2017年12月06日

オジー・オズボーン トリビュート〜ランディ・ローズに捧ぐ

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オジー・オズボーン/リビュート〜ランディ・ローズに捧ぐ
(ソニー・ミュージック)


洋楽を聴き始めの頃に知って、ギター覚えたての頃に聴きまくって、そのリフや凄腕のギターソロを何とかコピーしたいと思ったギタリストがいます。

それはランディ・ローズです。

はい、言わずと知れたオジー・オズボーン・バンドの初代ギタリストであり、ソリッドできらびやか、そして何よりメロディアスなギター・プレイでオジーをとことん刺激して、彼が「ヘヴィメタルの帝王」への道筋を歩むその第一歩を切り拓いた天才であると思います。

ブラック・サバスで成功はしたものの、ドラッグにアルコール、そしてメンバーとの不仲によって、クビ同然で脱退したオジーは、新たなる活動の地をアメリカに求めておりました。

「ハードロックは俺が作った」という自負と自身があったオジーでしたが、時は既に70年代後半で、果たして自分のやり方が、アメリカの若い奴らに受け入れられるのか?新たなバンドのメンバーとは、上手くやっていけるのか?色んな事を悩みながらのオーディションをしたオジーでしたが、会場であるホテルの一室にやってきた大人しい少年が、アンプにギターを繋いで軽くウォーミングアップしているのを見て

「君に決まりだ、よろしく頼む」

と、すぐさまメンバーに決めました。

「え?決まりだって?僕はまだアナタと曲を合わせてもないし、ちゃんと演奏もしていないのに・・・」

と困惑するランディ・ローズ少年(といっても華奢でかなりの童顔だったのでそう見えただけで実際は21歳)。

地元カリフォルニアでクワイエット・ライオットというハードロックバンドで活動しながら、母親が経営する音楽教室で子供達にギターを教えている、それだけの”ほとんど素人”でした。

実はこのオーディションにランディはそもそも乗り気ではなく友人ベーシスト、ルディ・サーゾから

「ランディ聞いたか?あのブラックサバスのオジー・オズボーンがギタリストを募集してるってよ!」

と、興奮気味に教えられても

「うん、僕は今ギター教室とバンドの練習で忙しいんだよ。それに有名なオジー・オズボーンが僕なんか相手にする訳ないじゃないか」

と、ほとんど消極的だったそうです。

しかし、ルディの再三に渡る説得と、母親の

「アナタも音楽で食べて行こうと思うなら、ショウビジネスの世界で長年やってきた人と会っておいた方がいいわ。きっと何かの役に立つ経験が得られるいい機会だから、オーディションを受けるというのではなくて、オジーという人に会ってくるぐらいの気持ちで一度行って来てごらんなさい」

という言葉が決め手となり、しょうがなくオジーとアポを取って、オーディションを受けたという話だったんですね。


ところがオジーは直感で「運命を感じ」て、すぐさまランディはギタリストとしてオジーと一緒にイギリスへレコーディングをするべく旅立つことになります。

ランディに「オジーのオーディションを受けなよ」と推薦したルディは、何とランディの推薦でベーシストとして、これまたオジーのバンドに加入しています。


オジーを得てからのランディ、いや、ランディを得てからのオジーの煌めきは、正に神がかっておりました。

オジーが「なぁ、ちょっと思いついたんだ」というちょっとしたアイディアでも、ランディはそれに的確なコード進行とリフを付け、サビからエンディングまで完璧に仕上げました。

元々譜面が読めて、音楽理論に精通し、何よりオジーのようなかなり特殊な性格の人間とずっと行動していても、いつもにこやかにふるまって周囲にもストレスを与えないランディの人格は、10歳近く年上でありながら、オジーをミュージシャンとしても人間としても成長させました。


オジーが元々持っていた、ブリティッシュ・ロック(ブルースが土台にある)のフィーリング、そして何よりブラック・サバス時代のへヴィで硬質な音楽性というものを素早く理解したランディは、その”オジーが築き上げたもの”のイメージを全く壊すことなく、より鋭角で手数の多いギター・プレイと、疾走感を増したアメリカン・ハードロックの手法で新たなステージへ引き上げました。




【収録曲】
1.アイ・ドント・ノウ
2.クレイジー・トレイン
3.ビリーバー
4.ミスター・クロウリー <死の番人>
5.フライング・ハイ・アゲイン
6.レヴェレイション <天の黙示> (マザー・アース)
7.スティール・アウェイ (ザ・ナイト) (ドラム・ソロ)
8.スーサイド・ソリューション (ギター・ソロ)
9.アイアン・マン
10.チルドレン・オブ・ザ・グレイヴ
11.パラノイド
12.グッバイ・トゥ・ロマンス
13.ノー・ボーン・ムービーズ
14.ディー (ランディ・ローズ・スタジオ・アウト・テイク)



その”オジーとランディが組むことによって生まれた新しいロック・サウンド”が、最高にアツい現場で鳴っている瞬間を集めたものが、このライヴ・アルバムであります。

80年代はヘヴィメタルの時代と言われますが、ここでランディが弾く、ザクザクとメリハリに溢れたかっこいいギターリフや、華麗な速弾きには、もうその新しい時代の呼吸が活き活きと躍動しております。

『アイ・ドント・ノウ』や『クレイジー・トレイン』の衝撃的なリフは本当にカッコ良くてインパクトがあって、どうやったらギターで弾けるようになるんだろうと思ってチャレンジしたら、実はそんなに難しいことはやってなくて「えぇ!?こんなにシンプルな指の動きで、あんなカッコいいリフになるの!?」と、仰天した記憶がありますし、『ミスター・グロウリー』や『グッバイ・トゥ・ロマンス』で、前者は荘厳で重々しいナンバー、後者はひたすら美しいバラードですが、どちらもランディの最高の情感が彩るメロディアスなソロによって、幻想を極めた美しい異世界に、意識を持っていかれてしまいます。

ブラック・サバスの代表曲『アイアン・マン』『パラノイド』もやっておりますが、コチラも原曲の曲調は全くいじってない、忠実なアレンジに関わらず、雰囲気はひたすらへヴィなサバスとは対照的な解放感に溢れていて、特に堰を切ったように溢れ出すギターのアイディアにはもう言葉がありません。

当然オジーもゴキゲンでノリノリであります。ソロ・アーティストの”オジー・オズボーン”として、新しいハードロックの時代の先鋒に立つバンドとして、これ以上ない程に素晴らしいパフォーマンスがここに収録されております。

このバンド、スタジオ盤もこのライヴ盤も最高なんですが、ランディの早すぎる死によって、突如活動に終止符が打たれてしまうんです。

ランディが亡くなったのは1982年12月。そしてこの「トリビュート」というライヴ・アルバムがリリースされたのが1987年。蛇足ながらアタシがこのアルバムを初めて聴いたのが1991年。でも、その頃リリースされていた、他のアーティストの”新譜”のメタルやハードロックのアルバムと比べても、録音から10年の時間経過はほとんど感じませんでした。

ランディ・ローズのギターは、プレイ自体は非常に激しくて刺激的ですが、サウンドは繊細で構造もよく出来ていて、特に音色は極端な歪みやパワープレイに頼らない、このままのセッティングでロックならどんなジャンルでもいけそうなナチュラルな音なんですよね。この音はいつまでも心地良いし、多分いつまでも鮮やかに聴く人の耳に残るんだと思います。

そして感動と興奮のライヴが終わり、エピローグのように入っているラストの『ディー』。

これは楽屋にクラシック・ギターを持ち込んで練習してたランディが好んで弾いていたオリジナル曲です。もちろんランディ本人がクラシックギター1本で弾いてます。

夢中で聴いていた当時は「ランディ・ローズはこんな全然ジャンルの違う音楽もできるんだ、凄い」と思ってましたが、違うんですよね。ランディにとってはエレキを持って激しくロックする曲もクラシックギターで自己と向き合う曲も、そのメロディの中には同じようにキラキラした美しいものがあって、彼はそれを純粋に愛でていただけなんじゃないでしょうかね。

ランディ・ローズの深く純粋な音楽への愛情にも、思いを馳せて、また胸がいっぱいになっております。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年11月11日

ジャック・ブルース Songs for a Tailor

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ジャック・ブルース Songs for a Tailor
(Polydor)

今日11月11日は”ベースの日”です。

大体アタシは年がら年中甘いもののことばかり考えているような人間ですので

「え!?11月11日はポッキーの日じゃないの!?みんなでシェアハッピーしようよぉ」

としか思っていませんでした。

ほらお前のそういうところよ!

と、いつも言われるんですが、皆さんどうもこんにちは。

いやぁ、今日はベースの日ですねぇ、ずっと前からアタシはこの日に何をレビューしようかと、実はずっと考えていたんですよ〜(今更感)。

で、何で11月11日はベースの日なんだと言いますと、「1」という数字を弦に見立てて、これが4本並んでいるのが、丁度弦を張ったベースみたいでよろしいと。

あ、ベース業界の方すいません、今、ちょっとバンジョー業界とウクレレ業界の方からクレームが来てるようなんで、そこ対応しといてください。はい、すいませんねぇ。

今日は朝からそんな感じで、音楽好きが集まるネットでは、それぞれが好きなベーシストについてアツく語ったり、音源をシェアしたり、いい感じに盛り上がっているようでございます。

うん、好きなベーシスト?いっぱい居過ぎて「この人が最高!」と絞れる訳なんてないのですが、ベースと聞いて真っ先に一人、ポーンと思い付く人はおります。

それがこの方、ジャック・ブルースです。


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ジャック・ブルースといえば、言わずと知れた英国ロックのスーパーバンド、クリームのベーシストでありヴォーカリスト。その3ピースという最小の編成から放たれるポップな楽曲にパンチの強い即興性を宿した演奏の中心となっていた御仁です。

クリームを知った十代の頃は、やっぱりエリック・クラプトンのギター・プレイを必死で聴いていたので、実はその時はジャック・ブルースという人の凄さに関しては全く気付きませんでした。それどころかクリーム聴いていて、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーに関しては「クラプトンのバック」ぐらいに思っていたんですね(ついでに白状してしまうと、ヴォーカルも全部クラプトンだと思ってました。嗚呼!)。

ジャック・ブルース、本当にカッコイイなと、いきなり思ってしまったのが、20代になったある日、雑誌で知ったアメリカン・クラーヴェ(ニューヨーク在住のラテン系の人達によるアンダーグラウンドなジャズその他いろいろをやっているレーベル)のいくつかのアルバムに、何とあのジャック・ブルースが参加しているよという文章を何かで読んだ時でした。



正直期待はしてなかったです。アルバム買った動機も「何だかいい感じにアヤシゲなラテンジャズのレーベルに、デヴィッド・マレイとかアート・リンゼイとか、おお、スティーヴ・キューン・トリオの変態ベーシスト、スティーヴ・スワロウも参加しているではないか!」というものでしたから。

しかし、このキップ・ハンラハンという人(アメリカン・クラーヴェのオーナーでありバンドリーダーっす)の「ヴァーティカル・カレンシー」で

『ぬはぁ!ジャッッッッッック・ブルーーーース、すげぇえぇ!!』

と、興奮して以来、すっかりアタシはハマッてしまい、幸いその当時の職場には、ロック先生がたくさんいらしたので、ちょいと興奮気味に話をしたら

・ジャック・ブルースは最初からロックのカテゴリに収まらない幅広い音楽性を持っていたからナメるな

・特にソロになってからはどのアルバムも見事に方向性が違う、ここをナメるな。

・キップ・ハンラハンと組んだヤツは、どれもジャックの幅広い音楽性に合った素晴らしいアルバムばかりだからナメるな。

・ジャズとかR&Bとか色んなジャンルに手ぇ出してるけど、ベースの音そのものはクリーム時代のブリブリゴリゴリから全く劣化してないことをナメるな。

と、色々と教えてもらいました。

アタシの中では、元々ロック畑、そしてブルースにバリバリ影響を受けたスタイルから始まって、クリーム解散後にソロ活動の中で色んなジャンルのミュージシャン達と出会い、音楽の幅を拡げていったのかと思ったら、実はそうではなく、クリームの時代からかなりジャズに影響されたスタンスでベースは弾いていたんだと。

それからジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーによる、即興のインタープレイのどうとかいう、やや難しい話になってきたので、ポカーンとしてたら

「まぁまぁ、とりあえずクリーム解散直後にリリースされたジャックのファーストを聴きなさい」

とのことでした。



【収録曲】
1.Never Tell Your Mother She's Out of Tune
2.Theme from an Imaginary Western
3.Tickets to Waterfalls
4.Weird of Hermiston
5.Rope Ladder to the Moon
6.Ministry of Bag
7.He the Richmond
8.Boston Ball Game 1967
9.To Isengard
10.Clearout
11.Ministry of Bag(Demo Version)
12.Weird of Hermiston(Alternate Mix)
13.Clearout(Alternate Mix)
14.Ministry of Bag(Alternate Mix)


これ凄いんですよ。

いきなり16ビートのどこのソウルバンドか!と思わせる曲から始まって、サザンロックなバラード、アコースティックでいかにもブリティシュ・フォークな曲、骨太なロックンロール、プログレなどなど、1枚のアルバムに、本当によくこれだけ詰め込んだなぁと思えるぐらい豊かで幅広い音楽が、何の不自然も作為もなしに、センスよく収まってるんですよね。

で、こう書くとジャックのベースは大人しくなって全体の調整に回ってるんだとうかと思いますが、プレイそのものは見事に逆で、どの曲でもこの人特有の、ガリガリゴリゴリしたミドルの効いた音で、クリーム時代以上にブリブリ弾きまくっておるのです。

しかも、16ビートのソウル/R&B系の曲でのベース・ラインなんか聴くと、いわゆる黒人ベーシストの軽やかに跳ねてゆくようなノリと全く違って、全力でぶつかりながら強引に山とか越えてゆくような、かなりやんちゃでロックな気骨の感じるやり方で、聴いていてすこぶる気持ちがいいんですよ。

ジャックは2015年に亡くなるまで、とにかく色んなセッションに顔を出し、その都度色んなことを試みていて、ソロ名義のアルバムは実に20枚以上に及びます。

ベーシストっていうのはよく「後ろからバンド全体を見ているからバンド解散後はプロデューサーとして成功する人が多い」なんて言われますが、ジャックの場合はやっぱり自分が楽器持って、絶えず変化している音楽の最前線でハジケていたかったんでしょうね。つくづく根っからのベーシストだと思います。そしてその姿勢って死ぬほどカッコイイです。




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2017年10月30日

ジミ・ヘンドリックス エレクトリック・レディランド

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ジミ・ヘンドリックス/エレクトリック・レディランド

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しておりますし、アタシもここへきて”エクスペリエンス時代のジミヘン”のことを書きながら痛感しております。

このブログのポリシーは

「採り上げたアーティストのことを知らない人に、どれだけ興味を持ってもらえるようなレビューを書くか」

でございます。

だからいくら有名で、洋楽ロックにそこまで興味のない人でも名前ぐらいは聞いたことあるというジミ・ヘンドリックスという人のことも、なるだけ分かり易く興味を持ってもらえるようにその音楽の素晴らしさを書いて行きたいと思うのですが、いざじっくりとジミヘンを集中して聴いてみると、頭で考えていたことが綺麗にすっ飛んで「すげぇ!」「やっぱ天才!」という、そのものズバリではあるんですが、どうも主観的な言葉しか出て来ないので困っております。

そうなんです、端的に言ってしまえば、ジミヘンという人のカッコ良さっていうのは

「他の誰とも似ていない、どれかひとつのジャンルに納めようとしても、必ずどこかからはみ出してしまうその音楽性の広さ」

というのに尽きるんです。

だからよく「ロックギターの神様」と言われ、なるほどそうだと思っても、そのギター演奏の中にはブルースもあり、ジャズっぽいところもあり、ロックともブルースともジャズとも言えないような突拍子もないアイディアがどこかで必ず出てくるので、その最高のほめ言葉ですら、彼を形容するには何とまぁ陳腐なんだろうと、後で必ず思ってしまいます。

だもんで、ジミ・ヘンドリックスという人は、「このようにカッコイイのだ」と、簡単な一言で断言してしまえるアーティストではなく、聴いた端々で「あ、これカッコイイ!」という瞬間がいくつもいくつも出てくるアーティストだと思います。

あぁ、こういう話をするとキリがありませんね〜。

最初にジミヘンを知って25年の間、ずーっと「この凄さの正体は何なんだ?」と思って聴いておりますが、未だに正体が掴めない。でもその”掴めないこと”がアタシの想像力をいつまでも刺激してくれる。素敵ですね。

さて、今日もそんなカッコいいジミヘンのアルバムをご紹介しましょうね。


【収録曲】
1.恋の神々
2.エレクトリック・レディランド
3.クロスタウン・トラフィック
4.ヴードゥー・チャイル
5.リトル・ミス・ストレンジ
6.長く暑い夏の夜
7.カム・オン(レット・ザ・グッド・タイムス・ロール)
8.ジプシー・アイズ
9.真夜中のランプ
10.雨の日に夢去りぬ
11.1983
12.月夜の潮路
13.静かな雨、静かな夢
14.焼け落ちた家
15.ウォッチタワー
16.ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)


ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚目のスタジオ・アルバムにして、ジミヘンが生前にリリースしたスタジオ・アルバムとしては最後の作品になってしまった「エレクトリック・レディランド」です。

人によってはこのアルバムこそジミヘンの最高傑作、ロックでブルースでサイケデリックな世界観と、宇宙レベルの超絶なギター・プレイが奇跡の調和を見せながら最大限の威力で炸裂したジミ・ヘンドリックス芸術の集大成と言う人もおります。

オープニングのワウを聴くだけでほとんどの人が「あ、これジミヘン!」と反応する「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」やボブ・ディランのカヴァー「ウォッチ・タワー」、サイケデリックなジミヘンといえばコレの「ジプシー・アイズ」など、ベスト盤やライヴ盤に入っていてもハイライトとなるような、名刺代わりの強烈な曲ばかり収録されておりますし、確かにセルフ・プロデュースでやりたかったことを自由に表現出来ているような解放感に満ちたギター・プレイ、曲によって必要なサウンドを提供し、演奏の厚みをグッと増す豪華ゲスト陣の参加などなど、このアルバムならではの魅力みたいなものが、彼の作品中では最高潮でありましょう。

アルバムがレコーディングされたのは、例によって前作「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」のレコーディングが終わった直後です。

この頃既にデビューしたイギリスを凌ぐ人気をアメリカで獲得していたエクスペリエンスは、大都市から中小都市まで、アメリカ全土をくまなく回る、かなりハードなコンサート・ツアーを行っておりましたが、そのツアーの合間を縫って、レコーディングは行われました。

で、この頃のジミヘンは、元々の「スタジオに引き籠るのが好き」という性格に更に拍車がかかり、ツアーの合間を見てはスタジオに色んなジャンルのミュージシャンを呼んでジャムセッションを行い、それを新曲のアイディアとして、片っ端からテープに録音しており、それはそのままエクスペリエンスという3ピースバンドの限界も徐々に形にするようになってしまいます。

ジャンルやセッション相手のスタイルに囚われることなく、斬新なサウンド・アプローチで音楽のあらゆる壁を軽々と乗り越えてゆくジミのプレイは、メンバー2人に「ちょっと待て、オレらもうついていけないかも・・・」という不安を抱かせました。

もちろんノエル・レディングもミッチ・ミッチェルも、ジャンルというものに左右されない、素晴らしい適応力を持ったミュージシャンです。

しかし、1968年の時点で、そんな彼らをもってしても、ジミの自由なプレイスタイル、それを具現化するためにスタジオにやってくるあらゆる出自のミュージシャン達とのセッションは大変なものでした。

それはデビューからずっとプロデューサーとして彼らを見てきたチャド・チャンドラーにしても同じことで、急激に注目を集めるジミと彼を取り巻く状況や目まぐるしく移ろう人間関係に嫌気をさしてしまい「エレクトリック・レディランド」制作中にチャドはプロデューサーの座を降りてしまいました。

現に「エレクトリック・レディランド」にゲスト参加しているミュージシャンの顔ぶれだけを見ても、スティーヴ・ウィンウッド、アル・クーパー、ジャック・キャサディ、デイヴ・メイスン、バディ・マイルス、フレディ・スミス、クリス・ウッド、スウィート・インスピレーションズ、ブライアン・ジョーンズ(ギターではなくパーカッションで参加)と、英国ロックからソウル/ファンク近辺までの多彩な顔ぶれです。

「エレクトリック・レディランド」は、ジミの斬新なアイディアに満ちたギターと、ゲスト陣を交えた自由なジャム・セッション風の曲展開、そして崩壊寸前のエクスペリエンスとの、テンションのギリギリの緊張感が「これ以上どこかにバランスが偏ると音楽的に崩壊してしまう一歩手前」のスリルが全編にみなぎっており、それがまたジミの最大の魅力

「何だかわかんないけど凄くカッコイイ!」

というあの感じを無限増殖させるんですね。

さて、ジミヘン初期の”エクスペリエンス時代”の3枚のオリジナル・アルバムを長々と紹介してきました。で、この際だからとこの数日、手持ちのジミヘン関連の全アルバムを聴きまくっておりますが、アタシの場合は「どれが好き?」と言われたら、やっぱり粘り気のあるファンクロックなカラーが強い「バンド・オブ・ジプシーズ」ではありますが「どれが凄い?」と聴かれたら、エクスペリエンス時代の3枚をオススメすると思います。

エクスペリエンス時代のアルバムはどう凄い?と言われたら

「何が凄いのかわからんけど凄いって思えるところが凄いんですよ」

と、やっぱり答えるでしょう。いやもうそう答えるしかないもの。



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2017年10月28日

ジミ・ヘンドリックス アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

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ジミ・ヘンドリックス/アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

(MCA/SMJミュージック)


はい、台風が近付いておりますが、今日もジミ・ヘンドリックスを皆さんにご紹介しながら、知ってるよーで実はよく分からないこの巨人の魅力について、一緒に考えて行きましょう。

彼のバイオグラフィ的なことに関しては、前回の「アー・ユー・エクスペリエンスト?」のところで書きましたので、そちらをまずはじっくりご覧頂くとして、本日はファーストとくれば順番的にセカンドだろうということで、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス2枚目のスタジオ・アルバム「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」です。

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスがデビューしたのは1967年で、2枚目となる本作がリリースされたのも1967年。

これはどういうことかと言いますと、このバンドはまずイギリスで前評判も上々の中、アメリカ・デビューも果たした。そいでもって「すげぇよ、誰もこんな音楽聴いたことがない!ウホッ!!」と、アメリカの聴衆もあっという間に沸かせてしまったんですね。

だからアルバムがリリースした後に、すぐさま次のアルバムの制作に取り掛かった。とにかくもうジミ・ヘンドリックス・エクルペリエンスの登場というのは、デビュー・アルバムがリリースされてすぐに「次が聴きたいぞ!」という声が起きるほどのセンセーションだったんです。

そして何よりも、その頃のジミはもう”次”へのアイディアが、アルバム1枚には収まりきれないほどに次々と出てきておりました。

そう、ジミヘンという人がつくづく凄いなぁと、アタシが関心するのは、ロック・ミュージシャンというのはある意味ライヴに比重を置いていて、その日々の集大成みたいな感じでアルバムを作るもんだったりするんですけど、ジミの場合はウルトラハードなツアーの合間を縫って、空いた時間は常にスタジオに入ってセッションを重ねつつ、新しい音の実験に余念がなかったことなんです。

で、スタジオとライヴでテンションのムラがまったくない。

つまりスタジオではまるでライヴのようなリアリティを演奏でダイレクトに感じさせてくれるし、ライヴでもスタジオで綿密に作り上げたサウンドを何事もなかったように当たり前に繰り出す。

今日もやっぱり”天才”という言葉はあまり使わないようにして説明しようと思いますので、この言葉使いませんが、やっぱりその思考回路というのはアタシら常人とは違う次元にあるような気がします。だって、どんだけテクニックがあっても、作曲やアレンジに力(リキ)入れても、いざ生で演奏するとなると、そういうのとりあえず置いといて、ノリと勢いに意識を委ねてしまうのが人間でしょう。

ジミヘンの場合は、ライヴでもスタジオでも明らかに飛んではいるけれども、音楽的にグシャってる領域には絶対はみ出さないんだ。イカレてるけど冷静で、冷静だけどしっかりイカレてるというか・・・。

うむむ、この辺のことを考えてしまうと、もう”ジミの泥沼”とアタシが呼んでいる思考領域に意識持っていかれてマズいことになってしまうので、こういうことはこれから先もジミヘンを聴く毎に取り出して、一生かけてじっくり考えましょうか。答えは出らんと思うけど・・・。

さて、そんなこんなでジミヘンがデビューからソッコーでニュー・アルバムをレコーディングして世に放った1967年、この年ロックの世界ではひとつのキーワードが世間を侵食しておりました。

それはつまり「サイケデリック」という言葉です。

サイケデリックというのは、色々な説がありますが、とりあえずは薬物、特に幻覚作用のあるドラッグでハイになり、その時の視聴覚で捉えたものを表現するアートのことと、ぼんやり理解しておけばいいでしょう。

派手な原色がぐにょーんと混ざりあがったマーブル模様とか、ともかく派手な色彩感とか、音楽ではエコーとかファズとかトレモロアームを使ったギターの「ぐぎょーん」だとか、そういう奇妙に歪んだものです。

カルチャーとしてのサイケデリックは、60年代のアメリカやイギリスのアンダーグラウンドシーンで大いににぎわっておりましたが、それが当時の若者文化そのものの代名詞となったのが、1966年にビートルズがリリースしたアルバム「リボルバー」です。

ドラッグによる幻覚体験を極めて忠実に再現しようと、様々な音響効果を駆使した結果、奇妙な”違和感の快楽”を聴き手に覚えさせる、ビートルズのアルバムの中でも最も実験色の濃いものですが、ロックを代表するスーパー・バンドのサイケデリック宣言(?)によって、時代の潮流は一気に変わり、それまでオーバーグラウンドで健全な音楽をやっていたアーティスト達ですら、程度の差はあれ、何がしらサイケデリックを感じられる作品を世に出すようになりました。

で、そこにタイミング良く登場したのが、過剰とも言える音響効果をバリバリに生み出してフツーに演奏していたジミヘンです。

彼はサイケデリックの申し子であるかのように世間でもてはやされ、また、今もそのように信奉されていることも多いのですが、ジミの場合は、元よりサウンドであり得ない効果を得ることに異様な情熱を燃やしていたし、その幻覚的なサウンドは、サイケが流行っていようがなかろうが、多分関係なかったんじゃないかと思います。

たまたま時代がそうで、そういったトレンドの方が彼の音楽に接近して、彼の求めているもののどこかにピッタリと符合したと。





【収録曲】
1.EXP
2.アップ・フロス・ザ・スカイズ
3.スパニッシュ・キャッスル・マジック
4.ウェイト・アンティル・トゥモロウ
5.エイント・ノー・テリング
6.リトル・ウィング
7.イフ・シックス・ワズ・ナイン
8.ユー・ガット・ミー・フローティン
9.キャッスルズ・メイド・オブ・サンド
10.シーズ・ソー・ファイン
11.ワン・レイニー・ウィッシュ
12.リトル・ミス・ラヴァー
13.ボールド・アズ・ラヴ


いかにもサイケデリックなイラストが施されたジャケットからも分かるように、このアルバムでジミがファーストから行っていた実験的な音作りは更なら深みに到達しております。

1曲目から凄まじいフィードバック・ノイズが炸裂し、楽曲の中では歪みの他に今で言うコーラスやフランジャーなどの先祖となる揺れ系エフェクター”ユニヴァイブ”の使用、2台のテープマシーンを使ったサウンド・コラージュなど、あらゆる最新技術を使ってのやりたい放題なんですが、それでもギター・プレイそのものは決して音楽的な破綻をきたさず、彼の根っこにあるR&Bのフィーリングをたっぷり含んだロックギターであります。

ジミのプレイはよく”宇宙的”と言われますね。

それは収録時間の制限がなければどこまでも無限に即興演奏が出来そうな、スケールの大きなソロ・プレイに依るところはもちろん大きいと思いますが、リフや歌ってる時のバッキングの、丁寧かつメロディアスなフレーズから感じさせるイメージの豊かな拡がりみたいなものにも言えるなぁと、最近アタシは思っております。

そして、音作りにおいてはサイケで型破りな”実験”が行われているにも関わらず、楽曲そのものはポップな親しみやすさ、2分から3分の収録にキッチリ収まる完成度の高さが実はこのアルバム最大の魅力です。

バラード名曲として多くのカヴァーを生んだ「リトル・ウィング」「キャッスルズ・メイド・オブ・サンド」「ボールド・アズ・ラヴ」がやはり楽曲として出色でありますね。そしてノエル・レディングがヴォーカルを取っただけで、いい感じのブリティッシュ・ロックになる「シーズ・ソー・ファイン」など、ギター・プレイだけじゃない作品としての懐の深さがあって、実に飽きさせません。

そんなわけでアタシは相変わらず「ジミヘンってやっぱり何か意味不明の凄さがあるー」と思ってます。それはつまり言葉では言い表せない音楽的な密度の濃さなんじゃないかと思います。







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2017年10月25日

ジミ・ヘンドリックス アー・ユー・エクスペリエンスト?

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ジミ・ヘンドリックス/アー・ユー・エクスペリエンスト?

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しております。

うん、ジミヘンはそりゃ凄い、カッコイイ、アタシだってジミヘン聴いて何度「うっひゃー、ありえん!」と叫んだことか、そんな体験をストックするほどのスペースが、心の中にはもうほとんどないぐらい衝撃を受けました。

でもね皆さん、ここでアタシからお願いです。

「ジミ・ヘンドリックスは天才だ!」「エレキギターの偉大な革命家だ」とかいう世間の声は、まだジミヘンを良く知らない、聴いたけどそんなに?って方は、この際思い切って無視して頂きたいのです。

はい、やっぱりジミヘンだろうがジョン・レノンだろうが、やっぱり音楽なんですよ。

何よりも最初に「この音楽いいな〜」ってのが先に来て、次にアーティストにスポットが当たって、天才とか偉大とかグレイトとかそういうのが来て欲しいんですね。単純に音楽が好きな人間としては。

アタシの場合は、ジミ・ヘンドリックスと出会ったのは16の時で、そんとき今も親友してますが、同じ学校でギター弾く男と意気投合して、ヴァン・ヘイレンがどうのスティーヴ・ヴァイがどうの、イジー・ストラドリンがどうのマーシーがどうのと、ギター話に毎日のように明け暮れてたんです。

で、当然ギター話をしてるから、ジミヘンの話にもなります。

でも聴いたことないから

「ジミヘンってヤバいよなぁ、ギター燃やす人だろ?」

ぐらいの知識で盛り上がるしかなかったんですね。

その時、ソイツの家でジャケットに惚れて買ったのが「ジ・アルティメイト・エクスペリエンス」っていうベスト・アルバムで(その時の話はコチラ)、それを聴いた最初の感想は

「正直よくわからん、よくわからんけど何か凄い!」

でした。

何が凄かったのか?乏しい音楽知識と、まだ初心者も初心者なギターの腕前ではそれすらも分からなかったけど、あえて言うなら

「何をどうやって弾いてるのかも、どうやったらこういう音が出るのかもさっぱりわからん!」

だったんです。

よくジミヘンを聴いていきなり雷に打たれたような衝撃を受けたとかいう話を聞きますが、それはもしかしたらアタシなんかよりずっとずっと年上で、ジミヘンの時代とほとんど変わらないギター環境(アンプとかエフェクターとか、そういう技術面での話)の音楽と、キチンと聴き比べることが出来たからなんじゃないかと思うんですね。

少なくとも1990年代以降の音楽機材は、ハイゲインのアンプや物凄いぶっ飛んだ効果音とか出せるエフェクターとかは普通にあったし、録音技術も向上してて、オーバーダビングも、音を派手にするためのイコライジングもほぼ自在でした。

だからむしろその頃高校生のアタシにとっては、ファズのゴワゴワした音とか、アナログディレイのモコモコした音とか、ハイ・トーンでもデス声でもない歌声とか、超高速でもないリズムとか、むしろ「あぁ、昔の音楽だな」としか思えなかったんです。

ちょっと読んでいる皆さんを混乱させてしまうかも知れないけど、ちょっと後からジワジワきたのが

「そんな昔の音だから何か凄い!」

という、何だか不思議な衝撃です。

さて、

さてさてさて・・・。


ここまで読んでいい具合に頭が混乱したそこのアナタ、ジミ・ヘンドリックスを聴いてみませんか?


えぇと、最初で言えば良かったのですが、何でかっつうとジミヘンの魅力って、やっぱり何と言っても「そのわけのわかんなさ」であると、ズバリ思うんですよ。この人のギターを使っての表現の突拍子のなさ、やりたくてしょうがなかったのは分かるけど、何でそうなった感というものは、何十年付き合ってもやはり強烈で、その強烈さというのは紋切型の「天才」とか「革命児」とかそういう言葉の何倍も生々しい説得力があるんです、はい。






【収録曲】
1.フォクシー・レディ
2.マニック・デプレッション
3.レッド・ハウス
4.キャン・ユー・シー・ミー
5.ラヴ・オア・コンフュージョン
6.アイ・ドント・リヴ・トゥディ
7.メイ・ディス・ビー・ラヴ
8.ファイア
9.サード・ストーン・フロム・ザ・サン
10.リメンバー
11.アー・ユー・エクスペリエンスト?
12.ヘイ・ジョー
13.ストーン・フリー
14.パープル・ヘイズ
15.フィフティ・ファースト・アニヴァーサリ
16.ジ・ウィンド・クライズ・メアリー
17.ハイウェイ・チャイル

で、1967年発表の、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・アルバム「アー・ユー・エクスペリエンスト?」です。

ジミヘンはアメリカ北部の都市、シアトルで生まれた黒人でありますが、実はお母さんはチェロキー族の血を濃く引くネイティヴ・アメリカンで、その絡みから母方の祖母の住むインディアン居留地で過ごすことが多かったようです。

それゆえに、幼少の頃からブルースやゴスペルにドップリだったというような、同世代かちょい上のブルースマンやソウル・シンガーにあるような、ブラック・ミュージックの強烈なバックボーンは持っておりません。

その代り、彼は少年時代からブルースやR&B、ロックンロールのレコードを熱心に聴き込んでおりました。

後に

「ブルースの基礎をすごく持っているのに、何をやってもはみ出してしまう奇妙なスケール感」

と評される彼のスタイルは、自室でブラック・ミュージックを中心にあらゆるジャンルの音楽を聴きまくり、それを覚えたてのギターでことごとく耳コピしていたからなんだろうなと思います。

10代でアマチュア・バンドを組み、徴兵で行った空軍でもバンド活動をして(この空軍バンドには、後に最後のバンド”バンド・オブ・ジプシーズ”のメンバーとなるベーシストのビリー・コックスがおりました)から除隊。

本格的に音楽の道に進みたかった彼はオーディションを受けまくって、アイク&ティナ・ターナー、リトル・リチャード、アイズレー・ブラザーズなど、当時の人気R&Bミュージシャン達のバックで経験を積みます。

ギターは上手かったのですが、それ以上に派手なアクションでギターを弾くパフォーマンスは聴衆からそれなりに注目を浴び、バンド・リーダーからは「あんまり目立つな」と注意されるといった「何かわからんが面白いヤツ」という彼のスタンスは、既にこの頃には出来上がっておりました。

もちろんジミは自分のバンドもバックミュージシャンの仕事と並行してやってましたが、こっちはどうもパッとしなかったようです。

そんな時に当時人気ロックバンドだったアニマルズのベーシスト、チャス・チャンドラーが「ユーいいね、イギリス行ってロックやらない?」と、声をかけたことが、一大転機になりました。

それまでR&Bの世界の住人だったジミにしてみれば

「ロック?・・・て何ですか、ロックンロールじゃないの?」

「イギリスって・・・行ったことないし、自分黒人っすよ?イギリスで演奏しても受け入れられるんスか?」

ぐらいの不思議な話でしたが、チャドに「まぁまぁ」と一方的に説得されて渡英して、そこで「まあまあ」と行われた「ジミ・ヘンドリックスのバンドのオーディション」を通ってメンバーになったのが、ベースのノエル・レディングとドラムのミッチ・ミッチェルという白人青年2人。

ミッチ・ミッチェルに関しては、そのパワフルでキレの良いドラミングは早くから注目され、セッション・ミュージシャンとして活躍している時にザ・フーの結成時にドラマー候補として名前が挙がったほど。

で、ベースのノエル・レディングですが、彼は元々ギタリストとして、何と17歳の頃からプロとして活躍しちた凄腕で、実はジミヘンのオーディションをアニマルズのギタリスト・オーディションだと思って参加したところ、いきなりベースを持たされて、しかしそれでも完璧なプレイでジミとチャドのド肝を抜いたと云われております。

R&Bで鍛え上げたジミと、直前まで凄腕ギタリストだったベーシスト、そしてロックの正統実力派ドラマーという、全くバックグラウンドの違う3人が(ジミにって)異国であるイギリスで結成した、このバンドが”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”なんですが、この異色の3ピースが放つサウンドは、最初から同時代のどのバンドとも全く違っておりました。

何がどう違うのか?これはぜひ皆さんに聴いて頂いて、できれば同時代の他のバンドと聴き比べてください。

ジミのギターのサウンドや奏法など、専門的に聴けばそれこそ一冊の本に出来るぐらい色々と出てきますが、これだけは強調しておきたいのが、歌、ギター、ベース、ドラムの4つの音が、セオリー通りの

「歌が真ん中、ギターが横、ベースとドラムが後ろでリズム」

という形ではないんです。

全部の音が同じ場所で、同じ質量で溶け合って譜面のない楽曲を同時に即興演奏しているような自由度の高い演奏でいて、楽曲が

・タテノリの疾走する曲

・ブラック・ミュージックの影響色濃いファンキーな曲

・美しいバラード

と、それぞれ綺麗に際立っておるんです。

しかもそれが、デビュー作の時点でもうほぼ完成された形でアルバムに収まっているという所が、この”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”というバンドの、恐ろしいほどのカッコ良さなんです。

タテノリの分かり易い曲”だけ”は入っておりませんので、もしかしたらいきなり聴いて分かる人は少数派かもしれませんが、ジミヘンの音楽って、少し置いて最初に「凄い!ヤバい!」がいきなり来て、それから何年か置きに別の角度からの「凄い!ヤバい!」が、何度も何度も飛んでくる音楽ですので、聴く人は一生刺激をもらえることは間違いないです。

アタシももう25年の付き合いになりますが「まぁジミヘンってこんなだよね」とかいうナメた気持ちになったことは一回もないです。てか、そうさせてくれません。なので一生かけてとことんまで付き合うつもりです。








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2017年10月22日

オリジナル・ナゲッツ

6.jpg
V.A/オリジナル・ナゲッツ
(ワーナー)


生きていると色々あって、大好きな音楽もちょっとキツい時があります。

でも、そんなクソッタレな気分の時もアタシは

「かっこいい音楽はパンク!」

という信念を持ちつづけ、音楽を愛してきました。

「パンク」という言葉を、アタシは1970年代に出てきたパンクロックだけを指すのではなく、ひとつの思想や姿勢の現れを示す言葉として使っております。

「カッコイイ!!」と思ったらブルースもパンクだし、ジャズもパンクだし、ソウル、レゲエ、ハウス、民俗音楽、ポップスだってクラシックだってみーんなパンクです。

じゃあ”パンク”って何なの?

はい、パンクというのは

「今あるものをぶっこわす」

「概念とか方法とか、そういう既存のものからはみ出す力」

のよーなもんだと、アタシ思っています。

「こうかな?」「これはこうだろう」

と、思っているユルい気持ちをスカーンとぶっこわしてくれる音楽、知らないものに触れた時のピュアな興奮や感動、いいですね。そういうものをこのブログで皆さんに今後もじゃんじゃん紹介していきたいと思っております。

というわけで、今日はガレージ・ロックであります。

ガレージ・ロックは、パンクロック誕生のおよそ10年前にアメリカで誕生した、まぁいってみればパンクのご先祖さんみたいな音楽なんですが、この時代たまたま”パンク”という言葉がなかっただけで、これはもう立派なパンクロックと言っていいでしょうね。

ロックンロールが衰退した1960年代、イギリスで50年代のロックンロールやブルース、R&Bに影響を受けた若者達がロックというものを色々と試行錯誤しながら生み出していったことは、皆さんご存知の通り。

その中からビートルズやローリング・ストーンズ、クリームなんかが人気バンドとして頭角を現しました。

これを聴いたアメリカの若者達が

「やべぇ、クールだ!オレらもこんなことやろうぜ!!」

と、あちこちで触発されることによって、アメリカにも独自のロック・シーンが誕生することになるんですが、このシーンが最初に産声を上げたのが、青少年達の自宅ガレージの中だったんです。

何でかっつうと、そこはほれ、エレキギターとかドラムとかをジャンジャカドンドコやると騒音が出るでしょう。

アメリカって国の住宅は、ほとんどが都市部から離れた郊外にありまして、で、やたら土地は広い訳ですから、自宅ガレージで大音量をやかましく鳴らしても、さほど問題にはならなかったんですね。

で、ヤツらはやっちゃうんです。

ガレージなのをいいことに、ギターアンプのツマミをじゃーっと最大にして、アホみたいな音量にするわけです。

大体ロックなんてのは、若者にとっては「やかましい音で、どんだけ騒げるか」という音楽であり、そこはビートルズもストーンズもアメリカの若者達の心理と全く変わらなかった訳です。

でも、やっぱりちゃんとした会場で演奏したり、レコードをキッチリ作るとなると、それなりにバランスってものが必要になってくるでしょう。だからメジャーなイギリスのバンド達は、やかましくやるけれども、曲や歌がちゃんと聞こえるように、そこは調整していた。

でもアメリカ人はそうじゃなかった。

アイツらアタマおかしいから若さとエネルギーに満ち溢れた彼らは、外で演奏する時も自宅ガレージで作ったサウンドをちゃーんとフルに出して、で、客もアタマおかしいからオーディエンスもその熱意に応えてキッチリ盛り上がっていた。もちろん演奏する店の主は頭を抱え、時につまみ出し、大人達は困惑し、学校は「ロック禁止」の通達を何度も出した。でも、そんなことぐらいで一度火が点いたスピリッツが消える訳がない。

演奏がそれなりに評判を呼び、そこそこの小遣い銭を手にしてもしなくても、ガレージバンドの連中は「もっとイカレた音」に手を出します。

すなわち開発されたばかりの歪み系エフェクター”ファズ”や、アナログエコー等の機器であります。

この頃のエフェクターには正しい使い方なんてない。ひたすらひとつかふたつぐらいしか付いてないツマミでもって「元音とかけ離れた音」を出すのみ、という実にアナクロな使い方をそれぞれ勝手に極め、ゴワゴワに歪んでボヨボヨにエコーかかって、キンキンにフィードバックするという、ギターの”更にやかましい音”というのが生まれました。

で、ガレージバンドってのは面白いなぁと思うのは、曲はビートルズやストーンズなどのUKサウンドに影響を受けたポップなやつなのに、サウンドがところどころおかしい、いや、モノによっては明らかにぶっ飛んでいて、50年前の音楽のくせに、いちいち聴く側の常識とかそういうもんに、助走付きで揺さぶりをかけてくる。

古いとか新しいとかじゃあないんですね、このはみ出し感、破れかぶれ感に「あぁパンクだなぁ、どうしようもねぇなぁ」という”粋”を感じてしまうんです。

ガレージバンドというのは、そんな感じの、価値観が根本から何かおかしい、アメリカンロックの偉大なるアマチュアリズムの集大成なんです。

というのも、このすぐ後にアメリカでも”ロック”というものがちゃんと形になってきて、クオリティの高いものがどんどん出てきてそれらがシーンの潮流を決定付けてゆく訳で、ガレージはあくまで「ロックの連中の下積みの頃やってた音楽」みたいになって徐々に消えてゆくんですね。或いはアンダーグラウンドなサイケシーンの底流に潜伏して、パンクロックの登場まで息を潜めていた。

だもんで”ガレージロックのバンド”と言っても、ロックの表舞台で派手に活躍したバンドはほとんどおりません。超絶無名な、ほとんど一発屋みたいなバンドの、まー気持ちいいぐらいのオンパレードです。

後にイギリスや日本のコレクターが「アメリカのガレージは面白い」と注目して、7インチレコードの値段がすごいプレミアになったりとか、そういう売れ方をしたんですがちょっと待って、そんなマニアックなところだけにこの素晴らしくパンクで実に分かり易くノれる音楽を仕舞い込んでいていいのだろうか?と、アタシはいつも思うんですね。





【収録曲/アーティスト】
1.I Had Too Much To Dream (Last Night)/The Electric Prunes
2.Dirty Water/The Standells
3.Night Time/The Strangeloves
4.Lies/The Knickerbockers
5.Respect/The Vagrants
6.A Public Execution/Mouse
7.No Time Like The Right Time/The Blues Project
8.Oh Yeah/The Shadows Of Knight
9.Pushin'Too Hard/The Seeds
10.Moulty/The Barbarians
11.Don't Look Back/The Remains
12.An Invitation To Cry/The Magicians
13.Liar,Liar/The Castaways
14.You've Gonna Miss Me/The Thirteenth Floor Elevators
15.Psychotic Reaction/Count Five
16.Hey Joe/The Leaves
17.Romeo&Juliet/Michael&The Messengers
18.Sugar And Spice/The Cryan Shames
19.Baby Please Don't Go/The Amboy Dukes
20.Tobacco Road/Blues Magoos
21.Let's Talk About Girls/Chocolate Watch Band
22.Sit Down,I Think I Love You/The Mojo Men
23.Run,Run,Run/The Third Rail
24.My World Fell Down/Sagittarius
25.Open My Eyes/Nazz
26.Farmer John/The Premiers
27.It's-A-Happening/The Magic Mushrooms


だもんで皆さん、ロックが好き、エレキギターのジャーン!が理屈抜きで好きなら、その源流にしていっちばん濃いのがいっぱい詰まっているガレージを聴きましょう。

1972年に編集され、世に出された「ガレージコンピのパラダイス」ともいえる”ナゲッツ”!

これはもう、これ聴けばガレージのオイシイところは大体聴けるっつう最高なコンピなんですよ。

パティ・スミスのバックでギターを弾いていたレニー・ケイという、ロックを心から愛しているいい男が、好きなバンドを集めたオリジナル・カセットを元にして、エレクトラ・レコードというメジャーな会社から、気合いの入ったLP2枚組で出したけど、実はあんまり売れなくて、1976年にふたたびジャケットやら何やらリニューアルして出したけど、これもあんま売れなくて、めげずに96年だったかな?CD4枚組のボックスにしたら、当時日本ではギターウルフとかミッシェルガン・エレファントとかのおかげでサイケやガレージなんかのルーツ・ロックに興味を持つ若い人(はぁいアタシです♪)が結構飛びついて、やっとこさ「これはヤバイ!」と正当な評価を得るに至り、その後のロック系コンピや、インディーパンクのプロモーションなんかにも、実は多大な影響を与えたという、素敵すぎるアルバムの、オリジナル仕様での復刻盤です。

ここに収録されてるのは、どのバンドも見事に60年代の一瞬を若さと勢いだけで突っ走り、消えていったバンド達。でも、そういったバンドならではの、全然作為とかのないピュアな音楽が聴けます。



(お試しでThe leavesの”Hey joe”。ザ・バーズ、ジミ・ヘンドリックスでおなじみのロック・クラシックスですが、もうね、この何も考えてない感が最高なんです)


The Shadows Of Knightの「Oh Yeah」とか、The Amboy Dukesの「Baby Please Don't Go」この辺はブルース・クラシックなんですが、全然深く渋くやろうとしていないドッカーンな感じがたまらんです。The Amboy Dukesはアメリカン・ハードロックの大物、テッド・ニュージェントが地元デトロイトで結成した最初のバンドなんですが、のっけからハウリングがコーーーーン!と言ってる捨て鉢な音で、もうアレですね、野人ですね。テッドは今も変わらんですね。

大体が「曲はポップで音はイカレて」という、実に気持ち良いぐらいのネジの飛び具合なんですが、演奏力の高い実力派として、Blues Magoosの「Tobacco Road」こっちは歪んだギターとサイケなオルガンに不思議な安定感があって、途中から変拍子でガンガン攻める、実に渋いアレンジとかあったりします。

色んな意味ではみ出して破れた、そんな青春の古傷みたいなガレージ・バンドの音楽。テクノロジーが進化した今現在の音と見事に対極なんですが、単なるアンティークじゃあないですね。いつまでもアツくてイカレてる、本当にパンクな音楽です。







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2017年10月14日

ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース

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ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース/Ginger Baker's Air Force
(Lemon)

1960年代後半から70年代初頭という時代の音楽というのは、本当に面白くて、何が面白いかって、この時代は全盛を極めていたロックが「もっと誰もやってないことを!」と、ジャズやファンクなど、ちょっと違うジャンルの音楽を取り込んで、個性的なバンドや面白いアプローチをするミュージシャンの百花繚乱状態だったんです。

で、更に面白いのは、そういうロックサイドの動きに敏感に反応したジャズやソウル界隈のミュージシャン達が「何だよ、オレらにも出来るんだぜぇ」と、次々と電気楽器を導入した大胆な”脱ジャズ”のスタイルでライヴをかましたり、作品をリリースしたことによって、互いに刺激し合う環境が整い、更に刺激に溢れたカッコイイ音楽、意表を突くジャンルレスな音楽が次々に生み出された。このフリーダムに尽きます。

特にロックとジャズを掛け合わせた「ジャズロック」というのが、この時期ぼちぼち出てくるんです。

今日はそんなジャズ・ロックの名作アルバムを紹介しますね。はい、ジンジャー・ベイカーが1969年に結成した大所帯バンド”ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース”のデビュー作にして、凄まじい熱気に満ちた最高にかっこいいライヴ・アルバムです。

さて皆さん、ジンジャー・ベイカーといえばほとんどの人が「クリームのドラマーだよね」と答えるかも知れません。や、かも知れませんじゃなくて、音楽好きの人なら、十割方九割はそう答えるでしょう。はい、クリームのジンジャー・ベイカーであります。

クリーム時代はジンジャー・ベイカー(ベース、ヴォーカル)、エリック・クラプトン(ギター)と組んだ力強いトリオ・サウンドを「バシッ!」「ダカドコドコ!」と、パワフルに打ち鳴らされる硬派なドラミングで支えておりましたジンジャー・ベイカー。

そのワイルドなドラム・スタイルと直結で結びつく毒舌&偏屈なキャラクターも何というか実に正直で憎めない人であります。そう、ジンジャー・ベイカーの愛すべきところは、ドラムも人格も、全て動物的直観で成り立ってるかのような、その野人ぶりでありましょう。

そんなジンジャーの野人ぶりは、クリーム解散後に、実は遺憾なく発揮されます。

我の強いメンバーで結成されたクリームは、元より結成前から険悪だったジンジャーとジャック・ブルースの間で度々トラブルが起きておりました。

結局終始行動を共にする中でジンジャーとジャックの不仲の溝は埋まるどころか修復不能な状態になってクリームは解散。ジャックが出て行く形でジンジャーとクラプトンは、かねてより親交のあったスティーヴ・ウィンウッド(トラフィック、元スペンサー・デイヴィス・グループ)、リック・グレッチ(ファミリー)らとブルース・ロック・バンド”ブラインド・フェイス”を結成しましたが、このバンドは多くのファンにとっては「クリームの後継ブルースロック・バンド」としか捉えてもらえず、また、オリジナル曲も少なかったので、ライヴでは求められるままにクリームやトラフィックのナンバーをやっていたといいます。

結局クラプトンが、クリーム時代の残滓を背負うのに疲れ、このスーパーユニットはたった半年で終わってしまうのです。

でも、ここで終わらかなかったのがジンジャーなんです。

「ジンジャーどうしよう。エリックがやめるってさ」

「何かもう疲れたとか言ってたんだよな、アイツ大丈夫かな・・・」

「あぁ、エリックはしょうがねぇよ。クリームん時からジャックのワガママで相当参ってたからな(←注:お前が言うな)。あぁしょうがねぇ。じゃあ俺たちでやるしかねぇんじゃねぇか?俺は正直お前らとはもっと演奏したいからどうだ、もうこの際だから新しいバンド組んでよぉ・・・。あ、ちょっと待て、実は俺ァ前からあっためてきたアイディアがあったんだ。いいか、これからはありきたりのブルースやってても、客に飽きられるだけだし、まぁオレらやお前らのトラフィックなんかに影響受けただけの大したことねぇヤツらばっかりだが、ブルースロックのバンドなんか履いて捨てるほどいやがる。だからな、ヒッヒッ、時代はジャズだよ」

「ジャズだって!?いいねぇ」

「やりたかったんだよ、エリックの家でも何度かセッションしたぜぇ」

「よーし、そうなりゃ話は早い。バンド名は”ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース・ワン”で決定な。それと、お前らだけじゃ心細いと思うから、俺がジャズにも対応できる新しいメンバーを連れてきてやる」

と、待ってましたとばかりにイニシアチブを握りまくってゴキゲンなジンジャーによって、1969年「ロックのヤツらがジャズをやるイカしたバンド」が結成されました。

奇しくもマイルス・デイヴィスが問題作とされたエレクトリック・ジャズの名盤「ビッチェズ・ブリュー」を世に出したのと同じ年の出来事であります。




【収録曲】
1.Man
2.Early in the Morning
3.Don't Care
4.Toad
5.Aiko Biaye
6.Man of Constant Sorrow
7.Do What You Like
8.Doin' It

さあ、ジンジャー・ベイカーが気合いを入れて前からずーーーーっとやりたかった自分が好き放題できるバンドでジャズをコンセプトに結成したバンドのファースト・アルバム!総勢10名でサックス、パーカッションも入ったちょっとしたオーケストラ編成であります。

ジンジャーはワイルドだから、スタジオでちまちまなんかやりません。何とこれ、ライヴアルバムなんですよ。

ザッとメンバーを書いてみますと


ジンジャー・ベイカー(ds)
スティーヴ・ウィンウッド(vo,key)


この2人は言うまでもなくブラインド・フェイスからそのまんまの残留組で、ムーディー・ブルースから

デニー・レイン(g,vo)

が加入。

ブルース・ロック界隈の重鎮であるリック・グレッチ(b,vln)に


ホーン隊は

グラハム・ボンド・オーガニゼイションのグラハム・ボンド(as)、トラフィックからクリス・ウッド(ts,fl)ドノヴァンやブロッサム・ディアリーなどのバックも務め、後にオーネット・コールマンなどと共演を果たすジャズ・ミュージシャンのハロルド・マクネア(ts,fl)です。


ヴォーカルには”ドクター・ジョン”の紅一点で、リック・グレッチの奥さんになるジネット・ジェイコブス(vo)更にジンジャーの師匠であり、イギリスジャズ界ではベテランとして尊敬されていたフィル・シーメン(ds)、そして何気にこのアルバムで大きな存在なのがナイジェリア人のパーカッショニスト、レミ・カバカ
であります。

ザッと名前を並べても、純粋に”ジャズ”のフィールドと言えるのは、ハロルド・マクネアとフィル・シーメンで、どんなジャズ・サウンドなんだろうと、嫌が上にも想像が膨らみます。

で、やはりそのサウンドは、ジンジャーの縦の構えからズバッ!ズドン!とタイトに決まるドラミングを中心とした、ロック色の極めて濃いサウンドに仕上がっており、ありきたりの4ビートでお茶を濁した音にはなっておりません。

ホーン・セクションもアンサンブルを奏でるというよりは、長い楽曲の中でそれぞれが自由に即興演奏を楽しんでいるという感じ。ヴォーカルもメインで歌モノをするのではなしに、絶妙なコーラス・ワークで全体の流れの中に良い意味でアクセントになっており、つまりは「ロックのノリを大事にしつつ、その幅をグッと拡げるために即興度の高い楽曲と、ジャズやファンクのエッセンスをちりばめた」と言うべきか、ジャズの人達がロックの要素を取り入れた”ジャズ・ロック”ともまた一味違った、ザックリしたノリとグルーヴを、構えることなく自由に楽しめるという意味において、熱気とユルさのバランスが実に素晴らしく混ざり合っております。

で、後半にモロなアフロ・ポップなノリでグイグイテンションを挙げるレミ・カバカの素敵な煽りに満ちたナイジェリア語のヴォーカルとパーカッション(!)ジンジャーは実はナイジェリアの大物、フェラ・クティと親交があって、共演作も出すんですが、アフロ・グルーヴの中であくまで縦のへヴィなビートを繰り出すジンジャーのドラム、これが見事にアルバムのハイライトになっております。

いわゆるジャズの人達が演奏する”ジャズロック”の粘ったノリとはまた違う、ロック的混沌に溢れ返ったゴッタ煮の楽しさ、それはつまりこの1960年代末から70年代の音楽そのものの”誰が何をしでかすかわからないワクワク”をそのまんま荒削りに詰め込んだものでもあります。





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2017年10月06日

エイフェックス・ツイン ドラッグス

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エイフェックス・ツイン/ドラッグス
(Warp)

今日はテクノについて語ろうと思います。

テクノという音楽は、読んで字の如く、”最先端”をイメージさせる音楽です。

人によって細かい手法は違いますが、この音楽は打ち込みのビートにシンセサイザーや様々な機器を駆使して作ったフレーズを掛け合わせてゆく音楽といえます。

古くは70年代にクラフトワークら、ドイツのいわゆる”クラウトロック”と呼ばれる人達がその原型を作りましたが、これが世界中に波及して、特にクラブシーンで独自の発展を見せて、パーティーに集まった人達を踊らせるハウス・ミュージックや、或いは日本でいえばYMOなど、ポップスとして歌モノの楽曲を打ち込みやシンセサイザーなどのアレンジで装飾したテクノポップと呼ばれるもの、更には電子音楽で作るアンビエント・ミュージックや、バンド・サウンドと融合したエレクトロニカ、近年では元々”ノイズ・ギター・ポップ”というオルタナティヴ・ロックのひとつの形態と呼ばれていたシューゲイザーなんかもテクノとの関わり抜きに語ることは出来なくなりつつあります。

細かいことはさておきで、80年代90年代、そして2000年代から現在に至るまで、テクノ・ミュージックは技術の進化と共に様々な形で世に送り出されてきました。

そして、それらのほとんどが、めまぐるしく発展する録音/再生技術の中で次々と懐メロになってゆくのを感じます。

何年か前にダフトパンクが流行って、アレが最先端のテクノではなく、80年代のオマージュ的なサウンドだったことには「あぁ、もうこの分野も過去のスタイルをネタとして使うようになるまでになったんだ」と、ある意味凄い衝撃でしたが、テクノという呼び方も、もしかしたらあと少しすれば「あぁ懐かしいね」というものになってしまうのかも知れません。

で、そんな中「懐メロにならないテクノ」を、四半世紀以上黙々と作り続けている人がおります。

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”エイフェックス・ツイン”こと、リチャード・D・ジェイムスです。

90年代にドラムンベースというスタイルが流行って、その時この人も世界的な人気アーティストになりました。

黙っていれば結構カッコイイ顔してるのに、ニヤッと不気味に笑った江頭2:50みたいな顔写真やイラストをジャケットに使ったり、水着美女とか子供とか、色んな被写体にコラージュして張り付けたり、正直「うわ、何じゃこりゃ!?」という感じで、なかなかに正体の掴めない、不気味な存在であったと記憶していますが、そこんとこどうなんだよと、この分野に詳しい友人に訊いたところ

「いや、彼はいいんだ。そうやって自分自身を記号化することで、今のテクノブームから距離を取るスタンスを保っているわけだから」

と、何やら禅問答のような答えを貰い、頭の中に「??」がいっぱいになったところでアタシは彼に興味を持ちました。

こんなことを言うと怒られるかも知れませんが、アタシは90年代のテクノブームの時に、どうも今イチその音楽的な良さみたいなものを掴みかねておったんです。重低音とシャキシャキしたプレセンス(超高音)を強調したサウンド、忙しなくてどうノればいいのか分からない均一的なビート、何かメロディーがあってそれが展開して行く訳でもなく、ただ時間を刻むみたいにバーッと鳴らされるだけの効果音的なフレーズの繰り返しだと思ってて、事実その繰り返しを楽しむのがテクノだと言われて、ますます訳がわかんなくなったんです。

「そんなのおもしろくねぇよ」

と生意気にも言えば

「面白いとか面白くないとかじゃねーよ、こういうのを爆音で流してバカになって踊り狂うのがいいんだ!」

と百倍キレられて、あぁやっぱりオレにはクラブとかレイヴとかそーゆーのは遠い世界だわいと嘆いていたところにエイフェックス・ツインは踊らせるための刹那的レイヴ・ミュージックに背を向けた、アーティスト性の高いテクノミュージックを作ってどうのとか、フジロックフェスで犬小屋に閉じこもってDJやってたとか、という記事の数々を断片的に読み

「う〜ん、テクノってわかんないけど、どうもコイツだけは俺が好きそうな頭のおかしなヤツの臭いがするなぁ」

と、何となく好意的に思ってはおりました。


そん時たまたま聴いたのが、2001年リリースの「ドラッグス」というアルバムです。



(Disc-1)
1.ジウェセック
2.ヴォードホスブン
3.クラードフブクブング・ミッシュク
4.オミーガ・スウィッチ7
5.ストローザ・タイン
6.グウェーリー・マーナンズ
7.ビディオンコード
8.コック / ヴァー10
9.アヴリル 14th
10.モン・サン・ミッシェル+セイント・マイケルズ・マウント
11.グワレック2
12.オーバン・エック・トラックス4
13.オソワス
14.ヒ・ア・スクリアス・リフ・ア・ダグロウ
15.ケッソン・ダレフ

(Disc-2)
1.54カイムル・ビーツ
2.ボトム・ルマーダ
3.ローナデレック
4.Qkthr
5.メルトフェイス6
6.ビット4
7.プレップ・グワレック3b
8.ファーザー
9.テイキング・コントロール
10.ペティアティル・シックス・フトドゥイ
11.ルグレン・ホロン
12.エイフェックス237 V7
13.ジゴマティック 17
14.ベスク3epnm
15.ナノウ2


まず一曲目からビートなしの静かな曲に、美しいピアノ。そこから出てくる鋭いけれどもどこか儚い打ち込みのビート。

これで「あ、これは俺でも聴ける」と思い、2枚組を一気に聴いて聴き終わる頃には「本当に不思議だけど、テクノってこんなに心地良い音楽だったんだ・・・」と、今まで味わったことのない、ポワ〜っとした不思議な感情が心を埋め尽くしておりました。

世間の評判を聞けば「あれはテクノじゃない」とか「新しいことはやってないよね」とか、主に彼の作品をずっと追いかけていたファンの人達から、否定的な声も大きかったみたいです。

確かに、何が新しくて何が古いのかよーわからんけれども、この分野に疎いアタシのような人間が聴いても、普通に「音楽」としてカッコ良く聴けた。途中途中で美しいピアノや生音の弦楽器などをフィーチャーした曲が流れては来ますが、基本はやっぱり「ダッダカダッダダ!ダカスッコンコン!」のあのドラムンベースのビートがミニマルな展開で鳴り響く、古典的ともいえるテクノ・アルバムだと思います。

でもこの、無機質で一貫して冷たい質感の楽曲の中にじんわり沁みている優しさは一体何だろう?考えてみりゃあアタシは音楽的なジャンルでどうとか、刺激を求めてとかそういうことではなく、このアルバムを作ったエイフェックス・ツイン、もといリチャード・D・ジェイムスという人が、もう本当に音楽が好きで、自分を心から豊かにさせた音楽、つまりハウスやテクノはもちろん、ジャズやクラシックやロック、そして民族音楽に至るまでの全部への愛を、この2枚組の大作に目一杯詰め込んだんじゃなかろうかと思いながらこのアルバムを聴く度に胸にギューンと来て、何か切ない気持ちにさせてくれる優しさに浸る幸せを噛み締めております。

そして今「ドラッグス」を聴いても、不思議なことに全く懐メロになっておりません。それはきっと、このアルバムを作っていた時に音楽に捧げたこの人の情熱や愛情といったものの温度が、きっと最高に普遍的なものだったからに違いありません。うん、テクノのことは相変わらず全然分からないが、きっとそうなのだ。

このアルバムを最後に、13年にも及ぶ長い沈黙に入り、つい最近復活したということを考えると、今度は今の時点で話題になっている最新作を聴きたくなりますね。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2017年09月26日

ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ L.A.M.F.

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ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ/L.A.M.F.

この前からロックンロール、ロックンロールと、このブログは結構やかましく言っております。

ロックンロールというのは、1950年代に生まれた音楽で、ブルースやR&Bをベースに、更なる楽曲の速さやノリの良さを追究した、非常に踊れる&分かり易い音楽であり、当然社会現象となるほどに若者を熱狂させた音楽です。

そしてこの素晴らしい音楽は、黒人と白人のミュージシャン同士が、同じ目的(つまりキッズ達を踊らせて騒がせるという行為)のためにガッツリ手を取り合って、ひとつのジャンルを築き上げた、史上初の音楽なのです。

えぇと、厳密にはジャズもそうなんですが、またちょっと違った話になりますのでここでは省略しますね。

で、その50年代を席捲したロックンロールが50年代の終焉と共に一気に衰退して、しばらくのインターバルを経て登場したのがロックというのは、皆さんもうご存知でありましょう。

で、ロックンロールは死んだのか?全部ロックに取って代わられてしまったのか?といえば、答えは当然「No」で、70年代にも80年代にも90年代にも、もちろん2000年代を経た今現在も「ロックンロールバンド」と呼ばれるバンドは無数に存在し、文字通りリズムをロックさせ、ロールさせたりしております。

んで、重要なのがこっち。彼らは「ロックンロール」と呼ばれますが、彼らの大半がやっているそのロックンロールは、1950年代のロックンロールそのまんまではなく、実は1970年代に新しく生まれ変わって復活を遂げた、新しい方のロックンロールなんです。

ん、この言い回しが適切かどうかは分かりません。が、ロックンロールは60年代の訪れと共に確かに一度直系と呼べる音楽的な継承が途絶えて、70年代にそのスピリッツを受け継ぐ若者達によって、ジーンズや皮ジャン、そして激しく打ち鳴らされる8ビートと、大出力のアンプで歪ませたギター・サウンドと共に見事な復活を遂げた音楽なのです。

「何の話や?さっぱり訳がわからん」

と、お思いの方もいらっしゃることでしょうから、話をこのまんま続けます。

ロックがアメリカやイギリスで、めまぐるしい進化を遂げていたのを見て、そのロックの生みの親の一人であるはずの男がこう言いました。


「ロックはいいが、ロールはどうした?どこに行っちまったんだロックンロールは?」


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そう、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズです。

キースはローリング・ストーンズの中で、シンプルな3コード、単音でパラパラ弾きまくらないソロで、ロックバンドの中で「ロックンロール・ギターのカッコ良さ」というものを体現したようなギターをずっと弾いておりました。

後を引くリフ、独特のルーズな間から生まれ出る引きずるような、転がるようなグルーヴ。

言葉にすればたったこれだけのギターから醸し出される、何ともダーティーな不良のカッコ良さ。

そう、キースは70年代になってもロックに目覚めた不良な若者達の憧れであり、そんなキースを、ストーンズのロックンロール・サウンドを慕うアメリカの若者達の中で、そのサウンドやライフスタイルの継承者的存在として、ニューヨーク・ドールズというバンドが出てきました。

このバンドには、ロックから難しく面倒臭いところをほぼ省いた、8ビートに3コードという演奏スタイルで出てくる音を、とにかくやかましく、そしてグラマラスに演奏すること”だけ”に全てを捧げたような、ストレートで、ちょっとキケンなカッコ良さがあり、非常にセンセーショナルな存在として話題になったんですね。化粧もしているし。

はい、このニューヨーク・ドールズは”パンクロックの元祖”とかも言われております。その理由はまたちょっと音楽的なこととは違うあれこれが入ってくるので、ここでは省略しますが、50年代ロックンロールへの、単純な原点回帰でもない、かといって小難しくもない、独特のラフなグルーヴとやかましいギターの轟音で酔わせてくれる、新しいロックンロールを、ハッキリとした形でドンと世間に見せつけたのがニューヨーク・ドールズです。

もっといえば、このニューヨーク・ドールズのギタリストとして、そんなロックンロール・サウンドをギャンギャン演奏していて、いつの間にか存在そのものがロックンロールと呼ばれるようになったのが、ジョニー・サンダースであります。

アタシがまだ十代の頃、とある先輩に

「ロックンロールって何ですかね?」

と訊いたら

「バカヤロウ、お前ジョニー・サンダース聴け!」

と言われました。

更に別の人に同じ質問したところ

「それはジョニー・サンダースだ」

と、ほぼ同じ意味の答えが返ってきました。

二度目に質問した人は、ちょっと優しい人だったので

「チャック・ベリーとかエルヴィスとか・・・」

と、モゴモゴアタシが言うと

「うん、彼らは50年代のオリジナル・ロックンローラーだけど、清志郎とかチャボとか、とにかく今ロックンロールやってるヤツらは、みんなジョニー・サンダースから影響受けてるし、ジョニー・サンダース大好きなんだよ」

と、優しく説明してくれました。

実際その後も「ロックンロールが好きだ」という人とはたくさん会って、色々話をしましたが、やっぱりジョニー・サンダースという言葉を口にした瞬間に、少年のようにキラキラした目になったり、エンジンかかったようにアツく語ったり「あぁ・・・ジョニー・サンダースはもう絶対だよね・・・」と、憧れの目一杯入った口調で遠い目をして答える人・・・とにかくみんなにとってジョニー・サンダースという人は特別な存在なのだということを、アタシは心底痛感するに至ったのです。




1.BORN TO LOSE
2.BABY TALK
3.ALL BY MYSELF
4.I WANNA BE LOVED
5.IT’S NOT ENOUGH
6.CHINESE ROCKS
7.GET OFF THE PHONE
8.PIRATE LOVE
9.ONE TRACK MIND
10.I LOVE YOU
11.GOING STEADY
12.LET GO


数々のカリスマ的エピソードとか、やっぱりそういう人らしく、結構早くで亡くなったとか、そういう話もありますが、コレを聴くと全てがぶっ飛びます。

ジョニー・サンダースがニューヨーク・ドールズを辞めて最初に組んだロックンロール・バンド「ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ」のデビュー・アルバム「L.A.M.F.」。

どこにも何にも細工なんてない、ただ荒く、ポップで、そしてやかましい3コードのロックンロール!

最初聴いた時は「いや、これはもうパンクでしょ」と思ったし、正直に「セックス・ピストルズをもっと泥臭くして、どこか切ない感じをふんだんにまぶした音だ」とも思いました。

ジョニー・サンダースは、この頃ライヴで使ってたマーシャルの3段アンプをレコーディング・スタジオに持ち込んで、そのままギターを繋げてガーンと鳴らしてたそうです。

当時の常識では、3段アンプはライヴで音量を稼ぐのと、見た目で派手なインパクト狙いということで、レコーディングではもっと音が聞き取り易い普通の箱型アンプを使うものだというのがあったそうですが、ジョニーはそんなこと気にしません。

「ライヴでいい音出るアンプなんだから、レコーディングでも使うの当然だろ?」

とすらも、多分言ってません。そう、ロックンロール、理屈じゃないんです。

音楽的なあれこれは元より、このアルバムに入ってるのは、熱くてカッコよくて、切なくて興奮する、そういう音楽の”本質”ですよね。本質だけがむせるような質量で「これでもか!」と入ってる。1977年の作品ですが、こういうのに古いも新しいもないんです、ただカッコイイんです。ロックンロール。



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2017年09月23日

ザ・フー ライヴ・アット・リーズ

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ザ・フ/ライヴ・アット・リーズ
(ユニバーサル)

「ライヴバンド」という言葉を最近よく聞きます。

読んで字の如く「スタジオ音源もいいけど、ライヴだと更に信じられないぐらいカッコイイ!もう死ぬ!」というバンドのことです。

いやぁ、世の中には実にカッコいいライヴバンドはいっぱいいるし、素晴らしいライヴ盤、それこそたんまりあります。

え〜・・・

で、今から全くミもフタもないことを言います。

それはですね

「ロックバンドは、大体ライヴ・アルバムがカッコイイ」

ということです。

だってほれ、ロックはやっぱりライヴですよ。

ビートルズだってストーンズだって、今どんなに大御所になって、スタジオで超大作を作ってるバンドやミュージシャンでも、レコードデビューする前は、ライヴハウスで一生懸命演奏して、そこから人気が出て段々ビッグネームになっていったんです。

だから「ライヴアルバムがよくない」ってこたぁないじゃないですか。みーんな最初はライヴバンドだったんです。

その中で

「じゃあ最強のライヴバンドは?」

と訊かれたら、最強かどうかはわからんけれども、とにかくスタジオ盤のファーストを聴いてカッコイイと思った時以上の衝撃をライヴ盤で聴かせてくれたザ・フーを皆さんにはオススメいたしましょう。






1.ヘヴン・アンド・ヘル*
2.アイ・キャント・エクスプレイン*
3.フォーチュン・テラー*
4.いれずみ*
5.ヤング・マン・ブルース
6.恋のピンチ・ヒッター
7.ハッピー・ジャック*
8.アイム・ア・ボーイ*
9.クィック・ワン*
10.すてきな旅行|スパークス*
11.サマータイム・ブルース
12.シェイキン・オール・オーヴァー
13.マイ・ジェネレイション
14.マジック・バス

*ボーナストラック


何てったってキャリアも長いし、作品毎に凄まじく進化していったザ・フーです。

しかし、つい最近になっても積極的にライヴ・パフォーマンスを行って、ライヴアルバムやライヴの映像作品なんかをガンガン出しているザ・フー。そう、どんなに進化しようが、どんだけ大御所だベテランだと世間からもてはやされようが、コノ人達の軸足は「気合い一発でみんなを沸かせるライヴ」そこにずーーーっとあって、その信念がブレたことは、今まで一度たりともありません。

そんなフーの、最初にリリースされたライヴ・アルバムが「ライヴ・アット・リーズ」。1970年に行われた大学でのステージであります。

常日頃フーの魅力というのは

「ポップな曲にド汚いサウンド」

だと思っておりますが、このアルバムはもー凄い!

スタジオでも爆音セッティングのピート・タウンゼントのギターは何の遠慮もなく派手に歪ませて、いかにもアンプ直フルテンの、ギャンギャンゴワゴワのファズ・サウンドだし、元から単なるリズムキープじゃなくてギターのコード弾きの裏でブイブイにリードを弾いているジョン・エントウィッスルのベースもギターに負けない音量で動き回ってるし、キース・ムーンのドラムに至ってはほとんど暴走のレベルでバカボコバカボコ景気よくやっております。

で、ロジャー・ダルトリーのヴォーカルも「え?ツェッペリンのロバート・プラントなんじゃない??」と思わせる高音振り絞り系のシャウトをガンガン炸裂させ、ファーストで感じていた「音のやんちゃな正統ブリティッシュバンド」という最初にイメージは、またしてもここで気持ち良く覆されました。

この時期のフーといえば、スタジオ盤ではアレンジの凝った大作の「ロックオペラ・トミー」なんかも作って、アルバム・アーティスト集団として急成長していた時期なんです。すなわち耳の肥えた音楽好きの鑑賞にも十分耐えられるような深い作品を作ってやろうと、そういう時期に

「はーいみんなー、ギターをアンプにつなげたぞー。おまえらどっかーん!!」

な演奏を、ライヴでは相変わらずやってたってのがもうね、カッコ良い。カッコ良すぎるんです。。。

もちろんこのアルバムにも、彼らの”進化”はしっかりと見て取れます。

それはつまり「それまでのロックンロール路線から、新しいハードロック路線を宣言した」とか、そういうことで、実際このアルバム聴いてると、当時彗星の如く表れて爆風を巻き起こしていたレッド・ツェッペリンのサウンドと似通ってるんですが、そういうことすら、何かもうこの爆音一発なサウンドと、ひたすらアツいパフォーマンスの前ではどーでもよくなってきます。

あと、このアルバムのジャケット、これ凄くカッコイイよなぁと思っていたら

「当時よく出回ってるブート盤の真似をしただけ」

という話をある日聞いて、フーのことますます好きになりました。











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