ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年10月14日

ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース

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ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース/Ginger Baker's Air Force
(Lemon)

1960年代後半から70年代初頭という時代の音楽というのは、本当に面白くて、何が面白いかって、この時代は全盛を極めていたロックが「もっと誰もやってないことを!」と、ジャズやファンクなど、ちょっと違うジャンルの音楽を取り込んで、個性的なバンドや面白いアプローチをするミュージシャンの百花繚乱状態だったんです。

で、更に面白いのは、そういうロックサイドの動きに敏感に反応したジャズやソウル界隈のミュージシャン達が「何だよ、オレらにも出来るんだぜぇ」と、次々と電気楽器を導入した大胆な”脱ジャズ”のスタイルでライヴをかましたり、作品をリリースしたことによって、互いに刺激し合う環境が整い、更に刺激に溢れたカッコイイ音楽、意表を突くジャンルレスな音楽が次々に生み出された。このフリーダムに尽きます。

特にロックとジャズを掛け合わせた「ジャズロック」というのが、この時期ぼちぼち出てくるんです。

今日はそんなジャズ・ロックの名作アルバムを紹介しますね。はい、ジンジャー・ベイカーが1969年に結成した大所帯バンド”ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース”のデビュー作にして、凄まじい熱気に満ちた最高にかっこいいライヴ・アルバムです。

さて皆さん、ジンジャー・ベイカーといえばほとんどの人が「クリームのドラマーだよね」と答えるかも知れません。や、かも知れませんじゃなくて、音楽好きの人なら、十割方九割はそう答えるでしょう。はい、クリームのジンジャー・ベイカーであります。

クリーム時代はジンジャー・ベイカー(ベース、ヴォーカル)、エリック・クラプトン(ギター)と組んだ力強いトリオ・サウンドを「バシッ!」「ダカドコドコ!」と、パワフルに打ち鳴らされる硬派なドラミングで支えておりましたジンジャー・ベイカー。

そのワイルドなドラム・スタイルと直結で結びつく毒舌&偏屈なキャラクターも何というか実に正直で憎めない人であります。そう、ジンジャー・ベイカーの愛すべきところは、ドラムも人格も、全て動物的直観で成り立ってるかのような、その野人ぶりでありましょう。

そんなジンジャーの野人ぶりは、クリーム解散後に、実は遺憾なく発揮されます。

我の強いメンバーで結成されたクリームは、元より結成前から険悪だったジンジャーとジャック・ブルースの間で度々トラブルが起きておりました。

結局終始行動を共にする中でジンジャーとジャックの不仲の溝は埋まるどころか修復不能な状態になってクリームは解散。ジャックが出て行く形でジンジャーとクラプトンは、かねてより親交のあったスティーヴ・ウィンウッド(トラフィック、元スペンサー・デイヴィス・グループ)、リック・グレッチ(ファミリー)らとブルース・ロック・バンド”ブラインド・フェイス”を結成しましたが、このバンドは多くのファンにとっては「クリームの後継ブルースロック・バンド」としか捉えてもらえず、また、オリジナル曲も少なかったので、ライヴでは求められるままにクリームやトラフィックのナンバーをやっていたといいます。

結局クラプトンが、クリーム時代の残滓を背負うのに疲れ、このスーパーユニットはたった半年で終わってしまうのです。

でも、ここで終わらかなかったのがジンジャーなんです。

「ジンジャーどうしよう。エリックがやめるってさ」

「何かもう疲れたとか言ってたんだよな、アイツ大丈夫かな・・・」

「あぁ、エリックはしょうがねぇよ。クリームん時からジャックのワガママで相当参ってたからな(←注:お前が言うな)。あぁしょうがねぇ。じゃあ俺たちでやるしかねぇんじゃねぇか?俺は正直お前らとはもっと演奏したいからどうだ、もうこの際だから新しいバンド組んでよぉ・・・。あ、ちょっと待て、実は俺ァ前からあっためてきたアイディアがあったんだ。いいか、これからはありきたりのブルースやってても、客に飽きられるだけだし、まぁオレらやお前らのトラフィックなんかに影響受けただけの大したことねぇヤツらばっかりだが、ブルースロックのバンドなんか履いて捨てるほどいやがる。だからな、ヒッヒッ、時代はジャズだよ」

「ジャズだって!?いいねぇ」

「やりたかったんだよ、エリックの家でも何度かセッションしたぜぇ」

「よーし、そうなりゃ話は早い。バンド名は”ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース・ワン”で決定な。それと、お前らだけじゃ心細いと思うから、俺がジャズにも対応できる新しいメンバーを連れてきてやる」

と、待ってましたとばかりにイニシアチブを握りまくってゴキゲンなジンジャーによって、1969年「ロックのヤツらがジャズをやるイカしたバンド」が結成されました。

奇しくもマイルス・デイヴィスが問題作とされたエレクトリック・ジャズの名盤「ビッチェズ・ブリュー」を世に出したのと同じ年の出来事であります。




【収録曲】
1.Man
2.Early in the Morning
3.Don't Care
4.Toad
5.Aiko Biaye
6.Man of Constant Sorrow
7.Do What You Like
8.Doin' It

さあ、ジンジャー・ベイカーが気合いを入れて前からずーーーーっとやりたかった自分が好き放題できるバンドでジャズをコンセプトに結成したバンドのファースト・アルバム!総勢10名でサックス、パーカッションも入ったちょっとしたオーケストラ編成であります。

ジンジャーはワイルドだから、スタジオでちまちまなんかやりません。何とこれ、ライヴアルバムなんですよ。

ザッとメンバーを書いてみますと


ジンジャー・ベイカー(ds)
スティーヴ・ウィンウッド(vo,key)


この2人は言うまでもなくブラインド・フェイスからそのまんまの残留組で、ムーディー・ブルースから

デニー・レイン(g,vo)

が加入。

ブルース・ロック界隈の重鎮であるリック・グレッチ(b,vln)に


ホーン隊は

グラハム・ボンド・オーガニゼイションのグラハム・ボンド(as)、トラフィックからクリス・ウッド(ts,fl)ドノヴァンやブロッサム・ディアリーなどのバックも務め、後にオーネット・コールマンなどと共演を果たすジャズ・ミュージシャンのハロルド・マクネア(ts,fl)です。


ヴォーカルには”ドクター・ジョン”の紅一点で、リック・グレッチの奥さんになるジネット・ジェイコブス(vo)更にジンジャーの師匠であり、イギリスジャズ界ではベテランとして尊敬されていたフィル・シーメン(ds)、そして何気にこのアルバムで大きな存在なのがナイジェリア人のパーカッショニスト、レミ・カバカ
であります。

ザッと名前を並べても、純粋に”ジャズ”のフィールドと言えるのは、ハロルド・マクネアとフィル・シーメンで、どんなジャズ・サウンドなんだろうと、嫌が上にも想像が膨らみます。

で、やはりそのサウンドは、ジンジャーの縦の構えからズバッ!ズドン!とタイトに決まるドラミングを中心とした、ロック色の極めて濃いサウンドに仕上がっており、ありきたりの4ビートでお茶を濁した音にはなっておりません。

ホーン・セクションもアンサンブルを奏でるというよりは、長い楽曲の中でそれぞれが自由に即興演奏を楽しんでいるという感じ。ヴォーカルもメインで歌モノをするのではなしに、絶妙なコーラス・ワークで全体の流れの中に良い意味でアクセントになっており、つまりは「ロックのノリを大事にしつつ、その幅をグッと拡げるために即興度の高い楽曲と、ジャズやファンクのエッセンスをちりばめた」と言うべきか、ジャズの人達がロックの要素を取り入れた”ジャズ・ロック”ともまた一味違った、ザックリしたノリとグルーヴを、構えることなく自由に楽しめるという意味において、熱気とユルさのバランスが実に素晴らしく混ざり合っております。

で、後半にモロなアフロ・ポップなノリでグイグイテンションを挙げるレミ・カバカの素敵な煽りに満ちたナイジェリア語のヴォーカルとパーカッション(!)ジンジャーは実はナイジェリアの大物、フェラ・クティと親交があって、共演作も出すんですが、アフロ・グルーヴの中であくまで縦のへヴィなビートを繰り出すジンジャーのドラム、これが見事にアルバムのハイライトになっております。

いわゆるジャズの人達が演奏する”ジャズロック”の粘ったノリとはまた違う、ロック的混沌に溢れ返ったゴッタ煮の楽しさ、それはつまりこの1960年代末から70年代の音楽そのものの”誰が何をしでかすかわからないワクワク”をそのまんま荒削りに詰め込んだものでもあります。





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2017年10月06日

エイフェックス・ツイン ドラッグス

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エイフェックス・ツイン/ドラッグス
(Warp)

今日はテクノについて語ろうと思います。

テクノという音楽は、読んで字の如く、”最先端”をイメージさせる音楽です。

人によって細かい手法は違いますが、この音楽は打ち込みのビートにシンセサイザーや様々な機器を駆使して作ったフレーズを掛け合わせてゆく音楽といえます。

古くは70年代にクラフトワークら、ドイツのいわゆる”クラウトロック”と呼ばれる人達がその原型を作りましたが、これが世界中に波及して、特にクラブシーンで独自の発展を見せて、パーティーに集まった人達を踊らせるハウス・ミュージックや、或いは日本でいえばYMOなど、ポップスとして歌モノの楽曲を打ち込みやシンセサイザーなどのアレンジで装飾したテクノポップと呼ばれるもの、更には電子音楽で作るアンビエント・ミュージックや、バンド・サウンドと融合したエレクトロニカ、近年では元々”ノイズ・ギター・ポップ”というオルタナティヴ・ロックのひとつの形態と呼ばれていたシューゲイザーなんかもテクノとの関わり抜きに語ることは出来なくなりつつあります。

細かいことはさておきで、80年代90年代、そして2000年代から現在に至るまで、テクノ・ミュージックは技術の進化と共に様々な形で世に送り出されてきました。

そして、それらのほとんどが、めまぐるしく発展する録音/再生技術の中で次々と懐メロになってゆくのを感じます。

何年か前にダフトパンクが流行って、アレが最先端のテクノではなく、80年代のオマージュ的なサウンドだったことには「あぁ、もうこの分野も過去のスタイルをネタとして使うようになるまでになったんだ」と、ある意味凄い衝撃でしたが、テクノという呼び方も、もしかしたらあと少しすれば「あぁ懐かしいね」というものになってしまうのかも知れません。

で、そんな中「懐メロにならないテクノ」を、四半世紀以上黙々と作り続けている人がおります。

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”エイフェックス・ツイン”こと、リチャード・D・ジェイムスです。

90年代にドラムンベースというスタイルが流行って、その時この人も世界的な人気アーティストになりました。

黙っていれば結構カッコイイ顔してるのに、ニヤッと不気味に笑った江頭2:50みたいな顔写真やイラストをジャケットに使ったり、水着美女とか子供とか、色んな被写体にコラージュして張り付けたり、正直「うわ、何じゃこりゃ!?」という感じで、なかなかに正体の掴めない、不気味な存在であったと記憶していますが、そこんとこどうなんだよと、この分野に詳しい友人に訊いたところ

「いや、彼はいいんだ。そうやって自分自身を記号化することで、今のテクノブームから距離を取るスタンスを保っているわけだから」

と、何やら禅問答のような答えを貰い、頭の中に「??」がいっぱいになったところでアタシは彼に興味を持ちました。

こんなことを言うと怒られるかも知れませんが、アタシは90年代のテクノブームの時に、どうも今イチその音楽的な良さみたいなものを掴みかねておったんです。重低音とシャキシャキしたプレセンス(超高音)を強調したサウンド、忙しなくてどうノればいいのか分からない均一的なビート、何かメロディーがあってそれが展開して行く訳でもなく、ただ時間を刻むみたいにバーッと鳴らされるだけの効果音的なフレーズの繰り返しだと思ってて、事実その繰り返しを楽しむのがテクノだと言われて、ますます訳がわかんなくなったんです。

「そんなのおもしろくねぇよ」

と生意気にも言えば

「面白いとか面白くないとかじゃねーよ、こういうのを爆音で流してバカになって踊り狂うのがいいんだ!」

と百倍キレられて、あぁやっぱりオレにはクラブとかレイヴとかそーゆーのは遠い世界だわいと嘆いていたところにエイフェックス・ツインは踊らせるための刹那的レイヴ・ミュージックに背を向けた、アーティスト性の高いテクノミュージックを作ってどうのとか、フジロックフェスで犬小屋に閉じこもってDJやってたとか、という記事の数々を断片的に読み

「う〜ん、テクノってわかんないけど、どうもコイツだけは俺が好きそうな頭のおかしなヤツの臭いがするなぁ」

と、何となく好意的に思ってはおりました。


そん時たまたま聴いたのが、2001年リリースの「ドラッグス」というアルバムです。



(Disc-1)
1.ジウェセック
2.ヴォードホスブン
3.クラードフブクブング・ミッシュク
4.オミーガ・スウィッチ7
5.ストローザ・タイン
6.グウェーリー・マーナンズ
7.ビディオンコード
8.コック / ヴァー10
9.アヴリル 14th
10.モン・サン・ミッシェル+セイント・マイケルズ・マウント
11.グワレック2
12.オーバン・エック・トラックス4
13.オソワス
14.ヒ・ア・スクリアス・リフ・ア・ダグロウ
15.ケッソン・ダレフ

(Disc-2)
1.54カイムル・ビーツ
2.ボトム・ルマーダ
3.ローナデレック
4.Qkthr
5.メルトフェイス6
6.ビット4
7.プレップ・グワレック3b
8.ファーザー
9.テイキング・コントロール
10.ペティアティル・シックス・フトドゥイ
11.ルグレン・ホロン
12.エイフェックス237 V7
13.ジゴマティック 17
14.ベスク3epnm
15.ナノウ2


まず一曲目からビートなしの静かな曲に、美しいピアノ。そこから出てくる鋭いけれどもどこか儚い打ち込みのビート。

これで「あ、これは俺でも聴ける」と思い、2枚組を一気に聴いて聴き終わる頃には「本当に不思議だけど、テクノってこんなに心地良い音楽だったんだ・・・」と、今まで味わったことのない、ポワ〜っとした不思議な感情が心を埋め尽くしておりました。

世間の評判を聞けば「あれはテクノじゃない」とか「新しいことはやってないよね」とか、主に彼の作品をずっと追いかけていたファンの人達から、否定的な声も大きかったみたいです。

確かに、何が新しくて何が古いのかよーわからんけれども、この分野に疎いアタシのような人間が聴いても、普通に「音楽」としてカッコ良く聴けた。途中途中で美しいピアノや生音の弦楽器などをフィーチャーした曲が流れては来ますが、基本はやっぱり「ダッダカダッダダ!ダカスッコンコン!」のあのドラムンベースのビートがミニマルな展開で鳴り響く、古典的ともいえるテクノ・アルバムだと思います。

でもこの、無機質で一貫して冷たい質感の楽曲の中にじんわり沁みている優しさは一体何だろう?考えてみりゃあアタシは音楽的なジャンルでどうとか、刺激を求めてとかそういうことではなく、このアルバムを作ったエイフェックス・ツイン、もといリチャード・D・ジェイムスという人が、もう本当に音楽が好きで、自分を心から豊かにさせた音楽、つまりハウスやテクノはもちろん、ジャズやクラシックやロック、そして民族音楽に至るまでの全部への愛を、この2枚組の大作に目一杯詰め込んだんじゃなかろうかと思いながらこのアルバムを聴く度に胸にギューンと来て、何か切ない気持ちにさせてくれる優しさに浸る幸せを噛み締めております。

そして今「ドラッグス」を聴いても、不思議なことに全く懐メロになっておりません。それはきっと、このアルバムを作っていた時に音楽に捧げたこの人の情熱や愛情といったものの温度が、きっと最高に普遍的なものだったからに違いありません。うん、テクノのことは相変わらず全然分からないが、きっとそうなのだ。

このアルバムを最後に、13年にも及ぶ長い沈黙に入り、つい最近復活したということを考えると、今度は今の時点で話題になっている最新作を聴きたくなりますね。





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2017年09月26日

ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ L.A.M.F.

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ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ/L.A.M.F.

この前からロックンロール、ロックンロールと、このブログは結構やかましく言っております。

ロックンロールというのは、1950年代に生まれた音楽で、ブルースやR&Bをベースに、更なる楽曲の速さやノリの良さを追究した、非常に踊れる&分かり易い音楽であり、当然社会現象となるほどに若者を熱狂させた音楽です。

そしてこの素晴らしい音楽は、黒人と白人のミュージシャン同士が、同じ目的(つまりキッズ達を踊らせて騒がせるという行為)のためにガッツリ手を取り合って、ひとつのジャンルを築き上げた、史上初の音楽なのです。

えぇと、厳密にはジャズもそうなんですが、またちょっと違った話になりますのでここでは省略しますね。

で、その50年代を席捲したロックンロールが50年代の終焉と共に一気に衰退して、しばらくのインターバルを経て登場したのがロックというのは、皆さんもうご存知でありましょう。

で、ロックンロールは死んだのか?全部ロックに取って代わられてしまったのか?といえば、答えは当然「No」で、70年代にも80年代にも90年代にも、もちろん2000年代を経た今現在も「ロックンロールバンド」と呼ばれるバンドは無数に存在し、文字通りリズムをロックさせ、ロールさせたりしております。

んで、重要なのがこっち。彼らは「ロックンロール」と呼ばれますが、彼らの大半がやっているそのロックンロールは、1950年代のロックンロールそのまんまではなく、実は1970年代に新しく生まれ変わって復活を遂げた、新しい方のロックンロールなんです。

ん、この言い回しが適切かどうかは分かりません。が、ロックンロールは60年代の訪れと共に確かに一度直系と呼べる音楽的な継承が途絶えて、70年代にそのスピリッツを受け継ぐ若者達によって、ジーンズや皮ジャン、そして激しく打ち鳴らされる8ビートと、大出力のアンプで歪ませたギター・サウンドと共に見事な復活を遂げた音楽なのです。

「何の話や?さっぱり訳がわからん」

と、お思いの方もいらっしゃることでしょうから、話をこのまんま続けます。

ロックがアメリカやイギリスで、めまぐるしい進化を遂げていたのを見て、そのロックの生みの親の一人であるはずの男がこう言いました。


「ロックはいいが、ロールはどうした?どこに行っちまったんだロックンロールは?」


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そう、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズです。

キースはローリング・ストーンズの中で、シンプルな3コード、単音でパラパラ弾きまくらないソロで、ロックバンドの中で「ロックンロール・ギターのカッコ良さ」というものを体現したようなギターをずっと弾いておりました。

後を引くリフ、独特のルーズな間から生まれ出る引きずるような、転がるようなグルーヴ。

言葉にすればたったこれだけのギターから醸し出される、何ともダーティーな不良のカッコ良さ。

そう、キースは70年代になってもロックに目覚めた不良な若者達の憧れであり、そんなキースを、ストーンズのロックンロール・サウンドを慕うアメリカの若者達の中で、そのサウンドやライフスタイルの継承者的存在として、ニューヨーク・ドールズというバンドが出てきました。

このバンドには、ロックから難しく面倒臭いところをほぼ省いた、8ビートに3コードという演奏スタイルで出てくる音を、とにかくやかましく、そしてグラマラスに演奏すること”だけ”に全てを捧げたような、ストレートで、ちょっとキケンなカッコ良さがあり、非常にセンセーショナルな存在として話題になったんですね。化粧もしているし。

はい、このニューヨーク・ドールズは”パンクロックの元祖”とかも言われております。その理由はまたちょっと音楽的なこととは違うあれこれが入ってくるので、ここでは省略しますが、50年代ロックンロールへの、単純な原点回帰でもない、かといって小難しくもない、独特のラフなグルーヴとやかましいギターの轟音で酔わせてくれる、新しいロックンロールを、ハッキリとした形でドンと世間に見せつけたのがニューヨーク・ドールズです。

もっといえば、このニューヨーク・ドールズのギタリストとして、そんなロックンロール・サウンドをギャンギャン演奏していて、いつの間にか存在そのものがロックンロールと呼ばれるようになったのが、ジョニー・サンダースであります。

アタシがまだ十代の頃、とある先輩に

「ロックンロールって何ですかね?」

と訊いたら

「バカヤロウ、お前ジョニー・サンダース聴け!」

と言われました。

更に別の人に同じ質問したところ

「それはジョニー・サンダースだ」

と、ほぼ同じ意味の答えが返ってきました。

二度目に質問した人は、ちょっと優しい人だったので

「チャック・ベリーとかエルヴィスとか・・・」

と、モゴモゴアタシが言うと

「うん、彼らは50年代のオリジナル・ロックンローラーだけど、清志郎とかチャボとか、とにかく今ロックンロールやってるヤツらは、みんなジョニー・サンダースから影響受けてるし、ジョニー・サンダース大好きなんだよ」

と、優しく説明してくれました。

実際その後も「ロックンロールが好きだ」という人とはたくさん会って、色々話をしましたが、やっぱりジョニー・サンダースという言葉を口にした瞬間に、少年のようにキラキラした目になったり、エンジンかかったようにアツく語ったり「あぁ・・・ジョニー・サンダースはもう絶対だよね・・・」と、憧れの目一杯入った口調で遠い目をして答える人・・・とにかくみんなにとってジョニー・サンダースという人は特別な存在なのだということを、アタシは心底痛感するに至ったのです。




1.BORN TO LOSE
2.BABY TALK
3.ALL BY MYSELF
4.I WANNA BE LOVED
5.IT’S NOT ENOUGH
6.CHINESE ROCKS
7.GET OFF THE PHONE
8.PIRATE LOVE
9.ONE TRACK MIND
10.I LOVE YOU
11.GOING STEADY
12.LET GO


数々のカリスマ的エピソードとか、やっぱりそういう人らしく、結構早くで亡くなったとか、そういう話もありますが、コレを聴くと全てがぶっ飛びます。

ジョニー・サンダースがニューヨーク・ドールズを辞めて最初に組んだロックンロール・バンド「ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ」のデビュー・アルバム「L.A.M.F.」。

どこにも何にも細工なんてない、ただ荒く、ポップで、そしてやかましい3コードのロックンロール!

最初聴いた時は「いや、これはもうパンクでしょ」と思ったし、正直に「セックス・ピストルズをもっと泥臭くして、どこか切ない感じをふんだんにまぶした音だ」とも思いました。

ジョニー・サンダースは、この頃ライヴで使ってたマーシャルの3段アンプをレコーディング・スタジオに持ち込んで、そのままギターを繋げてガーンと鳴らしてたそうです。

当時の常識では、3段アンプはライヴで音量を稼ぐのと、見た目で派手なインパクト狙いということで、レコーディングではもっと音が聞き取り易い普通の箱型アンプを使うものだというのがあったそうですが、ジョニーはそんなこと気にしません。

「ライヴでいい音出るアンプなんだから、レコーディングでも使うの当然だろ?」

とすらも、多分言ってません。そう、ロックンロール、理屈じゃないんです。

音楽的なあれこれは元より、このアルバムに入ってるのは、熱くてカッコよくて、切なくて興奮する、そういう音楽の”本質”ですよね。本質だけがむせるような質量で「これでもか!」と入ってる。1977年の作品ですが、こういうのに古いも新しいもないんです、ただカッコイイんです。ロックンロール。



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2017年09月23日

ザ・フー ライヴ・アット・リーズ

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ザ・フ/ライヴ・アット・リーズ
(ユニバーサル)

「ライヴバンド」という言葉を最近よく聞きます。

読んで字の如く「スタジオ音源もいいけど、ライヴだと更に信じられないぐらいカッコイイ!もう死ぬ!」というバンドのことです。

いやぁ、世の中には実にカッコいいライヴバンドはいっぱいいるし、素晴らしいライヴ盤、それこそたんまりあります。

え〜・・・

で、今から全くミもフタもないことを言います。

それはですね

「ロックバンドは、大体ライヴ・アルバムがカッコイイ」

ということです。

だってほれ、ロックはやっぱりライヴですよ。

ビートルズだってストーンズだって、今どんなに大御所になって、スタジオで超大作を作ってるバンドやミュージシャンでも、レコードデビューする前は、ライヴハウスで一生懸命演奏して、そこから人気が出て段々ビッグネームになっていったんです。

だから「ライヴアルバムがよくない」ってこたぁないじゃないですか。みーんな最初はライヴバンドだったんです。

その中で

「じゃあ最強のライヴバンドは?」

と訊かれたら、最強かどうかはわからんけれども、とにかくスタジオ盤のファーストを聴いてカッコイイと思った時以上の衝撃をライヴ盤で聴かせてくれたザ・フーを皆さんにはオススメいたしましょう。






1.ヘヴン・アンド・ヘル*
2.アイ・キャント・エクスプレイン*
3.フォーチュン・テラー*
4.いれずみ*
5.ヤング・マン・ブルース
6.恋のピンチ・ヒッター
7.ハッピー・ジャック*
8.アイム・ア・ボーイ*
9.クィック・ワン*
10.すてきな旅行|スパークス*
11.サマータイム・ブルース
12.シェイキン・オール・オーヴァー
13.マイ・ジェネレイション
14.マジック・バス

*ボーナストラック


何てったってキャリアも長いし、作品毎に凄まじく進化していったザ・フーです。

しかし、つい最近になっても積極的にライヴ・パフォーマンスを行って、ライヴアルバムやライヴの映像作品なんかをガンガン出しているザ・フー。そう、どんなに進化しようが、どんだけ大御所だベテランだと世間からもてはやされようが、コノ人達の軸足は「気合い一発でみんなを沸かせるライヴ」そこにずーーーっとあって、その信念がブレたことは、今まで一度たりともありません。

そんなフーの、最初にリリースされたライヴ・アルバムが「ライヴ・アット・リーズ」。1970年に行われた大学でのステージであります。

常日頃フーの魅力というのは

「ポップな曲にド汚いサウンド」

だと思っておりますが、このアルバムはもー凄い!

スタジオでも爆音セッティングのピート・タウンゼントのギターは何の遠慮もなく派手に歪ませて、いかにもアンプ直フルテンの、ギャンギャンゴワゴワのファズ・サウンドだし、元から単なるリズムキープじゃなくてギターのコード弾きの裏でブイブイにリードを弾いているジョン・エントウィッスルのベースもギターに負けない音量で動き回ってるし、キース・ムーンのドラムに至ってはほとんど暴走のレベルでバカボコバカボコ景気よくやっております。

で、ロジャー・ダルトリーのヴォーカルも「え?ツェッペリンのロバート・プラントなんじゃない??」と思わせる高音振り絞り系のシャウトをガンガン炸裂させ、ファーストで感じていた「音のやんちゃな正統ブリティッシュバンド」という最初にイメージは、またしてもここで気持ち良く覆されました。

この時期のフーといえば、スタジオ盤ではアレンジの凝った大作の「ロックオペラ・トミー」なんかも作って、アルバム・アーティスト集団として急成長していた時期なんです。すなわち耳の肥えた音楽好きの鑑賞にも十分耐えられるような深い作品を作ってやろうと、そういう時期に

「はーいみんなー、ギターをアンプにつなげたぞー。おまえらどっかーん!!」

な演奏を、ライヴでは相変わらずやってたってのがもうね、カッコ良い。カッコ良すぎるんです。。。

もちろんこのアルバムにも、彼らの”進化”はしっかりと見て取れます。

それはつまり「それまでのロックンロール路線から、新しいハードロック路線を宣言した」とか、そういうことで、実際このアルバム聴いてると、当時彗星の如く表れて爆風を巻き起こしていたレッド・ツェッペリンのサウンドと似通ってるんですが、そういうことすら、何かもうこの爆音一発なサウンドと、ひたすらアツいパフォーマンスの前ではどーでもよくなってきます。

あと、このアルバムのジャケット、これ凄くカッコイイよなぁと思っていたら

「当時よく出回ってるブート盤の真似をしただけ」

という話をある日聞いて、フーのことますます好きになりました。











”ザ・フーThe Who”関連記事




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2017年09月16日

ザ・フー マイ・ジェネレーション

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ザ・フー/マイ・ジェネレーション
(Polydor/USM)


イギリスの3大ロックバンドといえば、ビートルズとローリング・ストーンズ、そして今日ご紹介する"
ザ・フーThe Who"であります。

そして「イギリス3大ロックバンドの中で、どうもよく知らない」と言われるのがフーであります。

揺るぎない世界観と、ロックを通り越してポップスとしても秀逸なスタンダードの数々を生み出したビートルズと、ロックンロールのカッコ良くて分かり易いイメージがそのまんまバンドにんったかのようなストーンズは、確かにもう名前を聞いただけで、音楽にそんな興味のない人でも「あ、これ」とピンとくるものがある、確かにこの2つは別格の中の別格と言っていいほどのスーパーバンドでありましょう。

で、ザ・フーですが、実は3大バンドの中で、アタシはこのバンドほどロック”が”好きな人(ロック”は”好きとかロック”も”好き、ではない)にアツく支持されているバンドはないと思います。そして、このバンドほど様々な音楽の要素を取り入れ、それらのエッセンスを信じられない高みにまで持って行ってサウンド化したバンドはなかろうと思っております。

時期毎に、アルバム毎に彼らは飛躍的な進化を聴く人に叩き付けたザ・フー。

そして初期のアルバムは、パンクロックの誕生に決定的な刺激と影響を与え、キャリアを通じてその演奏の根底には、ひたすらアツく衝動的なロックンロールの魂がたぎっている。

音楽が、とりわけロックが好きな人達が惹かれ、そしてこよなく愛してしまうのが、彼らのそんなピュアな衝動の部分なんです。

アタシが最初にザ・フーを知ったのは、音楽雑誌で

『世界で初めてギターを投げ、ドラムをブチ壊すという破壊的なライヴ・パフォーマンス行った』

という衝撃の記事を目にしたことです。

パンクの登場前にそんなイカレたことをするバンド、いたんだ!

と、そりゃもうワクワクしたもんです。

そしてアルバムを聴く前に、深夜の音楽番組で観た彼らのライヴ・パフォーマンスは、ヴォーカルがマイクを鎖鎌みたいにブングル振り回し、ギターの鼻のでっかいおっさんが飛び跳ねたり腕を大回転させてギターを弾き、ドラムがセットを蹴飛ばして前に出てくるんじゃないかというぐらいの勢いでジタバタ叩いてまして、でも曲はやたらポップで楽しくて「あぁ、コイツらおっかしいなぁ、キてるなぁ・・・」というのが最初の印象でした。

そん時に観た映像は、確か80年代のライヴだったと思います。有名な「ぶっこわしパフォーマンス」こそ拝めませんでしたが、十代のアタシに「ザ・フーはイカレバンド」という美しいイメージを植え付けるのには、十分過ぎるほどぶっ飛んだ映像でありました。


【収録曲】
1.アウト・イン・ザ・ストリート
2.アイ・ドント・マインド
3.ザ・グッズ・ゴーン
4.ラ・ラ・ラ・ライズ
5.マッチ・トゥー・マッチ
6.マイ・ジェネレイション
7.キッズ・アー・オールライト
8.プリーズ・プリーズ・プリーズ
9.イッツ・ノット・トゥルー
10.アイム・ア・マン
11.ア・リーガル・マター
12.ジ・オックス


丁度その時夢中になっていたジュン・スカイ・ウォーカーズが「マイ・ジェネレーション」という曲を出していたので「え?つうことはフーはジュンスカに影響与えてんの?すげー」と、すっかりミーハー根性丸出しで聴いた『マイ・ジェネレーション』。

これですね、ザ・フーが1967年にリリースしたファースト・アルバムなんですが、これが本当にハタチそこらの若者の作ったバンドのデビュー・アルバムなんだろうか?と、思わせるぐらいに完成度が高いです。

パッと聴き、ビートルズをもっと走らせて不良っぽさをプラスしたようなやんちゃな雰囲気で、そこにところどころ、R&Bのテイストが入っており「ポップな曲」「ノリノリの曲」「R&Bテイストなバラード(AGのジェイムス・ブラウンのカヴァー)」のバランスが実に絶妙でした。

いかにも向こう気の強そうなロジャー・ダルトリーのハスキーなヴォーカル、当時のギターアンプの限界の歪で、ガシャガヤゴワゴワ弾きまくるピート・タウンゼントのギター、バシャバシャと耳に刺ささるキース・ムーンの攻撃的なドラム、そしてそして、ライヴでは全く動かず、ただ黙々とビートを刻んでるように思えたジョンエントウィッスルの、まるでリードギターのようにうにょうにょゴンゴン動きまくるハイテクなベース(!)

もちろんこれはアタマの悪い中学生が、聴いたその日に分かったことではありません。

それでも「曲はポップなのに、サウンドは全然大人しくない。そして楽器バカウマ!」ということは強烈に感じました。

イギリスのバンドといえば、大体がブルースやR&Bをカヴァーしまくって、そこに独自の色を徐々に付けて行って個性が花開くといったバンドが、60年代は多かったと思いますが、フ−に関しては元々「ブルースをやろう!」といった力みがそんなになくて、デビュー・アルバムでジェイムス・ブラウンのカヴァー2曲を除いて全部の曲がオリジナル。これがフーの強みであり、後に”音楽的な影響をブラック・ミュージックに依存しないパンクロック”を生んだきっかけになった、と言われたら確かにそうだと納得の出来るサウンドであります。

いやそれにしても、このアルバムの破壊衝動と見事な歌心が同居してる音楽のカッコ良さったら一体どういうことでしょう。ザ・フーに関しては掘り下げてお伝えしたいことは、まだまだ無限にありますが、まずは一切の先入観とか、何となく大物バンドとかいうイメージをかなぐり捨ててこのアルバムを聴いてみてください。やんちゃでカッコイイっす。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 12:00| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする