・ロック、ソウル、R&Bなどのあらゆるルーツ・ミュージックを無理なく無駄なく取り込み、成熟された味わいで多くのファンを魅了しました。ブルースのアルバムとしては異例のスマッシュ・ヒットにもなりまして、

「このケブ・モって人は素晴らしい、ブルースの枠に留めずに、現代の打ち込みやサンプリングに頼らないピュアなR&Bのアーティストとして評価されるべきだ」

という声があちこちで沸き上がり、その2年後にリリースされたセカンド・アルバム「ジャスト・ライク・ユー」は、果たしてそういった内外の声に応えるかのような、ナチュラルなブラック・ミュージックの集大成的な仕上がりとなっております。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.ザッツ・ノット・ラヴ
2.パーペチュアル・ブルース・マシーン
3.モア・ザン・ワン・ウェイ・ホーム
4.アイム・オン・ユア・サイド
5.ジャスト・ライク・ユー
6.ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ
7.デンジャラス・ムード
8.ジ・アクション
9.ハンド・イット・オーヴァー
10.スタンディン・アット・ザ・ステーション
11.ママ, ホエアーズ・マイ・ダディ
12.最後の勝負も勝ち目なし
13.ララバイ・ベイビー・ブルース
14.テイク・イット・アウェイ


実は、アタシが個人的に最初に手にしたケブ・モのアルバムがコレでして、本当に思い入れのある一枚なんです。

最初はやっぱり「クロスロード」のイメージで、こらもうロバート・ジョンソンばりの、渋い渋いアコースティック弾き語りだとしか思ってなくて、もちろんアコースティック・ギターは弾きますし2曲目「パーペチュアル・ブルース・マシーン」とか6曲目の「ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ」のように、モロ戦前の空気を纏ったカントリー・ブルースもありましたが、実際にメインになっているのは、彼自身の野太く震動力(っていうのかしらん)に溢れた声を全面にして、ギターは乾いたバンド・サウンドの中で、あくまでそっと声に寄り添うように弾かれているナンバーでした。

そのフィーリングは表面的な戦前ブルース、カントリー・ブルースをなぞってなくて、もっともっと深い、奥底に染み付いている部分から、例えばサザン・ソウルやカントリーなんかを通して、まだ見ぬアメリカ南部の、どこまでも”生”な空気をスピーカーから放っているようで、色々と細かいことをごちゃごちゃ頭で考えていたアタシの期待を、良い意味でスカーンと飛ばしてくれたのです。

で、ロバート・ジョンソン好きな方は「最後の勝負も勝ち目なし」がしれっとアルバム後半に収録されているのお気付きだと思いますが、コレもアレンジは全く違っています。でもこの”違い”が、嬉しくなるアレンジなんです。ロバート・ジョンソンと同じくアコギでスライドやってますが、何というか胸にジーンとくるんですよ、ミシシッピ川の河口が見えてきよるんです。




”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”

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2017年05月04日

スティーヴィー・レイ・ヴォーン ライヴ・アライヴ

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スティーヴィー・レイ・ヴォーン/ライヴ・アライヴ
(ソニー・ミュージック)

さて、中学の頃に「アトランティック・ブルース・ギター」というオムニバスを購入して、アタマが悪いなりにブルースについてはいっぱしに分かった気になっておったアタシ。

大好きだったのは、やはり前半に収録されていた弾き語り系のディープなブルースマン達の音源だったんですが、高校に入ってエレキギターというものを買って自分でいじくるようになってまいりますと、この耳が若干変わってきます。

エレキギターというものには、独特の快楽がありますね。

それまでイトコの兄ちゃんから貰ったアコギでじゃんじゃかやっているうちは分からなかったんですが、あの、単音で「キュイーン」とやる、そうそれです、チョーキング。コレが実に気持ちのいいもんだと、実際にエレキギター(グレコのレスポールカスタム黒)を買って、アンプに突っ込んで弾いてみて初めて分かった。

もちろんその頃は超の付く初心者で、ソロなんかとても弾けたもんじゃあございません。なので見よう見まねのハッタリで「キュイーン、キュイーン」とだけやっておりました。

その時にふと思ったんですよ。

「これはもしかしてブルースいけるんじゃ?」

そこで・・・そん時はパンクやメタルに夢中になっておったんですが「そういや家にあったぜぇブルースのCD♪」と、思い出して「アトランティック・ブルース・ギター」を聴いてみたんです。

で、とりあえずB.B.キングとか、名前は知ってるけど、最初に聴いた時は良いとも悪いともピンとこなかったモダン・ブルースマンの人達の演奏をじっくり聴いてみることにしました。

そしたらそれまで全く意識してなかったレジェンド達の”泣きのギター”がグッときて

・・・・とはなりませんでした。

まぁその、高校生とはいえ、まだまだアタシはアタマの悪い十代であることに変わりはなかったんです。まだまだ激しさだったり速さだったり、そういう刺激の強い音楽が最高だと、どこかで思っておったんでしょう。B.B.もT・ボーンも「何か渋いな」とは思っても、そのギター・テクニックを手前のモノにしようなんてまだまだ思えず、というか「こういう風に弾けたらカッコイイとは思うんだけど、はて、何をどうすればいいのかよく分からない」というのが正直なところ。てれ〜っと適当に流しながらしばらく途方に暮れていたんです。

が、トラックが進んでいよいよコレが最後という20曲目、ここに収録されていたスティーヴィー・レイ・ヴォーンの「テキサス・フラッド」のライヴ・テイク。

コレが、最初に感動した「モダン・ブルースのギター・プレイ」でありました。

何がどうとか言われると、未だに返答に困ってしまいますが、ライヴ録音というリアリティ溢れる録音環境とか、その中でほとんどソロん時はアドリブでガンガンに盛り上がってゆく熱を帯びた演奏、そして何よりダイレクトにガツーンとクる、ギターの音そのものの強さ、そんなものに一気に「うわー!凄い、こんなにカッコ良かったんだ!!!」と、コロッと。もうコロッといってしまいました。

で、この演奏が入ってるスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴ・アルバムが欲しくて、親父に訊いたら

「おー、レイ・ヴォーンだったらライヴは確か1枚だけ出しとるなー」

と、探して取り寄せてくれたのがコチラ。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.セイ・ホワット
2.エイント・ゴナ・ギヴ・アップ・オン・ラヴ
3.プライド・アンド・ジョイ
4.メアリー・ハド・ア・リトル・ラム
5.迷信
6.アイム・リーヴィング・ユー
7.コールド・ショット
8.ウィリー・ザ・ウィンプ
9.ルック・アット・リトル・シスター
10.テキサス・フラッド
11.ヴードゥー・チャイル
12.ラヴ・ストラック・ベイビー
13.チェンジ・イット


はい、今でこそスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴ音源は色々出揃って、動画もたくさん観ることが出来るようになりましたが、生前に彼が残した唯一のライヴ・アルバムといえばもうコレ。

中身は85年7月16日のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルと、86年7月17日/18日のテキサス州オースティンのオペラ・ハウスに7月19日の同じくダラスのスターフェストでの演奏を収録したものであります。

レイ・ヴォーンって人は、とにかく現場での盛り上がりを大事にする人で、自身もノッてくるとギターソロなんかアドリブでガンガンぶっ飛ばす人なんです。

だからライヴでは、スタジオアルバム収録の曲は必然的に長くなりますので、このアルバムも収録時間長いです(LPの頃は2枚組だった!)。

「スティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴはアレ、アドリブでソロ弾いとるからね」

この親父の一言が、アタマの悪い高校生だったアタシの興奮に火を点けて、もう夢中にさせてくれました。

だってほれ、ロックの曲つったらイントロがあってー、歌があってー、決められたギターソロがあってー、歌があってー、エンディングでー、と、流れ完全に決まってるもんだーってアタシ思ってましたから。

それがアドリブで、その場でひらめいたフレーズ弾いてるってんだから、もうギター弾き出しのぺーぺーの小僧には、あぁ、これはスティーヴィー・レイ・ヴォーンって人は神か天才か何かだ、って思いますよね。

で、1曲目はインストだし、2曲目のスロー・ブルースも、歌までに長めのソロがあるから「こ、これがアドリブかー!」と大興奮して、ちょいと話は飛びますが、翌月にレイ・ヴォーンのデビュー・アルバム「テキサス・フラッド〜ブルースの洪水」を買って収録曲を聴き比べてみたら本当にソロも曲の長さも違って

「お、お、おー、すげー!」

と。

もうアホですねぇ・・・

でも、そんなパンクとメタルと歌謡曲しか知らないような、1年生なギター小僧にとって、レイ・ヴォーンは初めての「ギターヒーロー」として、ギターのカッコ良さ、その基本と究極を、本当にたくさん教えてくれました。

実はこのライヴ、オーバーダビングの部分が多かったり、レイ・ヴォーン自身が「あの時は体調悪くてね・・・」とインタビューで言ってちゃったことが必要以上にネガティブに解釈されて今に至る感があるんですが、そんなこたぁしゃらくせぇことです。

ギターのキレ、特に「Pride And Joy」「Texas Flood」ジミヘンのカヴァー「Voodoo Chile」からの「Love Struck Baby」の、アドリブonアドリブの畳み掛ける凄まじい展開に、ブルースやギターが好きな人で興奮しない人はおらんでしょう。

死後にレイ・ヴォーンのライヴ作品や映像が次々リリースされても、このアルバムの価値は変わりません。みんなで聴こう♪


”スティーヴィー・レイ・ヴォーン”関連記事



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2017年05月03日

ベスト・オブ・ブルース・ギター(アトランティック・ブルース・ギター)

スティーヴィー・レイ・ヴォーンのことを書いていたら、ふとこのアルバムについて思い出しました。




その昔「アトランティック・ブルース・ギター」というタイトルで出ておりましたブルースのオムニバス盤です。

まだブルースのことなんかよくわからない、頭の悪い中学生の時に、親父に薦められるままに購入したんですが、このオムニバスに入っていたミシシッピ・フレッド・マクドウェルの凄まじさにまずヤラれ、それからブラインド・ウィリー・マクテルジョン・リー・フッカーTボーン・ウォーカーB.B.キングアルバート・キングギター・スリムなどなど、ブルースの有名どころの名前のほとんどは、最初にこのアルバムで覚えました。

アタシにとっては(今も)素晴らしい教科書のような一枚です。

で、このアルバムの最後に入っていたのがスティーヴィー・レイ・ヴォーン。

ブルースの、そりゃもう神様みたいに凄い人達のプレイの中にあって、コノ人のプレイはヒーローでした。

はい、そんな感じのことを思い出しながらレイ・ヴォーンのことを書き進めております。

あ、この「アトランティック・ブルース・ギター」は、再発の時に「ベスト・オブ・ブルース・ギター」というタイトルになったみたいです。

今は中古しか出回ってませんが、ブルースに興味のある方はもちろん、結構レアな音源(ライヴだったり)も多いので「いや、ほとんど持ってるよ」という方もぜひ見つけたらゲットして聴いてみてくださいな♪
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