2017年05月21日

バディ・ガイ フィールズ・ライク・レイン

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バディ・ガイ/フィールズ・ライク・レイン
(ソニー・ミュージック)

今やブルース界の長老として、後輩ブルースマンやロック・ギタリスト達からの絶大なるリスペクトを集めているバディ・ガイ。

元々が直情型のフレージングと、ピックを使ったアタックの強い、つまり「小手先のテクニックよりもエモーションばこーん!」なタイプでありますので、バディの場合はロック側からの人気は非常に高かったんです。

で、年代的にもストーンズの連中とかジェフ・ベックとかクラプトンとかとは、大体10ぐらいしかトシが離れておりませんので「尊敬する大先輩」というよりは「頼れるアニキ」って感じだったんでしょう。特に最近のライヴ映像なんかを観ると、ラフな格好で「やぁやぁどうもどうも」みたいな笑顔で出てきて、凄まじい弾き倒しを疲労してくれるバディを後輩達が「どうだ、アニキは凄いだろう」と、笑顔でプレゼンツしているみたいな、そんな気さくさ、フレンドリーさ、あと、インタビューなんかでの滲み出る人柄の良さに、アタシは何だか「あぁ、ブルースってとってもいいな」と思ってしまうのです。

そんな感慨は、特にバディが長い不遇の時代を経てカムバックした90年代以降のアルバムを聴いて湧いてきます。

ファンの皆さんには、シルヴァートーンからの復帰第一作「アイ・ガット・ザ・ブルース」が、名作として人気がありますが、その翌年にリリースされた2作目の「フィールズ・ライク・レイン」もなかなかいい。というよりも、ジョン・メイオール、ポール・ロジャース、ボニー・レイット、イアン・マクレガンなど、彼をアニキとしたう豪華なゲストに囲まれて、豊かに幅の広がった曲風の中で、和気藹々をやりつつも直情に火が点いたら猛烈に暴れまくる快演が聴ける、これもまた名盤でございます。

元より、ブルースマンとしては若い世代(シカゴ・ブルース第二世代とか言われておりまする)のバディは、デビュー当時からR&Bの影響を強く受けたミクスチャーなブルースをやっておりました。

この”元からあった音楽性の広さ”が、90年代には本人の感情コントロールの見事さも相俟って、実に良い塩梅で花開いておるんですね。特にロックサイドには、デカい影響を与えた側の当人が、ニコニコしながら強烈なギター・プレイをひっさげて迫ってきている感アリで、単純に「丸くなった」「落ち着いた」では済まされない凄みもあったりするんです。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.シーズ・ア・スーパースター
2.アイ・ゴー・クレイジー
3.フィールズ・ライク・レイン
4.シーズ・ナインティーン・イヤーズ・オールド
5.サム・カインド・オブ・ワンダフル
6.サファリン・マインド
7.チェンジ・イン・ザ・ウェザー
8.アイ・クッド・クライ
9.マリー・アン
10.トラブル・マン
11.カントリー・マン


アルバム全体の空気として「伸び伸びやって、キリッと締めてる感じ」がとても心ニクいんです♪

正統派モダン・ブルースの「シーズ・ア・スーパースター」「アイ・ゴー・クレイジー」で、まずはテンション高めの弾き倒しで健在ぶりを最高にアピールして、看板曲であります3曲目「フィールズ・ライク・ア・レイン」です。

この曲はそれまでとガラッと変わってバラード、しかもかなりキャッチーなソウル・バラードみたいな感じで、バディの声も抑揚が美しく、つい聴き惚れてしまいます。更にバックでコーラスとスライドギターの何とも優しいソロを弾いているボニー・レイットのプレイが光っております。

原曲は1988年にリリースされたシンガー・ソングライター、ジョン・ハイアットのポップス曲なんですが、コレは曲も素晴らしいですが、歌詞もいいんですよね。人生の辛酸や苦難は直接表現されていないけれども、美しい情景の中でしみじみと迫るものがある男と女の純愛を、バディが切々と、語りかけるように歌う素晴らしいバラード。

中盤から後半は、掛け合いも楽しい「サム・カインド・オブ・ワンダフル」(with.ポール・ロジャース)「チェンジ・イン・ザ・ウェザー」(with.トラヴィス・トリット)、転がるマンボ・ビートの上でギターがキュインキュイン鳴り響くイントロから、B.B.キングばりの変拍子で更にチョーキングを炸裂させる「マリー・アン」バディが敬愛するギター・スリムの、原曲にほぼ忠実な渋いカヴァーがあり、ラストは「トラブル・マン」「カントリー・マン」と、往年のキレもやっぱり衰えていない必殺のスロー・ブルースでシメ。

非常に聴き易いし、楽しい展開とグッと渋い展開の分かり易さで退屈させません。

改めて90年代のバディを聴いてると「何かブルース聴きたいな〜」というブルース初心者の方のピュアな欲求に優しく応えてくれるのはこの辺じゃないかなぁと思えてきました。とにかく最近のバディすごく良いよ。


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2017年05月17日

タジ・マハール Taji Mahal

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タジ・マハール/Taji Mahal
(ソニー・ミュージック)


さて「ブルース」といえば、今やポピュラー・ミュージックの中のひとつでありますが、一方でアフリカン・アメリカンが小さな頃から周囲の演奏を見聞きして覚え、それが自然と身に付いてゆく、或いはそれが自然と身に付く環境で生まれるものであります。

のっけからちょっと専門的な物言いですいません。えぇと、何が言いたいのかと言うと、ブルースって音楽は、ポピュラー音楽でありながら、人種のるつぼである比較的若い国アメリカに住む、アフリカ系の人々の民俗音楽みたいな側面もあるんじゃないか。ということであります。

例えばマディ・ウォーターズやB.B.キングら大御所のインタビューとかではよく

「ちっちゃい頃から綿花畑で働いてたんだ、作業をしながらみんなで唄ってたアレがブルースだったんだなァ」

とかそういう話をします。

つまりアメリカ南部で生まれ育ち、物心付いた頃には周囲の生活の中でブルースが溢れ、それを聴いてくうちに覚えてブルースが歌えたり演奏したり出来るようになったんだ。と。

1950年代ぐらいまでシーンで名を馳せたブルースマン達のほとんどは、そういったコミュニティで生まれ育ち、大人になるとシカゴやデトロイト、或いは西海岸などに移住してその地でブルースの新しいスタイルを切り拓いていきました。

で、今度はブルースが上ってきた都市部で生まれ育った世代のブルースマンになると、上の世代から教わったブルースのダイレクトな影響に、リアルタイムで流れていたヒットチャートのR&Bが加わったり、60年代になるとソウルやロックなど、コミュニティの外にあるメディアからの音楽が、黒人青少年達にどんどん影響を与えるようになるのです。

本日ご紹介するのはタジ・マハールであります。

タジは、ブルースを演りながらもその出自はいわゆるブルース・コミュニィの外にありました。

お父さんがジャズ・ピアニストでお母さんは学校で先生をしながら教会でゴスペルを唄っていた音楽一家に生まれますが、家庭は比較的裕福で、タジも学校成績がよく、何と地元マサチューセッツの大学に進学して1964年に卒業するまで獣医師の勉強をしておりました。

いわゆる「ガキの頃からブルースまみれで」といったタイプではなく、ここまではいわゆるフツーの「都会の大学生」だったんですね。

大学を卒業したタジが「とりあえずプラプラするため」に目指したのは、西海岸の大都市ロサンゼルスであります。

ここは各地からインテリ達が集まって、政治や文化芸術に関する熱いディスカッションで熱気を帯びていた街。或いは単純に”面白いこと”を求めて集まってくる、一風変わった若者達もたくさんおりました。

インテリであり一風変わった若者であったタジは、ここで似たような仲間と出会うのですが、その中の一人にライ・クーダーがおり、意気投合した二人はバンドを組みます。

元々両親の影響で、ジャズやブルースやゴスペル”も”聴いてたタジと、当時の典型的な音楽好きの白人、つまりブルースやR&Bに異様な関心を持っていたライの二人は、互いにセッションや音楽についての会話をしながら、互いの腕を磨き才能をグイグイ引き出し合っていきます。

二人が目指したのは「ブルースを思いっきり土台にした、全く新しい感覚のロック」であり、その目指すところは一定の支持を集めて二人のバンドはメジャー・レーベルと契約しましたが、せっかくレコーディングしたアルバムが何故か日の目を見ることなくバンドは解散。それぞれがソロとしての活動へと足を踏み出すことになります。

それからの二人は言うまでもなく、ライ・クーダーの方はアメリカを代表するスライド・ギターの名手として、今やロックファンでは知らぬ者はいないぐらいのビッグネームになります。

一方タジの方は、ソロ・デビューしばらく後はブルースロックをやっておりましたが、徐々に自らのルーツの探求へとのめり込み、アコースティック・ギターによるカントリー・ブルースの素晴らしさを世に広めるとともに、カリプソ(タジの父親はジャマイカ出身でありました)ハワイアンなども幅広く手掛け、今は「すげぇ渋いアコースティック・ブルースとワールドおじさん」として知られ、更に90年代以降デビューした若手ブルースマンのバックアップにも精力的であります。

アタシがタジのことを知ったのも、弾き語りカントリー・ブルースのビデオでの解説者としてです。

そのビデオの中で

「ブルースというのはこういう歴史があるんだ」

「次は誰々なんだけど、彼のスタイルはこういった感じで・・・(と、おもむろに持っているアコギを爪弾く)」

といった彼の優しく丁寧な解説は、アタシにとってもブルースの素晴らしい玄関口でありました。




(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.リーヴィング・トランク
2.ステイツボロ・ブルース
3.チェッキン・アップ・オン・マイ・ベイビー
4.エヴリバディズ・ゴット・トゥ・チェンジ・サムタイム
5.E.Z.ライダー
6.ダスト・マイ・ブルーム
7.ダイヴィング・ダック・ブルース
8.セレブレイテッド・ウォーキン・ブルース

さて、アルバムの解説に移りましょう。

タジのソロ・デビュー作は1968年のリリースであり、ラッキーなことにデビューの年にローリング・ストーンズが主催するイベント「ロックンロール・サーカス」に招かれ、好評を博してタジの名と、彼がその頃やっていた”アメリカ産の新しいブルースロック”は、イギリスのブルースファン(めちゃくちゃ気合い入ってた)やミュージシャン達に喝采と共に迎え入れられ、タジの方がストーンズやエリック・クラプトン、それからサザン・ロックの雄、オールマン・ブラザーズに与えた影響が実はものすごくデカいんじゃないかと言われております。

はい、このファースト・アルバムを聴けば、彼が如何にその後のアメリカ、イギリス双方のロックに刺激を与えていたかがとてもリアルに体感できるのでありますよ。

スリーピー・ジョン・エスティスやブラインド・ウィリー・マクテル、ロバート・ジョンソンなど、戦前に大きな足跡を残したブルースマン達の楽曲を大胆にロック・アレンジのバンド・サウンドでガツーンと演奏しているんですが、コレが実にけれん味がなくて、すごく真摯な感じに演奏されております。

タジはギタリストとしても優れた腕の持ち主ですが、ここではリードギターのほとんどを、ジェシ・エド・デイヴィスに任せ、サイドギターを実はしれっと「RYLAND P.COODER」という名前(多分本名?)で参加しているライ・クーダーとビル・ボートマンに任せ、自分は実に渋いヴォーカルとブルースハープに洗練しています。

1曲目からいい味出しているタジのハープ、すごく味わい深くてコレだけでグッとディープなブルース感が出ているんですけど、演奏の中心になっているのはジェシ・エド・デイヴィスのリードギター。

チョーキング炸裂のスクィーズ・ギターもスライドも、厚みのある豊かなトーンでグイグイ攻めるように弾いております。ここでの彼のプレイは「ブルース弾くロックの人のベスト」と言っていいでしょうね。うん、言っちゃう♪

アルバム全体が活力のあるへヴィ・ボトムなブルースロックの教科書みたいな、素晴らしい作りであり、コレ聴いて夢中でコピーした同年代のロッカーはいっぱいいただろうなと思います。

例えば「スティツボロ・ブルース」は後のオールマン・ブラザーズの人気曲ですが、そのアレンジの原型をここに見ますし(ジェシのスライドもギュインギュイン唸ってますよー)、「E.Z.ライダー」「ダイヴィング・ダック・ブルース」は、ジョニー・ウィンターがそれぞれこのアルバムのアレンジをモロお手本にした演奏を残してます。



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2017年05月14日

ケブ・モ ジャスト・ライク・ユー

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ケブ・モ/ジャスト・ライク・ユー
(ソニー・ミュージック)

ギターにすっかり夢中になっていた高校時代、友達の家で観てすっかりハマッた映画がありました。

皆さん「クロスロード」という映画、ご存知ですかね?



ギター少年が、ふとしたことがきっかけで、かつてロバート・ジョンソンと一緒に演奏したこともあるブルースマン”ウィリー・ブラウン”と出会い「ロバート・ジョンソンの幻の曲を探しに行く」ほいでもってクライマックスではロバート・ジョンソンが魂を売ったという”悪魔(フツーに金持ちそうな黒人の男性)”と、その手下である超絶技巧のギタリストと勝負とかもしたり、もう夢や希望に満ち溢れている面白い映画です。

”ウィリー・ブラウン”の役が、ホンモノのブルースマンであるところのフランク・フロストだったり、悪魔の手下の超絶ギタリストが、当時ギター小僧の憧れのスティーヴ・ヴァイだったりと、そういう見所なんかもいっぱいあって、これは今でも楽しめるし、安くで売ってますんでぜひDVDを買ってください。

で「クロスロード」もう夢中で観てたんですが、アタシが一番心惹かれたシーンはクライマックスのギターバトルじゃなくて、オープニングのコレ↓



「すげーなこの役者さん、ロバート・ジョンソンそっくりだ。つうかアテレコだとは思うんだけどね、この演奏は誰がやってんだろう」

と、そこから数年、アタシにとってはそれこそ幻のロバート・ジョンソンを探すような気持ちで、このオープニング映像の”主”を探していたもんですが、長年に渡るリサーチの末に(してない)この人がケブ・モという、最近(当時1994年)デビューしたブルースマンで、何とあの映像は本人自身の唄とギターによるものなのだという衝撃の事実にブチ当たりました。

90年代初頭までは「ブルースの若手」といえば、シカゴ・ブルースとかB.B.キング系のモダン・ブルースに影響を受けた、要するに「チョーキングぎゅいーん系」の人たちがほとんどだったんですが、90年代半ばぐらいからロバート・ジョンソン・ブーム、そしてMTVアンプラグド・ブームが後押しして、戦前のカントリー・ブルースや、南部のダウンホーム・ブルースをスタイルとして取り込んだ、アコースティックなブルースマン達が”新人”として次々デビューしてきたんですね。

で、ケブ・モは、その先陣を切ってシーンに躍り出た、アコースティックな表現を基本にしているブルースマンでした。

1994年にリリースされたファースト・アルバム「ケブ・モ」は、彼が恐らく最も影響を受けたであろうロバート・ジョンソンや、その他の戦前ブルースのエッセンスを、単なる懐古趣味で終わらせない現代的なシャープさや、アコギを中心にクールなアレンジが施されたハイ・センスな演奏で見事現代に蘇らせた名盤です。

”若手”といっても1951年生まれのケブ・モは、94年の段階で既に分別盛りの40代であり、最初スティール・ギター奏者として細々と活動を続けながら、30歳を過ぎて本格的に音楽で食っていくことを考えて、ブルースの世界へ飛び込んだ人です。

その才能を見出したのは、西海岸を拠点にするアメリカを代表するサイケ・バンド”ジェファーソン・エアプレイン”のヴァイオリン奏者、パパ・ジョン・クリーチであったと言われており、そのジェファーソン・エアプレインというバンドの人達は、バンド名を戦前テキサスブルースの巨人ブラインド・レモン・ジェファソンから取っている事から分かるように、全員が気合いの入ったブルースマニアであります。

「だから何?」と言われるとちと困りますが、つまりケブ・モはそういう気合いの入ったブルースフマニアの耳をして

「おみゃーはホンモノだで、人のバックでやるより自分でギター弾いて唄った方がええがや」

と、言わしめるぐらいの実力とフィーリングの持ち主であったんですね。

果たして43歳で遅咲きのデビューを果たしたケブ・モには、単なる戦前ブルースのコピー野郎で終わらない、幅広くそして深い音楽の蓄積があり、デビュー・アルバム「ケブ・モ」は、アコースティックなサウンドを基調に、カントリー・ブルース、モダン・ブルース、ブルース・ロック、ソウル、R&Bなどのあらゆるルーツ・ミュージックを無理なく無駄なく取り込み、成熟された味わいで多くのファンを魅了しました。ブルースのアルバムとしては異例のスマッシュ・ヒットにもなりまして、

「このケブ・モって人は素晴らしい、ブルースの枠に留めずに、現代の打ち込みやサンプリングに頼らないピュアなR&Bのアーティストとして評価されるべきだ」

という声があちこちで沸き上がり、その2年後にリリースされたセカンド・アルバム「ジャスト・ライク・ユー」は、果たしてそういった内外の声に応えるかのような、ナチュラルなブラック・ミュージックの集大成的な仕上がりとなっております。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.ザッツ・ノット・ラヴ
2.パーペチュアル・ブルース・マシーン
3.モア・ザン・ワン・ウェイ・ホーム
4.アイム・オン・ユア・サイド
5.ジャスト・ライク・ユー
6.ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ
7.デンジャラス・ムード
8.ジ・アクション
9.ハンド・イット・オーヴァー
10.スタンディン・アット・ザ・ステーション
11.ママ, ホエアーズ・マイ・ダディ
12.最後の勝負も勝ち目なし
13.ララバイ・ベイビー・ブルース
14.テイク・イット・アウェイ


実は、アタシが個人的に最初に手にしたケブ・モのアルバムがコレでして、本当に思い入れのある一枚なんです。

最初はやっぱり「クロスロード」のイメージで、こらもうロバート・ジョンソンばりの、渋い渋いアコースティック弾き語りだとしか思ってなくて、もちろんアコースティック・ギターは弾きますし2曲目「パーペチュアル・ブルース・マシーン」とか6曲目の「ユー・キャン・ラヴ・ユアセルフ」のように、モロ戦前の空気を纏ったカントリー・ブルースもありましたが、実際にメインになっているのは、彼自身の野太く震動力(っていうのかしらん)に溢れた声を全面にして、ギターは乾いたバンド・サウンドの中で、あくまでそっと声に寄り添うように弾かれているナンバーでした。

そのフィーリングは表面的な戦前ブルース、カントリー・ブルースをなぞってなくて、もっともっと深い、奥底に染み付いている部分から、例えばサザン・ソウルやカントリーなんかを通して、まだ見ぬアメリカ南部の、どこまでも”生”な空気をスピーカーから放っているようで、色々と細かいことをごちゃごちゃ頭で考えていたアタシの期待を、良い意味でスカーンと飛ばしてくれたのです。

で、ロバート・ジョンソン好きな方は「最後の勝負も勝ち目なし」がしれっとアルバム後半に収録されているのお気付きだと思いますが、コレもアレンジは全く違っています。でもこの”違い”が、嬉しくなるアレンジなんです。ロバート・ジョンソンと同じくアコギでスライドやってますが、何というか胸にジーンとくるんですよ、ミシシッピ川の河口が見えてきよるんです。




”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”

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2017年05月04日

スティーヴィー・レイ・ヴォーン ライヴ・アライヴ

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スティーヴィー・レイ・ヴォーン/ライヴ・アライヴ
(ソニー・ミュージック)

さて、中学の頃に「アトランティック・ブルース・ギター」というオムニバスを購入して、アタマが悪いなりにブルースについてはいっぱしに分かった気になっておったアタシ。

大好きだったのは、やはり前半に収録されていた弾き語り系のディープなブルースマン達の音源だったんですが、高校に入ってエレキギターというものを買って自分でいじくるようになってまいりますと、この耳が若干変わってきます。

エレキギターというものには、独特の快楽がありますね。

それまでイトコの兄ちゃんから貰ったアコギでじゃんじゃかやっているうちは分からなかったんですが、あの、単音で「キュイーン」とやる、そうそれです、チョーキング。コレが実に気持ちのいいもんだと、実際にエレキギター(グレコのレスポールカスタム黒)を買って、アンプに突っ込んで弾いてみて初めて分かった。

もちろんその頃は超の付く初心者で、ソロなんかとても弾けたもんじゃあございません。なので見よう見まねのハッタリで「キュイーン、キュイーン」とだけやっておりました。

その時にふと思ったんですよ。

「これはもしかしてブルースいけるんじゃ?」

そこで・・・そん時はパンクやメタルに夢中になっておったんですが「そういや家にあったぜぇブルースのCD♪」と、思い出して「アトランティック・ブルース・ギター」を聴いてみたんです。

で、とりあえずB.B.キングとか、名前は知ってるけど、最初に聴いた時は良いとも悪いともピンとこなかったモダン・ブルースマンの人達の演奏をじっくり聴いてみることにしました。

そしたらそれまで全く意識してなかったレジェンド達の”泣きのギター”がグッときて

・・・・とはなりませんでした。

まぁその、高校生とはいえ、まだまだアタシはアタマの悪い十代であることに変わりはなかったんです。まだまだ激しさだったり速さだったり、そういう刺激の強い音楽が最高だと、どこかで思っておったんでしょう。B.B.もT・ボーンも「何か渋いな」とは思っても、そのギター・テクニックを手前のモノにしようなんてまだまだ思えず、というか「こういう風に弾けたらカッコイイとは思うんだけど、はて、何をどうすればいいのかよく分からない」というのが正直なところ。てれ〜っと適当に流しながらしばらく途方に暮れていたんです。

が、トラックが進んでいよいよコレが最後という20曲目、ここに収録されていたスティーヴィー・レイ・ヴォーンの「テキサス・フラッド」のライヴ・テイク。

コレが、最初に感動した「モダン・ブルースのギター・プレイ」でありました。

何がどうとか言われると、未だに返答に困ってしまいますが、ライヴ録音というリアリティ溢れる録音環境とか、その中でほとんどソロん時はアドリブでガンガンに盛り上がってゆく熱を帯びた演奏、そして何よりダイレクトにガツーンとクる、ギターの音そのものの強さ、そんなものに一気に「うわー!凄い、こんなにカッコ良かったんだ!!!」と、コロッと。もうコロッといってしまいました。

で、この演奏が入ってるスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴ・アルバムが欲しくて、親父に訊いたら

「おー、レイ・ヴォーンだったらライヴは確か1枚だけ出しとるなー」

と、探して取り寄せてくれたのがコチラ。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.セイ・ホワット
2.エイント・ゴナ・ギヴ・アップ・オン・ラヴ
3.プライド・アンド・ジョイ
4.メアリー・ハド・ア・リトル・ラム
5.迷信
6.アイム・リーヴィング・ユー
7.コールド・ショット
8.ウィリー・ザ・ウィンプ
9.ルック・アット・リトル・シスター
10.テキサス・フラッド
11.ヴードゥー・チャイル
12.ラヴ・ストラック・ベイビー
13.チェンジ・イット


はい、今でこそスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴ音源は色々出揃って、動画もたくさん観ることが出来るようになりましたが、生前に彼が残した唯一のライヴ・アルバムといえばもうコレ。

中身は85年7月16日のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルと、86年7月17日/18日のテキサス州オースティンのオペラ・ハウスに7月19日の同じくダラスのスターフェストでの演奏を収録したものであります。

レイ・ヴォーンって人は、とにかく現場での盛り上がりを大事にする人で、自身もノッてくるとギターソロなんかアドリブでガンガンぶっ飛ばす人なんです。

だからライヴでは、スタジオアルバム収録の曲は必然的に長くなりますので、このアルバムも収録時間長いです(LPの頃は2枚組だった!)。

「スティーヴィー・レイ・ヴォーンのライヴはアレ、アドリブでソロ弾いとるからね」

この親父の一言が、アタマの悪い高校生だったアタシの興奮に火を点けて、もう夢中にさせてくれました。

だってほれ、ロックの曲つったらイントロがあってー、歌があってー、決められたギターソロがあってー、歌があってー、エンディングでー、と、流れ完全に決まってるもんだーってアタシ思ってましたから。

それがアドリブで、その場でひらめいたフレーズ弾いてるってんだから、もうギター弾き出しのぺーぺーの小僧には、あぁ、これはスティーヴィー・レイ・ヴォーンって人は神か天才か何かだ、って思いますよね。

で、1曲目はインストだし、2曲目のスロー・ブルースも、歌までに長めのソロがあるから「こ、これがアドリブかー!」と大興奮して、ちょいと話は飛びますが、翌月にレイ・ヴォーンのデビュー・アルバム「テキサス・フラッド〜ブルースの洪水」を買って収録曲を聴き比べてみたら本当にソロも曲の長さも違って

「お、お、おー、すげー!」

と。

もうアホですねぇ・・・

でも、そんなパンクとメタルと歌謡曲しか知らないような、1年生なギター小僧にとって、レイ・ヴォーンは初めての「ギターヒーロー」として、ギターのカッコ良さ、その基本と究極を、本当にたくさん教えてくれました。

実はこのライヴ、オーバーダビングの部分が多かったり、レイ・ヴォーン自身が「あの時は体調悪くてね・・・」とインタビューで言ってちゃったことが必要以上にネガティブに解釈されて今に至る感があるんですが、そんなこたぁしゃらくせぇことです。

ギターのキレ、特に「Pride And Joy」「Texas Flood」ジミヘンのカヴァー「Voodoo Chile」からの「Love Struck Baby」の、アドリブonアドリブの畳み掛ける凄まじい展開に、ブルースやギターが好きな人で興奮しない人はおらんでしょう。

死後にレイ・ヴォーンのライヴ作品や映像が次々リリースされても、このアルバムの価値は変わりません。みんなで聴こう♪


”スティーヴィー・レイ・ヴォーン”関連記事



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2017年05月03日

ベスト・オブ・ブルース・ギター(アトランティック・ブルース・ギター)

スティーヴィー・レイ・ヴォーンのことを書いていたら、ふとこのアルバムについて思い出しました。




その昔「アトランティック・ブルース・ギター」というタイトルで出ておりましたブルースのオムニバス盤です。

まだブルースのことなんかよくわからない、頭の悪い中学生の時に、親父に薦められるままに購入したんですが、このオムニバスに入っていたミシシッピ・フレッド・マクドウェルの凄まじさにまずヤラれ、それからブラインド・ウィリー・マクテルジョン・リー・フッカーTボーン・ウォーカーB.B.キングアルバート・キングギター・スリムなどなど、ブルースの有名どころの名前のほとんどは、最初にこのアルバムで覚えました。

アタシにとっては(今も)素晴らしい教科書のような一枚です。

で、このアルバムの最後に入っていたのがスティーヴィー・レイ・ヴォーン。

ブルースの、そりゃもう神様みたいに凄い人達のプレイの中にあって、コノ人のプレイはヒーローでした。

はい、そんな感じのことを思い出しながらレイ・ヴォーンのことを書き進めております。

あ、この「アトランティック・ブルース・ギター」は、再発の時に「ベスト・オブ・ブルース・ギター」というタイトルになったみたいです。

今は中古しか出回ってませんが、ブルースに興味のある方はもちろん、結構レアな音源(ライヴだったり)も多いので「いや、ほとんど持ってるよ」という方もぜひ見つけたらゲットして聴いてみてくださいな♪
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2017年04月25日

バディ・ガイ アイ・ガット・ザ・ブルース

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バディ・ガイ/アイ・ガット・ザ・ブルース

さて、只今アップアップしながらですがご紹介しております”ギター・レジェンド・シリーズ”皆さんどうですかね? ブルースもロックも、このシリーズのラインナップはアタシがそれこそ10代とか20代の頃、それこそ夢中でギター弾いてて、ギターに関するものなら何でも聴きたい!と鼻息を荒くしていた頃に出会った、「こんな人もいたんだー!」「すげー、このギターどうやって弾いてんだ!」と、何度も何度も感動と衝撃で胸をブチ抜いてくれたアルバムばかりです。

特に今ギターに夢中になっている若い人なんかが聴いてくれたらいいなと思っているんですが、もちろんギターのことなんか全然知らない人が聴いても「うぉ!このギターいいね」と思えるような、音楽的に素晴らしく質の高いものばかりなんで、ちょっとでも心動いた方は、お近くのCDショップ、または本文中に貼ってあるリンクからポチッとしてくださったらと思います。

さて本日は「今を生きるギター・レジェンド」として、最も後輩からのリズペクトを集めているといえばコノ人、バディ・ガイです。

バディ・ガイは1930年代生まれのブルースマンで、戦後になってブルースをエレキ化したマディ・ウォーターズの流れを汲みつつも、B.B.キング、アルバート・キングらが世に広めた「スクィーズ(のけぞり)ギター」の奏法を独自に発展させた、モダン・ブルース第一世代の巨人といえるでしょう。

同年代としてはマジック・サム、オーティス・ラッシュらとシノギを削り、60年代以降のシカゴ・ブルースを大いに盛り上げ、彼の”下の世代”に当たるロバート・クレイやエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジョニー・ウィンター、スティーヴィー・レイ・ヴォーンといったギタリスト達からは「良き兄貴分」として慕われ、ライヴにも呼ばれ、また、バディがアルバムを出すとなれば、この弟分達は喜んで駆けつけると言いますから、プレイのみならず人間的にも素晴らしい人なんでしょう。


第四玉手箱の備忘録「ジャージとタンクトップとストラトキャスター」
(参考動画🎵)








(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.アイ・ガット・ザ・ブルース
2.オレは何から何までツイてない
3.ファイヴ・ロング・イヤーズ
4.ムスタング・サリー
5.隠し事
6.早朝の憂鬱
7.まるで地獄
8.ブラック・ナイト
9.ラヴ・ユー・ベイビー
10.スティーヴィーへの追憶
11.ドゥーイン・ホワット・アイ・ライク・ベスト
12.トラブル・ドント・ラスト

そんな"兄貴"バディ・ガイ、60年代に気勢を上げて、70年代にはソロも、相棒のジュニア・ウェルズと組んだ"バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ"も絶好調で、ライヴにレコーディングにと快進撃を続けておりましたが、80年代はそれまでの勢いが嘘だったかの如く、一気に不遇の時期を迎えます。

80年代というのは、ディスコやニューウェーブなど、とにかく「派手でポップで最新機器を使った音楽」がもてはやされた時代。

ベテランのブルースマンやロック・ミュージシャン達は軒並み苦戦を強いられていたんですね。で、バディも80年代にリリースしたアルバムはたったの2枚。

ちゃんとした仕事も貰えず、悶々としていたバディでしたが、1989年ついに

「むがー!演奏する場所ないんなら自分で作ればいいんじゃー!!」

と開き直り、地元シカゴにブルースの生演奏が聴けるクラブ「バディ・ガイズ・レジェンド」を開店。

自ら経営を切り盛りしながらステージに立つばかりでなく、同じように不遇を囲ってたブルースの仲間達や若手のアーティスト達にも、人種関係なく「ブルースやるならオーケーだぜ」と声を掛け、いつの間にかその店は、ブルースの街シカゴのホットなスポットとなっておりました。

最初は

「バディ・ガイの店だって?へー、あの人まだブルースやってたんだー」

と、冷やかしで入ってくる客にも、ガッツリ手抜きナシの狂暴なブルースを聴かせ、帰る頃には

「やっべぇよ、現役どころかパワーアップしてやがった・・・」

と、圧倒的なパフォーマンスで訪れた人々のド肝を抜き、その噂は当然レコード会社にも届きます。

そして1991年、バディはシルヴァー・トーン・レーベルと契約。

以来このレーベルからバンバン作品をリリースして
、今第二の全盛期なんですが、この「アイ・ガット・ザ・ブルース」は、何と言っても復活の第一段で気合いが違います。

「お、バディ復活かぁー。どれどれ、うん!いいサウンドだ。若い時は勢いだけで突っ走ってたバディもベテランになって落ち着いて・・・

いなーい!何だこの相変わらずの金切りシャウトにバキバキのギターは、若い頃のテンションとちっとも変わんないじゃない。サイコーだなおい!!」

と、いうのが、当時リアルタイムで本作を聴いたほとんどの人の感想です。

タメの効いたねっとりしたファンク・ブルースのA、王道シカゴらしさがジワジワとクるスロー・ブルースのB、ワルツのリズムに乗ってしっかりとアクの強いギターソロでねじ伏せるE、そしてこのアルバムリリースの前に飛行機事故で亡くなった後輩のスティーヴィー・レイ・ヴォーンに捧げられた魂のスロー・ブルース・インストのIなど、楽曲はオリジナルに、彼の敬愛する先輩ブルースマン、50年代60年代のソウル/R&Bのヒット曲など、グッと幅広くなっておりますが、どの曲でもヒステリックと言えるほどの、情念の炸裂しまくったギターが暴れていて、細かい云々よりも、その暴れっぷりこそがバディだと、多分初めて聴く人にも、戦慄と共に思わせる、激しくてブ厚い説得力に溢れたアルバムです。

ゲストには、彼の華々しい復活に花を添えるべく駆けつけたエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、マーク・ノップラーらの"ギター舎弟衆"が集まって
、やはり素晴らしいプレイでバディを引き立て、盛り上げてます。

しかし、聴けば聴くほど素晴らしいのは、終始重く粘るビートを提供しているリッチー・ヘイワード(リトル・フィート)のドラムです。

この素晴らしいドラムの支えあればこそのバディの大暴れですぞ皆さん。





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2017年03月18日

ジェイムス・コットン 100%コットン

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ジェイムス・コットン/100%コットン
(BUDDAH/Pヴァイン)


モダン・ブルースといえば、ドス黒いサウンドを効かせたバンドの中で時にパワフルに、時にファンキーに響くブルース・ハープがオツなものであります。

昨日は、色んな思い出を巡らせながらジェイムス・コットンの「100%コットン」を聴いておりました。

言うまでもなくブルースハープの最高にカッコイイ名盤のひとつであり、70年代、ファンクに最も接近し、そして最も劇的な音楽的成功を納めた一枚。

ジェイムス・コットンを初めて聴いたのは中1の時です。

当時THE BOOMが大好きだった私は、とりあえず宮沢和史みたいになりたいからという理由でハーモニカ、KeyAの10穴ブルースハープを楽器屋で買ってきて「星のラブレター」を練習していました。


そん時親父が「ほれ、ハープ吹きたいんならこういうやつ聴けばいいよ」と、カセットテープをホイッと渡ししたんです。

ラベルには「ハープアタック!」とぶっとい字(親父直筆)で書いてありました。

このアルバムは、1970年代からのブルースを語る上ではハズせない気合いの入ったレーベル”アリゲーター”からリリースされた、ジェイムス・コットン、ジュニア・ウェルズ、キャリー・ベル、ビリー・ブランチという凄い顔ぶれによるブルースハープ夢のジャムセッション盤です。

もちろん当時そんなこと知らず「へぇ」ぐらいに思ってました。

中1のクソガキにブルースなんていきなりグッとは来なかったし、ハープも何をどうやって吹いてるのか分からなかった。

というのが正直なところでしょう。

ただ「ブルースを聴いてる」という、ちょっとだけ大人の優越感に浸るために、ちょこちょこ聴いて悦に入ってはいました。

自分でもあんまピンと来とらんくせに、友達に「おぅ、コレがブルースじゃあ」とか言って、今もう穴があったら入りたいぐらいの赤面モノなのですが、まぁそんなもんです。

それからジェイムス・コットンを好きになるまでに、宮沢和史を通り ボブ・ディランを通り、ポール・バターフィールド、ジュニア・ウェルズ、リトル・ウォルターと、かなり遠回りして「ジャケがカッコイイ」というだけの理由で「100%コットンライヴ」というCDを買いました。

これは燃えました。

シビレて、吹いて、踊りました。

ブルース、特に戦後のモダン・ブルースといえば、ヘヴィでダウナーな雰囲気の中、とにかくタメの効いた辛口な味わいだとばかり思っていたのですが、ここでのジェイムス・コットンのプレイは「ブルース」というよりノリノリでイケイケのファンクであり、その爆発的なノリは、それまで戦後のブルースに勝手に抱いていた重く暗いイメージを、パワフルにぶっ飛ばすものでありました。

ちなみにこの時期のコットンのブルースは「ファンク・ブルース」或いは「ブルースファンク」と呼ばれてたようですが、コレは本人が意識してこう呼べといったのではなく、レコードを聴いた人らがそれぞれそう命名して、このノリの良さを語り継いでいったものだそうです。だってファンクなんだもん。

その時初めてジェイムス・コットンを、知りもしないのに聴いてから8年後。私は19になっておりました。

そんでもってジェイムス・コットンをもっと深く知ろうと、それまでのファンク路線からルーツ回帰へと舵を切った90年代以降の作品や、彼が参加していた頃のマディ・ウォーターズ・バンドの作品も聴き漁りました。

アンプリファイドバリバリで、いかにもワルなリトル・ウォルターや、音色の中にドロドロした狂気が渦巻いている感じのジュニア・ウェルズのハープとはまた違う、生音を大切に紡ぎながら、はっちゃける時もどこか純朴さや、自然な泥臭さを感じさせるコットンのプレイには、とことん人情が滲んでおりました。

それでいて古臭いとは少しも感じません。



【収録曲】
1.Boogie Thing
2.One More Mile
3.All Walks Of Life
4.Creeper Creeps Again
5.Rockett 88
6.How Long Can A Fool Go Wrong
7.I Don't Know
8.Burner
9.Fatuation
10.Fever

3月16日の夜

「さぁ、明日も仕事はハードだ。気合い入れるためになんつーかこう、ファンキーで芯のある音楽、車で流さないとね」

とか、割と軽い気持ちで、コットンの「100%コットン」を選んでカバンに入れたんです。

午前中

「ほらみろブラザー、やっぱりジェイムス・コットンにして良かったぜぇ。のっけからギラギラしたモダン・ブギでノリノリだろーが。そして間髪入れずに恐ろしくタメの聴いたミドル・ファンクの"One More Mile"だ。俺はもうこの2曲だけで天国行ける自信あるが、ところがブラザー、ジェイムスはそっから畳み掛けやがるんだ。わかるかい、アーハー?ちょいと小手調べの正調ブルースの"All Walks Life"から怒濤のインスト"Creeper Creepers Again"と来て、名刺代わりの最高にゴキゲンなナンバーの"Rockett88"だ。それからそれから最後までアツく聴かせてラストは何だと思う?オリジナル・ソウル・ブラザーNo1、リトル・ウィリー・ジョンの"Fever"だぜ。しかもヤワじゃねぇ、しっかりブルースしてるし、何よりジェイムスの声が野太くて切ない、そんじょの小僧にゃこんな風には出来ない、って当たり前だろ?ジェイムス・コットンだぜ」

と、心の中で一気に呟いて車を走らせ、駐車場でちょいとニュースをチェックしたとき真っ先に飛び込んできた訃報...


頭が真っ白になりましたが「もうこれははなむけに1日中聴き狂うしかないな」と思って、アタシはコットン好きになるきっかけになった「100%コットン」と「100%コットンライヴ」、それと彼の初期の素晴らしいプレイが聴けるマディ・ウォーターズの「トラブル・ノー・モア 〜シングルス1955-1959」を、ひたすら聴き狂っておりました。

コットンは70年代に最先端のファンクを演奏に取り込んでも、ハーモニカの音色そのものを電気増幅することを潔しとせず、ナチュラルな音色で実にモダンで味わいの深いプレイを貫いておりました。スタイルよりも何よりも、アタシがコットンを特別カッコイイなと思うところはそこです。








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2017年03月16日

ミシシッピ・ジョン・ハート アヴァロン・ブルース

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ミシシッピ・ジョン・ハート/アヴァロン・ブルース
(ソニー・ミュージック)

ミシシッピ・ジョン・ハートといえば、戦前にレコーディングを残し、いわゆる戦後に”再発見”されたブルースマンの中で最も人気があったと言われる人です。

その、流麗なアルペジオ奏法によるギターと、何ともほのぼのとしたハートウォームの声は「ブルース」と聴いて連想する、ガラガラで泥臭いイメージとはまるで対極に位置するものであり、長年ブルースファンというよりはフォークを愛好する人達によって愛され、多くの楽曲がカヴァーされてきた人でもあります。

その人となり、ミュージシャンとしての半生につきましては以前にココに書いてありますので、余りクドクドは申しませんが、とにかくそのフォーキーなスタイル(ブルース以前の音楽、つまりブルースから枝分かれしたカントリーの原型をそこに見るような感じ、といえばいいでしょうか)を、何の知識もなしに耳にした時は

「うぉ?コノ人はブルースの人なのにまんまフォークだぞ?どうしたんだ??」

と思ったんですが、実は話が逆で、1960年代以降にたくさん生み出されたフォークソング(実際のフォークソングは単純に”民謡”という意味ですので”フォーク・リヴァイヴバルの時のアコースティック音楽と思えばよろしい)のほとんどは、コノ人のスタイルから直接/間接を問わず大きな影響を受けている訳で、ザックリと、本当にザックリといえば

「戦後のフォークのスタイルは、そのかなりの部分がミシシッピ・ジョン・ハートが作ったもので出来ている」

と言っても、ちょっとしか言い過ぎでないのであります。

そして、ギターを弾く人には、さっきまで散々フォークフォークと言ってたくせにと矛盾を感じるかも知れませんが、ミシシッピ・ジョン・ハートのギターには、フィンガー・ピッキングでアコースティックなブルースを弾くには欠かせない基本テクニックの宝庫なんですね。

アタシが本格的にブルース・ギターを弾いてみたいと思った10代の頃の話です。

「戦前ブルースを弾けるようになりたい!」

と思ったものの、当時はネットもない時代、何をどう弾いていいのか分からず、とにかく必死になって耳コピをしておりました。

そんな時に楽器屋さんで、ステファン・グロスマンという人の、戦前ブルース教則ビデオを見付けたんですね。




はい、ステファン・グロスマンといえば、フォーク・リヴァイバル時の人気グループ「イーヴン・ダズン・ジャグ・バンド」のメンバーであり、シンガー/ギタリストとしての作品やジョン・レンボーンをはじめ、様々なミュージシャンとのコラボでも知られる人ですが、この人はハウ・トゥ・ギターの世界(?)ではとにかく有名な人で、なかんづくアコースティックなブルースの教本やビデオは物凄い量出しています。

戦前ブルースの、特にあの「ギターが2本同時に鳴っているように聞こえる奏法」をとにかく会得したいと思っていたアタシは、グロスマン氏の教則ビデオに飛びつきました。

教則ビデオは最初から最後まで通して観ても、何をどうやってるのかさっぱり分かりません。

しかし、最初にグロスマン氏が

「まずはこの曲をやってみよう、とっても簡単だからね」

と1曲目に持ってきていたのが「マイ・クリオ・ベル」。

これがミシシッピ・ジョン・ハートの曲でした。

最初は

「うぉう、オレはブルースが弾きてぇんだよ、こんなフォークみたいな曲やってられるかよ!」

と、突っ張ってみたのですが、それをすっ飛ばしてブルース曲をしようとしても全く歯が立たず。

悔しいのと情けないので、結構本気でイライラしましたが、ここは素直にグロスマン先生に従おうと、2週間ぐらい真面目に「マイ・クリオ・ベル」を練習してたんです。

そしたら、何となく、親指を「ボン、バン、ボン、バン♪」とやりながら、残りの指でそれっぽいオブリガードを入れることが出来るようになったんです(!)

それを皮切りに、他のブルース曲に挑戦してみたら、何と!完璧ではないけれど「何をどうすればいいの・・・?」という最初の頃のやや絶望感を伴った疑問もなく、分かる!・・・ような気がする!!

で、アタシのブルースギター人生はスタートしました。

ミシシッピ・ジョン・ハートの、アルペジオと親指のベース音弾きギターは、本当にフィンガー・ピッキングの基本も基本。この奏法をマスターしたら、後はシンコペーション(アクセントの置き方)で、ラグタイムやブルースのフィンガー・ピッキングが応用で弾けるようになるんです。


なのでこのブログをお読みの方で「うぉう、オレは戦前ブルースのギター弾けるようになりたいぜぇ!でも、何をどうやったらいいのかさっぱり分からないぜぇ♪」という方がいらしたら、ぜひともミシシッピ・ジョン・ハートの耳コピから始めてください。




(ギター・レジェンド・シリーズ)


【収録曲】
1.フランキー
2.ノーバディズ・ダーティ・ビジネス
3.エイント・ノー・テリン
4.ルイス・コリンズ
5.アヴァロン・ブルース
6.ビッグ・レッグ・ブルース
7.スタック・オーリー
8.キャンディマン・ブルース
9.ガット・ザ・ブルース
10.ブレスド・ビー・ザ・ネーム
11.プレイング・オン・ザ・オールド・キャンプ・グラウンド
12.ブルー・ハーヴェスト・ブルース
13.スパイクド・ライヴァー・ブルース


さて、アルバムを聴いてみましょう!

ジョン・ハートは戦後60年代に再発見されて大人気となり、ライヴ盤も含めると物凄い量の音源があります。

で、基本的に芸風の変わらない人ですので、どれもオススメではあるんですが、やっぱり聴きたいのは、彼の原点となり、実にその後35年の時を経て、多くの若者の心を掴んだ戦前録音を聴きたいものです。

彼の戦前録音は、この「アヴァロン・ブルース」に残された13曲が全て。過去にはPヴァインが「キング・オブ・ザ・ブルース4」というタイトルで、他のアーティストの楽曲をカップリングしてリリースしたり、戦前モノではジャケットの素晴らしさも含めて定評のあるYAZOOからリリースされたこともありますので、多少話がややこしいですが、どれも内容はほぼ一緒。強いていえば本盤がデジタルリマスタリングのお陰で音質がクリアになっているといったところでしょうか。

どこまでも優しく、鼻歌なんじゃないかと思えるぐらい軽やかな唄い方と、若い分だけハリのあるギターの美しいサウンドによる、芸術的なリズムとオブリガードの”一人掛け合い”これはもう至宝です。

ちなみに1曲目「フランキー」は、ボブ・ディランが90年代にリリースした弾き語り名盤「グッド・アズ・アイ・ビーン・トゥ・ユー」で素晴らしいカヴァーを披露しておりますので、興味のある人はぜひ聴き比べてみてください。


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2017年03月14日

ロニー・ジョンソン ステッピン・オン・ザ・ブルース

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ロニー・ジョンソン/ステッピン・オン・ザ・ブルース
(ソニー・ミュージック)


ブルースの世界では「上手い」というよりは他の人にはないワン&オンリーの味があるとか、勢い一発で凄まじい破壊力とか、アンプを改造しまくってありえない歪み方した音で弾いてるとか、とかくそういう「突破してナンボ」みたいな考えがあって、単純に技術的な意味で「上手い」という人よりも好まれる傾向がありまして、アタシもどっちかというと、誰それが上手いとかそういう話よりも

「あはは、このギター頭おかしい〜」

とか

「なんじゃこれ!ありえんだろ・・・」

とか

「いやいや、これは”弾いてる”じゃなくて”叩いてる”」

とか

「ヤッベー!コレ、ヤベーっす!!」

とか、しまいにゃ

「あぁぁぁあぁおうぅうへdfghjk☆l;△!!」


と、訳の分からない悶絶までを総動員して楽しむのがブルースの作法とすら思っておりますが、そんなアタシでも、

「あ、この人のプレイに関してはそういったやさぐれとは違うな、キチッと上手いし味わいも完璧だな」

と、心から思える人がおります。

その人というのはロニー・ジョンソン。


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いわゆる「ブルースマン」というイメージとはやや違う、実にナイーヴで洗練された外見をしておりますが、彼の音楽性も、戦前という時代を考えると、洗練そのものと言ってもいいぐらいスマートなんです。

そして「完璧」以外の言葉が出てこないギター・プレイ。

流麗な単音弾き、絶対にハズさないリズム、どこを切り取っても美しいメロディになっているソロのフレーズなど、これはもう何というべきか「ブルース」というジャンルで括るのも憚られるぐらい、凛として孤高な気品を感じさせてやまないものなのであります。

さてさて、そんなロニー・ジョンソン、アタシがあれこれ言うよりも「ブルース・ギターのパイオニアの一人にして、ジャズ・ギターの元祖」という世間での評価を鵜呑みにしましょう。

はい、そうなんです。実はこのロニー・ジョンソン、ルイ・アームストロングやベッシー・スミスのバックを務めたり、ジャンゴ・ラインハルトやチャーリー・クリスチャンといった、ジャズ・ギターにおける「ソロ」のスタイルを確立し、ホーンやピアノにも負けないリード楽器としてのギターの地位を築いたイノベイター達に最大の影響を与えたり、どっちかというとその流麗かつテクニカルなギター・奏法は、ジャズ・ギターの原型の原型を、どうしても感じてしまいます。

その理由は彼の人生にあります。

1894年に"ジャズの都"華やかかりし頃のニューオーリンズに、両親も兄弟も全員楽器が出来る、旅回りの音楽一家にロニーは生まれました。

幼い転からギター、ピアノ、ヴァイオリンなど、様々な楽器を演奏し、特にギタリストとして非凡な才能を発揮したロニーは、家族と共にニューオーリンズの酒場や売宿が軒を連ねる歓楽街に繰り出しては、そこで初期のジャズを演奏していたと云います。

音源を聴けば解るのですが、ロニーのギターは、この時代の弾き語り出身のブルースマンとは明らかに異なる「楽器としてどこまで高度で幅広いことが出来るか?」という、ストイックなまで挑戦している、実に専門のギタリストらしいギターです。

最初に言ったような、ブルース独特の「気合一発魂一打」(何だこのヤンキー感)なギターではなく、ちゃんとした理論的な基礎が出来た上で、情感や哀楽を乗せている、非常に理知的かつ完成されたギター。これはやはり幼い頃からバンドで鍛えられ、ジャズで慣らした英才教育の賜物という感じであります。


ロニーの一家はなかなかの人気バンドだったそうですが、1917年に軍港の撤廃に伴う歓楽街(ストーリーヴィル)の閉鎖でほとんどのジャズマンは仕事を求めてシカゴへ上り、ジョンソン家も北部へ繋がる都会だったセントルイスに移り住みます。

ところがここに移り住んで間もない時、ツアーに出ていたロニーと兄ジェイムス以外のジョンソン一家は流行病にて全滅。

悲しんだロニーでしたが、食うためにはとにかく演奏して稼がねばならないと、片っ端から色んな仕事をこなし、そのうちのひとつであったブルースのオーディションを通過します。

ブルースは当時、流通しはじめたばかりのレコードという新しい媒体でブレイクし、聴かれるようになった最新の流行音楽でしたから、ロニーは

「よし、古いニューオーリンズ流のジャズよりも、これからはブルースの時代だ」

と決意し、ブルースのギタリストとして売り込みをかけ、1925年に念願のレコードデビューを果たします。

もし、彼がニューヨークかシカゴに出て、ジャズ・ギタリストとして認められていたならば、彼の人生も音楽の歴史も随分と違うことになっていたかも知れませんが、当時はビッグバンド文化が花開いた時代。ジャズでギターなんて音量面の問題から、とてもソロ楽器としては使えないシロモノでした。

余談ですがロニーから影響を受けたジャンゴ・ラインハルトは、アメリカのビッグバンド・ブームとはヨーロッパでギターを中心とした少人数のバンドのリーダーだったこと、チャーリー・クリスチャンは、30年代後半に登場したギターアンプの出力によってホーンに負けない音量を手に入れたことによってソロ楽器としてのギターの可能性をうんと拡げることが出来たんです。

はい、余談終わり。いい加減アルバムを紹介しましょう(汗)



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.MR. JOHNSON'S BLUES
2.SWEET POTATO BLUES
3.STEPPIN' ON THE BLUES
4.I DONE TOLD YOU
5.MIEAN OLD BEDBUG BLUES
6.TOOTHACHE BLUES - PART I
7.TOOTHACHE BLUES - PART II
8.HAVE TO CHANGE KEYS (TO PLAY THESE BLUES)
9.GUITAR BLUES
10.SHE'S MAKING WHOOPIE IN HELL TONIGHT
11.PLAYING WITH THE STRINGS
12.NO MORE WOMEN BLUES
13.DEEP BLUE SEA BLUES
14.NO MORE TROUBLES NOW
15.GOT THE BLUES FOR MURDER ONLY
16.UNTITLED
17.6/88 GLIDE
18.RACKETEER'S BLUES
19.I'M NUTS ABOUT THAT GAL

デビューから47年に活動が一旦下火になるまでに実に200曲以上(SP盤のシングルしかなかった時代としては驚異的な量なんです、これ)ロニー・ジョンソンの、戦前録音の極めつけとも言えるこちらは、1926年から32年までに自己のソロ名義や、正真正銘「ジャズ・ギターの開祖」と呼ばれる早世の天才白人ギタリスト、エディ・ラングとのギター・デュエットに、人気女性歌手ヴィクトリア・スピヴィとのコミカルなやりとり、そしてブルースの"闇"を個人的に最も感じさせるテキサス・アレンクサンダーの伴奏など、洗練を極めたアーリー・ジャズからとことんディープな"ど"ブルースまで、何でもこなせる上に器用貧乏に陥っていない、プロの妙技が飽きることなく最初から最後まで味わい深く香り高く楽しめる全19曲。

流麗な単音フレーズ、絶対にハズさない完璧なリズム(多分二回目)に、もう惚れ惚れしてしまいます。

「一人で弾いてる」というのが何回聴いても信じられない超絶技巧のインスト「Playing With The Strings」を聴いてまずはブッ飛んじゃって下さいな。


ロバート・ジョンソンが、姓が一緒ということで「俺はロニーと親戚なんだ」と、実際血縁なんて全然ないのにそれとなく匂わせて注目を集めようとしていたなんて話がありますが、そりゃこんなギター聞かされたらそう言いたくもなりますわって話です。





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2017年03月12日

ビッグ・ビル・ブルーンジィ ビッグ・ビルズ・ブルース

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ビッグ・ビル・ブルーンジィ/ビッグ・ビルズ・ブルース
(ソニー・ミュージック)

ソニーがリリースした、¥1080のグレイトな企画「ギター・レジェンド・シリーズ」から、本日もお届けしております。

さてみなさん、いよいよお待ちかね、シカゴ・ブルースの大物中の大物、落語でいえば真打の師匠の師匠ぐらいの凄い人の登場でございます。

はい、ビッグ・ビル・ブルーンジィですよ〜!!!!!


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え・・・?

今ちょっとモニターの向こうから、ブルースファンの拍手喝采の中に、かなりのボリュームで

「・・・誰?」

「知らん」

という声が混ざってましたが、ちょっとあーたがた本気ですか!?

・・・はい、そうなんですよ。戦前シカゴ・ブルースの王者とも言われるほどに、1930年代から40年代初頭にかけてのシティ・ブルースのスタイルの確立にはものすごーく貢献した人であり、バンド・サウンドにおけブルース・ギター(アコースティック)の集大成とも言える画期的な奏法を確立した凄腕のギター・レジェンドでありながら、ビッグ・ビル・ブルーンジィは実際ブルース好きの中でも

「うん、何かマディに影響与えた人らしいけど、実はあんま聴いたことないんだよね」

と、軽く扱われることが何故か多い。

その理由というのは、まぁ弟子のマディ・ウォーターズが作り上げた戦後の”電気ミシシッピ・ブルース”ともいえる”あの”シカゴ・ブルースのサウンドのインパクトが余りにも強すぎて、サラッとした都会流儀の戦前シカゴ・ブルースというのは、どうにも「あのシカゴ・ブルース」を期待して聴いた人にとってはアクやクセが思いのほか薄くてどうもガツンとこないとか、そもそも戦後シカゴ・ブルースの熱狂的なマニアであったストーンズやクラプトンの文脈からビッグ・ビル・ブルーンジィという人はちょっとだけ離れた孤高の存在なので、今のブルースファンの大体8割ぐらいを占める”ロック好きからブルースに目覚めたよ”な人達のストライクゾーンにはなかなかズバッと入ってこなかったという物理的な問題もあります。

実際我が国では、戦前モノまで聴いている重症なブルースファン以外に「ビッグ・ビル・ブルーンジィ」という名がようやく知られるようになったのは、エリック・クラプトンがアンプラグドで、ビッグ・ビルの「ヘイ・ヘイ」を演奏してようやく・・・といった感じでした。

でも、アタシは知っています。クラプトンの「ヘイ・ヘイ」でビッグ・ビルの存在を知った人が本人の演奏を聴いて

「いや素晴らしかった、あんな洗練されてるのにフィーリング豊かなギターを弾ける人はなかなかいない」

「ビッグ・ビルかっこいいね、戦前ブルースってロバート・ジョンソンだけじゃなかったんだね。いや凄いわ」

「1930年代だっけ?ブルースであんな風にジャジーなこと出来る人っていたんだ。ギターもいいけどコノ人のは雰囲気が凄くいい。酒が美味くなるブルースだ」

と、驚嘆の声と共に穏やかな顔で口々につぶやいていったのを。

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(マディとの仁義あるストーリーはコチラをご覧ください。)


そう、ビッグ・ビルはとにかくギターの名手です。

戦前ブルースのギターといえば、南部の泥臭くパーカッシブなもの、或いはナイフ・スライドやプリミティヴな単弦奏法で、歌のニュアンスをグッと奥深く表現するものが主でした。

これが都会に行くと、当時娯楽音楽の最先端だったジャズとほぼ二人三脚で、テクニカルでダンサンブルな”ラグタイム・ギター”を軸に発展させた、洒落たものとして、シカゴやセントスイスなんかで独自の発展を遂げていたんですね。

ビッグ・ビルは、1890年代に深南部のミシシッピで生まれております。

サン・ハウスやチャーリー・パットンとは世代的にほぼ変わらない彼が幼い頃に影響を受けたのは、やはり深南部の泥臭くヘヴィなデルタ・スタイルのギターだったと思われますが、最初に手にした楽器がヴァイオリンだったことや、1920年代には早々にシカゴへ移り住んだことなどから、デルタ・スタイル”まんま”ではなく、根底に泥臭さを感じさせながらもどこか軽快な、シティボーイなプレイをレコーディング初期から身に付けておりました。

1920年代は”ラグタイムの名手”として大人気だったブラインド・ブレイク、”スライドの魔術師”タンパ・レッドなど、とにかく当時のシカゴで超一流と言われたギターの達人たちと親しくセッションを繰り返し、初レコーディングを行った1926年には、彼らと並び称される全米トップクラスのブルース・ギタリストになっておりました。

ここでビッグ・ビルが「戦前シカゴ・ブルースの立役者」と言われる1930年代がやってくるのですが、ビッグ・ビルの何がグレイトだったかといえば「バンド・サウンドを確立した」これに尽きます。

当時のシカゴ・ブルースのスタイルは、ソロかギター+ピアノのコンビが基本です。

もちろんこの編成があったからこそ、それぞれの個人技が磨かれた訳ではありますが、ちょいと目線を横に移せば、1930年代はジャズのビッグバンド黄金期でありました。人気といえば派手でゴージャス、ついでに躍れるビッグバンドが何といっても一番だったんですね。

そこに目を付けたビッグ・ビルは

「うん、ブルースでもバンド・スタイルでやればもっと人気が出るんじゃないか」

と、思い立ち、色々と試行錯誤を繰り返します。

いくらビッグバンドが人気とはいえ、ああいう編成をそのまんまやったらただの歌入りのジャズになってしまいますし、アンプのない時代、ギターの音が大編成のホーンやドラムの音に埋もれてしまうという問題がありました。

そこでビッグ・ビルが考えて編み出したのが「唄とギターを中心とした小編成バンドでの洗練されたブルース表現」です。

編成は大体ビッグ・ビルの唄とギター、そして腕のいいピアニストに、場合によってベースやドラム、必要最小限のホーン奏者が入るという3〜4,5人によるブルース・バンドで、少ない人数ではありますが、ビッグ・ビルならではのセンスの良さで、ブルースがグッとモダンで洗練された上質な音楽として、夜のシカゴで人気を盛り返すようになっていった訳であります。


(ギター・レジェンド・シリーズ)



【収録曲】
1.BIG BILL BLUES
2.YOU DO ME ANY OLD WAY
3.TRUCKING LITTLE WOMAN
4.BULL COW BLUES
5.SOUTHERN FLOOD BLUES
6.NEW SHAKE ’EM ON DOWN
7.NIGHT TIME IS THE RIGHT TIME
8.TROUBLE AND LYING WOMAN
9.BABY I DONE GOT WISE
10.JUST A DREAM
11.OH YES
12.MEDICINE MAN BLUES
13.LOOKING UP AT DOWN
14.WHEN I BEEN DRINKING
15.ALL BY MYSELF
16.NIGHT WATCHMAN BLUES

んで、そんなビッグ・ビルの全盛期、1932年から41年の音源を集めた、LP時代から親しまれている代表作がコチラ「ビッグ・ビルズ・ブルース」であります。

凄腕のギター・ピッカーとしてのビッグ・ビルを楽しみたいなら、Pヴァインから出ている「ファーザー・オブ・ザ・シカゴ・ブルース・ギター」がとにかく強烈ですが、コチラではトータルなブルース・アーティストとしてのビッグ・ビルを、極上の戦前シカゴ・ブルース・バンド・サウンドでとことん味わい深く楽しめます。

ギター、ピアノ、曲によってはドラムやコルネット、ウォッシュボードも入って(Aなんか華やかですよ〜♪)、その中でビルの「ちょろっと弾いてもカッコいいギター」と、カラッとしながら妙に深い余韻のあるヴォーカルがこれ、実に噛めば噛むほどに染みるんですよ。

どこまでもドロドロで荒々しいブルースはもちろん最高で、それなしでは生きて行けませんが、こういう最初から最後までとことん"粋"なブルースもいいもんです。本当にいいもんです。





ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする