2019年09月03日

ジェイバード・コールマン ブルース・ハープのパイオニア

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ジェイバード・コールマン/ブルース・ハープのパイオニア
(Pヴァイン)


しばらくのご無沙汰です。

9月も終わって10月になりましたが、こちらちっとも涼しくなる気配もなく、夏に目減りした体力がジリジリと限界に近づいているような気がします。あぁ、台風のムシ暑さもあって嫌ですねぇ。


はい、はい、嫌な事を口にすると、嫌な事が寄ってくると言いますので、この辺にしときましょう。

じとっと粘って絡み付くような暑さには、やっぱりブルースです。

特に戦前のアメリカ南部のブルースには、戦後のエレキギターぎゅいんぎゅいんの激しい暑苦しさとはまた違う、ジリジリと空気を焦がすような雰囲気があり、気持ちが上手に起動しない時期にぼへ〜っと聴くのは大変よろしい。

戦前のブルースってのはアレですよ、まだ「ブルース」っていう形式がカチッと決まってない時代のものもあるし、ブルースマン達もレパートリーにはバラッドと呼ばれる民謡がブルースとごちゃまぜに入ってたりして、コレがフォークやカントリーに近かったり(というかフォークやカントリーのルーツなんですよ)して、ぼへ〜っと聴くと気分が最高にほわほわとのどかなもんになって来て大変よろしかったりするんですが、一方「ブルース」の方に耳を向けると、これがとことんディープで、シンプルで余分な音がない分聴く方の感情を、どんどんヤバい深さまで引きずり込んだりするんで、大変よろしいに加えてなかなかにあなどれない。

昔、20代の頃のアタシの話で恐縮なんですが、ロック好きの友人をアパートに招いて、家にあるCDやレコードをあれやこれや聴いてました。

共通して好きなのはスティーヴィー・レイ・ヴォーンとかジミヘンとかオールマン・ブラザーズとか、つまりその友人は「ブルースにも興味がある奴」だったので、夜の8時頃から談笑しながらあれやこれや聴いているうちに、シカゴブルースから戦前ブルースの話になってきました。

調子に乗ったアタシは「これいいぞ」「これもいい」と、徐々にかけるレコードを戦前の方に持って行きました。

ビッグ・ビル・ブルーンジィからブラインド・ブレイク、そしてブラインド・ウィリー・マクテルとかブラインド・レモン・ジェファソンとか、色々とかけてくうちに、最初は友人も「すげぇ!」「やべぇ!」と、ノリノリで聴いておったのですが、途中から

「何か・・・戦前のブルースって、独特な怖さがあるよな・・・」

と、珍しく真面目な顔で言い出したんです。

「おお、そうか。じゃあ他のにするか?」

と言ったら「いや、待て。この感じは何か・・・いいかも。俺ブルースってここまでゾクッとくるような音楽だとは・・・正直思ってなかったもんだから」と。

「おっ! 」

と思ったですねぇ。

それをいいことに、アタシは個人的に感じている「戦前ブルースの闇」の話をして、そういうのを感じる音源をいくつか聴いてもらいました。ブラインド・ウィリー・ジョンソン、ロバート・ジョンソン、トミー・ジョンソン、テキサス・アレクサンダーなどなど、それぞれに友人は「むぅ・・」とか「うわぁ・・・」とか言いながらそりゃもう真剣に聴き入っておりましたが「これが一番ヤバいかも」と言ったのが、ジェイバード・コールマンのブルースハープ吹き語りモノでした。





ブルース・ハープのパイオニア

【収録曲】
(ジョージ・ブレッド・ウィリアムス)
1.Touch Me Light Mama
2.Frisco Leaving Birmingham (take 2)
3.Frisco Leaving Birmingham (take 3)
4.The Escaped Convict
5.Middlin' Blues
(ジェイバード・コールマン)
6.My Jelly Blues
7.Mill Log Blues
8.Boll Weevil
9.Ah'm Sick And Tired Of Tellin' You (To Wiggle That Thing)
10.Man Trouble Blues
11.Trunk Busted-Suitcase Full Of Holes
12.I'm Gonna Cross The River Of Jordan-Some O' These Days
13.You Heard Me Whistle (Oughta Know My Blow)
14.No More Good Water-'Cause The Pond Is Dry
15.Mistreatin' Mama
16.Save Your Money-Let These Women Go
17.Ain't Gonna Lay My 'Ligion Down
18.Troubled 'Bout My Soul
19.Coffee Grinder Blues
20.Man Trouble Blues
(Ollis Martin)
21.Police And High Sheriff Come Ridin' Down
(Daddy Stove pipe)
22.Sundown Blues
23.Stove Pipe Blues


ハープ吹き語り、これはある意味ブルースの最もプリミティヴなスタイルかも知れませんね。

ギターならば歌いながらコードやアルペジオ何かで歌を装飾することが出来るんですが、ハープってのはハーモニカですから、歌ってる間は音が出せない。だから歌って、吹いて、歌って、吹いてを繰り返さなきゃいけない。

必然的に物凄くシリアスな演奏形態になります。

同時に伴奏がない訳で一切の誤魔化しが出来ませんので、よほどの腕前を持つ人じゃないと、聴かせられるものにはならない。

えぇと、アタシがこのスタイルを初めて知ったのは、アーフーリーから出ていたテキサス・ブルースに収録されていたビリー・バイザーの演奏でした。この人は戦後の人で、ライトニン・ホプキンスとよく共演してることで有名なんですが、何つうかもう腹からテキサスの乾いた空気と共に出てるような声とハーモニカの音、演奏がどうとかそういう細かいこと全部すっとばして、ダイレクトに撃ち抜かれました。

で、このスタイルに興味を持った時に出会ったのがジェイバード・コールマン。このスタイルの最初の頃の名人として知られる、主に1920年代の後半に活躍した、南部アラバマ出身のハープ吹きであります。


このCDには、ジェイバード・コールマンと、同じく吹き語りも聴かせるハープの名手、ジョージ・ブレッド・ウィリアムスを中心に、4人の”吹きものブルース”の至芸が収録されておりますコンピレーション。

まずのっけから、ジョージ・ブレッド・ウィリアムスの「うぁ〜う、うぁ〜う」という甲高い声を織り交ぜたパワフルなブロウに鳥肌が立ちます。この人のスタイルは、ブルースよりもっともっと古い、フィールドハラー(屋外で作業をしている時の独特の響かせ方をする歌唱法)からの影響を強く感じる、まるで民族音楽のような、プリミティヴ極まりないスタイル。

続くジェイバード・コールマンの全音源は、吹き語り系のものと、彼が組んでいたバーミンガム・ジャグ・バンドとの音源があり、収録曲もいきなりピアノなどの伴奏と、謎の女性ヴォーカル入りの曲から始まって一瞬びっくりしますが、演奏の途中でソロを取るハーモニカと、その後の吹き語りものの圧倒的な緊迫感は鳥肌モノ。生ハープなのにこんなにも迫力があって、ヴォーカルもややドスの効いた感じで実にダークな渋味があるところにグッと引き込まれます。

とにかくもうジョージ・ブレッド・ウィリアムスとジェイバードのディープ極まりない、それこそ一気に聴くと胃ももたれてきそうなぐらい重圧の強いブルースにめたくそにされてしまいます。

そんなところに後半ちょろっと入っている、オーティス・マーティンとダディ・ストーブパイプの演奏が、ディープな中にほんわかした明るさがあって丁度良い。ジェイバードとは仲間で、スプリチュアル曲の12曲目『I'm Gonna Cross The River Of Jordan-Some O' These Days』では見事に息のあったハーモニカ同士の伴奏とフレーズ応報の駆け引きを聴かせてくれます。これがソロとなると一気に素朴度と”良いおっちゃん度”がアップしてとても和むんです。

そしてラストのダディ・ストーブパイプ。え?ストーブパイプってあのストーブの煙突のことじゃなかろうね?と思ってたらやっぱりそうらしく、RCAブルースの古典では、女性シンガーとのコミカルな掛け合いと共にジャグのぶおんぶおん音に似た、達者なストーブパイプさばきも披露してくれる彼ですが、コチラでは自身のジャグ・バンド(つうか「ストーブパイプバンド」か!?)の演奏から、ハーモニカの訊いた2曲が収録されておりまして、コチラもウキウキしちゃうのどかなナンバー。

いやぁそれにしても前半から後半までのほとんどを占めるジョージ・ブレッド・ウィリアムスとジェイバード・コールマンの、ほぼ吹き語りだけで聴き手を深淵に引きずり込むプレイだけでもう言葉が出ないぐらいの衝撃にやられてしまいます。生活に深淵が足りなくて困ってる方は多分そんなにいないかと思いますが、いや、いなきゃダメだぞ、深淵大事だぞ。と申し上げつつこの悪魔のようなCDをそっとオススメに入れておきます。









ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2019年08月05日

ハウリン・ウルフ Howlin'Wolf

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ハウリン・ウルフ/Howlin'Wolf
(Chess/ユニバーサル)


信仰上の理由で「7月17日から31日まではコルトレーンを集中的に聴く」というのをやっておりましたが、8月からはコルトレーンを聴きながらも、他のカッコイイ、イカした音楽も聴いて楽しもうぜ!という月間に入ります。


つってもほれ、こんだけ暑いでしょう?多分奄美は本土よりまだマシだとは思うんですが、いやもう連日30度越えて容赦ない陽射しがギンギンに降り注げば、色んな事に対するやる気がなくなってきて、いつも楽しみにしてる「今日は何聴こっかな♪」にも力が入りません。

気力もなくCDの棚をボーッと眺めていると「オレを聴けこの野郎!」と、目に飛び込んでくる方々ばかりです。

その中で最も強烈な存在感で主張してくる人といえば、やはり我らがハウリン・ウルフ親分です。


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こ、怖い!!

まず見た目が怖い親分ですが、性格の激しさも全ブルースマン中屈指のもの。

いや、やっぱりそれより何より1950年代初頭から(もしかしたら40年代から)、バンドのギターやベースアンプのボリュームを最大にさせて、割れまくった音でバシバシ跳ねるヘヴィなロッキンビートに乗って、それよりもっと割れまくったドギツいダミ声で吠えまくっているその音楽性は、夏の暑さなんかより遥かに重く暑苦しいものであります。


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考えてみれば1950年代から60年代初頭、いわゆる「黄金のシカゴ・ブルース」と呼ばれる年代のバンド・ブルース・サウンドの中で、ウルフ親分のどこまでもラフで粗削り、そして実にノリやすく分かりやすい、まるでロックンロールを通り越してロックの元祖のようなサウンドや曲調は、良い意味で浮きまくっております。

例えばライバルのマディ・ウォーターズは、生まれ故郷ミシシッピの、重く引きずるようなビートに、更に”間”やタメや”伸ばし”を加え、改良に改良を重ねております。

曲作りやレコーディングの時も、常に真ん中でどっしりと構え、周囲の意見やアドバイスを聴きながら、若いメンバーの腕前や個性なんかも考えたアレンジをしながら、それら全てを呑み込んで自分のカラーに染め上げていたのがマディだとしたら、ウルフの場合は生まれ故郷ミシシッピのブルースの荒々しい部分を電気を得たサウンドで増幅させ、長らく拠点にしていたウエスト・メンフィスで暴力的に放っていた。

シカゴに出て来てからは「我が息子」と言って憚らなかったギタリストのヒューバート・サムリンを筆頭に、若いメンバーはもちろん大事にして可愛がっていたけど、どちらかというと「オレがこうと決めたサウンド」の先頭に立ってひたすら真っすぐに突き進み、若い連中はその背中を見て奮い立ち「オレも親分に付いて行くぞ!」と思って演奏してたんじゃないかと思わせる、非常に対照的な姿勢が、そのサウンドに現れております。

しかしハウリン・ウルフ親分のブルースって、実に分かりやすくズドンと強烈で、初心者にとってはこの上なく親切なんですよね。

正直アタシもブルースとかまだよくわかんない10代の頃「う〜ん、シカゴブルースとか言われても何か全部おんなじに聞こえてよくわかんないけど、このハウリン・ウルフって人だけは何か分かるぞ。てかこれパンクじゃん!」と、グイグイ前のめりになって聴いたもんです。




ハウリン・ウルフ

【収録曲】
1.シェイク・フォー・ミー
2.ザ・レッド・ルースター
3.ユール・ビー・マイン
4.フーズ・ビーン・トーキン
5.ワン・ダン・ドゥードゥル
6.リトル・ベイビー
7.スプーンフル
8.ゴーイン・ダウン・スロウ
9.ダウン・イン・ザ・ボトム
10.バック・ドア・マン
11.ハウリン・フォー・マイ・ベイビー
12.テル・ミー

本日棚からボーッとしながら引っ張り出したのは、そんなハウリン・ウルフ親分の、そのものズバリ『ハウリン・ウルフ』というアルバムです。

え〜と、あの〜・・・ジャケットがこれ、椅子に立てかけたギターって、カッコイイんだけど何となく本人不在のアレだったので、最初アタシは「ハウリン・ウルフのラスト・アルバム??」と思ったんですが、シカゴに出て来て、チェス・レコードと契約してリリースされた実質的なセカンド・アルバムなんですね。


よく見ると椅子ってのが座ってると気持ち良く揺れるロッキンチェアでありまして、つまりこのジャケットはウルフの音楽性「ロッキン」と掛けた洒落なんですよ。

ほんなもん大分後から気付きましたわ、アメリカンジョーク、高度すぎますわ・・・(汗)。

それはそうと内容は1957年から1961年にレコーディングされた曲をまとめたもので、リリースは1962年。つまり当時のブルースファンや音楽好きにとっては、ほぼリアルタイムのウルフ親分の演奏が聴けたものであり、当時のシカゴブルースの熱気をほぼそのまんまの鮮度と迫力でレコード化したものと言っても良いでしょう。

気になるサウンドは、コレがどのアルバムでも一切ブレない変わらない、バリバリのロッキンブルースとやさぐれたスローブルースが目一杯詰まった、ハウリン・ウルフ以外の何者でもないいつものハードコア・シカゴ・ブルース!最初はとにかくその汗すら飛んできそうな親分のヴォーカルの気迫と、そのバックでサポート・・・じゃなくて鋭い音色とフレーズにガンガン斬り込んでくるヒューバート・サムリンのリードギターがとにかくうひゃーカッコイイ!と聴き入ってましたが、よくよく聴き込んでみたら、実はこのアルバム、演奏こそハチャメチャで粗削りなんですが、楽曲そのものがびっくりするほどキャッチーでポップなんですね。

そうそう、このアルバムにはローリング・ストーンズがカヴァーしてヒットさせた『レッド・ルースター』や、クリームがカヴァーした『スプーンフル』といった、その後のブルース/ブルース・ロックの定番曲が結構入ってるんですよ。リリース年が62年だったということも考えると、ブリティッシュ・ロックの連中がデビュー前にワクワクしながら聴きまくっていたアルバムだったんじゃないかと、そんな事考えてアタシもついワクワクしちゃいます。








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2019年07月14日

レイジー・レスター コンプリート・エクセロ・シングルス1956-1962アンド・モア


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レイジー・レスター コンプリート・エクセロ・シングルス1956-1962アンド・モア


戦後のバンドでやってるブルースといえば、やっぱり何と言ってもシカゴ・ブルースが一番聴かれてて、実際に名盤や名演、有名人も多い訳なんですが、ブルースが隆盛を極めた時期ってのは、どこかの地域で盛り上がったら、よっしゃオレんとこも!と、対抗するように腕のいいミュージシャン達が競っていい演奏をして、地域毎に特色を持った素晴らしいレーベルなんかも出て来て、それぞれシカゴ産のものに勝るとも劣らない良いブルースマンの良い曲や演奏を輩出しておったんですよ。

特に戦前から戦後50年代ぐらいまでの時期のブルースってのは、それこそ広大なアメリカにあるそれぞれの地域の雰囲気というのが、サウンドに如実に現れていて、聴いててすごく楽しい!という事は覚えておいてくださいね。んで、その話をするとものすごーく長い上に複雑で読みづらい文章があぁぁぁぁあああっと続く危険性がございますので、今日ははやる気持ちをグッと抑えて「この地域のブルースはとても個性的だよ」という意味でルイジアナブルースを紹介します。


はい、ルイジアナのブルースというのは、このブログでももう何度も言っておりますように、一言でいえば『ユルくてオシャレ』です。

ルイジアナは地理的にはアメリカの南部、テキサスとミシシッピに挟まれた場所にある、そんなに都会じゃない州で、土地のほとんどはバイユーと呼ばれる広大な湿地帯であります。

この湿地帯特有の高温多湿な気候と、アメリカ独立後もしばらくフランスの領土だったという特殊な環境が、まずはこの地のブルースの『ユルくさ』に影響を与えたんだと思います。

そして、ルイジアナにはニューオーリンズという街がありまして、この街は音楽ファンなら「あ、ジャズが生まれたとこだね」とピンとくると思うんですが、この街はカリブ海に開いてる港町で、カリブ諸島の島々や南アメリカからの様々な文化が入って来ているところ。なので、ニューオーリンズやルイジアナのブルースやR&Bは、ディープなフィーリングの中にどこか陽気でハイカラな要素も入っていて、それがすごくトッポくてカッコイイのであります。

ほんで、この地の”バイユー”と呼ばれる湿地帯のブルースを、ほとんど専門的にリリースしていたのが、エクセロというレーベルであります。

実はこのエクセロ、会社があったのはテネシー州ナッシュビルという、ルイジアナからは大分離れた場所だったんです。

ナッシュビルという土地はカントリー・ミュージックの盛んな場所で、オーナーのジェイ・ミラーは最初この地でカントリーのレコードを製作しておりましたが、実はこのジェイ・ミラーさん、生まれ育ちはルイジアナというバリバリのバイユーボーイでありました。

黒人には差別的な言動もあったとの事ではありますが、それでもブルースが大好きで、カントリーでぼちぼち稼ぎながらブルースをレコーディングしようと、地元ルイジアナからブルースマンを呼んだり、ルイジアナに赴いてはいい感じのブルースをたくさんレコーディングしておったんですな。

そんな訳で50年代後半にはロックンロールの全国的なムーヴメントが沸き起こります。え?ロックンロールのブーム来ちゃったらブルース売れなくなっちゃったんじゃないの?とお思いかも知れませんが、南部ローカルなシーンではまだまだブルースの需要は多く、かつ、ルイジアナのブルースがオシャレでスローなロックンロールみたいだったから、若い奴らにも「いいじゃん、踊れるじゃん!」と密かにウケておった訳です。

そんなエクセロからは四天王と呼ばれるブルースマン達が輩出されました。

スリム・ハーポ、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、そして今日ご紹介するレイジー・レスターです。

つうかエクセロにからデビューしたブルースマン達って大体芸名で、そのネーミングが「シュッとしたハーモニカ野郎」「シュッとした稲妻野郎」「淋しい夕暮れ(もう意味不明)」「怠け者レスター」って、何かもう凄いんですが、コレはどうも本人達が好んで付けた訳ではなくて、オーナーのジェイ・ミラーさんが「ユーの名前はこれね」って、割と好き勝手テキトーに名乗らせたものだったとか。

しかしまぁ彼らの実にテキトーで、ユルユルどころかガバガバのネーミングが、そのルーズで程良く力の抜けたブルース・スタイルに実にピッタリなんですよねぇ。

レイジー・レスターは、1933年ルイジアナ州バトンルージュの生まれであります。

本名はレスリー・ジョンソンといって、ギターも弾くしハープも吹く、いわゆるマルチ・プレイヤーっぽい人で、作曲もします。

例によって昼間は働きながら、夜になると地元のクラブでいつか大人気になってやるぞとギターやハーモニカの腕を磨いていた時に、たまたまレコーディングに向かうためにバスに乗っていたライトニン・スリムに

「あ、アンタはあの有名なライトニン・スリムさんじゃないですか!」

と声をかけたところ

「あぁそうさ、オレがかの有名なライトニン・スリムだぜぇ。バリバリだぜぇ、ハンパないぜぇ」

と、ノリのいい返事が返ってきたので

「どこ行くんすか?ライヴっすか?オレも一緒に行っていいっすか?」

と、何かしつこく訊いたら

「あぁ?ライヴじゃないぜぇ、レコーディングだぜぇ、来たけりゃ来ればいいぜぇ〜」

と、ユルユルに許可されたので

「おぉぉ、すげぇや、オレ今からライトニン・スリムさんのレコーディングに行くんだ。帰ってきたら友達に自慢しよう」

と、ワクワクドキドキで同行したんですね。

ほいで、エクセロが用意したスタジオに行ったけど

「関係者以外お断りです」

なんてことにならないガバガバのセキュリティの中、勝手に友達みたいな顔をしてレコーディングを見学しようとしていたところ。

「ハープのヤツはどこ行ったんだぜぇ?」

「アイツまだ来ないねー、どこ行きやがったのよもー!」

「おいおいミラーのダンナぁ、オレのバリバリのブルースはハープねぇとダメなんだぜぇ」

「んなこと言っても来ねぇもんはしょうがないよー。スリム、ユー先に何曲かやってよ。ハープなしでも出来るのあんでしょ!」

「いんやぁ、今のオレの気分はハープなんだぜぇ」

つまりレコーディングに呼んでいたハープ吹きが遅刻したのかすっぽかしたのかスタジオに現れない。そんなことでモメております。まーこの時代、特に南部ではよくあることです。

ここでレスターは「この状況って、もしかしてオレが出るべきなんじゃね?」と、物凄くポジティブに解釈し

「あの〜、ハープが要るんすよね?自分、まぁちょっとハープ吹けるんすよ。いや、まープロの人に比べたらアレっすけど、いや、アレじゃないっす、自分、吹けるっす。吹くっす!」

と、何と憧れの人のレコーディングの場という状況の中で自分の売り込みを始めちゃった。

「えぇと、ユーはさっきから何かいるよね?いるけど見たことないね。スリム、このユーは誰?」

「知らないぜぇ、その辺のガキだぜぇ」

「ユー、本気で言ってる?ハーモニカ吹ける?」

「吹くっす」

「ヘタクソだったら承知しないけどマジで言ってる?」

「吹くっす!」

「風呂入る時とメイクラヴの時脱ぎ捨てるのは?」

「服っす!!」

「オッケー吹いちゃいな。ユー名前は?」

「レスリー・ジョンソンっす」

「じゃあ芸名はレイジー・レスターね。何か仕事もしないでプラプラしてそうな感じだから」


「うぃっす(えぇぇレスリーもジョンソンもかぶってないし!それに見た目?見た目仕事してないヤツに見えるのぉ?オレ結構ちゃんと仕事してるし怠け者じゃないけどなぁ!・・・まぁいいか)!やるっす!」


という訳で、何といきなり何のコネも実績もないままに、ライトニン・スリムのサポート・メンバーとして、レスターはレコード・デビューを果たしました。

この時の演奏はスリムにもミラーにも気に入られ、後にソロ・デビューも果たしつつ、その後もライトニン・スリムのレコーディングにはサポートとして参加も継続しております。




アイム・ア・ラヴァー・ノット・ア・ファイター コンプリート・エクセロ・シングルス 1956-1962 アンド・モア

1.I'M GONNA LEAVE YOU BABY
2.LESTER'S STOMP
3.GO AHEAD
4.THEY CALL ME LAZY
5.I TOLD MY LITTLE WOMAN
6.TELL ME PRETTY BABY
7.I'M A LOVER, NOT A FIGHTER
8.SUGAR COATED LOVE
9.I HEAR YOU KNOCKIN'
10.THROUGH THE GOODNESS OF MY HEART
11.I LOVE YOU I NEED YOU
12.LATE IN THE EVENING
13.A REAL COMBINATION FOR LOVE
14.BYE BYE BABY, GONNA CALL IT GONE
15.YOU GOT ME WHERE YOU WANT ME
16.PATROL BLUES
17.(I'm So Glad) MY BABY'S BACK HOME
18.WHOA NOW
19.IF YOU THINK I'VE LOST YOU
20.I'M SO TIRED
21.MY HOME IS A PRISON / SLIM HARPO
22.ROLE ON OLE MULE / TABBY THOMAS
23.NOTHING BUT THE DEVIL / LIGHTNIN' SLIM
24.GONNA STICK TO YOU BABY / LONESOME SUNDOWN
25.HOODO PARTY / TABBY THOMAS
26.ROOSTER BLUES / LIGHTNIN' SLIM


レイジー・レスターのエクセロ時代は1956年から62年。このアルバムにはその頃に残した全てのシングルと、後半に同じくエクセロ仲間のスリム・ハーポ、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、タビー・トーマスの6曲が収録してあります。

エクセロに残されたルイジアナ・バイユー・ブルースには、どれも独特のユルさと同時に、ロックンロールの時代にも対応した軽快なシャッフル・ビートのノリ、更にエコーやトレモロを活かしたモダンでトッポい味のあるトーンがあり、いかにも50年代の気のいい不良な雰囲気が最高なんですが、その中でもレスターのブルースは特にロッキンな魅力の強いものであります。

他のエクセロ・ブルースマン達よりちょいと若いレスターが好きでよく聴いていたのが、ジミー・リードやリトル・ウォルターなどのシカゴのロッキンなバンド・ブルースの人達で、あぁなるほど、ユルさの中のザラッとしたワイルドな感触は、ルイジアナ・ブルースとシカゴ・ブルースのいいとこ取りのようなカッコ良さと、それを見事にミックスする、この人独自のセンスが最初からすんごい光ってるなぁと納得。初期のローリング・ストーンズなんかは、どれだけこのサウンドに影響を受けたことだろうとか想像しながら聴くとまたこれがすこぶるハマるし実に楽しい。

レイジー・レスターさん、実は2018年の8月に亡くなっております。それも85歳の大往生で、亡くなる直前までデビューした頃と一切テンション変わらない、ユルくて暖かくて、実に”気のいい不良””な、素敵な素敵なブルースをずーーーっと続けてたんですねぇ。













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2019年07月03日

J.B.ルノアー 1951-1954 His JOB Recording

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J.B.Lenoir/1951-1954 His JOB Recordings
(JOB/Paula Records)


突然ですが皆さんに、とってもお得なというか、豊かになれる音楽の聴き方をお教えします。


まずですね、誰かお気に入りのアーティストがいるとします。

そしたら、その人のアルバムを次々とおっかけて行くのはもちろん最高なんですが、そこでちょいと寄り道して、その人が所属しているレーベルというのがあったら、ぜひそのレーベルの知らないアーティストの作品もツマミ食いしてみてください。


そしたらですね、何となくアナタが好きなアーティストのサウンドに近いものが見付って、何か得した気分になるということがあるんです。

しかし、この”レーベル聴き”の本当の醍醐味というものが実はありまして、それが実は

「自分が全然知らなかった、想像すらしてなかったようなキャラクターのアーティストに出会える」

ということなんです。


はい、ブルースのレーベルといえば、これは誰もが通る道でありますところのシカゴのチェス・レコード。

言うまでもなくアタシも、本格的に戦後のブルースも聴いてみようと思った時、マディ・ウォーターズとハウリン・ウルフぐらいしか知らなかったので、じゃあそのマディやウルフがいるチェスってレーベルの知らない人のを買っちゃえと思い、何となくジャケットの雰囲気が良さそうだったので買ったのが、J.B.ルノアーの『ナチュラル・マン』というアルバムでした。

聴いてみてびっくりしたのは、ドロッと粘り付くような濃厚なフィーリングがみなぎっているものの多いチェス・レーベルの中にあって、実にカラッとした味わいの、洗練された「都会」を感じさせるサウンドに、変声期の少年のようなハイ・ピッチなヴォーカル。

「へぇぇえ、こういうのもシカゴ・ブルースなんだ」

と、柔らかくも嬉しい衝撃を受けて、聴き入っていたものです。

大体ブルースを好きになってからは、衝撃がガツンとくるようなキョーレツなものに興奮して、そういうやつばかりを追いかけておりましたが、このJ.B.ルノアーという、名前も経歴も全然知らなかった謎のブルースマンの声には、それまでの「ブルースっていいな」が、90度ぐらい覆されたような気持ちになりました。

特にそのハイ・ピッチな声の魅力には、いつの間にやら完全に憑りつかれておったようで、特に何か心がどうしようもなく渇いてる感じがする時によく聴いています。ゴリ押しでなく、聴く人の心を自然と解放してくれるような声、うん、実に気持ち良く染みます。

J.B.ルノアーはいつの時代の人かというと、1923年生まれで、マディ・ウォーターズよりひと世代若い。つまりリトル・ウォルターやボ・ディドリー、チャック・ベリーとかと近い世代ですね。幼少時にブルースを覚え、青春時代にはR&Bの先例を受け、50年代から60年代にかけて新しいスタイルのブルースを切り開いて行った世代であります。

ルノアーはどうかと言いますと、これが割と早熟の天才であります。

アメリカ南部ミシシッピの、貧しい小作農一家に生まれ、貧しいながらも家族全員音楽好きでお父さんも他の兄弟達もギターを演奏してブルースに親しんでいた環境で育ち、十代になる頃にはやっぱりギター片手にアメリカ南部を歌い歩いております。

そうこうしているうちにニューオーリンズに辿り着き、そこでサニーボーイ・ウィリアムスンやエルモア・ジェイムスなどとギグをこなし、いよいよミュージシャンとして成功したいと強く願うようになり、ついには1949年、親戚のつてを頼って大都会シカゴへ出て行くのですが、ここで出会ったのが、当時シカゴの顔役として、自身も人気ミュージシャンでありながら、南部から出て来る若手ミュージシャン達に仕事を紹介したり生活の面倒を見ていたボスマン、ビッグ・ビル・ブルーンジィ



(マディとビッグ・ビルの泣けるお話はコチラに書いてあるぞ)


「お〜う、キミはいい声をしてるね。うん、ギターもなかなか俺好みの流麗なスタイルだ。どうだいコイツらとちょっと共演してみないかい?」

と、ビッグ・ビルに紹介された”こいつら”というのが、何とメンフィス・ミニーにビッグ・メイシオ、そして一足先にシカゴに出て来たマディ・ウォーターズという凄い面々。

彼らとのセッションは見事成功し、特にマディ・ウォーターズとは、歳は10歳ぐらい離れているけど、共に最近シカゴに来た者同士で気が合ってちょくちょくクラブで共演していたそうです。


「ミシシッピからやってきた、無名の個性派シンガー」

は、あっという間に話題になり、シカゴで一発当てたい小規模レコード会社がこぞって彼のレコーディングをしたがりました。

紆余曲折あって、最初に彼の音源を公式にレコーディングしてリリースしたのが、JOBというレーベル。後にチェス、VeeJayというシカゴ・ブルースを代表するレーベルに録音を残し、60年代はヨーロッパでも人気を博したルノアーですが、今日はシンプルな編成で、彼の味わい深い声の魅力がたっぷり味わえるJOB盤をご紹介いたしましょう。




1951-1954 His J.O.B. Recordings

【収録曲】
1.Let's Roll(Take2)
2.People Are Meddling (In Our Affairs)
3.I Have Married
4.I'll Die Tryin'
5.The Mountain
6.How Much More
7.Let's Roll (Take1)
8.The Mojo (Take1)
9.Slow Down Woman (Take1)
10.I Want My Baby (Take1)
11.How Can I Leave
12.Play A Little While
13.Louise
14.The Mojo (Take4)
15.Slow Down Woman (Take2)
16.I Want My Baby (Take2)
17.When I Was Young
18.Bassology
19.Worried About My Baby
20.Livin' In The White House
21.Please Don't



ゼブラ柄のタキシードでビシッとキメて、ウキウキするようなロッキンなブルースでクラブを沸かせていたJ.B.ルノアー。その飄々としたキャラクターとは裏腹に、歌詞は社会批判や時事ネタにまで突っ込んだ、なかなかに知性溢れるもので、それを少年のような甲高い声で歌うものですから、もうどれだけ個性的で、当時群を抜いた存在感を放っていたか、想像するだけでクラクラします。


さてさてJOBでの基本編成は、ルノアーの声とギター、そしてピアノにベースというトリオであり、後半のセッションではサックスなども加わって、程良く賑やか(この”程良く”ってのがいいんですよ)。

楽曲そのものは、流石に1940年代から50年代前半のスタイル、つまり、戦後50年代半ば以降の、間合いと粘りと爆発みたいなああいうノリではなくて、ピアノやギターのバッキングが綺麗に整った「4」を刻んでいるような、ある意味平坦なリズムが演奏の基軸であります。

が、リズムを切り裂くルノアーのハイトーン、そして前半で大暴れする、鍵盤をガラゴロ言わせながら強烈な音塊を叩き込んでくるサニーランド・スリムのピアノ、これがまぁ最高で、ユルい雰囲気の中で炸裂する狂気みたいなものをビシバシとスピーカーから飛ばしてくれます。

そして後半はJ.T.ブラウンというサックス奏者が加わり、グッとオシャレなニューオーリンズR&Bみたいなノリになっておりますね。ここでバッキングはスムースに粋に、そしてソロではガツンと決めるJ.T.ブラウンのサックス、コレが前半のサニーランド・スリムとはまた違った、攻守織り交ぜた個性で良いのです。うん、良い良い♪

ルノアーは68年に不幸にも交通事故で亡くなってしまいました。世代的にはR&Bでありながら上質な「ブルース」を歌う事に生涯を懸けたような硬派な人で、表現の幅は年代毎に豊かに拡がっており、弾き語りからバンドスタイルまで色んなブルースを聴かせてくれますが、やっぱりブルースのコアな衝動がギッシリ詰まった原点であるところのJOB盤と、チェスの『ナチュラル・マン』の味わいは薄れません。


















"J.B.ルノアー関連記事”


”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2019年06月27日

ライトニン・ホプキンス Blues in My Bottle

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Lightnin' Hopkins/Blues In My Bottle
(Bluesville/OBC)


お酒を全く飲めないくせに、いきなり酒の話をしますけれどもね。「お酒はぬるめの燗がいい、肴はあぶったイカでいい」なんて歌がありますように、お酒が好きな人ってのは、酒の味そのものを楽しむために、ツマミはするめとか塩辛とか、そういうちょっとしたものだけがいいんだって言う人がおりますね。

それであの〜、テキーラってあるじゃないですか。そうそう、メキシコのすこぶる強い酒らしいんですが、すこぶる強いくせに「ライムをかじった口の中がすっぱいうちにショットグラスっていう小さいグラスに入ったテキーラを一気に飲み干す」という、なかなかに頭のおかしい豪快な飲み方というのがあって、若い人なんかは大好きらしいのですが、とある酒好きの人は「やっぱりネ、テキーラってなぁ美味しいお酒なんだから、あんな一気飲みみてぇな飲み方じゃあ馬鹿みたいに酔っぱらっちまうだけでちっとも美味しく味わえねぇ。こうやって飲むのが一番なんだよなぁ」と、コップに入ったストレートのテキーラを、静かに塩だけを舐めながら、チビチビとやっておりました。

飲めないアタシには、テキーラの正しい飲み方なんてのはさっぱり分かりませんが、ハタから見ていると、はしゃぎながらショットでガンガン飲んで、後で苦しそうにしてるのより、自分のペースで美味しそうに味わいながら飲んで悪酔いもしないって人の方が、まぁ何か間違いなくいい思いをしてそうだなぁとは思います。

んで、こういう「ツマミは塩だけ」みたいな話になると、どうしても連想する音楽というのがあって、それはつまりアコースティック・ギター1本だけをバックに、じっくりじんわりと歌われているブルースだったりします。

大体ブルースマンなんて人達も人生ぶっ壊してしまうぐらいの酒飲みが多いし、酒の楽しさとかヤバさとかを歌ったブルースもいっぱいある。だからアタシなんかは飲めなくてもブルースを聴くだけで、凄く美味しい酒を、それこそ塩かあぶったイカ程度のツマミをやりながらじっくり味わった気になってしまうんですが、皆さんはどんなもんでしょうかね?

で、ライトニン・ホプキンス。


資料によりますとライトニンって人は、レコーディング・スタジオでは常に自分のすぐ横に、バーボンのボトルとグラスを用意させて、ギターを弾く前にまず飲んでたんだと。あー、弾くかな〜と思ってたらそのまんま「おゥ、いいねぇ、じゃあもう一杯」と酒飲んで、いい感じにデヘデヘになってリラックスした状態で「じゃあやるか、デヘヘ」と歌い始めるのが多かったんだと。

残された色んな写真見てても、とりあえず携帯用のアルミのボトルを持ってますわね、まーこれは相当なもんでございます。

ライトニンという人は人気者だけあって、生涯物凄い数のアルバムを色んなレーベルから節操のカケラもなくめちゃくちゃ精力的にリリースしてた人なんですが、どれも濃厚な、度数の強いアルコール臭がいたします。

で「ツマミは塩だけ!」のような、極めてツウ好みの辛口な味わいに満ち溢れておりますのが、1960年代にリリースした、有名なジャズ・レーベルのPrestigeの子会社『Bluesvill』から出されたアコースティックな作品群。


60年代のフォーク・ブルース・リヴァイバルの人気に乗じて、Prestigeがライトニンに


「レコーデイングのギャラ(印税とは言ってない)はもちろん出すよ、そんでスタジオでは全ての酒が飲み放題だ。どんな銘柄でもアンタの好きなボトル置いとくし、それを好きなだけ飲んでいいからさぁ」

とか何とか言ってライトニンをその気にさせて結構な数のレコーディングを残したんです。

や、ミュージシャンに日銭”だけ”を渡してレコーディングしまくるPrestigeも相当なヤクザなのですが、多分ライトニンの方も

「おゥ旦那ァ、ニューヨークってとこはバクチのレートが高すぎてどうもいけねぇ。つまりカネがなくなった。レコーディングするからカネくれや」

とばかりにPrestigeオフィスに押しかけてきてたであろう事は想像に難しくありません。


とまぁそんなヤクザonヤクザでありますから、Prestigeのライトニンのアルバムはどれもおしなべて、以下の「ライトニン・ホプキンスらしさ17箇条」のうちの実にほとんどをしっかりと遵守した、素晴らしく自然体なブルースがそのまんま収録されておるのであります。



≪ライトニン・ホプキンスらしさ17箇条≫

1.気負いがない

2.無理しない

3.でも無茶はする(特にエレキ持った時に歪み過ぎてたり変なエコーかかってたり)

4.どの曲もブギかスローかの2パターンだけで、それぞれのパターンはほぼ一緒

5.明らかに酔っぱらっている

6.故にスタジオ盤だろうが何だろうが関係なく、曲中に喋る

7.MCの途中”デッヘッヘ”という笑い声が入る

8.曲中でもよく”デッヘッヘ”と笑う

9.(歌詞読んでも)何が可笑しいのか不明の場合が多い

10.ライヴだろうがスタジオだろうが”オレんち”であるかのようにくつろぎまくる

11.チューニングが微妙にズレている(大抵の場合半音高い)

12.アコギとかエレキとかどうでも良い、思い切った弾きっぷり

13.変に自己主張する共演者がいない

14.いたとしても”ココで一番偉いのはワシなんじゃ、ワレはすっこんどれ”と言わんばかりのマイペースぶりで押さえ込む

15.明らかに”今思いついただろそれ!”って曲がある

16.でもブギかスローかの”どっちかのパターン”でしかないので大した問題ではない

16.全体的に”テキトー”である

17.だがテキトーな時ほどノッている







Blues in My Bottle

【収録曲】
1.Buddy Brown's Blues
2.Wine Spodee-O-Dee
3.Sail On, Little Girl, Sail On
4.DC-7
5.Death Bells
6.Goin' To Dallas To See My Pony Run
7.Jailhouse Blues
8.Blues In The Bottle
9.Beans, Beans, Beans
10.Catfish Blues
11.My Grandpa Is Old Too!



で、本盤『Blues In My Bottle』ですが、これはもう全編アコギで収録曲のほとんどがスローブルースという訳で、ライトニンのアルバムの中では地味な部類に入りますが、ジワジワと腹にくるスロー・ブルースとカラカラと乾いた音で鳴る生ギターの迫力がとことん辛口で、これぞ正に「テキーラに塩!」な、味わい濃厚盤。

ジャケットも内容をドンピシャで現すモノトーンのシンプル・イズ・ベストなものでありますね。シンプルなだけに何度眺めても飽きが来ません。

所謂名盤のジャケットのように強烈なインパクトがあるような類のものではありませんが、「何かあるぞ〜」という臭いをプンプン放つストーリー性抜群のドキュメントタッチが素晴らしい。実にハードボイルドな一枚なのです。

タイトルがまたイイですね『ブルースぁ俺のボトルん中に入ってる』。骨の髄まで酒とブルースが染み込んだ男にしか吐けない台詞なんですが、中身はもちろんタイトルを凌駕しております。











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